兵庫沖でマダコの密漁をした男女が海上保安庁などが男女11人を摘発したというニュースが入ってきました。「タコ」はほとんどの沿岸で共同漁業権の対象とされています。
知らないでトラブルを起こしてしまうというのは残念ですし、知っていても詳細を押さえていないと、思わず摘発される可能性が出てきます。
事件についてみていき、自分が釣行する自治体に置きかえて学んでいきましょう。
概要
兵庫県明石市や播磨町沖でマダコを密漁したとして、姫路海上保安部などは18日までに、漁業法違反の疑いで、姫路市の自営業の男(72)ら男女11人を摘発した。
出典:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190718-00000014-kobenext-l28
今回摘発されたグループは、食用目的で親子や知人同士でプレジャーボートにのって7月10日~14日に兵庫沖で共同漁業権が設定された水域でマダコをとった疑いがかけられています。
明石沿岸の共同漁業権のポイント
兵庫県沖は「明石ダコ」という名称に代表されるように、日本有数のマダコの漁獲区域です。共同漁業権についても細かく設定されているため釣り人は事前に押さえておく必要があります。
「兵庫県立農林水産技術総合センター 水産技術センター」が公開している資料を見ていきましょう。
○ 船舶(遊漁船業※によるものも含む)を使用して釣りを楽しむ方のルール
① 青色で囲まれた範囲(第1種共同漁業権)内
マダコを採捕できる期間 :海の日 ・ 1月1日から5月31日まで ・ 10月1日から12月31日まで
マダコを採捕する方法 :疑似餌による釣りのみ (生餌を付けて釣ることはできません)
マダコのサイズの制限 :体重100グラム以下は採捕することはできません。
マダコの匹数の制限 :1人当たり10匹まで
② 赤色で囲まれた範囲(第3種共同漁業権)内 :釣りはできません
③ 稚魚育成場内 :漁業者も含め、水産動植物の採捕は一切できません
遊漁船やプレジャーボートで釣りをする場合のルールをまとめると、以下の通りです。
<第1種共同漁業権内>青線枠内 岸から約4キロ
- 制限された期間内のみ疑似餌でタコを採捕できる
- 100g以下のタコは採捕できない
- 一人当たり10匹まで釣ることできる
<第3種共同漁業権内>赤線枠内※人工漁礁があるエリア
- 釣りはできない
<稚魚育成場内 >赤塗りつぶし※抱卵したマダコを漁獲した漁業者がタコつぼごと放つ場所
- 釣りはできない
- 漁業者も漁はできない
今回摘発された釣り人のグループは、7月10日~14日に兵庫沖の共同漁業権エリア(岸から1.2~4キロ以内)でタコを釣っていたそうです。
つまり、「期間」という時点で密漁に当てはまるわけです。
出航し明石沖の近場で7月にタコ釣りをした時点で「密猟」であることが決まっているわけです。
もともと明石沖の第1種共同漁業権内は遊漁者によるすべてのタコ釣りが禁止されていました。一方、タコを釣る釣り人は後をたたず、であるならば「禁止」としないで「ルールを設けて容認」する方針に切り替わったという背景があります。
いわば漁業者が遊漁者に歩み寄ってできたルールなわけです。
こうした状況で、ルールを破りタコを釣る人が増えることで漁業者と遊漁者の関係性が悪化し、再度全面禁止ということになりかねない事件です。
海は誰のものでもない?ただし、漁業資源を持続的なものにすることは必要
漁業権は排他的な権利で、伝統的に「地先」と呼ばれる沿岸部分における漁業資源をとり続けてきた漁業者の既得権を合理的な観点から認めたものです。
よく釣り人が「海は誰のものでもない」というようなことをいいますが、それはその通りです。
一方、様々な人がいる社会ではあります。
何もルールがなければ、魚介類を乱獲を続ける人が現われ、やがて資源が枯渇してしまいます。
昨今では釣り人から魚を買い取るというようなサービスも出現してきています。こうしたサービスでは個人に法遵守の責任がおかれるわけですが、釣った魚が売れるとなると、遊漁者の立場を超えて釣りをする人が現われてくることでしょう。
現行法において、海洋資源を守りつつ、国民に安定的にたんぱく源を補給する仕組みの一つとして漁業権が機能しているのは事実であるということは、釣り人としても押さえたほうがよいでしょう。
遊漁である釣りと漁業者は、そのターゲットが同じであるため、必然的に競合状態になりやすくトラブルも発生しやすい状態にあります。
お互いに、無駄に憎しみ合わず、海洋資源を持続的なものにするという大目標を見据え、定められたルールを守って釣りをするということはとても大切なことです。
岸やプレジャーボートからのタコ釣りは気をつけよう
今回は兵庫県沖におけるタコの密漁事件について考えてきました。
他の都道府県においても、岸釣り、沖釣りに関わらず、釣行前に自分がタコを釣っているところは漁業権を侵害していないのかという点を改めてチェックしてみましょう。
「誰にも、注意されないから」
「前から、やってるから」
「ほかにも、タコを釣っている人がいる」
こういった理由でタコを釣っていると、いつか自分が密漁の当事者として検挙されてしまうかもしれません。
釣りや磯遊びをする際は都道府県別の漁業調整規則や共同漁業権のエリアを必ずチェックし、後ろめたくない状態で釣りを楽しむことをオススメします。
また、漁港内でタコが釣れるところもありますが、今後も釣りを続けるために釣り人としてのルールやマナーにも気をつけましょう。