本当の「フィッシュカレー」ってやつを見せてやりますよ

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フィッシュカレー
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みなさんはカレーは好きだろうか。

はーん、そうですかそうですか。

何を隠そう、このわたしは外食では新宿中村屋のインドカレーが一番好きだ。自宅ではボンカレー中辛とバーモントカレーが好きだし、レトルトだとニチレイの業務用カレー(中辛)の味がいいのを知っている。あれは安いしね。

「インドカレー」というジャンルがある。最近はこじゃれて「スパイスカレー」などと呼ばれていることもある。カレー自体がスパイスをつかった煮物なんだからスパイスカレーってのはなんというか「豚豚汁」みたいに聞こえたりするのはわたしだけだろうか。

その辺は打ち出しの問題なのでよいとして、このインドカレーっていうのはうまい。サクっとスパイスの香りを油に移して、素材を煮て作るという。

よく、家庭用カレーは一晩おいたほうが旨いという説がまことしやかに唱えられるが、このインドカレー界隈に関してはスパイスの香りを楽しむもので、作り立てがベストな状態。

今回は、みなさんに本当のフィッシュカレーをお見せしたくてつくってみた。いつも通り、細かい分量などは本人も知らないので、カサゴやメバルを釣ってこれやってみたい!と思ったなら、各位自分色で作ってほしい。俺のフィッシュカレーってやつだ。それが増えると、俺たちのフィッシュカレーになる。

では、いきますぞ。

目次

南インド風カレーには香り米一択!

フィッシュカレーやフィッシュヘッドカレーは基本的に南インド(スリランカ含む)や東南アジア界隈で食べられる。それぞれ味付けや作り方は異なる。

これらのカレーに共通するのは、米につけて食べるという点だ。

「南船北馬」という言葉が中国にはあるが、アジアでも北側は小麦文化圏、南は米文化圏と決まっている。インドでも北に行くとチャパティやナン(現地の庶民は食べません)、南にいくと大量の米飯と決まっている。

この米、日本のもっちりつやつやしたものではなく、ぱさぱさしているアレだ。

南インドカレーには、このパサついた米のなかでも「香り米」と呼ばれる種類があっている。代表的なものに、インドの「バスマティ」やタイの「ジャスミンライス」がある。

日本でも、このジャスミンライスの香りがするところがある。

本格的なタイ料理はもちろんのこと、タイ古式マッサージ店に入ったときにこの香りがする。まかない飯の香りなのかもしれない。

このジャスミンライスの香りを嗅いだことがない人に説明すると、家のなかで飼っているゴールデンレトリーバーの足の裏のニオイに似ている。

あのニオイはなんとも人をリラックスさせる効果があってだな、え?知らないと。あーそうですか。じゃ、話を進めよう。

バスマティライスが家になかったので、今回はタイのジャスミンライス3号とココナッツパウダーを使う。ココナッツパウダーはココナッツミルクを粉状にしたものでとても便利。

え?これを何に使うかだって。

勝手に立ち上がらないで、着席してよく聞いてほしい。発言するときは挙手してからにしてくれ。こちらもクソリプとかクソコメにいちいち対応してはいられない。

さて、

ココナッツミルクでこのジャスミンライスやバスマティーライスを炊くと香りと旨みが強化されるのだ。これを知っているか知らないかで人生の幸福度が3倍は変わってくるのでよく覚えておきたい。

これがジャスミンライスである。

細長くて艶があり、さらさらしている。炊く前からゴールデンレトリーバーの足の裏の香りがしている。手で握ると、独特の感触が心地よい。

おっと、ちょっと待て、米を洗っちゃだめだ。慌てる乞食は貰いが少ない。と、うちの祖父平田正臣はよく言っていた。

水で洗うとジャスミンライスの大事な香りが落ちてしまうからな。香り米界隈は水で洗わずそのまま炊き込むのが基本なのだ。無洗米の元祖はここにあったのだな。

ジャスミンライス3号に3号分の水を注ぎこむ。と、見せかけて、2号分ぐらいまで水を入れて、残りはココナッツパウダーを湯にとかしたものを流し込む。

粉のまま投入してもよいが成分が一か所に固まるので注意したい。それと、水であらってないので米が固まっているはずなので、かるく匙で全体を混ぜておく。

あとは炊くだけだ。

もし固め炊きができる機能がある炊飯器であれば、固めに炊いたほうがいいぞ。なぜならば炊きあがったときに、まだカレーのルーを吸い込む余力があるからだ。カレーとメシがよく絡む。きわめて重要なポイントだ。

南インドカレーの基本ルーを作ろう

よく、こだわりカレーやにいくと「我が軍では、25,000種類のスパイスを独自に配合しています」みたいな能書きがあったりする。ごめん、25,000はいいすぎた。でも「当社では、36種類のスパイスが」「我が党では、スパイスの黄金比が」みたいなのは、みんなもみたことがあると思う。

あれは、食べる前から客の脳を洗脳するための文言なので無視していい。

人は物事の実態よりも、文字や音できく数字に意識を持っていかれてしまう傾向にある。だからコンサル界隈は数字データを矢鱈に強調したり、無駄に官公庁データから数字をひっぱってこれ見よがしに語るのだ。隠している左手をみせろ。

本当に美味しいカレーはそんなにスパイスはいらない。10種類前後配合した市販のカレー粉で十分だ。

はじめに多めのサラダ油にスパイスの香りを移す。

  • クミン(入れすぎると呪われるので注意)
  • ターメリック(入れすぎると呪われる)
  • カイエンペッパー(要は唐辛子粉。韓国粉唐辛子やパプリカ粉をいれても旨みがでていい)
  • コリアンダーパウダー
  • シナモン
  • ガラムマサラ(香りを増すために「追いガラムマサラ」として後入れしてもいい)
  • 唐辛子(これはアメ横センタービル地下で買った謎唐辛子を乾燥したもの)
  • ニンニク(ペーストが便利。多めにいれてOK)
  • 市販のカレー粉

※一見こだわっている感をみせるためにいろいろやっているので、あれこれそろえる以外に、カレー粉を使うのが一番簡単。

重要なことをいいたい。日和って油を少なくしてはいけない。

小早川秀秋もそうだったが、古今東西、肝心なときに日和った将はろくなことにならない。

西軍なら西軍、東軍なら東軍と決めておかないと、見方からも蝙蝠大将と揶揄されて、家康隊に鉄砲を撃ちかけられ、結局戦後も冷や飯を食わされるという流れになる。わたしは大谷吉継が好きだ。

麻婆豆腐もそうだが、こういったもののうまさや照りを決めるのは油である。大匙3杯ぐらい投入してもいいんじゃないかなと思う。

わたしは実際にはかってないけど、ドバっと入れている。何?減量していると。あーそうですか。それは仕方ないですね。がんばれ。

油にスパイスの香りが移ったら、刻んだ玉ねぎをこれでもかと投入しよう。玉ねぎを先にしっかり炒めてからスパイスをいれる派もいるが、我が家には乳飲み子もいて、なにかと時短で進めたいので、この流れになっている。

要は貴君の好きなようにやれや、まわりばっかみてると出遅れるぞ、徳川秀忠よ、ということである。遅参していいことなんか一つもない。

あ、写真がぶれた。

この工程、要はスパイス油と玉ねぎを混ぜ合わせて炒めるということだ。このとき、玉ねぎをじっくり炒めることが難しいので、以下のアイテムを投入しよう。

  • フライドオニオン(エシャレット)
  • フライドガーリック

特にフライドオニオンを大袋で500gかっておいて投入すれば、関ヶ原でも西軍が大勝利だったんじゃないかと思う。それぐらいこのアイテムは戦力になる。一家に大袋で一袋はほしい。

玉ねぎとスパイス油がなじんだら、以下の材料を投入する。

  • トマト缶
  • カルダモン
  • パクチーの根(乾燥してある)
  • プルーンを刻んだもの(干しブドウもOK)
  • マンゴーチャツネ(いちごジャムでもOK)
  • タマリンドペースト
  • ゴラカ(ガルシニア。むかしスリランカで買ったものなのでフツーはいれなくてもいい)

みているとややこしくなってくるのが正直なところだと思う。

そんなあなたは、カルダモンとパクチーの根以外は、ブルドックソースをいれればOKだ。日本のソース類にはだいたいタマリンドをはじめとしていろいろなハーブ&スパイスが入っているのだ。特にブルドックソースをなめていると痛い目にあう。信頼のブルドックソース。

さらに、ココナッツミルク(今回はパウダーを湯で溶かしたもの)と、ナンプラーをいれる。

フィッシュカレーの塩辛さはノーマル塩で調整してもよいが、より味を深めるためにはナンプラーを投入するに限る。

これで、フィッシュカレーの基本ペーストができあがった。

ここから煮込み工程に入るが、好みでローリエの葉などをいれてもよい。これは三浦半島西岸の崖で摘んだもの。

フィッシュカレーの魚の選定

南インドカレーやマレーシアのフィッシュヘッドカレーあたりに似合う食材は白身の魚だ。カジキ類もよく使われる。

骨を気にしないならば、カサゴやメバルあたりもいい。

というか、今回はカサゴとメバルをカレーにすることが決まっている。

船釣りで水深30m程度のエビメバルやカサゴ釣りをすると、浮き袋問題もあり活かして小型の魚をリリースできなくなる。海面にたたきつけると、潜っていく個体もあるが、だいたいぽかり浮かんでカモメのエサになる。

そんなカモメもどこかで糞をして、その糞から植物プランクトンが湧き、その植物プランクトンを動物性プランクトンが食べ、それをイワシなどが食べて、というサイクルがある。

どんな魚でも、釣り過ぎてしまうと資源問題にもつながる。浮袋にニードルを差し込んでリリースする方法もあるようなので今度はやってみたい。わたしを叩くのであればまず己の行いをしっかりみつめてほしい。

ということで、今回は有難く、最高のカレーに仕込んでいただくことにする。

カサゴやメバルの処理は以下の通り。

  1. ひれをハサミで切る(特にメバルは痛むので注意)
  2. 鱗をとる
  3. エラと内臓と血合いをとる
  4. 熱湯をかけたあとに流水で血合いと鱗をとる

鱗をとったカサゴとメバル。棘を切っておかないと大体怪我をする

熱湯をかけてうろこの残りや血合いをきれいにしよう。特に背と腹と顔の鱗を取り除く

あとは水で流してカサゴとメバルの下処理は完了。煮つけるときもこれでOKだ

いよいよフィッシュカレーを仕上げる

さて、準備はよろしいか。メモはいらないから目に焼きつけてほしい。

いよいよ「本当のフィッシュカレー」の仕上げに移ろう。

美味しんぼのカレー勝負の回で、海原雄山がカレーショップの経営者に詰問するシーンがある。

「本物のカレーとはなんなのだ?」というような禅問答がおこなわれ、店主はその問いに答えられず意気消沈して休業にいたるという話だ。どんな営業妨害だと思う。

それにしても、カレーとは一体なんなのだろう。

わたしは、カレーはインド亜大陸発祥のもので、発汗と体温調整を促すスパイスをつかった煮物であると思う。

汁がおおければスープにもなるし、煮物として米やチャパティやナンと一緒に食べることもできる。これが、周辺にひろまって、その風土に適したカレーが生まれていったわけだ。

日本のカレーは、英国式の小麦粉をつかったものが・・・

と、このくらいにしておいて、フィッシュカレーの仕上げにいこう。時は金なりは真理だ。

先だって仕込んでおいた基本のカレーペーストに下処理したカサゴとメバルと野菜類を入れる。ちなみにこのペーストは冷蔵庫や冷凍庫にいれておけばいつでも最高のフィッシュカレーを作れる。冷凍庫に入れると香りがやられるので、あとでスパイス油を増せばOKだ。

今回の野菜は、ズッキーニと伏見甘長唐辛子のみ。

じつに男らしい。主役は魚だからね。とはいっても、ナスやジャガイモをいれてもうまいぞ。

あとは白ワインなどで水分を補いつつ、中火で炊く。

あれ、なにかが足りないな。

・・・

・・・

・・・

わ!

カシューナッツペースト入れるの忘れた。

ということで、カシューナッツをミキサーでつぶしたものを入れる。このペーストは、本来ルーづくりのときにいれる。

今回は、カルディで仕入れた渋皮つきのカシューナッツをつかった。

渋皮にはポリフェノールが多く、その適度なエグミがアーユルベーダではうんぬんというのはよくわからないけど、ふつーにノーマルカシューナッツでいいと思う。

カシューナッツはやや高いので、あなたの冷蔵庫に眠っているピーナッツバターを入れてもよい。正直買ったものの使い切らないピーナッツバターはどの家庭にもあるはずだ。ナッツを使うのは植物性の脂肪によってカレーの粘りという質感や旨みをましたいだけなのだ。

あとは炊く。ソースを肴にかけて火が通るようにしよう。蓋をするといい。

大量のジャスミンライスは幸せの象徴

そうこうしているうちに、きっと、ジャスミンライスが炊けてくるはずだ。

あなたは蓋をあける。

そして、ささやく。

実にいい香りだ(ゴールデンレトリーバーの足の裏のニオイがするな)

さて、カレーもいい具合に仕上がった。

仕上げに、スパイス油をかける技法もある。

もしやりたい場合は、ごく弱火で植物油にカレー粉の香りをうつしてからかける。マスタードシードやコリアンダーシード&チリあたりの油をかけるといい。

ふはははは。

いい照りをしているじゃないか。

カレーでも麻婆豆腐でもこの油の膜の照りが食欲をそそる。繰り返すが油はたくさん使おう。

玉ねぎのピクルスあたりを添えて、パクチー(コリアンダー)の葉をかざる。

玉ねぎのピクルスは以下の製法で作れる。

  1. 玉ねぎをスライスして塩をふってドリップを捨てる
  2. 酢、砂糖、みりん、唐辛子と一緒に漬け込む
  3. 翌日できあがり。酢の分量によっては1か月は余裕でもつ

さて、あとはかきこむだけだ。

スプーンで食べてもいいし、よくあらった手で食べてもいい。この時、根魚の棘にやられていたり、釣りで手が荒れている場合は泣くので注意したい。

カサゴやメバルやハタ類などはよく出汁がでるが、骨がめんどくさくなるので、手で食べると骨をのけやすい。見た目のインパクトや風味は劣るが、フィレにしてつくってもよいと思う。

味は言わずもがなである。

能書きはいい、見ればわかるというやつである。

もうね、超絶に旨い。

インドで食べた味より旨い。

それもそのはず、自炊というのは、いろいろ味見しながら自分に一番あった味に調整できるし、原価などを考えなくて済むからね。

旨さ、酸味、まろやか、辛。辛。辛。辛。辛。

辛。

適当につくっていたら、本気の辛さになっていた。

こうしたときに、牛乳やラッシーを飲むと辛さがまろやかになる。

そうそう、ラッシーは簡単につくれる。

500gのブルガリアヨーグルトの半量に、牛乳か水を同量くわえて、塩少々&砂糖をいれて、あとはプロテインシェイカーかブルガリアヨーグルトの容器のなかで菜箸で撹拌すればいい。

翌朝。

胃弱のわたしには、あまりにも辛かったので、白魔法ココナッツミルクを投入。

カサゴとメバルの身はほぐしておいたら、フィッシュ・コルマカリーみたいなものになった。

これはこれでまろやかでうまい。コリアンダーパウダーをかけて食べるとさわやかだ。この夏つくってみてほしい。

※よく考えると、魚以外に動物性の食品が一切はいってないことに気づいた。

平田(@tsuyoshi_hirata

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