魚は洗わない方がよい?衛生面・ニオイ対策を科学的観点から考える

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まな板の上のヒラメ
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丸のままの魚を釣ったり買ったりして持ち帰る際、調理前に全体を洗っていますか?

たとえば「切り身」状態の魚は洗う必要があるんでしょうか?

船釣りをしていて、船宿から魚を持ち帰る際に魚を洗っていると、「魚を真水で洗ったら悪くなっちまう」「魚は真水を嫌う」というようなことを船宿関係者から指摘されたりします。

魚は洗ったほうがよいのでしょうか?洗わない方がよいのでしょうか?

この記事では、魚を洗う必要性の有無について解説します。

目次

魚は洗うべきなのか?

はじめに結論をお伝えすると、魚は状況にもよりますが、調理前に一度は流水(水道水)で洗った方がよいです。

理由を解説していきます。

魚を洗った方が良い理由(衛生面)

タイラバで釣ったワラサ

鮮度が高い魚にも食中毒の罠がひそんでいる!?

釣ったばかりや市場直送など、極めて鮮度が高い魚を料理するとします。

料理する立場としては、「鮮度が高いから安心」と思って、油断しがちになりませんか?

実は、そこに罠がひそんでいます。

まず魚は、10℃以下保冷しながら家に持ち帰った後、まな板の上で料理するまえに流水でさっと全体を洗い流しましょう。

なぜか?

実は、魚の体表に「腸炎ビブリオ」がいる可能性があるからです。

「腸炎ビブリオ」は、主に海水や海泥中に生息する細菌です。水温が15℃以上になると活発になります。汚染された魚介類を生食することで、感染して腸炎ビブリオ食中毒を発症します。

潜伏期間は、短い場合で2、3時間。激しい腹痛や下痢といった症状があります。また、発熱に嘔吐を起こすこともあります。

特に、夏場を中心とした高水温期は腸炎ビブリオが細胞分裂しやすいといえます。腸炎ビブリオは増殖(細胞分裂)が速く、3%食塩濃度や栄養面などの条件がそろえば、8~10分 ごとに分裂します。

そのため、釣りたての魚とはいえ、釣ったあとの処置や持ち運び方などによっては中毒に至る可能性があるわけです。真夏に釣った魚をバケツに入れ続けるというのは、かなり危険な行為です。

腸炎ビブリオは好塩性の菌であるため、真水(水道水)では繁殖しません。そのため、持ち帰った魚の体表を水道水で洗い流してから調理・保冷などするようにしたほうがよいと言えます。

<腸炎ビブリオ対策の参考情報>

魚介類は、調理前に流水(水道水)で良く洗って菌を洗い流すこと。
魚介類に使った調理器具類は良く洗浄・消毒して二次汚染を防ぐこと。
魚介類を調理したままのまな板で、野菜などを切らない(まな板を使い分ける)こと。
夏季の魚介類の生食は十分注意し、わずかな時間でも冷蔵庫でできれば4℃以下に保存すること。
(腸炎ビブリオは低温では増殖できない。また、低温で腸炎ビブリオの増殖は抑えられるものの、凍結しても短期間では死滅しない。)
冷凍食品を解凍する際は専用の解凍庫や冷蔵庫内で行なうこと。
加熱調理する場合は中心部まで充分に加熱すること(60℃、10分以上)。

出典:東京都福祉保健局

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魚を洗った方が良い理由(ニオイ対策の観点)

平塚沖で釣ったイシダイの切り身

状態の良く無い切り身

スーパーなどで切り身にされた魚を買う場合、調理環境と鮮度状況がよければ、基本的に洗う必要はありません

一方、消費期限ぎりぎりの魚や、ニオイやぬめりを感じる切り身を料理する場合は、一度全体を流水で数秒洗い流すことをオススメします

鮮度が悪くなってしまった魚の表面には、臭みの成分やヌメリが付着しています。魚が持つ臭みの成分の一つとして「トリメチルアミン」というアルカリ性の水溶性物質があります。

魚の組織にあるトリメチルアミンオキシドという物質が、魚の死後、付着した細菌によって分解されることで生成されます。生きている魚がそれほど臭くないのは、免疫システムによって細菌の発生が抑制されているからです。

魚の臭み成分であるトリメチルアミンは水に溶けるため、これらを洗い流すことで、調理後の食味をあげることができるわけです。

切り身の場合は、洗いすぎると筋肉部分から水を吸い込みすぎてしまい、身がグズグズになり崩れやすくなってしまいます。さっと流水で数秒だけ洗って、すぐにキッチンペーパーや清潔な布巾で水分をぬぐいましょう。

釣った魚を下処理して、棒身やサクや切り身にして保冷したあと、状態が悪くなってしまった場合も同様です。

多少鮮度が下がった場合でも、調理前に「流水でさっと流す」という下処理を行うだけで、臭みが軽減し、状態の悪い切り身がよみがえります。

さらに状態が悪い切り身や魚の場合、塩をふって10分ほどおいてから出てきたドリップ(体液)ごと流水でさっと洗い流すのもオススメです。

魚の臭い成分、トリメチルアミンはアルカリ性のため酸によって分解できます。そのため、酸性の調味料(酢・レモン汁)をつかうと臭みを軽減できます。味付けにポン酢を使うのも一つです。

煮付けなどの場合、日本酒やみりんをつかうことで臭みを分解することもできます。ムニエルの場合は白ワインやレモンを積極的に使うとよいでしょう。

まな板はよく洗う、用途ごとに使い分ける

まな板の上のヒラメ

魚を洗う理由として、腸炎ビブリオの存在をあげました。

衛生面としては、調理をすすめる前に一度流水で魚の全体を洗い流し、鱗などもしっかりとってしまうのがベストです。

一方、洗い場・まな板などへ飛び散った水滴や、手指に腸炎ビブリオ菌がついている可能性はあります。鱗を落とす際に、鱗とヌメリが飛散することもあります。

下処理を行う際は、周囲に気を付けて、まな板も都度きれいに洗いましょう。洗う際は、お湯でなく、まず水で洗い流すと血液が凝固しません。

余裕があれば、下処理用のまな板と、仕上げ用のまな板をつかいわけるのも安全に調理をすすめるコツです。

まとめ

今回は、釣ったり買ってきた魚を「水で洗うべきか?」について解説しました。

「衛生面・ニオイ対策」という2つの観点で、魚は真水で洗うことをオススメします。

ただし、素材の条件次第なのと、タイミングによりけりです。

【洗った方がよい場合】

  • 丸のままの魚
  • 鮮度が悪くなりかけている棒身、サク、切り身

魚は筋肉部分の断面が広くなるほど吸水しやすくなります。くれぐれも洗いすぎには注意しましょう。

<参考>

関連アイテム

▼まな板は一つではなく、下処理用と仕上げ用で分けるのがおすすめ!

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