砂浜を歩いていると、貝殻にまじってツノ状の物体を発見することがある。
なんだろう。ちょうど象牙が小型化したような。クジラの骨でも流れ着いたのか・・・。じつはこれ、貝殻なのだ。その名の通り「ツノガイ」って貝がいるんですよ。
今回はツノガイの貝殻をひろって遊んでみたという話です。
リア充をかき分け、たも網を装備して逗子海岸に前進
某日の逗子海岸。ウインドサーフィンのイベントがあったようでこのとおりの風景。
想像してみてください。
このなかを、単騎でたも網とダイワの水汲みバケツを装備して進軍するところを。
だれも俺に話しかけるなよ。
いいか、だれも俺に話しかけるなよ。
的なオーラを漂わせていたかはわからんのですが、無事だれにも話しかけられず渚へ。
実はこの日も、フジノハナガイという波打ち際に生息するふしぎな貝をつかまえにきたんです。
が、潮が満ちすぎてブレイクラインを超えているからなのか、台風で全部砂に埋め立てられたのかご不在の様子。
所在なげに、波打ち際をさまよっていると、チラホラ見つかるのが小型の象牙のような白い物体。
これが前述の通り、ツノガイという貝の貝殻なのです。
実はツノガイ自体は詳しく知らず、てにとって、なんとなく「ツノガイ」という貝がいたような、見た目もそのままだしなーと、iPhoneでググってみたらこれがドンピシャでツノガイだったという。
ツノガイは、掘足綱(くっそくこう)というカテゴリに属している貝で、水牛の角のような形や色をしています。この殻の両端が開いていて、広い方が頭部、狭い方が尻であると。
ふしぎだなー。
おめー、相当尖ってんなー。
このツノガイ氏の貝殻なんですが意外に強度が高く折ろうとしても簡単にはポキっとしません。
フジノハナガイもいないし、せっかくのフィールドワークタイムだし、このツノガイの貝殻を採取することにしました。なんとなくですが、たくさんとって貝殻でアートができそうな気がしたのです。
こういう波打ち際を進軍。
波で脛ぐらいまでが押されるので、体勢を維持するだけでも筋力を鍛えられる一挙両得な遊び。
波が寄せて。
かえっていく。
・・・
と。
おわかりになるだろうか。
ツノガイが波に流されてくるのである。
これを引き波にもっていかれるまえに、素早くピックするという動作。一身上の都合により、たも網などを装備しているので、空いているのは右手のみ。
波間の白い泡がきえた瞬間にツノガイの所在をサーチ、すかさずかがんで、右手を素早く突き出してキープするという映画「少林寺」とかに出てきそうな修行。
この地道な努力が、いざ悪の勢力と戦うときに役立つのだ。正拳突きがいつのまにか神速になったりしてね。
同じような波間でも、潮や地形の関係上、ツノガイがたまるところがある模様。そんなところでは一気に3、4体のツノガイの殻が漂ってくるんですが、これが妙に興奮してくるんです。
右手だけで、潮が引く一瞬に、素早く3つまでゲットすることに成功。
最初は1個しかとれなかったのに、人間やればできるもんですな。通常の3倍ってやつ。と、鼻息あらく不審な動きをしていたら、ちょっとイケイケ系っぽい茶髪の少年がかけよってきて、こういうんです。
少年「ヤドカリいる?網で、なにとってんの?」
わたし「いらねーし。いやさ、網はつかってないんだけど、ツノガイをとってるんだわ」
少年「え、なにそれ。それとってどうすんの?」
わたし「(おま、)いやさ、これなんか不思議じゃない?ほら、そこにいるでしょ」
少年「ふーん。あ、いた。ちょっと網かして」
わたし「いや、その網はここで使うと付け根が折れるから手でとるんだよ。これがツノガイ捕りの醍醐味だよ。ふははは」
と、なんだか最後のほうはツノガイとりの面白さを知り尽くしたツノガイマスターみたいなことをいってしまいました。さっきまでツノガイってしらなかったんだけど。
来た道を引き返すと、そこにもツノガイがたくさん。
だれも気にしてないけど、こんなにおもしろい貝が足元にたくさんいるんだぜ。おいそこの若いの、BBQの残りの炭は砂のなかにうめるなよ。炭はずっと残るんだからさ。
ざばーん。
いつのまにか、水陸両用モビルスーツ。
途中でサンダルをぬいで、素足になったところ、砂が滑らかなエリアは気持ちよいこと。心地よいこと。
と。
砂地をみながら歩いていたら、今、貝がもぐったぞ。
たしかに貝がもぐったのを俺はみた。
・・・
すかさず、手でほってみたら、ドンガバチョ。
もともとの本命、フジノハナガイでした。。。
たしかに生きてる。
が、周りをチェックしてみても仲間がいない状態。
たった1名だけ居残ってしまったのだろうか、台風で仲間全員が大量の砂に埋められたなかで生き残った最後の戦士なのか。まー、一匹なのでリリースです。ばいなら。産めよ育てよ。
次回はこの波打ち際のブレイクができる前の潮位でフジノハナガイを探してみよ。それでもいなかったらあきらめよう。
どんどんツノガイの殻が水汲みバケツに集まる。
さきほどの茶髪少年も加勢してくれて、ツノガイの殻をとってはわたしのところに走りもってきてくれる。将来君は若禿げになりやすいかもしれないけど、このように人のために動くという心持は大切にしてほしい。
持ち帰ったツノガイの殻で遊ぼう
海街に住んでいると帰りは早く、帰宅してシャワーがてら戦利品のツノガイたちも洗っておきました。
ただし、砂や小石を噛んでいるものもいたり。この小石はちょうどよくがっちりハマっているので、殻を壊さないことにはとれなそう。
そのまま干しておいたら、細かい砂はとれました。
この日雨だったんですが、ちょっと暇でして、ツノガイアートにしけこむことに。
ツノガイでつくる、サイの角。
もっとデカイ、サイの角。
誰オマ。
ちょっとよくわからないツノガイ人間。
・・・
ここで芸術の秋なのでしょう。
ちょっとしたインスピレーションがふってきて、不思議の国のアリスのチェシャ猫を作ることに。
・・・
・・・
・・・
ツノガイでつくるチェシャ猫がこちらです。
眼玉だけどうしてもツノガイの細さだと再現できず、OKストアで買ったものの食べなくなったバターピーナッツを投入しました。
我ながらよくできている気がして、妻にメッセンジャーで送り付けてみたりしました。
子供と遊ぶときも、口に入れない年齢まで育っていればこのツノガイの殻を採取して絵をつくって遊ぶというのはおもしろいんじゃないかなと思います。
とる喜びと、描く喜び。
描いた絵をどちらが似ているかと競ったり。
そういう暇なことができる平和というのはいいなーと思いながら夜が更けていきました・・・。
このツノガイは造形自体がふしぎなので、どこかひかれるひともいると思うんですが、採取したい場合は湘南あたりの砂浜だとよく取れます。台風のあとなども、きっとよいんでしょうね。
平田(@tsuyoshi_hirata)