釣りをしていると否が応でも釣れるフグや近縁種。
何らかのフグが釣れたときに「フグだー」と一括りにする人がほとんどかと思います。その気持ちもわかります。なぜって、似たような種類が多いわけです。
一方、それぞれ種類の見分け方を覚えておくと、一目置かれるかもしれません。
今回は、釣りをしているとよく釣れるフグの見分け方を紹介します。
※フグの素人調理は危険です。釣り人による誤食によって毎年事故が発生しています。
キタマクラ
キタマクラは、海藻が生えた磯場によく生息しているフグです。全長15cm程度であまり大きくなりません。
水深も20m程度までに生息するようで、船カワハギ釣りで浅場を攻めるときによく遭遇するかもしれませんが、それ以外の船釣りで釣れることはあまりないフグ。
一方、堤防釣りをすると、かなり遭遇することが多いでしょう。
「キタマクラ」という名称はその他のフグ類の別称でもあるのですが、死人を寝かせるときに北側に枕を置くことにちなんでいます。
キタマクラは目が綺麗
<見分け方>
- 表面にぬめりがあり、棘はない
- 顔、腹部・尾などに鮮やかな青みを帯びた筋がある
<有毒部位>
- 皮、腸、肝
※食用とはされていません。
クサフグ
クサフグは岸釣りでおなじみのフグ。内湾の浅場から河川の汽水域まで遡上します。場所によってはぼぼ淡水のエリアにも登場。
最大で全長20cm程度。
こちらも船釣りではあまり目にかけないもの、堤防釣りだと、クサフグしか釣れないという場所も。
シロギス釣りなどでクサフグが連続で釣れた場合、高確率でクサフグの群れが濃いので、場所を変えたほうがよいでしょう。
シロギス釣りではすぐにハリスを切るので嫌われ者。ふくれるとかわいい
ハゼ釣りをするような汽水域でのブリブリとした引きがあったらクサフグ。腹が黄色っぽい個体も
<見分け方>
- 胸鰭後方と背びれの付け根に黒い斑紋
- 背中側に白い水玉模様
- 体表に棘
<有毒部位>
- 筋肉のみ弱毒で食用だが、流通せず
ショウサイフグ
ショウサイフグは、船釣りの釣り物として人気の魚。カットウ釣りや胴突き仕掛けで狙われています。全長は25㎝ほど。
コモンフグとよく似ているものの、網目模様なので見分けがつきます。
「ショウサイは網目」と覚えましょう。
またコモンフグよりやや沖目の砂地に生息しています。
<見分け方>
- 褐色地に白い「網目」模様
<有毒部位>
- 筋肉と精巣が食用。筋肉は弱毒
コモンフグ
コモンフグは、比較的浅場の砂地・砂泥エリアに生息しているフグです。全長25㎝程度。
ショウサイフグによく似ているんですが、白い斑点(小紋)が散らばっているので見分けがつきます。
ショウサイフグを釣る船でも浅場を主に狙う際は、しばしば混じるので、覚えておきたいところ。
<見分け方>
- 褐色地に白い斑点
<有毒部位>
- 筋肉のみ食用
- 岩手県越喜来湾、釜石湾、宮城県雄勝湾で漁獲されるコモンフグは食用不可
アカメフグ(標準和名「ヒガンフグ」)
アカメフグと釣り人が呼ぶフグの多くは、標準和名ヒガンフグを指します。この項ではヒガンフグについて解説します。標準和名「アカメフグ」は別の種類です。
全長35㎝程度。湾内の岩礁帯・沖根周り・岸壁エリアに多く生息しているフグで、船釣りのターゲットとしても人気。
東京湾ではショウサイフグともども「湾フグ」と呼ばれることも。寝かした身は旨味が濃く、トラフグに勝るとも劣らない味わい。
内臓と皮に毒があるものの、誤って食べて中毒になる人も。特定地域では毒性が変わるため、食用としての流通が禁止されている地域もあります。
浅場に多く生息していて、砂礫まじりの砂地でカレイ釣りをしているとよく釣れるフグです。特にイワイソメを使うと高確率で釣れる傾向に。
<見分け方>
- 茶褐色地に濃い茶色の斑点
- 腹部と背、側面との境目に黄色いライン
- 眼が赤褐色
<有毒部位>
- 筋肉のみ食用
- 岩手県越喜来湾、釜石湾、宮城県雄勝湾で漁獲されるヒガンフグは食用不可
トラフグ
トラフグは言わずと知れた高級魚。
東京湾や相模湾でも個体数が増えていて、東京湾では専門の釣り船も出船しています。
よく似たフグに「カラス」がいて、もともと同一種類とされていたのが、区別されるようになりました。「カラス」は東シナ海など、トラフグより生息域が南なのが特徴。養殖されるようになったトラフグと異なり、数が減少しているといわれます。
<見分け方>
- 胸鰭の後ろにある白で縁取られた黒い大きな斑点(よく似た「カラス」全体的にぼんやりとした殻)
- 尻びれが白い(よく似た「カラス」は尻びれが黒い)
- 背と腹側に棘
<有毒部位>
- 筋肉、精巣、皮が食用
- 他のフグ同様、フグには精巣と卵巣の両方を持つ雌雄個体がいるため、卵巣と精巣を誤認して中毒になることがある
シロサバフグ
大型のシロサバフグ。背びれの付け根まで棘が至っていないのが特徴
シロサバフグは、沖釣りで様々な釣りの餌取りとして猛威をふるうフグです。
タイラバ、一つテンヤ、マゴチ釣り、スミイカ、コマセ釣り、泳がせ釣りなどなど、シロサバフグの群れがいるとひとたまりもありません。
全身に毒がないのが特徴で、身欠きにされたものが唐揚げ用として流通していますが、南方に存在するドクサバフグとの混同もあり注意が必要。
<見分け方>
- 側面から腹部は白い
- 背と腹に棘
- 背側の棘は背びれまで至らないが、ドクサバフグは至る
- 尾鰭下方が白か灰色
<有毒部位>
- 筋肉、精巣、皮が食用
イシガキフグ
イシガキフグはハリセンボン科で伊豆諸島など温かい海全般でよく見られる大型のフグ。60㎝を超える個体もいます。
岸壁や堤防際を漂っていることが多く、ヘチ釣り、遠投カゴ釣りなどで釣れることも。
沖縄では「トーアバサー」と呼ばれます。
<見分け方>
- 全身に短い棘
- よく似たネズミフグに比べて棘が短く、胴体に細かい斑点がほぼない
<有毒部位>
- 無毒
ハリセンボン
ハリセンボンはハリセンボン科でイシガキフグ同様、無毒。
棘が特徴で、乾燥させて民芸品になっていることも。
沖縄ではアバサーと呼ばれます。
<見分け方>
- 全身に長く鋭い棘
<有毒部位>
- 無毒
ハコフグ
堤防釣りをしていて、弁当箱ぐらいの物体がぷかぷかいゆっくり泳いでいるなーとおもったらハコフグかもしれません。
ハコフグはハコフグ科で、フグ毒「テトロドトキシン」を持たないのですが、体表にパフトキシンという毒を持ち(ストレス等で分泌)、体内にはパリトキシンを持つ個体がいます。
<見分け方>
- 棘はなく箱型
<有毒部位>
- 体表にパフトキシン
- 筋肉にパリトキシンと持つ個体も(毒力や有毒性には個体差あり)
素人のフグ料理は危険
毎年素人がフグ調理をして事故になっているわけすが、よく似た種類の誤認であったり、無知からくる有毒部位の摂取が原因です。
事件概要をみていると、釣り人が当事者になっていることもしばしば。
- 肝臓、白子、卵巣など、個体ごとの可食判断ができない
- 筋肉、皮、粘膜に毒がある種類もいる
- 身欠きをしても毒がある
- 毒力に個体差や地域差がある
以上から、素人のフグ調理はやめておきましょう。
どうしても食べたい場合は、フグ調理師免許を持つ人がいる船宿で船釣りをするか、フグ料理屋に問い合わせて持ち込む方法があります。
<参考リンク>