2020年12月13日(日)に逗子・小坪漁港を訪れたところ、港内・岸壁内側部分が釣り禁止・立ち入り禁止になっていました。
釣りをしない人にとってはとるに足らない情報なのですが、釣り人からすると数少ない釣り場が消えていくのはとても残念です。
小坪漁港については肝心の釣り禁止情報がネット上で探せないため、発信者不明のサイト群による誤った情報により、休日に遠くからやってきてがっかりしていた人を見かけました。
よって、漁港を管理する逗子市に取材したうえで、本内容についてウェブに公開する次第です。
逗子・小坪漁港について
三浦半島西部に位置する逗子市は「小坪漁港」を有しています。
市内の港湾施設はこの1つのみで、逗子海岸に隣接しているように見える「鐙摺港」は「葉山港」の旧称です。
小坪漁港は比較的アクセスしづらく「陸の孤島」のような存在。
そのため、釣り場として認識していない釣り人が多いかもしれません。
逗子・葉山エリアと鎌倉をつなぐ海岸の道路(国道134号線)からは小坪漁港にアクセスできず、県道311号線から迂回しなければたどり着けません。鎌倉方面からは小坪海岸トンネル経由でのアクセスが必要ですが、材木座経由の路地を通る必要があります。
また、車でアクセスできた場合にも、リビエラグループの駐車場料金が高額になるため、基本的に自転車・バイク・バスなどで地域内で釣行する人が多かったポイントでした。岸釣りの場合、船宿利用と異なり、漁港の駐車場が使用できないという背景があります。
岸釣りでは、港内ではサビキ釣りでのイワシ・小鯖釣りなどが知られています。港外側では、クロダイ、メバル、アオリイカ、カサゴなどを狙う釣り人が訪れる釣り場です。
その他、船釣りでは乗合・仕立ての船宿が数軒存在しています。
逗子・小坪漁港の釣り禁止・立ち入り禁止エリアについて
2020年12月13日に同漁港を訪れたところ、港内釣り船発着場と隣接する堤防内側部分にロープとカラーコーンが置かれ「釣り禁止」「立ち入り禁止」が明記される状態になっていました。
同箇所は、地域住民を中心にもともと釣り人でにぎわっていたところでした。
小坪漁港港内。青色部分が新規に立ち入り禁止・釣り禁止明記エリア。赤色部分はもともと立ち入り禁止
さかのぼること、同年10月22日。
港内内側を訪れたのですが、「釣り禁止」「立ち入り禁止」は明記されていない状態でした。
前々から係船ロープへの仕掛け・ルアーの絡みが目立っていたエリア
釣り船発着所。水深は浅いが高水温期はイワシや小鯖が寄る。
同内容について、2020年12月14日、逗子市の市民協働部経済観光課に電話で取材した内容は以下の通りです。
- 前々からテトラ側に釣り人が回り海に落ちたり、岸壁に係船している漁船とのトラブルなどがあった
- 同件については以前から小坪漁協と協議していた
- カラーコーンとロープでの閉鎖は11月に実施した
- 10月~11月のあいだに落水などがあったわけではない
- コロナ禍のなかでGW期間中は人があふれる状況になり一時的に閉鎖していたがその後、閉鎖はといた
- 今後も釣り人が落水などのトラブルを起こした場合、管理者でもある市の責任が問われるため、対策として釣り禁止、立ち入り禁止とした
以上、ご丁寧に説明いただきました。
漁港施設での釣りは黙認されているだけ
日本全国同じなのですが、漁港はもともと漁業者のための施設です。
現行法下では、漁港施設で「釣り人が釣りをするための権利」を主張する余地は1ミリもありません。
「俺たちの税金が使われている」というような主張をする人もたまにいますが、一蹴されてしまうだけです。
これまで釣りができていた理由は、港湾を使用する漁業者や管理者から「黙認されていただけ」なのです。
それが「何かある」とこうして明確に釣り禁止になってしまうわけです。
- ゴミの投棄
- 係船ロープへルアーやサビキ仕掛けなどをひっかける
- 船に乗り込んで釣りをする、小便・大便などをする
- 出入りする漁船へ仕掛けやルアーを投げる
- 同様に漁業者と言い争いなどをする
- 密漁する(タコ・伊勢海老・サザエなど)
- 落水する(死亡事故が起きる)
- 深夜に騒ぐ
- 堤防上でテントを貼る
- 堤防上でBBQなどをする
- 漁業者の通行を阻害する
- 違法駐車する
など。
漁港は漁業者や遊漁船事業者の仕事場であり、自分の仕事場でいろいろとやられてしまえば、行政と連携して、釣り禁止・立ち入りにしたくなるのも自然な流れです。
日本全国でこうしたトラブルによって、相次いで「漁港の釣り禁止・立ち入り禁止明記」が進んでいます。
コロナ禍と釣りブーム
もともと釣り場にはベテラン釣り師をふくめて、ルールやマナーを守れない釣り人が一定数います。
ベテランだからルールやマナーを守って他人に迷惑をかけないかというと、そういうものでもありません。そのあたりは「人としてどうあるか」なのでしょう。
一方、コロナ禍とアウトドアブームによって、釣り場に人が集中したことにより、マナーの悪化がさらに目立ってしまったという声も各地で叫ばれています。
釣り人口が減ることにより産業として成り立たなくなるよりは、一定の新規流入数があるほうがよいわけです。が、人がふえることでの弊害もどうしても起きてしまいます。
所謂インフルエンサーがSNSや動画で「釣りをやってみた」というように情報発信をするのも多くなってきました。
これは「魚を釣っている様や釣果」が映えるからにほかなりません。
が、ルールやマナーに言及しなかったり、明らかに安全を軽視した状態で「釣りの楽しさ」を発信する様子もどうしても見られてしまいます。
人は楽しい人をみると真似をしたくなるわけですが、そのときに、ルールやマナーを考えずに、楽しさだけを追い求めてしまう安易な人もいるわけです。
「穴釣りがめっちゃ楽しい!」→楽しそうだけど、どういう装備や場所がよいのか?リスクは?
「タコ釣りが楽しい!」→タコって密漁になるって聞くけど、釣りができるエリアはどこなのか?
そうした、安全や密漁を避けること意外にも、釣り人同士、対漁業者や地域住民とのコミュニケーションの取り方にはすべて暗黙のルール・マナーがあるわけです。
そのあたり、一定のフォロワーをかかえるインフルエンサー各位においては、釣りの楽しさを共有するだけでなく、ぜひ釣りのマナーやルールなども合わせて共有いただきたいところです。
その方が単にブームにのって「釣りやってます」的な見え方もしないですし、フォロワー以外からの支持も集めるんじゃないでしょうか。
最近では「放課後ていぼう日誌」が漫画とアニメで一気に人気になりましたが、ただ女の子が釣りの楽しさを主張するだけでなく、ルールやマナーあたりへ、とても配慮した作品です。
さて、小坪漁港の話に戻ります。
ここでも港内側が釣り禁止・立ち入り禁止になった流れもあり、隣接するテトラ帯に、ライフジャケット未着用で明らかに装備が甘い人や、子連れの人が無防備に入るようになってしまっていました。
普段釣り慣れていない人が目立つ光景
ライフジャケットなく子連れ2名でテトラの上は高リスク
テトラ自体の足場はそれほど高くないものの、やはり落下した場合には小さな怪我だけではすみません。
当日は、小学生低学年と思われる子供(ライフジャケット未着用)を2名つれだってテトラで釣りをしている男性をみかけました。
子供が落ちたらどうするんだろうかと心配になった次第です。
まとめ
今回は逗子市にある小坪漁港の内側エリアが釣り禁止・立ち入り禁止になったという話について紹介しました。
息子が5歳ぐらいになったら、内側の足場がよいエリアでサビキ釣りでも教えてあげようとおもっていたんですね。
それもかなわなくなってしまいました。
全国で同じような悲しさを感じている人は多いんじゃないでしょうか。
ひとまず、ウェブ上に逗子・小坪漁港についての釣り禁止・立ち入り禁止情報がなかったので、現状について共有です。
ではでは。
平田(@tsuyoshi_hirata)
<取材先>
逗子市・市民協働部:経済観光課
電話番号:046-872-8120
https://www.city.zushi.kanagawa.jp/syokan/keizai/