幻の『本土タマン』を狙う
Team.SAMEHADAは夏の休暇を利用して各メンバーごとにターゲットを定め遠征を行った。
私(ちぎら)とはるか氏は8月10日夜から8月14日未明までの間、静岡県西伊豆へ遠征した。
ターゲットはハマフエフキ(通称タマン)と呼ばれるフエフキダイ科の大型の魚だ。
引きが強く『磯のダンプカー』と呼ばれる異名を持ち、多くの釣り人を翻弄している。
もともとは南方系の魚でメインで釣られている地域は沖縄であり、伊豆諸島でも一定の釣果が上がっているが、伊豆半島では生息域の最北と言われており一部しか釣果が上がっていない。
ここでは『本土タマン』と呼ぶことにする。
この本土タマンをはるか氏は二年間狙い続けており、今回の大型休暇に合わせて私も参加する形で狙いに行った。
いざ西伊豆釣り遠征へ
10日の夕方に自宅を出発し、まず、はるか氏の自宅へ車を走らせる。
はるか氏を拾った後は横浜名物の家系ラーメンで腹ごしらえをし、一気に西伊豆へと向かった。
深夜23時頃には西伊豆に到着し、まずはポイントの偵察を行った。
メインとなる漁港を見てあまり大きくない漁港と言う印象で、どこにでもありそうな雰囲気を感じつつ本当にこんな所にあの本土タマンが居るのか?と言う疑問も湧いてきた。
はるか氏が他のポイントも見ようというので移動をはじめるとあることに私は仰天した。
絶壁に張り付く様に立ち並ぶ家々。
戦時中に掘られたとされる大きな洞穴。
そして複雑に入り組む港町。
打ち捨てられたような廃造船所…。
まるでジブリの世界か、それとも違う世界か、異次元に迷い込んだ様な錯覚すら覚え、深夜と言うこともあり少し恐ろしさを垣間見た気もした。
一通りポイントを見たがどこも暗いため良く分からずポイント偵察は次の日へ持ち込みへ。漁港内で少し竿を出したがアタリも無く、疲れていたので睡眠を取ることにした。
朝からポイント探し
二日目は朝からポイント探し。
昨日暗くてよく分からなかった部分も明るくなってその造形美に圧巻された。
時間がとまったかのような町並みも続く。
凄い凄いと行く前に言われて居たが確かに凄かった…。
一行は少し南下し、堂ヶ島と言われるポイントへ移動。ここはホテル街だが何処からか降りられる場所があり、そこがタマンの良ポイントと言う情報を手に入れており、そのポイントを探す事にした。
ポイント探しで見つけた絶壁。
まるで本土とは思えない絶景。
1時間以上汗だくになりながらポイントを探し、ついに情報通りのポイントを発見した。
すると海女が居たのでもしかしら何か知っているかも知れないと声を掛けてみる。
私:「私達ハマフエフキって言うタイを探しに西伊豆に来たんですけど何か知っていますか?」
海女:「ハマフエフキって貝?」
私:「タイです。」
海女:「貝!?」
私:「魚です。」
海女:「あ~あ~フエフキダイの事ね~!」
と言うことがあった。。。
話を聞くと余所からきた人による貝や伊勢海老の密漁が酷いらしく、その手の話を警戒しているらしい。でも、魚と分かると快く話をしてくれて本土タマンについての重要な話を聞くことが出来た。
ポイントの他にも重要ワードをGETした一行は正にウキウキで、もはやタマンは釣ったも同然の気分で腹ごしらえと温泉を堪能し、時合いが来るまでテレビを見ながら談笑と居眠りをして時間を潰した。
地魚を使った丼物。めちゃめちゃに旨い。
ゴロタ浜で竿を出してみた
少し早めにポイントに移動すると既に先客が一名おり、私達も道具を下ろして支度を始める。先客もタマン狙いの様で情報交換をして時合い1時間前から竿を出した。
初めてゴロタで竿を出すのでドキドキが止まらない。
竿を出すと早速アタリがありアワセを軽く入れて巻き取るとお馴染みの顔ぶれ。
ウツボ。
ぶっ込み釣りでのお馴染みの外道。今回、初の獲物とあって実は結構嬉しかったりする。
はるか氏にも早速ウツボがヒット
いよいよ時合いになりテンポ良く打ち返えをしようとすると二本とも根掛かり。
ゴロタなので多少の根掛かりは覚悟していたが、はるか氏の仕掛けは根掛からないのに対して私の仕掛けは一投、一回のペースで根掛かりしてしまう。
どうやら、私の仕掛けはナイロンで組んであるため水に馴染みすぎる上、丁度満潮から引き潮に入り、錘が流され根掛かりしてしまうようだった。
また先客のタマン師によると最低でも80メートル以上の遠投が必要なため、はるか氏のタックルではポイントに届かず、私は釣りが成立すらしない状況に陥ってしまった。
地合いから1時間程でこのポイントは切り上げ、移動。
移動先のポイントでは餌取りのアタリがあっただけで初日は終了となった。
エイの集中攻撃
次の日は少し遅めに起床。
朝方、ソーダガツオかサバを釣って撒き餌にしようかと話をしていたものの、見渡すとほとんどのポイントは釣り人で埋まっている。
日も高くなっていたので期待も出来ないので車の燃料と食料、釣り餌の再補給に向かった。
2つ離れた町で燃料と軽食を済ませ、ついでに他のポイントも偵察しようと他の漁港やゴロタを回る。
どれもこれといったポイントは見つからないが、ふと立ち寄った堤防で回遊魚がカゴ釣りでポツポツと釣れていて、「魚っけはありそうだ」と話をしていると、「サメだ!サメだ!」と声が聞こえた。
見ると130㎝はゆうにあろうかと言うシュモクザメが泳いでいた。
しばし見つめていた二人だが、
「今回はタマン。浮気は禁止」
と、車に戻った。
そんなことをしているうちにお昼近くになってしまい、結局元の漁港に戻ると2年前にはるか氏がタマン狙いで入ったポイントが空いており、そこで落ち着くことにした。
とりあえず二人で1本づつ、ブッ込み竿を出してアタリを待ちながらはるか氏はヘチ釣りを開始。ヘチ釣りはクロホシイシモチやベラがほとんど入れがかりで餌取りの活性は良い。
目を凝らして見ると船の下に40~50㎝近いメジナが見えているがどうやらそこまで仕掛けが落ちないようだった。
それから私が少し釣り座を離れ戻ってくるとはるか氏が石鯛竿を曲げてファイトの真っ最中!
急いでアシストに入ると、
「結構いい手応えしてるけどエイみたいだね」とはるか氏。
程なくして浮き上がったのは小型のアカエイだった。
めちゃめちゃ引いたと少し驚いていたはるか氏。
すると私のぶっ込み仕掛けにもアタリがあり、アワセを入れると一気に20メートルほど糸が出される。
直ぐに海底に張り付いたためエイだと確信。
が、やっと浮かせても急潜航を繰り返したり寄せても毒針でハリを振りほどこうと凄まじい抵抗を見せる。
ランディングすると10キロあるなしの立派なアカエイであった。
アカエイは基本的に何処でも顔を見せてくれる上、魚体によってはアグレッシブな一面も持つ。
それからはエイパレード。
ここのエイは他に無いほど暴れまわり我々を翻弄した。
こちらはイズヒメエイと思われる一匹。
夜になると釣れるのは・・・
夕方になると私はこれからの時合いに合わせて、撒餌を調達すべくカゴ釣りに切り替えた。
早速30㎝程のサバやソウダを釣り上げた。
コマセもいい具合に効いて来てここからが正念場だな…と思っていた矢先。
「そこに船停めまーす」
と我々の釣り座の目の前に船が止まってしまった…。
はるか氏も船が停まらない場所と認識していた他、私もまさかこんな所に停泊するとは思っていなかったため二人でしばし途方に暮れた。
「気晴らしにサメでも狙いに行くか…」と、昼間見たシュモクザメを狙いに行くことにしてに移動。
ポイントは幸いにも空いており、仕掛けを入れると早速アタリ、私はアカエイ。
はるか氏はクロアナゴを釣り上げた。
「貴殿でしたか。」とはるか氏。
クロアナゴもしっかりとドラグを引き出すアタリを見せるナイスファイターだ。
私に掛かったアミウツボと見られるウツボ。
この魚は中深海の砂地に生息するレアなウツボで西伊豆のポテンシャルの高さを感じさせてくれた。
それから二人でアカエイを数枚追加。
本命のサメのアタリは無い所でポツリポツリと雨が降ってきた。
はるか氏が、「後20分位でめちゃめちゃ降ってきそう」と言うので道具をかたづけるかと思った20秒後だった。
ドババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババァーーーー!
と凄まじいゲリラ豪雨。
おい、まじか。と急いで竿だけ畳み近くの公衆トイレへ避難。
二人でしばし途方に暮れた。30分程すると雨も止んだ。
近くのコンビニで軽食をとった後、とりあえず明日に備えるかと車の中で眠りに付くのであった。
田子漁港へ
ここからは筆者代わりまして私「はるか」がお送りいたします。
翌朝、目を覚ますと時間は午前8時頃。
ずぶ濡れになった体も朝の日差しで暖まり完全復活。餌や食料を買い足して再び田子漁港へ向かった。
前日船が停泊してしまったポイントに船はいなかったのでたまたま臨時で停泊したんだろうということにして、ひとまずそこへ陣取った。そのまま昼間はのんびりエイでも釣りながら過ごすことに。
とりあえずマイカの切り身をぶっ込む、前日に、ここのエイはかなり手強い事がわかったので仕掛けは少々太めにフロロ18号、針はタマン20号。
しばらくすると当たり、小さめのエイが釣れた。しかしここのエイは何故こんなに引くのだろう( ̄▽ ̄;)
なんと昼間に狙っていたヤツがきた・・・?!?
そんなこんなでエイをコンスタントに釣り続けていたのだが、時刻が午後1時を回った頃に事件が起きた。
いい加減エイにも飽き、強い日差しで半分腐ったイカを適当にぶっ込むと5分も経たずに当たりが出た。
今までより勢い良く出るドラグ、元気なエイが掛かったのだろうが…
「上等じゃねぇか!」
そう思いリールのROCK機能をONに(本来は根掛かり対処の為にある物で魚に使ってはいけませんw)底に張り付かれるのが嫌だったので速攻で糸ふけを取り合わせを入れ竿を立てる。
しかし魚はROCKをものともせず凄まじいトルクで走り続ける。
思わず前ずさりして岸壁の車止めに片手を着いてしまった。
これはやばいと思いすぐさまROCKを解除すると魚は釣り座の左側にある磯へ走り出す、「何かおかしい、エイじゃない!」そう思い真面目にやり取りをはじめる。
左側は切り立った崖になっていて、回り込むスペースが無い。
魚も流石に疲労してきているようだったのでドラグを締め一気に巻きとると抵抗ぜず寄ってきてくれた。
「なんだろ?さめだべ」なんて話しながら反射する水面に目をこらす。
そして魚の姿が見えた瞬間私は固まった…
淡いコバルトブルーの縞が入った美しい魚体、特徴的な尖ったくちばし。
それは紛れもないハマフエフキだった。
タマンタマン!!
タマンだうわああああああああああああああああああああああああああああ!!??
みたいな感じで2人してパニック状態。
めちゃくちゃ震えながらタモ入れしたことくらいしかよく覚えていない(笑)
計測してみると65cm、重量は3.8kg(内蔵抜き)中々の良型だ。
まさか昼間に食ってくるとは思わなかったので、しばらく何が起こったかよく理解出来ず呆然としていた。
2年間の苦労、釣れた喜び、そして釣れちゃった感、これらが混じりあってもう訳が分からなかった(笑)
しかし釣れたことは事実、ここは素直に喜ぶことにした。
タマンをストリンガーで泳がせて30分程ぼーっとした後再び同じ餌でぶっ込む、するとちぎら氏が「昼間に食ってくるってことは夜この場所相当熱いんじゃね?」と言う。
確かに、夜ならかなり可能性は高い。
船が来ない事を祈りながら夜もここで粘る事にした。
夕方になり新鮮な餌を調達するため、ちぎら氏がカゴ釣りを始める、田子港中央に浮かんでいるパヤオに何か着いてるだろうと目論み近くを集中砲火、数投で浮きが入った。
鋭い引きを繰り広げて上がったのはソウダガツオだった。
ちぎら氏にとって人生初のソウダガツオだったらしくかなり嬉しそう。
「これならいい餌になるから沢山釣ろう!」そう言って2人で盛り上がった時だった、沖からこちらへ漁船が向かってきた。どうやらまたここへ留まるらしい…
とりあえず釣具とストリンガーのタマンをドヤりながら(笑)急いで上げて2人で途方に暮れていると船を止めて10分位作業をした後また走り出してどこかへ行ってしまった、一体ここは何をする場所なのだろう??
その後は船が来たら退けばいいかぁと思い釣り続行、幸い朝まで船が来る事は無かった。
夕暮れには巨大エイが登場
そろそろ夕暮れ、タマンを〆てクーラーボックスにぶち込み再キャスト。
すぐに当たり、昼間のこともありめっちゃ慎重にやり取り(笑)
が、底に張り付いたのでエイと確信…
しかもめちゃくちゃ重い、石鯛竿を満月にして上がってきたのは本遠征1番の巨大エイ。
計測はしなかったがおそらく20kgはあるだろう。
と、ここで遠くで鳴っていた雷がいきなり近付いてきたので一旦車の中へ避難。
そして数分後、港の対岸が見えなくなる程の雷雨に見舞われた…
車の中から外を眺めやむのを待つ。
雨は良くないと言う情報もあったため心配になりながらやむのを待つ。
幸い1時間程で収まり再び釣りを再開。
しかしまるで魚っ気がなくなってしまった、そしてなんか臭い。どうやら港の数カ所にある流れ込みに溜まっていた腐った水が雨で一気に流れ出てきてしまったようで、状況は最悪だ…
すると1組の釣り人がやって来て「隣入って良いですか?」とのこと。
この時間からそんなガチな投げ釣りタックルで何を狙うんだろう?疑問に思いながらもスペースが余っていたのでOKした。
聞くと大ギスを狙いに来たとのこと。なるほど、これだけ水深がある場所での夜釣りなら確かに大きいのが出そうだ。
その後はエイやアナゴがポツポツ釣れたものの本命らしき当たりは無く雨もしとしと降り始めたので午前2時頃に納竿し車で就寝した。
西伊豆のポテンシャル半端ない
翌朝、凄い音に目を覚ますとまた雷雨…
30分程でやんだが度重なる雨で水は若干濁り気味。
少し竿を出そうかと思ったが諦めて我々は西伊豆を後にした、今回の遠征はここまで。
結果的にターゲットを釣り上げることが出来たので戦略的勝利と言ったところだろうか。
様々な魚にも出会えたし西伊豆という場所のポテンシャルの高さを改めて感じた、
だがこれで終わりではない、次は必ず狙って釣り上げてみせる!
帰り道、伊豆山中の温泉につかりながらそう思ったのであった。
<釣師>
はるか(@haruka_1852_)
鯉、草魚、連魚等の淡水大魚から海はエイ、サメ主体のぶっ込みや泳がせ。魚種にとらわれずその水辺いる一番大きな獲物を追い求めています。自称陸っぱりベイシャークのパイオニア。