潮干狩りにも穴場というものがあります。人がたくさん訪れる場所ではなく、玄人しかいない穴場。共同漁業権がなく立ち入り禁止でないところであれば、都道府県別の漁業権調整規則の範囲内でアサリなどをとることができます。一方、こうした潮干狩りの穴場も貝毒等の注意事項があります。実際の体験をもとに紹介していきます。
潮干狩りの穴場をしっておるかえ?
ひぇひぇひぇひぇ。そこのお方、潮干狩りへいくのかね。ふむ。まあ干潮はまだまだ先じゃい。気を焦らず、ひとつこの婆の話を聞いていきなされやい。ほれ、何を突っ立っているんじゃ。まあ婆の茶でも飲みなされい。なーに毒などはいっとらせんよ。にひゃひゃひゃひゃ。
して、潮干狩りのう。あれは楽しい遊びじゃのう。今の時代はレジャーとでもいうのかの。毎年黄金週間あたりには都の家族連れが精を出しておるのう。手軽に自然に触れ、そして食料にもなる。場所によっては無料ときた。婆もむかしはようやったもんじゃて。
今となってはこの腰がのう、すっかりいうことをきかんでご無沙汰だがの。毎年、サクっと小一時間やれば、大粒のアサリがざっくざっくとれてのう。なーんも特殊な道具をつかわんでも、ノーマル熊手をひとかきすれば、大粒のアサリがザックザク。もうひとかきすれば、ザックザクザクっとな。それをきれいな海水でしーっかり砂抜きしてな。味噌汁やら佃煮やらにするんじゃて。アサリの佃煮には山椒の実をかまして、おむすびの具にするのも乙じゃて。そうそう、婆は筍とアサリと山菜の天ぷらが好物でのう。にひゃひゃひゃ。
ん?なんじゃ?
大粒のアサリなんてきょうび潮干狩りではとれませんよ。ってか。にひゃひゃひゃ。
あれじゃのう。若さ故の過ちというやつじゃろうな。古来より頭がいいもんはみんな物事を思い込みで決めたがるんじゃよ。会議などで、みんなで意見を出し合っているとする。すると、いきって「それ意味あるんすか?」みたいにいるやつがおるじゃろ。自分で見知った範囲で世界が動いていると思い込む。自分の眼が節穴なのに、まるで鷹の眼であるかのようにおもっているものも多いもんじゃて。
そういうやつもな、そこそこ仕事はできるもんである程度まで出世できるんじゃ。じゃが、その先には、そういった思い込みをなくした本当の強者がたくさんいるもんじゃよ。
だいたいな、本当の大人物というのはな、一見バカみたいに見えるもんなんじゃ。だから、人はいろいろそやつに相談する。そんでもってそやつが何かをするときに、こいつはどうしようもないやつだから助けてあげようと思うんじゃ。
前漢の劉邦さんはな、その実、項羽よりは無能だったのじゃよ。武力も知力も統率力もダメ。が、ダメ人間ではあるものの、底抜けに器があってのう。まわりの人が劉邦さんのためなら頑張るっていって、勝手に頑張るのじゃよ。ま、それも国を建てたあとは変わってしまうんじゃがな。人の世は移り変わるものじゃな。にひゃひゃひゃ。まあ、古来、小知恵で生きているようなやつはな、誰も助けようと思わんわな。魅力50以下の将が誰かをひきつけようとしても、それは無理というものじゃて。にひゃひゃ。
・・・
ふむ、そろそろ干潮じゃな。
ほら、そこのな、海のほうをみてみい。
ちょうど牡蠣殻が死ぬほど転がっている場所があるじゃろ。ゴミも転がっておる。おまえさんは、あんなところで潮干狩りなんてできると思わんはずじゃ。なんせ、砂底じゃあないし、あの牡蠣殻の下は黒い泥底じゃ。ヘドロという人もいるのかもしれんさな。
そうさな。あんなところで潮干狩りなんてできると思わんじゃろ。にひゃ。
実はな、あの場所にはな、大粒のアサリがザクザクっとうまっているんじゃよ。婆はうそをつかん。お前さんに嘘をついてもなーんにも得をせんしな。ただな、お前さんがな、婆の初恋の男に似ていたんじゃよ。にひゃひゃひゃ。あれじゃのう、やはりいい顔をしている男にはものを教えてあげたいと思うたんじゃて。にひゃひゃひゃ。
このあたりは昔から干潟でな。もうすこし向こう側がさびれた漁村じゃった。そんでな、今お前さんが立っているここも埋め立てられてできたんじゃて。
その当時からアサリはもうそこら中でとれたんじゃよ。が、今は海岸線が埋めたてられ、どこも海に入るのも難しくなってのう。だからみんなネットで検索して1番目にでてきた潮干狩り場にいくのじゃよ。
古来より物事で成功したやつはな、みんな意識して逆張りをしたもんじゃ。
馬鹿の一つ覚えみたいに「糖質制限ダイエット」が流行ったなら、ラーメン二郎や家系に毎日突撃して大盛を頼む。
フリーランスが流行ったなら優良ベンチャーで正社員としてキャリアを積みつつ副業をする。
釣りの話題でYouTubeを情報源にするのなら、ORETSURIを情報源にする。
にひゃひゃひゃひゃひゃ。
・・・
さ、潮が完全に引いて、また満ちてくるまで一勝負じゃ。なーに、心配は不要じゃよ。牡蠣殻はお主のその熊手があれば全部どかせるじゃろて。
さ、もういきなされやい。若さは燃やすもんじゃて。『駆け抜けて青春』じゃよ。
なに?
ほうかい。たくさんアサリをとったら婆にも分けてくれるとな。にひゃひゃひゃ。
ぬしは、イケメンよな。では、楽しみにまっておるでな。
今晩はアサリの佃煮でもこしらえるとするかのう。ひぇひぇひぇひぇ
・・・
潮干狩りの穴場へ
さて、謎婆による潮干狩りの穴場解説をきいて、みなさんもすっかりやる気になったことだろう。
それでは、潮干狩りにいこう。
大粒アサリが、ざっくざっくのざっくざくやでー。
たどり着いたのは、このような牡蠣殻エリア。
普段は海水に覆われ、クロダイやらアカエイやらがいる場所。夏からは秋はマハゼがよく釣れたり。
写真にはうつせないゴミもたくさんある。
水が引いていく沖目はかけあがりになっている。ボラがちらほらこのかけあがり沿いを回遊していた。
みると、最大サイズとおもわれるアサリの殻がたくさんあることに気づく。
この巻貝は魚や貝の死骸を食べるもの。
さっそく牡蠣殻エリアを熊手で掘ってみると・・・
ザクザク。
これは軍手の手掘り術だときつそうだな。熊手をもってきてよかった。
・・・
む!
いたぞ。
アサリだ。
海の公園でとったアサリの最大サイズといったところか。
・・・
ザクザク。
ザクザ、
む!
これは。
デカイ。
海の公園や野島の潮干狩り場でとるアサリの2倍ぐらいのサイズがある。殻長4cm以上はありそうだ。
ものの、5分、いや2分くらいでこの通り。
アサリもいるところにはいるんだなー。しかも粒がデカイ。
このようにアサリがいた場所を横に線で攻めていく戦術。
牡蠣殻の下には20cmほど砂泥層(かぎりなく泥)があって、その下は岩盤。そのため深くは掘らず、浅く掘っては場所を横に移動していくという技。
大粒のアサリが固まっているところは、この通り、ザックザク。
基本的に粒がデカイ。
アカニシ貝もとれた。
この貝はアサリを食べるのでさぞ一杯いてもおかしくないものの、生息環境があわないのか採れたのはこの1体のみ。
ドジョウのような動きをするハゼがいるのでつかまえた。
このハゼっぽい魚の種類がわからず。
わかる方教えてください。海です pic.twitter.com/hrkthxczuZ— 平田 剛士@ORETSURI (@tsuyoshi_hirata) 2019年4月19日
これは、Twitterできいてみたところミミズハゼとのこと。みんな詳しいなー。
その後もアサリのみが取れ続け、
選別前のアサリたち。呪貝がたくさんあった
この通り。
こちらは、今回とったアサリの最大サイズと、一番小さいサイズのアサリ。
横浜の海の公園や野島公園では2cmの稚貝はリリースとのことになっていて、シーズン中にとれる標準サイズは、3cm未満が多い。そこにきて、この横綱アサリ。
潮干狩り妖怪「呪貝」とは
諸君は呪貝をご存知だろうか。
読み方は「のろいがい」でも呪怨みたいに「じゅがい」でもいいと思う。この貝はGoogleで検索しても出てこない。なぜか。それは、わたしが今付けた名前だからだ。
いいだろう。説明しよう。
呪貝とは一見ノーマルアサリとみせかけてその実中味が砂や泥であったりするおそろしい貝である。
通常、アサリは死んだら殻が閉じる。
が、黒魔法なのだろうか。なんらかの力が働き、アサリの中の人が死に腐ったあと、泥や砂が詰まって殻が再び密着する。そうなると、この呪貝は一見食べられるアサリに見えてしまう。
それを、潮干狩りをする人は、ヒャッハー!!アサリだー!!!
と、とっていくわけだが、この呪貝が恐ろしいのは持ち帰って料理するときだ。
持ち帰った呪貝に気づかず、
「うっひょー、今日は寒いからアサリの味噌汁作ろ!簡単だしねー」みたいなテンションで料理する。
と、この呪貝は突如鍋の中で呪いを発動!
鍋全体が汚染。臭くてじゃりっぽいし全部食べられないという事案になる。
一説によると、この呪貝は潮干狩りを楽しみにしていたものの渋滞によって干潮時到着できなかった親子や不漁によってあまりアサリがとれなかったときの人々の怨念が積み重なり、潮風と砂泥と合わさって生まれたものだという。
真相はわからないが潮干狩りでは気をつけよう。
これが呪貝である。一見薄汚れたアサリにみえる。
が、このように、殻の表面に藻類がついてしまっているものは呪貝である可能性が高い。アサリは通常じっとしているわけではなくそれなりに脚をつかって動く。また殻は成長していく。そのため殻には汚れが付きにくいが、死んで放棄された殻となるとそうではないのだ。
これは潮干狩りをしながら気づくので、効率をよくするために最後の選別のときにでも取り除きたい。
こちらも呪貝。
黒ずんでくすんで艶のない貝殻は、すでに死んで呪いの発動をいまかいまかと待っている呪貝である可能性が高い。黒や青みがかったアサリももちろんいるが、なれてくると、呪貝からは生気を感じられないはず。なんとなく暗い印象をうけるはずだ。
そんなアサリには気をつけたい。
こちらも呪貝だが、この通りしっかり殻がしまっていたりする。が、隙間が暗く、潮干狩りレベルが15ぐらいになると、これは呪われるなというのがすぐわかる。
泥エリアのアサリは特に念入りに砂(泥)抜きすべし
そうこうしていたら潮が満ちてきた。
近くにいたおばさんが15キロぐらいアサリをとっていてびっくり。
売るんだろうか。
あわわ、ボートバックが流されていく。
栄光の堀場もこの通り海の底に。
こちら最大サイズのアサリたち。4cm級の個体がぞろぞろいる。
アサリってこんなにデカくなるんだな。
こちらはよく市販されているサイズ。3cm前後。
いずれも、海水を大量に持ち帰ったので砂抜き、いや泥抜きも楽だ。
アサリは暗いところのほうが落ち着くので新聞紙や段ボールをかぶせておくと便利。潮を吹いた際もある程度吸収してくれる。
ではでは。
平田(@tsuyoshi_hirata)
備考
- 共同漁業権が設定されていて、アサリが含まれるエリアで一般人の採取はできません
- 都道府県ごとの漁業調整規則によって利用可能な道具などが決まっています
- 潮干狩り場では貝毒のサンプル調査が行われ比較的安全性が担保されています。それ以外のエリアではリスクもあるので注意しましょう(参考:神奈川県・貝毒安全対策)
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