直線強度が高く、より細い糸が使えることで、岸から船釣りまで様々なシーンで活用されているPEライン。
もう、今日の釣りにはなくてはならない釣り糸ですね!
PEラインは、ナイロンやフロロカーボン製のラインと比較して「劣化しにくい」という認識の方も多いはずです。
一方、その寿命についてはあまりよく知られていません。
リールに巻いたものの、「一体いつ巻き替えたらよいの?」という疑問をもっている人も少なくないはずです。
今回は気になるPEラインの寿命と交換時期について解説します。
PEラインは耐久性が高いライン
PEラインは、より糸。複数本の繊維で編まれている
PEラインの素材は「ポリエチレン」製の原糸です。
ポリエチレン自体は、以下の強みを持っています。
- 吸水性、吸湿性がない(ナイロンは吸水するので劣化しやすい)
- 他の樹脂素材と比べて対候性に優れている(紫外線劣化含む)
「イザナス」は、シマノ「タナトル」の原糸。耐光性があるが、劣化はする
出典:東洋紡
また、PEラインは複数本の繊維を撚って生産させるため、以下の弱みがあります。
- 細い繊維で構成されるため、根ズレなどに弱い
- 繊維が塩分や砂などを噛みやすく、繊維の摩耗劣化やガイドの摩耗につながる
これらの素材特性をまとめると以下の通りです。
- 吸水性がない
- 紫外線劣化はしづらい
- 繊維自体は傷つきやすいと言えます
以上のPEラインの特徴をきちんと理解し、使い方を工夫する必要があります。
釣り場の特徴、メンテナンスによっては、ライン自体が摩耗しやすく、高切れの原因になる点もしっかり考えなくてはなりません。
PEラインを巻き替えるタイミング
カサゴ釣りで摩耗したPEライン。高切れ5秒前
ご存知の通り、どのPEラインにも巻替えタイミングの説明がありません。
釣り人によって使用方法・頻度が異なるのでメーカーも目安を伝えられないわけです。
そのため個人の判断で巻替えを判断するわけですが、一体どのタイミングで巻き替えればよいのでしょうか?
ここでPEラインの巻替えタイミングを決めるための「8つの判断軸」を紹介します。
①細糸と太糸の違いで考える
まず、同じPEラインでも細糸(例:1.5号以下)と太糸(例:3号以上)では、使用できる期間が変わってきます。
1号未満のPEラインでも、メンテナンスがバッチリで、釣行頻度がまれであれば1年以上使えることもあります。
が、使い方やメンテナンスが不十分であれば、1か月以内でも高切れが頻発するものです。
便宜上3号以上を太糸と表現します。
ある程度の太糸は繊維全体の太さもあり、多少のキズがあっても残った繊維が持ちこたえ、破断しにくいのは事実です。
たとえば深場用に数百メートル巻く太糸の場合、電動リールに数年巻いたままという釣り人もいます。
②釣行頻度で考える
釣り人によって年数回しか釣りをしない人もいれば、毎週複数回釣りに行く人もいます。
釣行頻度とPEラインが弱るスピードは関連してきますので、高頻度で釣行する人は、なるべく早めにラインを交換したほうがよいでしょう。
③釣り場の状況で考える
釣りの種類、釣り場の特徴によってPEラインの劣化速度は変わってきます。
淡水よりは海水、根や人工建造物が多くラインが干渉しやすい釣り場、サーフなどは特にPEラインが弱りやすいと言えます。
サーフの場合、特に根が無くても、PEライン自体が塩と砂噛みをするため、メンテナンスの仕方によっては比較的早期に劣化して高切れの原因になります。
サーフでPE1号以下を使っている場合は、なるべく早めに巻替えを検討したほうがよいでしょう。
船釣りではタチウオやサワラなど歯が鋭い魚を狙う際、オマツリの有無にかかわらずPEラインが大きく傷ついてしまうことがあります。
④コーティングがはげて毛羽がめだったとき
ほつれたPEライン。船宿の貸竿。仕方ないがよくある
PEラインは、複数本の繊維を編み込んだうえにコーティングがなされて販売されています。
このコーティング部分が滑らかで、キャスト時等にガイドと摩擦を軽減するわけですが、比較的早いタイミングでコーティングはとれてしまいます。
コーティングがとれ、毛羽が目立つとき、細糸であれば早めに交換したほうがよいでしょう。
太糸であれば、多少の毛羽立ちであれば問題なく使用できたりします。
ただし、全体的に毛羽立ったPEラインは潮受けしやすく、飛距離も伸びにくいという特徴もあるので注意しましょう。
⑤高切れが目立つとき
キャスト時やシャクリ時に、高切れが連発するときは、使用期間にかかわらず全体を交換したほうがよいでしょう。
どんな釣りでも、スペアのリールやスプールを用意しておくことをオススメします。
⑥大物を狙うとき
あらかじめ大物を狙う場合は、シーズン前にPEラインの全体を交換してしまうのも一つです。
引きの強い大型の魚を狙う場合、PEラインの劣化が頭の片隅にあると、積極的なファイトができなくなります。
⑦ラインへ高い負荷がかかる釣り方をするとき
それほど大物を狙う釣りでない場合も、高切れが発生しやすい釣りというものがあります。
たとえば、船釣りであれば以下の通りです。
LTアジ&LT五目釣り
一見、狙う魚も小型で負荷が少ないようにみえるLTアジやLT五目の釣りですが、コマセカゴをしゃくる際に、PEラインに高い負荷が生じます。
昨今では1号、1.5号などの細糸も主流になってきているわけですが、潮受けのあるコマセカゴをしゃくると、高切れすることもしばしばです。
PE2号以上は、比較的長持ちします。
また、ショックリーダーをつけることでしゃくり時の高切れは軽減できます。
<ショックリーダーの目安>
- PE1号or1.5号=フロロ4号
- PE2号=フロロ5号
餌マゴチ釣り&テンヤスミイカ釣り
これらの釣りは、ドラグフルロックで強いアワセをするため、高い負荷が生じます。
劣化したPEラインを使用している場合、魚体が1~2キロ以内なのに、アワセ切れすることもしばしばです。
キャストを伴う細糸でのタイラバ、カワハギ、フグ釣り
キャストをする釣りにつきものなのが、キャストミス。
フロロカーボンリーダーをつけている場合でも、バックラッシュ等によってPEラインから高切れすることもしばしばです。
とくに劣化したラインは、些細なキャストミスでも仕掛けごとロストしがちです。
コストを考えると、3か月以内など、比較的早いタイミングで交換するのも一つです。
⑧クリティカルな劣化の前に一定期間で交換する
PEラインの劣化を目視で確認してから交換するのも一つですが、安心して釣りをするために、劣化を判断する前にあらかじめ定めた一定期間で交換してしまうのも一つです。
<例>
- シーズンごとに交換する
- 3か月、半年、1年と期間をあらかじめ定めて交換する
PEラインはメンテナンスで寿命が延びる
PEラインは吸水はしないものの、コーティングがとれ、繊維が摩耗していくものです。
摩耗の原因としては、根ズレ以外に、塩や砂や汚れを繊維が噛んでしまう点があります。
使用後、スプール部分をシャワーで洗い流すのが一番簡単なメンテです。
ただしスプール表面側の汚れしか取れません。
汚れが目立つ場合は、スプールを外してぬるま湯につけたり、ラインを取り出して洗って乾かして再度巻くという方法があります。
また、釣行前や釣行中に適宜、潤滑スプレーを使用することでガイドとの摩耗を軽減し、ライン寿命を増やすこともできます。
PEラインの潤滑スプレーは「PEにシュッ! 」が一番人気です。
他に、安価な無溶剤系シリコンスプレーを使う人もいます。
PEラインを巻き替えてリサイクルするのも一つ
PEラインは比較的高価。
そのため、できれば長くつかいたい人も多いはずです。
よりリーズナブルに使い続けるテクニックとして、リールに巻いた下糸と、スプール表面側の上糸の上下を巻き替える方法もよく知られています。
別のリールに巻き替える時は、そのまま巻いてしまえばよいですが、そうでない場合は、空の糸巻きを経てリサイクルするとよいでしょう。
第一精工の高速リサイクラーが圧倒的人気です。
<PEラインリサイクル(表裏の巻替え)の仕方>
- 高速リサイクラーでリールから空ボビンにPEラインを巻き取る
- 別のリールなどに高速リサイクラーの空ボビンからPEラインを巻き取る
- さらに別リールから元のリールにPEラインを巻き取る
※巻き取る際に、ウェットティッシュなどでラインをつかんで行うとPEライン表面の汚れが落ちます。また、傷があるかどうかを確認しながら巻替え、大きな傷がある部分をカットしてつかうのも一つです。
まとめ
ほつれたPEラインはトラブルのもと。
今回はPEラインの寿命や巻替えタイミングの目安について解説してきました。
PEラインは使用前後のメンテナンスによっても寿命がのびます。
あらかじめ先行投資をしてメンテナンスアイテムを利用するのも一つですね。
また、長くつかうのも一つですが、シーズンごとに買い替えることを決めておくと、高切れによるルアーや仕掛けロストによるコストが軽減されるのも事実です。
例えば、LTアジで仕掛けを全ロストすると合計コストは、ハリス部分もふくめて1,600円程度。ロストを連発したらさらに酷いことになります。
これが、あらかじめシーズン前にPEラインを巻き替えておけば、1,600円以内でおつりがくるはずです。
水中にできるだけゴミを残さないという観点も考えると、PEラインを過信しすぎて、あまり長く使用するのも考え物かもしれません。
いずれにせよ、みなさんがPEラインを巻替えるタイミングの参考になれば幸いです。
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