堤防釣りの好ポイントはそのまま蟹類のポイントでもある。
魚を釣るついでにカニ網を投げておくことで、ワタリガニと呼ばれる『ガザミ』や『タイワンガザミ』『イシガニ』など豪華なお土産を持ち買えることもできる。
今回は、待つ時間がドキドキのカニ網釣法について解説する。
カニ網釣法とは
魚のアラなどのエサをいれた市販もしくは自作のカニ網を投げ、ニオイにつられて集まってきたカニが網に絡まってしまっている状態を釣り上げる釣り方。
単に『カニ網』や『カニ釣り』とも呼ばれる。
網を使うため、磯など根が荒いところでは絡んでしまうため、主に砂や砂泥底を狙う。根が荒い場所では、夜間や干潮時などにたも網で狙うほうが効率がよい。
カニ網釣法でとれるカニたち
エリアにもよるが、以下の蟹がとれやすい。
イシガニ
イシガニは石のように固い甲羅をもっているから名付けられたとされる蟹。ワタリガニと称されるグループではもっともよく獲れる。砂地よりはやや岩礁帯が絡んだところに多く生息している。
挟む力が大変強く、最大個体(横幅30cm強)に挟まれるとかなり痛いので注意。子供とカニ獲りをするときは特に注意したほうがいい。
挟まれると叫ぶぐらいに痛い。
指に穴が開くほどの力。弱った個体でも不意に挟むので注意したい。
<イシガニの食味や料理法など>
イシガニは身がとりにくい物の良質の出汁がでるので、味噌汁にすると至極の味。流通はしていないが、漁師町では定食の味噌汁がイシガニであることもある。
イシガニはやっぱり味噌汁が一番うまい
ガザミ・タイワンガザミ・ジャノメガザミ
写真はタイワンガザミ
ガザミ類は比較的浮いて泳いでいる個体もみかける蟹。岩場より砂地に多く生息している。
近年数は減っているものの食味もよいので流通している。
<ガザミ類の食味や料理法など>
ガザミは脚には身が少ないが時期によって胴身がかなり獲れる。ゆで上げても旨いし、味噌汁やケジャンにしてもよい。
ケジャン。寄生虫の被害の恐れもあるので冷凍処理するなど自己責任で
ヒラツメガニ(マルガニ、Hガニ)
ヒラツメガニはサーフなどに生息している蟹。
マルガニとよばれたり、背中『H』の模様からHガニとも呼ばれる。魚屋でも流通していて1杯200円程度。味噌汁にすると実にうまい。
ショウジンガニ
ショウジンガニ(マガニ)は主にテトラ帯や磯にいる蟹。動きがかなり素早く両爪が小さいのもあって蜘蛛のようにも見える。
砂地にはいないものの、テトラや小磯が近くにある砂地に網を投げておくとイシガニ同様かかってくることが多い。
<ショウジンガニの食味や料理法など>
ショウジンガニは身が少ないが味噌を含めて極めて良質の出汁がでる。味噌汁にしたい。漁村の民宿に泊まると味噌汁の具がショウジンガニだったりして、しみじみと野趣あふれた味に惚れたりする。
ショウジンガニの味噌汁。毎日飲みたくなる味。
モクズガニ
河川上流部から河口まで広く生息しているモクズガニ。晩秋になると、渓流と呼ばれるような上流部から河口までやってきて産卵して果てていく。
河川によってはかなりの移動距離だが、ちょうど台風や秋の長雨もあるのでそういった濁流に流されて下ったりするような個体もあるのかもしれない。
河口域でつかまえた個体の脚がもげたり甲羅が傷ついているのを見ると、命の強さと抗えない使命みたいなものを感じることも。
9月以降、川に面した堤防から河口側に投げるとよく獲れる。
白ワインとハーブにつけてゆで上げたもの。単純に塩ゆででも旨い。
モクズガニはトマトクリームパスタにすると実にうまい。
カニがとれる季節はそれぞれ異なる
カニ網を使って蟹をとるとき、季節を間違えるとうまくいかないことが多い。
エリアによっても異なるがだいたいの季節を把握しておこう。
<通年(厳冬期含む)>
- イシガニ
- ショウジンガニ
<秋から冬(9月~11月)>
- モクズガニ
<5月、6月・9月>
- ガザミ類
カニ網釣法のタックル
カニ網を投げる場合、道具は簡単な投げ竿とスピニングリールを用意する。セットの釣り具や中古釣り具店で格安で売られているもの、または穂先を折ってしまって使わないロッドなどを活用するとよい。
カニ網につけるオモリの重要にあっていればどんなものでもよい。
タックルはセットで買ってしまうもよいが自分で用意する場合は、以下の条件を目安にしよう。
- 3~4mのオモリ負荷30号前後の竿(短いロッドは手前の障害物に網をひっかけやすい)
- リールは3000番~
- PEラインの場合は3号以上、ナイロンは7号前後
- 市販のカニ網
※市販のカニ網についている餌袋は、蟹に挟まれるとすぐに避けてしまう。台所用の三角コーナーネットを複数もっていき交換するとよい。みかんが入っているようなネットがあれば縛れるので便利。
※釣り竿を使わないでロープに直接カニ網を結ぶ方法もある。この場合、足元の障害物に網がかかりやすいため、サンドポールを用意し、回収時に伸ばして使うと便利。
<カニ網釣法のモデルタックル>
カニ網は自作も可能(作り方)
このような岩場で網を使うと、あ、っという間にひっかかるので注意。
市販の蟹アミをチェックすると、とても簡単な構造でできている。
以下のアイテムを組み合わせれば原価200~300円程度で自作もできるが、作成する工数を考えると、300円前後のものを購入したほうが効率的かもしれない。
- 100円ショップの鳥網
- 三角コーナーネット(エサ入れ)
- 錘(もしくは石)
- スナップサルカン
太めのナイロンラインをつかって自作も可能。網はもうすこし広がるようにつくったほうがいい
コスト部分ではなく、経験や楽しさを重視する場合や、子供と一緒に何かを作り上げて体験する場合は、蟹網づくりからチャレンジすると楽しみも2倍、3倍になる。
サンマが最強!カニ網釣法のエサ
写真はアナゴなどの身餌用にサクにするシーンだが、蟹アミの場合はぶつ切りや1匹まるごといれてつぶす
カニ網をつかったカニ獲りでもっとも効果を発揮する餌はサンマだ。
カニには鮮度は関係ないため冷凍品でもよいので安いときに買って冷凍保存しておくとよい。
そのほか、蟹とりに使えるエサは以下の通り
<カニ獲りに適した餌>
- 堤防釣り等で釣ったアジやサバのアラ、小サバ類をまるごと
- サバ(輸入ものの大西洋サバが脂乗りがよくオススメ。内臓付き)
- イカの塩辛
<カニ獲りに適していない餌>
- 白身の魚
- 内臓がなくニオイが少ないもの
カニがよくとれるポイント
(あくまでも釣り場のイメージです)
カニ網をつかった蟹獲りのポイントは以下の要素があるところを狙うとよい。
- 河川が隣接している堤防
- 漁港内の船溜まり、魚市場や荷上場のそば、同排水溝の近く(アラが流れるためカニが寄る)
- 底が砂底で根が少ないところ
- テトラの先が砂底になっているところ
普段サビキ釣りなどで釣り客がいるところがそのまま蟹とりのポイントになる。
カニがよく獲れる時間帯
ずばり蟹は夜行性なので、夜狙ったほうが釣果が伸びる。
ガザミ類は日中砂のなかに潜っていることもあるが、夜であれば活発に餌をもとめて活動している。日中狙う場合は潮が動いてる時間を狙うことで餌袋のニオイが拡散して、休んでいるガザミ類を効率よく集めることができる。
カニ網での狙い方
狙い方といっても特に難しいことはない。
潮がよく動いている時間帯を選んで、餌袋にサンマなどのエサをいれ、足で軽く踏みつぶしエキスがよく出るようにしキャストする。
足元に網を落としてもよいが、手前に落とすとポイントによっては潮の流れによって網が岸壁の牡蠣殻等にひっかかり取れなくなるので注意。
シーズンにもよるがイシガニは15分程度、それ以外のガザミ類であれば30分に1回網を引き揚げてチェックする。あまり頻繁に網を動かすとせっかく寄ってきたカニを逃してしまうかもしれない。投入後はそっとしておこう。
置き竿での注意点
カニ網に噛みついたトラウツボ
これもポイントによるが場所によってはウツボやクロアナゴが生息しているところもある。カニ網にこれらの魚が絡むと、置き竿にしてあるタックルごと持っていかれてしまうこともある。
置き竿にするときはドラグをゆるめて常に監視しておくようにしよう。
ちょい投げなどの合間にやるのがベスト
ここまでカニ網をつかったカニとりについて説明してきたが、毎回カニがとれるわけでもない。ましてや一度もカニをとったことがない初場所では、ボウズになることもある。
そういったことをさけるために、カニ網釣法をやるときは、ちょい投げなど比較的魚が釣りやすい遊びをしながら楽しむとよい。
エサが切れた場合や餌を継ぎ足す場合も、ちょい投げやウキ釣り等で釣れた魚を入れてやれば、カニをさらに寄せることになるかもしれない。
その他のカニ獲りのやり方
ガザミ類は泳いでいることもある。
カニ網以外に蟹をとる方法は以下の通り。念のため覚えておこう。
- 見えている蟹を網で救う(網を二つ、もしくは網と追いこみの棒があると便利)
- 見えている蟹の前に餌袋(三角コーナー網などにいれたアラ)を垂らして抱きかかえたところを網ですくう
- 手づかみやトングをつかって見て獲る(夜間ひざ下程度までの水深になる場所であれば効果的)
カニは自切するので注意
カニを持ち帰る際に、複数匹いる場合、クーラーボックス等の容器内で戦ってしまいハサミやその他の脚がもげてしまうこともある。見た目が気にならなければよいが、気になるひとは強めのゴムをもっていき胴体にゴムで縛ってしまうとよい。
違法行為などカニ獲りに関する注意事項
カニ獲りは釣りとあわせて子供でもチャレンジできる楽しい遊びだが、地域ごとにルールがあるので確認してから楽しむようにしよう。
網でのカニとりが禁止されている地域に注意
北海道・神奈川県・千葉県ではカニ網を使って蟹をとることが禁止されている。注意しよう。
カニ籠の利用に注意
カニ籠は都道府県単位の漁業調整規則で禁止されているところがある。これは漁業権の有無ではなく該当する釣り場がある自治体ごとの管理という点に注意したい。
カニ網の根がかりに注意
根が荒い場所でカニ網を使うとすぐに根がかってしまう。根がかった網には餌がついているため、周囲の蟹がどんどんからまってやがて死んでしまう。カニ網は水中に放置しないようにしよう。
投げ竿の場合はPEやナイロンラインの太糸を、竿無であればロープをつかっておくと、万が一根がかった場合も網をちぎって回収することができるかもしれない。細糸で狙うことは避けよう。
カニの捕り過ぎに注意
漁業権もないエリアで、どれぐらい蟹をとるかは個々人にゆだねられる。
たとえば小規模な場所の場合、産卵期のカニを獲りすぎることによって翌年度以降に獲れる個体が少なくなってしまうこともある。
抱卵個体を意識的に逃がす等の行為は結果的に自分に利益をもたらすかもしれない。いつまでもカニ獲りを楽しむためには工夫が必要。
カニ獲りはとってたのしい、食べて楽しい遊び
今回はカニ網をつかったカニ獲りについて説明してきた。
ちょい投げなどの合間に、カニ網を投げておけばワクワクの2倍、3倍になるはずだ。
もしとれなくてもそれはそれで面白いし、カニが狙い通り取れれば豪華な食事を楽しむことができる。
ルールや節度を守って楽しみたい。
※本文中の画像は釣り場のイメージです。該当する釣り場で蟹網が使用できるということではありません。
網をつかわないでワタリガニ類を獲る動画
関連記事
関連アイテム
蟹を持ち帰るときは海水を入れず持ち帰る。暑い季節は氷などで間接的に冷やして持ち帰ろう。