東京湾タチウオ異変!?真冬なのに超浅場で良型入れ食いという状況を考察

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東京湾の日暮れ
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ORETSURIをご覧のみなさん、こんにちは。

サラリーマン・アングラーの釣人割烹です。

正月は殺生(釣り)を控え、のんびりすごしました。5日に家族で東京湾アクアラインの「海ほたる」に行くと、湾に沈む夕日と赤富士が美しく、思わずみとれました。きょうは、その東京湾について書きます。

昨年は釣りの締めくくりとして、12月30日に会社の先輩とタチウオ船へいきました。結果は指4本級が14本。竿頭は23本。筆者としてはまずまずの出来です。

指4本クラスだと5、6本あれば正月の家族分はまかなえます。とても家族では食べ切れないので、近所に配ったり、大晦日に親族を集めて大盤振る舞いしました。

しかし、釣行結果に満足する半面、不安に襲われました。狙ったポイントの水深は20m。これは初夏に乗っこんでくる夏タチと同じような超浅場です。冬のタチウオは三浦半島の観音崎沖や走水沖の水深80~100mで、電動リールを駆使する釣り物ではなかったか?

胸の奥でモヤモヤしていたとき、ORETSURIで「東京湾の水温高め」というタイムリーな記事が出ました。東京湾がおかしい。昨年末のタチウオでまさに実感したことでした。

目次

第1投でいきなり大型のタチウオかかる!

そもそも昨年の釣り納めは、当初の予定では12月21日にあったリストランテORETSURIの忘年カワハギ……のはずでしたが、わずか2枚と大苦戦しました。

これで2019年は終われんなぁ。そう思い悩んでいた年の瀬も押し詰まった29日、会社の先輩からショートメールがきました。

「30日にタチウオ」

たったこれだけ。この先輩のメッセージ、いつもショートすぎる。それも前日に……。

しかし偶然、29日に浅場でタチウオを爆釣したという友だちとSNS上でやり取りし、その直後に先輩のメッセージが届いたという。きっとこれは「タチウオで釣り納めをせよ」という神のお告げなのでしょう。

「了解。行きます。どこですか?」

と先輩に返信しました。

「川崎の中山丸」

かくしてカワハギの恨みをタチウオで晴らすべく、30日未明に川崎へ向かいました。

午前6時集合で出船は6時45分。船宿はオモリを40号、60号、80号の3種類用意せよという。深場狙いの可能性も考えて電動リールと手巻きリールを準備していました。やはり冬に浅場でタチウオを狙う、というのはどうもピンとこない。

船は川崎を出て、海に突き出た羽田空港D滑走路を左に見ながら東進。アクアラインの換気塔(通称「風の塔」)の北東数kmのポイント(いわゆる「湾奥」)に到着。浅場狙い確定です。オモリは40号で、手巻きリールを選択しました。

「始めてくださ~い。(水深)20mで(タチウオは)底から5~6mくらいね」

タックルは、親しい和竿師が手ばね竿をタチウオ用にリメイクした2m先調子に、アブガルシアの両軸リール「レッドマックス船」。道糸PE1.5号の先に先糸フロロカーボン6号を結び、自作天秤をぶら下げます。ハリスはフロロ5号2mの1本針。針は長年愛用するがまかつ「ケン付タチウオ」2/0号。チモトが輪っかになった管付き針です。

サバの切り身を縫い刺しにして第1投。なにしろ20mなので、あっという間に着底。仕掛け分だけ巻き上げ、基本のしゃくり……おっと、ゴゴンとすぐにアタリ。竿が引き込まれました。

浅場でガンガン釣れた大型の冬タチ

上がってきたのは筆者の太い指でも4本ある良型。回りでも次々にデカいのが上がっています。

やっぱり変だぞ、東京湾

一般にタチウオの群れは「神出鬼没」といわれ、昨日釣れた場所にきょうは影も形もないというのが当たり前。

東京湾のタチウオ船は緊密に連絡を取り合いながら、まず群れを探します。ある船が活性の高い魚群を見つけると他船が駆けつけて船団を形成。群れに合わせて船団も動いていきます。密集しすぎて他船の客とオマツリになることすらあります。

今回、中山丸が優秀だと思ったのは、群れを見つけて開始の合図を出したとき、他船が全くいなかったこと。先乗りしたぶん釣果は膨らみます。筆者の釣り座は左舷の胴の間で、無線でのやり取りが聞こえます。「こっちはけっこう上がってるよ~」と船長がさかんに発信し、みるみる船が集まってきました。

無線交信によると、タチウオ船団は筆者のいる湾奥と、やはり浅場の横浜・本牧沖の二手に分かれているようです。

この日は中潮で、満潮午前8時20分ごろ、干潮は午後1時ごろ。満潮前後は活性すこぶる高く、底近くでしゃくりを繰り返すと、どんどん針に乗ってきます。初めて使うタチウオ用の改良和竿はテーパーのきついグラスソリッドの穂先が適度に固く、胴も巻き糸を重ねて強化され、粘りと強さがありました。

4本ばかり上げたあと、今までとは違う「ズドン」という大きな手応え。竿先が水面へ引き込まれ、リールが巻けません。強化しているとはいえ、もとは手ばね竿なので魚のパワーを慎重にいなします。リールを巻けるときに少しずつゴリゴリ……上がってきたのは指4本を超える大タチでした。

こりゃ楽しいぞ。なにしろ浅場で手返しがよい。そのうえ、夏タチのように刺身にも塩焼きにも中途半端なネクタイサイズは混じらない。夏と冬の「いいとこ取り」です。

今回の釣果。冬のタチウオは脂がのって絶品だった

午前10時をすぎ、干潮へ向かう時間帯に入るとアタリが遠のきました。この時点で10本とツ抜けし、おみやげは十分。沖上がりの午後2時までに4本を追加しました。

船上、筆者の左隣で快調に釣っていた先輩がふと口を開くと、「東京湾奥でスカイツリー見ながら冬タチ釣るって、やっぱりへんだよなぁ」

将来的には東京湾が熱帯の海になる?

確かに、へんです。この先輩と2017年12月に冬タチを狙ったときは、横須賀・久里浜の平作丸で、観音崎沖100mくらいの深場を攻めました。

東京湾の水温が上がって、魚が深場へ落ちない。

2018年末もそうでしたが、2019年末はその傾向がよりはっきりしています。少し前にいった行徳港の落ちハゼも真夏のような食いを見せたし、落ちギスを狙ったときも木更津沖の浅場で盛んに釣れました。年を越えても湾内で青物がまだまだ釣れているようです。一方、知り合いのカワハギ師は、魚が落ちず深場で固まらないため、数が伸びないと嘆いていたり。

新年1月4日、東京新聞に興味深い記事が載りました。千葉・館山の波左間(はさま)漁港から300m沖合の海底に、暖かい海で繁殖するサンゴ「エンタクミドリイシ」が広がっている、というのです。

このサンゴ、もともと九州の西に生息する種ですが、近年、海水温が上昇するにつれ北へ広がっています。記事によると館山沖で初めて確認されたのは2007年11月。当時は二つだけで直径20cm未満。09年に水温低下で死んだことが確認されました。ところが、10年後の現在は多数繁殖し、大きいものは直径85cmを超えているといいます。

サンゴが増える一方で、水温上昇により昆布などの海藻が育たなくなり、少なくなっていると記事は伝えています。館山で毎日海に潜るというダイビングショップ経営者によると、ここ5、6年でカジメ(海藻の一種)が完全になくなり、カジメを餌とするアワビなども激減したと証言しています。

参考:東京新聞(<地球異変 すぐそばの温暖化> 東京湾 南海の光景)

海苔にも大打撃、台風も凶暴化

東京湾の水温上昇による異変は、それだけではありません。

昨年5月9日の夕刊紙「日刊ゲンダイ」は、千葉県沿岸の江戸前海苔養殖への深刻な影響を伝えています。海苔は秋から翌春にかけて育てて収穫します。千葉県漁業協同組合連合会(千葉漁連)によると昨シーズン(2018~19年)の生産量は1億4000万枚で、前シーズンより2000万枚減り、過去最低を更新。ピーク時の6億枚から4分の1に激減したそうです。

この原因について漁連担当者はこう証言しています。「冬場の水温が1~2度高かった。高温は海苔の生育に影響します。加えて本来、冬になると暖かい海へ逃泳するクロダイやアイゴなどの魚が東京湾にとどまってしまった。エサとなるヒジキやワカメが減っていることもあって、クロダイなどが養殖海苔をエサとして食べたのではないか」

参考:日刊ゲンダイ(江戸前海苔はなぜ激減したのか 養殖が史上最悪の大凶作に)

それ以上に心配なのは台風です。

昨年の台風15号、19号は強風や豪雨で各地に深い爪痕を残しました。とりわけ、房総半島で電柱や鉄塔をなぎ倒し、長期の停電を引き起こした9月9日の台風15号は、これまでの常識を覆すものでした。

台風は海水温の高い熱帯の海で誕生します。上昇気流で海の熱を吸い上げ発達し、地球の自転と偏西風の影響で北東へ進み、その一部が日本を襲うわけです。しかし、日本付近は熱帯より海水温も上空の気温も低く、エネルギーを失って温帯低気圧に変わります。

ところが、台風15号は東京湾に近づくにつれてさらに発達し、湾に達した時点で中心気圧955hp(ヘクトパスカル)、最大風速45mと関東を襲った台風としては過去最強でした。

NHKによると、台風に詳しい名古屋大の坪木和久教授は関東に接近してなお発達を続ける台風に驚いたと話しています。

「通常、日本に近づきますと台風は弱まりますが、この台風は上陸直前に最も強い勢力になった。この点が大きな特徴す」。坪木教授によると、15号が進んだコースの海水温は29度ほどで、平年に比べ2度ほど高くなっていたといいます。

参考:NHKニュースウェブ(強力化する台風 列島上陸リスク増大)

各種の報道や気象予報士たちのブログなどを参考に、台風15号の進路を筆者が地図に落としてみました。

こんなのが毎年来られては、たまらんぞ。

釣りは、自然と一体になってたのしむ趣味。肌感覚で自然の変化を感じることができます。

正月、脂たっぷりの最高級タチウオウをおいしくいただきながら、より身近に牙をむき始めた地球温暖化と、東京湾の行く末を案じる次第です。

今年もよろしくお願いします。

寄稿者

釣人割烹

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冬場のタチウオは大型が主体になるため2/0~3/0のフックを選ぶと飲まれてハリス切れになることを防ぐことができます。餌がずれにくい、がまかつ製品が人気。ハリスは6~8号。7号がオススメ。

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