わずか1mの手ばね竿で大鯛を釣る~内房「竹岡式」伝統釣法の世界

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竹岡沖
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ORETSURIをご覧のみなさん、こんにちは。週末に船で東京湾や外房に出るサラリーマン・アングラー釣人割烹です。

竿の手もとに糸巻きのついた『手ばね竿』と聞いて、何を連想しますか?

ワカサギ釣りにハゼ釣り……。

いやいや、それだけではありません。今回は手ばね竿でマダイを狙う内房の伝統釣法を紹介します。

目次

『竹岡式シャクリマダイ』は魚と素手で直接対決する釣り

千葉・内房の富津岬より南の上総湊(かずさみなと)や竹岡では、むかしから伝統釣法が盛んでした。今も残っていて『竹岡式シャクリマダイ』などと呼ばれています。

生きエビか冷凍エビのテンヤ仕掛けを使うのですが、竿で合わせて針にかけたあとは、えっちら、おっちら、ナイロンの道糸を両手でたぐるわけです。

ざっくり言えば、この10年ほどで全国に広がった外房・大原発祥『ひとつテンヤマダイ』の〝手ばね竿バージョン〟です。

……いや、逆ですね。『竹岡式』をリールやロッド、PEラインなどの最新技術に置き換えたものが『ひとつテンヤマダイ』なのでした。

筆者が『竹岡式』を初めて体験したのは3年前。これまでに6回釣行し、3回で本命を計6枚釣りました。

本命空振りのときはヒローとコンパイで陸に上がって崩れ落ちるわけですが、多彩な魚が傷心を慰めてくれます。クロダイ、ホウボウ、マゴチ、アイナメ、カサゴ、ハタ、イトヒキダイ、カワハギ、ウマヅラハギ、スズキ、サバフグ、トラフグなどなどなど。本命が来ても来なくても楽しい釣行です。

手ばね竿は飾りのない実戦主義

竹岡式の手ばね竿は漁師たちが1本1本手作りしたものです。

竹製、長さ約1mで、竿というより腕の延長という表現がしっくりきます。

要はしゃくってエサを動かし、合わせで針掛かりさせる道具です。いちおう手作りの和竿の部類に入るでしょう。船宿が無料で貸してくれます。

職人が丹精込めて作った一般の和竿は、実際に使っても素晴らしいはずですが、高級なものは実用の釣り道具というより工芸品や美術品です。私財を惜しげもなく注ぎ込む道楽の世界で、筆者のような一般サラリーマンは近づけません。

しかし、竹岡式の竿は道楽とは無縁です。その代わり、使えば分かりますが、実戦で威力を発揮します。

針掛かりしたあとに大鯛が見せる反転攻勢の恐ろしいパワーに対し、竿が硬すぎるとハリスが切れるし、やわらかすぎると硬い口に針がしっかり刺さらない。強すぎず、弱すぎない絶妙なバランスを保っています。

竹岡式の竿(?)を手に入れる

この竹岡式の竿、筆者は船宿で借りるしかないと思っていました。ところが先日、なんと釣具店に中古品の一つとして並んでおり、まんまと手に入れたのでした。

みなさん、値段が知りたいでしょ?実は筆者が聞いてほしいだけなのだが。

はい。3,000円です。消費税別。

うれしすぎて、思わず笑っちゃいましたよ。

ご覧ください。針金を丸めたような安っぽいガイド。

それを固定する糸の巻きはデコボコ。塗りはムラだらけ。しかも、ガイドに赤い塗料が飛び散っているんです。これは使う前に、ていねいに削り落とします。何もかも大ざっぱで、飾り気なしの実用本位。漁具そのもので、かえって工芸竿にはない迫力を感じます。

この竿は、きっと内房の漁師が作ったに違いない。

もしや実際に使ったかも……。

・・・

その漁師は加齢と長年の陽焼けで顔がしわくちゃ、目鼻立ちも定かではないが、そのたたずまいに古びた手ばね竿が似つかわしい。それを利き手でゆっくりとしゃくっている。

やおら、雷に打たれたように上体を反らし、老人は竿を強烈に振り上げた。

そう、年知らずの巨鯛にとどめを刺す強烈な合わせをくれたのだ。

漁師は竿を横に投げ、糸をがっちり握った。長い駆け引きが始まる……。

・・・

手に入れた竿を眺めていると、そんな光景が浮かんできます。

「ぜんぜん浮かばねーよ」「そりゃ、おめーだけだろ」(外野)

竿に製作者の銘などもなく、いつ、誰が作ったものか不明。そもそも竹岡一帯のしゃくり竿だという保証はなく、伝統釣法が残る別の土地の竿かもしれません。とはいえ、素人目には、これまで借りていた船宿の竿と、なんら違いはないように感じたのです。

ゆえに、筆者はこれを竹岡式と断定し、内房の漁師たちに敬意を表しながら大切に使おうと心に決めました。

竹岡式釣法の道糸、仕掛け

竹岡式の釣法で使う道糸は赤茶色のナイロンラージです。

この糸はパリパリとした独特の感触でからみにくい一方、特有の伸びがあり、魚のパワーを吸収してくれます。

タナの深さはヒロ(尋)で測ります。筆者が毎回お世話になっている上総湊の角ヶ谷丸では1ヒロが約1.5m。船宿によっては約1.6mとするところもあります。

道糸はナイロンラージ7号で、5ヒロ(7.5m)ごとに異なる色の目印がついています。手ばね竿の手もとについた糸巻きの幅は18cm。4回巻くと、

(18cm×2)×4=144cmで、約1ヒロ。

船宿の竿を使うのが基本で、船長が

「ピンクから6回巻きで~す」

「黄色ちょうどでお願いしま~す」

「青から7回出しでお願いしま~す」

などと狙うタナを指示します。なので、自前のタックルを使うのでない限り、ややこしいヒロとメートルの換算は不要です。

道糸の先に中オモリ8号をつけ、その先は5号ハリス3ヒロ(4.5m)。さらにヨリモドシをつけて4号ハリス2ヒロ(3m)でテンヤ仕掛けをつけます。

エサをつけて仕掛けを投入したら、竿をゆっくり大きくしゃくって誘いましょう。

魚がかかったあとの道糸のたぐり方

何か魚がかかったら、手ばね竿で合わせたあと道糸をつかんで竿を横に置き、両手でたぐります。

たぐり寄せた糸は、足もとに置いた大きなたらいに入れていきます。うまくやらないとたらいの中で手前マツリし、仕掛けが再投入できなくなるのです。最初のうちはマツることもありますが、すぐに慣れて絡まなくなります。

マダイなどの大物がかかったときは、竿や道糸のさばき方に注意が必要です。

▼以下は右利きで右手に竿を持つ想定です。

合わせたあと、右手で竿を振り上げつつ船べりから上半身を乗り出し、左手で水面近くの道糸をつかんで、左斜め上に大きく引っ張り上げる。

同時に右手の竿を横に置き、その右手で水面近くの道糸をつかんで、今度は右斜め上に引く。再び左手でつかみ、左斜め上へ。道糸をたぐるこの連続動作を一瞬のうちにやらなければなりません。それを後ろから見たらスピードスケーターのロケット・スタートに見えるかも。

この動作には理由があります。大物が針掛かりした場合、引っ張る力に合わせて道糸を出さないとハリスが切れてしまうんです。リールならドラグを緩めれば糸が出ていきます。手ばね竿は、これができない。最初にある程度の糸をたぐっておかないと、糸の送り出しができないのです。

合わせた直後のごくわずかな時間でたぐれるのは、ベテランでもせいぜい3回ほどでしょうか。たぐった量が少なかったり、引きが強くたぐれなかったりすると、竿を持って耐えるしかない。限界を超えればハリス切れで万事休す。

こんな事態に備えて、長くて丈夫なロープやタコ糸をあらかじめ竿尻に結んでおきます。引きが強ければ手ばね竿それ自体を海に入れてしまい、ロープやタコ糸でやり取りができます。まあ、そこまでの大物は、めったにお目にかかれませんが。

実際に竹岡式釣法で真鯛を釣ったときの話

昨年8月某日の明け方、上総湊の角ヶ谷丸で東京湾へ出ました。

今は亡き先代の角ヶ谷新平船長は内房で『しゃくりの神様』と呼ばれた伝説の人物で、手ばね竿作りの名人でもあったそうです。今は息子さんの角ヶ谷正志船長が小さな船を巧みに操ります。

その日の釣り客は筆者と会社の先輩の2人だけ。

この先輩、筆者より経験も技量も勝っています。船長も操舵しながら竿を出しています。

若潮で食いがあまり期待できないなか、昼前に1kgのマダイを上げ、本命を拝めてホッとしていたときでした。浜金谷沖の深さ30ヒロ(45m)。大きくしゃくって、テンヤが静かに落ちていくのをイメージしていると。

モゾッ・・・。

竿先に微妙な違和感があったのです。

なんだろう、エサ取りか……。

聞き合わせのつもりでゆっくりと竿を上げると

グワーッ!!

いきなり竿を握る右手がはじかれたように下へ戻され、ものすごい力で竿が曲がりました。

「うわっ」

心や体の構えができておらず、道糸を左手で1回だけ中途半端にたぐるのが精いっぱい。

送り出せる道糸に余裕はない。しかも、竿尻にロープをつけていません。道糸を握りしめ、糸を出さないように耐えていると、先輩が「ハリス切れるぞっ!」と叫び、駆け寄って竿尻に長いロープをつけてくれました。

その直後、魚が方向を変えたのか、糸がわずかに軽くなってたぐることができ、竿を海へ投じる「未体験ゾーン」突入は避けられました。

それにしても容易に上がってきません。

一進一退の攻防。

ゆっくりと少しばかりたぐったあと、それ以上の糸を出し、再びたぐり直す。

ググーッと強烈な引きがじかに腕に伝わり、道糸が素手に食い込む。もう無我夢中。

「引きが強ければ、どんどん糸を出しましょう」船長の助言です。

糸の出し入れがどれほど続いたか……。たぶん15分は超えていないでしょう。一般にマダイはたぐり寄せてくる途中、減圧で浮き袋が膨らむため急速に弱ります。

いよいよ取り込み。船長がやってきて、横で大きなタモ(手網)を構えます。中オモリが現れました。それを口に加え、さらにたぐる(中おもりを「たらい」に入れると道糸が絡んでしまう)。残りは仕掛け分の5ヒロ(7.5m)です。

おおおっ!

水面下に見えた赤い魚体は、まぎれもなく大本命。

観念したかのように、ゆら〜っと水面に浮いてきたところを、船長が瞬速でタモに入れる。

「だんなさん、おめでとうございます!」

赤く、背中がやや黒ずんだ魚体をタモごとドサッと渡されて感無量!

しばらく「なんも言えねぇ」状態(北島康介@北京五輪)でした。

孫針は口の中に浅くひっかかる一方、テンヤの親針が下あごの外側から中へ深々と刺さっていました。ラッキー。これなら決してバレないでしょう。

宿に戻って計測すると3.1kg、63cm。マダイの自己記録を更新しました。

この日の釣果は他にカサゴ、イトヨリダイ、サバフグ(無毒!)、ホウボウ、ハタ、カワハギなど。

来月、実戦配備へ

リールやロッドを使わず、腕一本で魚とやり取りをする「竹岡式シャクリマダイ」のイメージは伝わったでしょうか。

警告しておくと、この「竹岡式」で一度でもマダイをしとめると、もう後戻りはできませんよ。

糸を介してマダイとじかに駆け引きするスリル。

道糸を握る手から腕、全身にダイレクトに伝わってくる魚のパワー。

その面白さはちょっと言いようがないんです。病みつきになります。夢にも出てきます。この道ひと筋何十年という釣り師が少なくないと言われていますが、さもありなん。

手に入れた竿は、スズキやアオリイカなどにも使えそうです。

でも、まずはマダイでしょう。

いよいよマダイは産卵のため浅場へ乗っ込み、荒ぶる季節がやってきます。5月に上総湊へ行くつもりです。その様子は、またお伝えします。

寄稿者

釣人割烹

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