※記事後半に持続的なウツボ釣りについて(資源の管理)を追記しました。メディアをみて「面白そうだな、ウツボを釣ろう」と思っている方は一読ください(20230925)
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初心者でも大物を釣りたい。
そんなときに淡水であれば、もっとも身近な大物は鯉。
一方、海であればウツボがいます。
メディアによって「海のギャング」という不名誉なあだ名をつけられ、忌み嫌われるウツボも、実は狙ってみると面白いのです。
また食べても美味。
今回はウツボの釣り方とタックル、食べ方について詳しく解説します。
ウツボについて
ウツボはウナギ目ウツボ亜目ウツボ科に分類されている魚の総称です。
地域によって「キダカ(鹿児島)」「キダコ(五島列島・九州の一部)」「ナマダ(千葉)」と呼ばれています。
主に千葉以南の温かい海に生息しており、岩礁帯を好み、最大サイズは1メートル以上。
水深30m以内を好み、浅いところではひざ下ぐらいのタイドプールにも潜んでいます。
南にいくと、種類が増えますが、シガテラ毒を持つ個体がいる種(毒ウツボ)もいます。
冬にも狙って釣ることができますが、夏を中心とした高水温期のほうが活性が高いので多く釣れます。
成体になれば、自然界で競合する外敵がいなくなることもあるのか、警戒心が低く、ダイビングなどで人間が近寄っても逃げません。
干潮時の磯場をみると、海中ではなく、なぜかリスクの高い岩礁帯の上をうねりながら移動するウツボをみることもあります。
雑食で動物性のものであればなんでも食べるのですが、特に血液等のニオイに寄ってきます。
1メートルクラスのウツボは後頭部が盛り上がり、強力な顎を持ちます。
歯が極めて鋭いため、釣りあげたあとはフィッシュグリップなどを利用しましょう。
また、蛇同様かなり俊敏に動くこともあり、撮影などでは油断しないように。
脂肪層をふくめて皮が厚い。
ナイフなどで締める際も切れ味が悪いものは刃が入らないほどの弾力性を持つ。
ウツボが多く生息するポイント
岩から顔を出すトラウツボ。
ウツボが主に生息しているのは以下の場所です。
- 磯場
- ゴロタ場
- テトラ帯
- 堤防
堤防では、近くに磯場やゴロタ場があるところに多く生息しています。
漁港施設でも岩礁帯の上に構築されたものは特にウツボが好み、岩礁帯や基礎の隙間に多く生息しています。
潮が澄んでいる時は、岸壁やテトラの隙間から頭を出している状況もよく見られます。
ウツボの釣り方
ウツボは基本的に置き竿で狙う
ウツボを釣る方法として効果的なものとして以下の方法があります。
- 見釣り=サイトフィッシング
- 撒き餌(魚のアラなど)で寄せて釣る
見釣り
まずサイトフィッシングこと「見釣り」から解説します。
ウツボは人間から見えている個体も警戒心が極めて低いため釣ることができます。
水深3m以内の岸壁やテトラの隙間でまずはウツボを探しましょう。
ウツボがいたら、目の前に餌を落としてみて反応をみます。
80~90%ぐらいの確率で穴からでて餌をかじりに来ます。
ちなみに餌を目の前にして積極的に食べにこないウツボは、満腹もしくは、負傷等で活性が低くなっている場合かと思われます。
粘っても釣れないので、別の個体を探す方が効果的です。
撒き餌(魚のアラなど)で寄せて釣る
撒き餌は青魚のアラが効果的。細かく切って冷凍したものを持参するのも一つ
周囲にウツボが見当たらない場合も、撒き餌によって周りの磯場などからウツボを呼ぶこともできます。
水深がある場所や潮が速い場所は撒き餌が流れてしまうため、浅場がおすすめです。
まわりで底釣りをしている人がいる場合は撒き餌の釣りは迷惑になるので控えめましょう。
撒き餌をするような釣りでは、「ぶっこみ釣り」がメインです。
撒き餌を投入する場所の潮下側に置竿をし、アタリを待ちましょう。
置き竿では、ドラグをゆるめておき、尻手ロープなどでタックルを固定しておきましょう。
ウツボは鈍足な引きですが、状況によっては竿をもっていかれてしまいます。
歯が鋭い魚は、いきなりエサを丸呑みするというよりも、噛みつきながらエサをくわえ込んでいきます。
ウツボのあたりも、いきなり引き込むことはなく、竿先が震えたり、すこし引き込んだり、戻るようなアタリが出ます。
小さなアタリには合わせず、穂先で聞き上げていきます。
その後、引き込みが強くなった時点でドラグを締めて強く合わせましょう。
釣り慣れていない場合、竿先が固すぎる竿では、この食い込み判断がしづらくなります。
ヒット後は、ドラグをださずに、いち早く根から引きだしましょう。
スピニングタックルの場合はポンピング(竿を立て、戻すときに巻き上げる)で巻き上げます。
実はウツボが餌を食べているときにその身体の半分が根の中にあることも多いのです。
こうしたケースでは一気に引き出さないと根がかり状態になってしまい、結果的にハリス以外の道糸部分から切られてしまいます。
底から離してしまえば、ウツボは遊泳力が低いので、重量はありながらもスムーズに上がってきます。
たも網はつかわない
たも網はつかわないのがおすすめです。
写真のようにグチャグチャに絡んでしまうため、修復に時間がかかります。
また、タモの枠が劣化している場合は、破損するリスクもあります。
ウツボが海面まできたら、一気に引き抜きましょう。
そのためには、強めのタックルを利用するのがよいというわけです。
ウツボの夜釣りについて
ウツボは夜でも盛んに釣れる
ウツボは夜行性とされ、昼間よりもよく釣れます。
日中は岩穴や岸壁の隙間にいる個体も、夜になると出歩いて積極的に餌をあさるようになるのです。
夜になるとあまりにも釣れるため、クエ・アカハタ・タマンなどの底物を狙う際は、ポイント付近のウツボを釣りきり手前にリリースし続けるテクニックがしられています。
ウツボの濃い離島であれば一晩で20尾以上釣れることもしばしば。
ウツボ釣りのタックル・仕掛け
タックル
高い釣具は不要です。とにかく強度の高いタックルをそろえましょう。
ジャンルを問わずヘビークラス以上のロッドで、リールにはPEラインならば4号以上(60lb.クラス)を巻きましょう。
PEラインの場合、根擦れ対策でナイロンかフロロカーボンのリーダー20号以上(60lb.クラス)を1から2mつけます。
磯の場合は4m程度の長竿が有利です。
長竿の場合、仕掛けが波で手前に打ち付けられても、竿の長さによってかわすことができます。
道糸をナイロンやフロロカーボンにする場合も20号以上(60lb.クラス)がオススメです。
ヒット後に走られることはないので、ラインは50メートル程度巻かれていれば問題ありません。
▼スピニングタックル
▼ベイトタックル
仕掛け
ウツボの歯は鋭いため、型によらずナイロン5号程度であればすぐに断ち切られてしまいます。
ナイロンやフロロライン20号以上の太いものを用意しましょう。
ハリスが太くても、食いにはほぼ影響しません。
ちなみに筆者は40号のナイロンラインを使っているのですが、食いは落ちず、ウツボによるハリス切れはまったくありません。
スナップにPEを直結すると結び目から高切れするのでNG。根ズレにも弱い。
ワイヤーハリスも効果的。
大型のサルカンを数本つなぎあわせるとウツボの歯をかわすこともできます。
オモリについては、ナス型などで固定するよりは、中通しオモリの遊動式にすると根がかりをかわしやすくなります。
釣りあげたウツボはハリスにからみついて結び目になりがち
釣り上げたあとのウツボは高確率でハリスに絡みつくので、できるだけシンプルな仕掛けを心がけましょう。
ムツ針。針先がねむっているため、飲み込まれにくい。
1本針で、タチウオ用の太軸の針や、飲まれにくいムツ針がオススメです。
その他ウツボ釣りアイテム
▼持ち手が回転するタイプのフィッシュグリップがウツボの力を逃がすことができ便利です
▼針外しは素手で行わずプライヤーを使用しましょう。食用であればハリスを切って持ちかえるのも一つです。
ウツボ釣りのエサ
ウツボ狙いの餌はサバやサンマ短冊(釣り餌店に販売されている)がお手軽です。
さらに釣果を高めるためには、釣った小サバ等の青魚をぶつ切りにしたものをつかいましょう。
青魚より集魚力は下がりますが、ネンブツダイなどの白身の魚でも問題ありません。
餌の体液にウツボが反応し、遠くから寄せることができます。
蟹やエビなどの甲殻類や貝類などでもウツボは釣れますが、ニオイという観点で圧倒的に青魚の身餌が釣れます。
またイカやタコの短冊や脚などもよく釣れます。
ウツボをメインターゲットにすると、高級魚アカハタもゲストで釣れるかも
尚、小鯖等の泳がせ釣りでも釣れますが、活餌をつかうことにより、ソイ・カサゴ・ハタなどのゲストも多くなります。
ウツボは遊泳力が低いため、活き餌は元気な状態で食べられているというわけではなく、かなり弱ってしまってから食べられるのです。
ウツボ狙いなら、生きた餌より死んだ餌のほうが、確度が高まります。
ウツボ料理について
大型のウツボは一般家庭に持ち込むとこのようになる。塩でヌメリをとって調理しよう
ウツボを消費する地域は太平洋側に集中しています。
積極的に食べられているのは、太平洋側の鹿児島・高知・徳島・和歌山・千葉です。
これは南方からやってきた「海洋民族」の北上にともなう食文化の伝播が関係するのかもしれないませんが、定かではありません。
食味という点では、ウツボは夏場に産卵をするため身痩せしがちで、冬場のものが脂ノリもよくなり人気です。
「夏のウツボは臭い」とよく言われるのですが、これは食性以外にも岸釣り独特の保冷が足らない(氷不足)という理由もありそうです。
尚、ウツボを釣る際は、寄せ餌等が胃袋にたまっています。
持ち帰る際は胃の内容物から腐りはじめるので、釣り場で内臓を出してよく冷やして持ち変えると臭みが出にくくなります。
ウツボの締め方・持ちかえり方
ウツボはしっかり締めて、適切な持ちかえり方をすることでより美味しく食べることができます。
<ウツボの締め方・持ちかえり方>
- 頭部を岩やハンマーで叩く(もしくは足裏で頭部を固定する)
- エラブタ(人間の耳の穴程度の隙間がある)からナイフやハサミを入れて延髄をカット
- もしくは、鋭いナイフで後頭部を延髄部まで切断
- 海水で血抜きする(夏場はクーラーの潮氷内で行う)
- 腹部を開いて内臓を抜き、血合いを取り除く
- 袋等に包んで冷やして持ちかえる(頭部の歯で穴があくのでタオルなどで頭部を包んでから)
- 持ちかえったらすぐに下処理をして体表のヌルを落とす(軍手&塩or酢をかける)
※軍手を装着し、よく切れるハサミやナイフをつかうと手ばやく完了します。
ウツボの刺身
ウツボの刺身:三崎港「海舟」店主作
ウツボの刺身はかなり弾力があり、フグ刺に似ています。
骨のない腹の部分の身をつかいましょう。
できるかぎり薄切りにします。
ポン酢ともみじおろしがよく合う味わいです。
ウツボの干物
ウツボを三枚におろしたものや、腹や背から開いたものを干して炙って食べるのもおすすめ。
産地でも冬場になると背開きにしたウツボを広げて干す風景が見られます。
冬場は脂も特にのっているため旨みも十分。
一度干したものを細切りにし、揚げたあと、甘辛いたれにまぶす珍味も知られています。
ウツボの蒲焼
ウツボは蒲焼きの材料としてもぴったりです。
皮目を遠火でじっくり炙ることで臭みも減らすことができます。
蒸し揚げることにより柔らかくすることはできる
養殖ウナギとは異なる味わいで、歯ごたえが強いのですが、噛みしめる旨さと雰囲気を楽しめます。
ボリューム感がすごい。
どんぶりにしてもいい。
ウツボのかば焼き丼:三崎港「海舟」店主作。骨ぎりしたものをかば焼きに仕上げている
ウツボの唐揚げ
ウツボ料理が愛されている高知でもよく食べられているのが唐揚げです。
片栗粉などをつけてシンプルにあげて、柑橘類をしぼって食べると美味。
ウツボの唐揚げ:三崎港「海舟」店主作。細切りにしたものを唐揚げに仕上げている
ウツボの南蛮漬け
揚げたウツボを合わせ酢につけます。
多少の骨であれば酢によって溶けたり柔らかくなるので食べやすくなります。
冷蔵庫で2週間程度は持ちます。
ウツボのたたき
ウツボの皮目をバーナーで炙ったものを切り分け、たくさんの薬味をのっけてポン酢で食べるのもオススメ。
これも高知で食べられている料理のアレンジです。
ちなみに高知料理専門店では、以下の値段で販売されています。
ウツボ (うつぼ) のたたき 100g 1,080円(税込)
ウツボ (うつぼ) のたたき 200g 2,052円(税込)
生ウツボの唐揚げ 1,188円(税込)
出典:https://www.tosakatsuo.com/fs/tsukasa/c/utsubo
ウツボのたたき:三崎港「海舟」店主作。柚子胡椒もよく合う
ウツボ汁
アラで出汁をとったウツボの味噌汁も実に味わい深い。
冬場にオススメの料理です。
ウツボはおいしい
ウツボは、専門に狙われることが少なく、多くの釣り人や漁業者に忌み嫌われがち。
一方、食味もよいので、ぜひ下処理をしっかりした上で持ち帰って食べてみましょう。
とくに冬に釣れたものは美味です。
大型のウツボからは、かなり身がとれるので、様々な料理ができます。
持続的なウツボ釣りについて(資源の管理)
ウツボを積極的に食べる地域では、ウツボ資源の枯渇があるとされ、他の地域から仕入れる状況もあるようです。
昨今、メディア経由で「ウツボが厄介な存在」「海のギャング」としてのイメージが強く植え付けられ、その対抗策として活用がさけばれています。
同時に、ウツボは料理法さえマスターすれば、食味も優れるということも認知されてきている印象です。
そのため、積極的に釣って食べる人も増えてきています。
もともとウツボは生態系のなかでも強者に位置しますが、繁殖力が極端に強かったり成長が速いわけでもありません。
繊細なターゲットではないので、そこに居ればほぼほぼ釣れてしまう魚です。
そういった背景から、今後は「エリアによっては」資源枯渇が課題になってくるかもしれません。
無配慮に乱獲したり、大量廃棄(○○の釣りで邪魔なので釣って陸上放置=犯罪です)することは資源枯渇につながるかもしれません。
現時点で釣ることは問題ないですが、自分が釣りをしているエリアのウツボ資源が枯渇していないのかの配慮も必要です。
「前はあれだけ釣れたのに、最近釣れなくなったな」
「小型しか釣れなくなってきた」
こういった状況ではそのエリアでのウツボ釣りを控える自粛も大切です。
ウツボ釣り釣行動画
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ウツボの下処理、特に骨抜きは難易度が高い。
骨抜き処理されたものを購入して味わってみるのもよいだろう。
甘辛く仕上げた揚げ煮も旨い。