釣りにまつわる言葉って、意味がわからず使っていることばってありますよね。
今回は、海釣りで釣れる魚の名前「ダイナンウミヘビ」などに使われる「ダイナン」の由来についてです。
ダイナンウミヘビ・ダイナンアナゴ・ダイナンギンポについて
海釣りを長くやっているとメジャーではないんですが「ダイナン○○」という魚を釣ることがあります。
- ダイナンウミヘビ
- ダイナンアナゴ
- ダイナンギンポ
知らない人もいるとおもうので、それぞれみていきましょう!
ダイナンアナゴ(通称クロアナゴ)
ダイナンウミヘビ
ダイナンギンポ(通称ギンポ)
寡聞にして知らずなのですが、みんな長物ですね。
ほかにもダイナンという名前を持つ魚がいるんでしょうか。
ダイナンギンポは釣り人の間では「ギンポ」という通称で、釣りでは本家ニシキギンポ科のギンポより出会う確率が高いかと思います。
関東のゴロタ場あたりで出会うギンポはだいたい「ダイナン」パイセンですね。
背と腹びれの骨部分を除去して天ぷらにすると皮目のコラーゲンがあり身も淡白で実に美味。
本家ニシキギンポ科のギンポは、食味がよくなるとされる初夏限定に天ぷら屋が仕入れることもあり、高級魚とされます。
そこで、釣りや料理系のブロガーやユーチューバーは「【江戸前超高級魚】穴釣りでにょろにょろした○○が釣れた!」みたいなタイトルをつける。
わかりやすくCTRをあげていきたいからです。
やっぱり高級魚ってあると、一定数クリックはしたくなる。
その気持ちよくわかります。
が、よくみると、だいたい流通しないダイナンギンポだったりします。
それはそれで旨いからよいんですけどね。ギンポはギンポだから。
次に、ダイナンアナゴやダイナンウミヘビの取り扱いはどうなんでしょうか。
たぶんこの両者は、岸釣り・船釣りともども、だいたいの釣り人から忌み嫌われている魚な気がします。
両方食べづらいのと、仕掛けを破壊したりするからです。根に潜られると回収できないという。
ダイナンアナゴは「クロアナゴ」という通称があり、東京湾では乗合船が出ていたりします。
持ちかえる人もいますし、スポーツフィッシングとしてリリース前提で楽しむ人も。
ノーマル・クロアナゴ
本家のクロアナゴはマアナゴが黒くなって1mぐらいまで成長します。
これがダイナンアナゴとなると、1メートルを優に超え、太さが2リットルのペットボトルくらいになることも。
1キロ2キロではなく4キロ5キロくらいの重量級が岸壁近くから釣れたりします。
東京湾のアナコンダとか呼ばれたり。
そう、尋常ではない重量感(引き味)が人気なわけです。
横浜から横須賀あたりの護岸エリアで、根が荒いところに隣接した砂泥地にいき、夜間ぶっこみ釣りをすると、出会う確率が増えます。
最後にダイナンウミヘビ。
この魚はダイナンアナゴを超える長さに成長するんですが、引き味がないんですよね。
この状態で餌を食べるor違和感を感じると海底に尾から潜るから根がかりと同様の釣り
釣れるときに身体の半分以上が海底に潜っているんで、最初は根がかりかと思う。
うわー根がかりかよー。
ちょい待てよ、ここ根なんかなくね?むしろ砂泥っしょ。ポークショ。
で、大根を引き抜くかのように、引きずり出すと、あら不思議。
あとはもう全く引きません。
なんだか長いものがうねうねとしているんですが、遊泳力はかなり低いわけです。
だから釣り物としては、専門に狙う人はほぼいない状態。
岸釣りでぶっこみ勢の人が、エイやサメを狙っていて、ゲストで釣りあげるぐらいです。
「わーダイナンだー!」ってな具合に。
じゃあ魚の頭につく「ダイナン」ってなんのことなの?
お前が厄介とおもっているとき、俺もお前のことを厄介だとおもっている
ではこれら魚につけられた「ダイナン」という名前の由来はどこにあるんでしょうか。
ここからはあくまでも推測です。
大きく分けて2つあると思います。
一つが「大灘」説。
「灘」自体は、潮流が速かったり、風浪が激しく航行が困難な海域を指します。
鹿島灘、播磨灘などなど。
で、「大灘」は沖合や外洋(潮流が速い・風浪が激しい沖合の難所)を指す言葉とされます。これは辞書を読むと書いてある。
その「大灘」に由来しているという説なんですが、ちょい待てよ。
ダイナンウミヘビ・ダイナンアナゴ・ダイナンギンポの3種類って、みんな湾内だったり、港湾部に生息しているよなと。
ダイナンギンポはゴロタ場に多いけど、外洋じゃねーよなと。
そこで登場するのが「大難」説です。
読んで字のごとく、程度がひどい災難というような意味合いです。
仏教には「大難」という言葉あり、釈迦が生涯に受けた九種類の横難( 不慮の災難)のことを「九横の大難」というようです。
つまり、釣れたり、底引き網などで漁獲されると、きわめて厄介な災難だから「大難」とされたのかも。
ダイナンウミヘビとかダイナンアナゴは、漁業者が漁獲した場合も、網や蟹カゴを壊したり、他の魚を傷つけるわけです、噛みついてね。
逃がそうにも船の上で暴れて危ないという。しかも隙を見るとマジ噛みしてくるし。
そういう厄介系のニュアンスが「大難」なのかもしれません。
もしくは、「難い(かたい)」という意味合いで、「食べるにも扱いづらい、料理しづらい」というような意味合い。
それに水の生き物だからサンズイをつけたほうがいいんじゃないかな、ってな具合で「大灘」と表現されたのかも。
そう考えると、言葉の響きが同じだから「灘」とつけただけであって、「潮流が速い・風浪が激しい沖合の難所」などの意味合いは関係なさそうですね。
じゃあ、ダイナンギンポはどうなのか。
これも大型になり、本家のギンポと比較すれば大味ではあるので、獲れても出荷できず厄介な存在としてあつかわれたんじゃないでしょうか。
はたまた、長年、アナゴなどの長物に特化して研究をしていた大灘(おおなだ)さんがつけた名前だからだったり。
うーん、これはちょっとなさそうですね。
ダイナンアナゴとダイナンウミヘビに共通する厄介系のニュアンスが偶然とは思えない。
あとはそれぞれ、マアナゴ、ウミヘビ(魚類)、ギンポに対して比較的大型であるという点も共通していますしね。
大型というニュアンスについて、響き的にも「ダイナン」っていうのは何となくしっくりきます。
意味がわからなくても、なんとなくネガティブな要素に聞こえます。
「タイタン(巨人)」みたいな。韻をふんでますね。これもたぶん関係なさそうですね。
まとめ
ダイナンウミヘビ。よくみるとスネ夫っぽくてユニークな顔つき
魚介類の名前の由来も、書物などで語り継がれてわかっているものもあれば、口頭伝承で地域によってさまざまに変化しているものがあります。
謎の言葉「ダイナン」。
とりあえず、多くの釣り人はその名前を聞くとネガティブになりがちなのは間違いなさそうです。
「扱い難し」ってことで、「大難」なのでしょう。
個人的には、ダイナンウミヘビもダイナンアナゴもダイナンギンポも、それぞれユニークな風貌で面白いとしか思いません。
ヒラメやマゴチなどの泳がせ釣りでダイナンウミヘビが来ると、ちょっと嫌だなーとは思うけどね。
ではでは。
平田(@tsuyoshi_hirata)