マゴチやアオリイカ用中オモリの作り方を解説

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ORETSURIをご覧のみなさん、こんにちは。

東京湾や外房をうろつくサラリーマン・アングラーの釣人割烹です。

今回は、マゴチの船釣りで使う「中オモリ」を自作する方法について紹介します。

マゴチ釣りでは「鋳込み天秤」がよく使われてきましたが、ちょっとすたれぎみで、今は中オモリが主流。これ、買うとそれなりの値段がするわけです。

過去に作ってきた中オモリは棒状のものでしたが、今回、カマボコ型の三日月オモリの製作に挑みました。これはなかなか難しい。

失敗を重ね、悩んだ末に、ついにブレークスルーへと至る道のり。

そんな話です。

目次

マゴチの中オモリづくり、簡単だと思ったが……

鉛のオモリは、小さなフライパンに入れてガスコンロの火にかければ、簡単に溶けます。

その際に出る煙(鉛の蒸気)は有毒なので、戸外でやるのがよいのですが、家の台所でやる場合はしっかり換気しなければなりません。それと熱い鉛がはねることによる火傷、この2つに気をつければオモリ自作は実に簡単です。

問題は、溶けた鉛を流し込む「型」をどう作るか。

この型枠ができれば、自作オモリは完成したも同然なのです。

アンドンビシの型枠は、過去記事でも紹介した通り、清涼飲料のアルミ缶を利用しました。缶をハサミで切り、キャップをつけた飲み口の部分を使う。まさにうってつけでした。

さて、マゴチ用の中オモリはどうするか。

2年ほど前に作ったときは、飲み口を切り取ったあとに残るアルミ缶の残がいを利用しました。ペラペラと柔らかいアルミの板を折り曲げ、漏れないよう工夫しながら細長い型枠を作りました。両端の部分に楊枝でサルカンをぶら下げ、鉛を注ぎ込みます。

空き缶から型枠を作る流れ

この型枠で作った中オモリを実際に使って、マゴチを何本もとりました。

しかし、いかんせんオモリは棒状。

サルカンが斜めに飛び出し、見栄えが悪いんです。見栄えはともかく、ラインの引っ張られる方向に対してサルカンがほぼ直角で、糸のよりが取れにくそうです。

写真右の三つのうち右端は20号、残り二つは15号。真ん中は使用頻度が高く、マゴチを何本もとった

できれば、釣り具メーカーが売り出しているような、サルカンがライン方向に真っすぐに埋まった美しい半月型のオモリ(三日月オモリ)ができないものか。

マットブラックのバランスシンカー 10号・15号・20号

悲しいかな、人は成功体験から逃れるのが難しい生き物です。アンドンビシでうまくいったアルミ缶を使う発想を、なかなか捨てられません。

鉛を溶かすときに手痛いミス

長方形ではなく、カマボコのような半月の形にしたい。

アルミ缶を片っぱしから持ち帰ってハサミで切り、ああでもない、こうでもないと型枠を作る。そして、家族の寝静まった夜中に台所へ行き、オモリを溶かして……。

という試行錯誤に明け暮れました。

この過程で、重大な失敗が…。

小さなパンに鉛を入れて火にかけたまま、その横で型枠の準備に熱中していたんです。

うーむ。もっと幅を薄くすべきだろうか。

こりゃ、サルカンの位置が悪いな。

型の底から鉛が漏れそうだ……。

・・・

ふと気がつくと、鍋から黒い煙が上がっています。

「あっ!」

と、思ったが手遅れ。

なんとパンに穴が開いているではないか。

穴が開いた。鉄製だと思っていたらアルミ製だった

鉄なら溶けるはずがありません。勝手に鉄製と思っていたパン、実はアルミ製だったのです。

アンドンビシ自作の記事でも「スチールパン」としていましたが、誤りでした。

ガスコンロの炎は1700~1900℃とされています。

一方、金属が溶け出す温度(融点)は以下の通りです。

  • 鉛 327℃
  • アルミ 660℃
  • 鉄 1538℃

こりゃヤバい、ヤバい。

火にかけたまま放置すれば、アルミパンが焼けて火事になりかねない。鉄製のパンを買ってやり直すことにしました。

成功体験を捨て発想を大転換

それにしても、空き缶を利用するオモリ作りでは、曲面を備えた三日月オモリを作ることは不可能に思えます。

サルカンを真っすぐに鋳込む方法も思い浮かびません。ここは成功体験を捨てなければならないようです。しばらく頭の中で思考実験を繰り返しているうちに、突然、ひらめきました。

紙粘土で型枠を作れば……。

近所の百円ショップへ急行すると、紙粘土1個110円。表の包装に対象年齢6歳以上とあります。50代半ばのオッサンが買うのは少し恥ずかしい(涙)。

2パック購入。対象年齢は余計なお世話。いちいち書かないでほしい。

家に帰って封を開け、ちぎってコネコネ。ちぎってコネコネ。何十年かぶりに味わう冷んやりとした感触で、手のひらが白くなる。触るのは小学校以来でしょうか。

鉛を流し込んだときに、紙粘土が溶けたり、崩れたり、割れたりしないか心配ですが、やってみないとわからない。もし大丈夫なら、三日月オモリのような曲面を持つ型枠も自由自在に作れます。

東京湾のマゴチ仕掛けに使われる中オモリは15号が標準。さて、15号に見合う型枠の大きさは、どれくらいなのか。

これは、中学1年の理科で習う「比重」の知識があれば求められます。比重というのは、ある特定の物質(この場合は鉛)と、基準となる物質(水)を同体積で比べたときの重さの比率です。

釣りのオモリというのは1号=3.75gと決まっています。

すなわち、15号の鉛オモリは、3.75g×15=56.25gです。

それに対して、水は1㎤(体積)=1g(重さ)。一方、鉛の比重の値はGoogleで検索すると「11.34」でした。これは、同じ体積で水より「11.34倍重い」ということを意味します。

すなわち、鉛1㎤(体積)=11.34g(重さ)となります。

ということは、15号に相当する鉛56.25gの体積はどれくらいか。

56.25g÷11.34=4.96…すなわち、約5㎤(5cc)です。5ccと言えばジャスト小さじ1杯。

つまり、カマボコ型にくり抜いた紙粘土の型枠を、小さじ1杯の水を入れてちょうどいっぱいになる大きさにする。そこに鉛を流し込めば15号(56.25g)になるわけです。

かくして、十分にコネコネした紙粘土をくり抜いて三日月型の型枠を作り、小さじ1杯の水を入れてチェックしながら大きさを決定。紙粘土なので型枠の両端にサルカンを真っすぐ寝かせることも簡単でした。

マゴチの中オモリの型枠が完成

あとは紙粘土がしっかり乾き、固まるのを待ちます。

水分が残っていると、注いだときに溶けた鉛が暴れ、跳ねて非常に危険です。

「コロンブスの紙粘土」作戦は大成功

ああ、待ちきれない。早く試したい。

型枠を作って一日が経過し、半乾きの段階でさっそく溶かした鉛を入れます。うまくいけば「コロンブスの卵」ならぬ「コロンブスの紙粘土」。

アルミ缶を利用した型枠作りの苦労は何だったのか、となります。

フライパンに入れた鉛はコンロの火にかけると数分で溶け、液体金属になります。鉄製のパンはさすが。鉛が溶ける温度でも、びくともしない。

コンロ横の白い流し台を傷めないよう分厚い木の板を敷き、型枠を置きます。そこへ、ドロドロの鉛を注ぎます。

ちょっと勢いよく入れすぎました。

ブシュ、ブシュ、ジュルルルルルル……。

案の定、紙粘土に残った水分に触れて鉛が暴れ、「バチッ」という音とともに弾け、近くに飛びました。ヤバい。皮膚についたら深刻なやけどを負うな。

しかし、紙粘土の型枠はびくともしない様子。

暴れたせいで固まった鉛がいびつな形となったので、温度が下がったあとに取りだし、再度パンで溶かします。今度はパンをコンロから上げたあと少し空気中で冷まし、ゆっくりと慎重にもう一度注いでみます。

・・・

お。今度は暴れません。

型枠に注いだ鉛は5秒ほどで固まります。使い古した箸をサルカンの輪に通して持ち上げると、鉛は型枠から簡単に外れます。そのまま水の入ったコップに入れると「ジュッ」という音を出す。これ、気持ちよくてクセになります。

できた!しかし、片方のサルカンが鉛を注いだときに動き、斜めに鋳込まれてしまった。う~む。使えそうだが惜しいなぁ。

もう1個作ることに。サルカンが動かないように輪ゴムで固定し、再び鉛を慎重に型枠へ。

今度はうまくいった!

新たに自作した二つの三日月オモリ

半月型のオモリに二つのサルカンが真っすぐ鋳込まれました。サルカンの鋳込んだ部分が少し露出していますが、そこは自作の限界です。90点の出来。強度は十分でしょう。

できあがったオモリは、ところどころ「バリ」があってチクチクする。そのままでは道糸やハリスを傷つけかねないので、仕上げに金属や紙のヤスリで入念に磨きます。

紙粘土は偉大なり。

おれ、天才かも。満足感にひたりながら2個の三日月オモリをなでていると、マゴチが頭の中を泳ぎ始めます。

いよいよ釣行当日。

船宿は神奈川・新子安の「だてまき丸」さん。

マゴチは梅雨のころ産卵期で食いが落ちるとされ、その日も食い渋りでしたが、自作の新しいオモリで50cmクラスを2本とることができました。客に釣らせる気満々の素晴らしい船長のおかげ。この船宿については、いずれきちんと紹介したいと思います。

マゴチは48cmと45cm。アタリ2回で2打数2安打だった

紙粘土でオモリ作りが自由自在

型枠に紙粘土を使うアイデアで、マゴチの中オモリにとどまらず、いろんなオモリを自作する可能性が大きく広がりました。

例えばマアジの沖釣り。

さまざまな重さの型枠を用意しておけば、釣行スタイルに合わせて前日にアンドンビシのオモリ部分を溶かし、好きな重さに変えることができます。

紙粘土で作ったアンドンビシの型枠

ノーマルタックルで深場を攻める横須賀・走水界隈の船宿では、130~150号の重たいビシを使います。一方、横浜・本牧沖ではライトタックル(LT)が主流で、ビシは40号が標準。手漕ぎボートによる釣りでは、さらに軽い25~30号のビシを使います。

本来なら、重さの異なる3~4種類のアンドンビシをそろえる必要があります。1個だけではロストの不安があり、2個、3個と買うことになる。このようにして、釣りとは何かと出費がかさみ、道具箱もかさばるわけです。

ところが、紙粘土方式では数百円のアンドンを何個か買うだけで、すべてに対応できるわけです。

筆者は7月前半にマアジを手漕ぎボートで狙う予定で、130号のビシを25号のビシに作り替えてみました。

まずは、130号ビシを鉄製のパンで溶かします。

鉛がどんどん溶けていく

溶けきったら、アンドンを取りだして冷やし、いよいよ型枠に鉛を入れます。わずかな時間で新しいビシができ上がる経緯を動画にしました。

▼(動画)鉛を型枠へ流し込む

アジ釣りの翌週、急にヒラメの泳がせ釣りをやることになれば、アンドンビシを溶かして80号の六角オモリにする。さらにその翌週がシロギス釣りなら、80号を溶かして30号のオモリにする。

これ、まさにオモリ・オンデマンドです。

さらには「一つテンヤマダイ」に使うテンヤやカブラも自作できそうです。テンヤ針を鋳こみ、好きな色を塗って大鯛を仕留める。そんな夢に手が届きそうです。

オモリの自作で新たな展開があれば報告します。それでは、また!

▼最新型はスナップサルカンを2つ連結してから鋳込んでいます。これでサルカンがオモリから脱落する可能性はないかと。あとはサルカンの剛性ですね。

※鉛には毒性があり、食品等の近くでの作業は控えましょう。また、火傷や換気に十分注意する必要があります。

寄稿者

釣人割烹(@tsuribitokappou

関連アイテム

タカミヤ パワービシ 130号 SC-442 ML

 

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