夜の堤防からぶっこみ釣りをしていると、しばしばアナゴの仲間が釣れますね。
釣れたアナゴの種類はしばしば混同されがち。
今回は岸から釣れるアナゴ(マアナゴ・クロアナゴ・ダイナンアナゴ)の違いを解説します。
マアナゴについて
横浜の岸壁から釣れたマアナゴ
国内で「アナゴ」として一般的に認識されている魚はマアナゴです。
アナゴの仲間では食味がもっとも優れ、クロアナゴやダイナンアナゴより小骨が弱く処理しやすいのも人気です。
アナゴ天や煮アナゴと言えば、もともとマアナゴを使った料理を指すものでした。
現在は沖で獲れるイラコアナゴ・マルアナゴ(ウミヘビ属)なども安価なアナゴ料理品(回転寿司等)に使用されています。
マアナゴは最大で1mほどまで成長し、東京湾では30㎝未満をメソ、メソっこ、と呼びます。
低水温に強く真冬を含めて周年釣れますが、東京湾の船釣りでは4月後半~1か月前後狙われています。
<マアナゴのデータ>
- 名称:マアナゴ(真穴子)
- 別名:はかりめ(側線上の「・・・」印が漁師のつかう棒はかりに似ていたため)
- 分類:ウナギ目アナゴ科
- 大きさ:最大サイズ1m
- 色合い:茶褐色
- 食味:◎(処理が簡単)腹部が金色に輝き、胴体に対して頭部が小さく見えるものは特に美味
- 旬:東京湾では梅雨前後とされる(江戸前では脂がのっていないさっぱりしたものが好まれてきた)
- 食性:死んだ魚・ゴカイ類・ボケジャコやカニなどの甲殻類
- 生息域:砂泥底、水深1~20m。フィリピン近海、東シナ海付近で産卵しているとされる
- 釣れる季節:船は初夏(東京湾)、エリアにより周年。岸釣りは周年
- 値段:1kg2,000円~3,000円程度。
クロアナゴについて
クロアナゴ
クロアナゴは岸から釣れる長物のなかでは最もマアナゴによく似ている魚です。
しばしば、後述のダイナンアナゴと混同されます。
マアナゴ同様、側線上に点状の模様があるのですが、薄いのが特徴。
マアナゴとしばしば比較され食味は劣るのですが、丁寧に下処理すれば美味しい魚です。
より大型になるため小骨はやや強いと言えます。そのため、煮アナゴ等にする際は、小骨を除去しましょう。
釣りの世界では、クロアナゴは1mを超える個体も多く、基本的に釣れるとリリースされている魚ではあります。
クロアナゴの身質。臭みのない上品な白身。皮ごと調理したい
よくマアナゴと混同され、「食べてみたけど、小骨が多くて臭い」というような感想がSNS等でUPされます。
これは小骨と下処理不足(保冷・内臓&血合い・ぬめり)が原因と思われます。
低水温に強く真冬を含めて周年釣れます。
<クロアナゴのデータ>
- 名称:クロアナゴ(黒穴子)
- 別名:特になし
- 分類:ウナギ目アナゴ科
- 大きさ:最大サイズ1m以上
- 色合い:黒
- 食味:〇(処理が大変)
- 旬:不明
- 食性:死んだ魚・ゴカイ類・ボケジャコやカニなどの甲殻類
- 生息域:砂泥底(ゴロタ石・護岸・岩場・テトラ帯が近くにある)水深1~20m
- 釣れる季節:岸釣りは周年
- 値段:あまり流通しない。未利用魚として投棄されがち
ダイナンアナゴについて
まな板の上のダイナンアナゴ
ダイナンアナゴは岸から釣れる長物のなかでは最も大型に成長し、尋常ではない重さと引きの強さです。
しばしば、前述のクロアナゴと混同されます。
東京湾でも釣り物として出船している船がありますが、「クロアナゴ船」という名称の釣り物です。
クロアナゴ同様、丁寧に下処理すれば美味しい魚です。小骨は強く、ハラミ以外での処理は必須。
釣りの世界では、ダイナンアナゴは1.5mにせまる個体も頻繁に釣れ、主にゲームフィッシングの対象として狙われています。
低水温に強く真冬を含めて周年釣れます。
東京湾では横浜から横須賀にかけての埋立地跡・護岸エリアに多く生息しています。
<ダイナンアナゴのデータ>
- 名称:ダイナンアナゴ(大難穴子・大灘穴子)
- 別名:アナコンダ(とくに東京湾)
- 分類:ウナギ目アナゴ科
- 大きさ:最大サイズ1.5m。上からみるとクロアナゴよりずんぐり太く。ペットボトルぐらいの太さはざらにいる
- 色合い:黒
- 食味:〇(処理が大変)
- 旬:不明
- 食性:死んだ魚・ゴカイ類・ボケジャコやカニなどの甲殻類
- 生息域:砂泥底(ゴロタ石・護岸・岩場・テトラ帯が近くにある)水深1~20m
- 釣れる季節:岸釣りは周年
- 値段:流通しない。未利用魚として投棄されがち
釣りあげたダイナンアナゴは強烈に暴れる
マアナゴ・クロアナゴ・ダイナンアナゴの違いと見分け方
側線上の模様
上からクロアナゴ、マアナゴ、アイナメ
まず、マアナゴとクロアナゴ類(クロアナゴ・ダイナンアナゴ)では側線上の点状模様の濃さに差があります。
マアナゴは「はかりめ」とも呼ばれ、側線上の点状模様が濃く、クロアナゴ類では薄いのが特徴です。
<側線上の点状模様>
- マアナゴ:薄い
- クロアナゴ、ダイナンアナゴ:薄い
ダイナンアナゴ。側線上の模様が薄い
マアナゴは点点が濃い
色
マアナゴは基本的に茶褐色。腹部付近は金色に輝く
マアナゴとクロアナゴ類(クロアナゴ・ダイナンアナゴ)では体色に差があります。
<体色>
- マアナゴ:茶褐色
- クロアナゴ、ダイナンアナゴ:黒。光をあてるとグレー
大きさ・太さ
ダイナンアナゴは圧倒的な太さ
マアナゴ・クロアナゴ・ダイナンアナゴ)では最大サイズや太さに差があります。
<最大サイズ>
- マアナゴ:1m程度。釣れるのは50㎝以内の個体がほとんど
- クロアナゴ:1m以上程度。80cmもしばしば釣れる
- ダイナンアナゴ:1.5m程度。1m以上もしばしば釣れる
<太さ>
- マアナゴ:メーター級でも指4本程度
- クロアナゴ:メーター級でも指4本~5本程度
- ダイナンアナゴ:メーター級以上で5~6本以上(頭部は2Lペットボトル級の太さがあります)
※大型の個体が釣れるクロアナゴやダイナンアナゴは⓵そもそも狙われていない②釣れるとリリースされる③ハリス切れという理由から大型が多い印象です。釣り人が少ないエリアでは大型化したマアナゴもよく釣れます。
メーター級のマアナゴ
65㎝程度のクロアナゴで指3本程度
釣ったアナゴがまずくて臭い4つの理由
釣りあげたアナゴを持ち帰って食べる場合、しばしば「臭くて食べられなかった」「ドブのようなニオイがした」というような話を聞きます。
これにはいくつかの理由があるのですが、環境由来というよりも下処理不足が大きな原因です。
血抜きをしてない
血抜きをしないで食べると、滞った血が劣化して身肉の雑味が増えます。
特に下処理完了後から食べるまでに数日たつと顕著です。
活かしたまま持ち帰って、さばくと、血抜きをかねることができます。
保冷不足
野締めのアナゴをクーラーボックスに入れて全身が保冷できてない状態が続くと、魚体全体からニオイが生まれます。
締めた後に持ち帰る場合、必ず氷海水にアナゴの全身がつかるようにし、氷を切らさないようにしましょう。
ぬめりをとってない
ダイナンアナゴ
アナゴの仲間は他の魚以上に体表をほぼするためにヌメリが強いのが特徴です。
このヌメリが持ち帰り時の臭み発生の原因になります。
また、下処理時にヌメリを残したまま冷蔵庫で保冷するのもNGです。
<アナゴ類のヌメリのとり方>
- ひらいたアナゴをまな板の上に載せ、熱湯をかける
- 皮目にういた白いぬめりを包丁の刃側でこそぎ落とす
- さっと水洗いしてキッチンペーパーで水分をしっかり拭う
その他、丸のまま酢をかけて包丁でこそぎ落とす方法もあります。開いた後に酢をかけると身肉にニオイがつくので注意しましょう。
内臓処理(特に胃袋と血合い)
釣りあげたアナゴをさばいた経験がある人はわかると思いますが、アナゴ類は胃袋自体がかなりの臭みをもっています。
アナゴは死んだ魚をふくめた有機物をなんでも食べます。また、内臓に未消化物が残存していることも多いのが特徴です。
岸釣りでぶっこみ釣りで狙う場合、アタリに気づかず居食いしていることもあります。
その場合、食道から胃袋付近には針を飲み込んでいることも多く、身肉に未消化物の臭いがついてしまいます。
調理する際は、胃袋と腸を傷つけないようにしましょう。
持ち帰り後、翌日以降になると、胃壁が溶けてしまい臭みが増します。
その他アナゴと間違いやすい魚
ギンアナゴ
エリアによってはアナゴ釣りをするとギンアナゴが釣れる場合があります。
ギンアナゴはマアナゴよりさっぱりしているのですが、食味がよい魚です。
天ぷらに最適。
側線上の点が見づらい点と、全体的、金色に輝いている特徴からマアナゴと区別できます。
ギンアナゴとマアナゴの違いは以下の通り。
- ギンアナゴは側線上の白点が見えづらい
- ギンアナゴは全体的に金色
- ギンアナゴは目が大きくつぶら
- ギンアナゴは砂泥底より砂地を好む
ウナギ
ウナギはアナゴよりのんびりした表情をしている
マアナゴは湾内だけでなく河口部でも釣れるのですが、同エリアはウナギの生息域と重なります。
そのため、河口や湾内の漁港などでぶっこみ釣りをすると、アナゴに混ざってウナギが釣れることがあります。
ウナギとマアナゴの違いは以下の通り。
- 口:ウナギは受口だが、マアナゴは上唇が下唇の前に来る
- 目:ウナギは小さくつぶらな瞳だが、マアナゴは大きめ
- 胸鰭:ウナギの胸鰭は大きめ
- 色:天然ウナギの背はモスグリーンに近く、腹が黄色いことが多い。繁殖のため海にいく個体は黒
- 尾:ウナギの尾は丸みがあるが、アナゴは尖っている
- 側線上の斑点:ウナギにはないが、アナゴにはある
ホタテウミヘビ
マアナゴが好む砂泥底はその他の長物にとっても、最適な生息地です。
河口部から湾内の砂泥底にはホタテウミヘビもすんでいます。
普段は砂泥底に潜っていますが、夜になると餌を食べに徘徊します。
ホタテウミヘビの顔つき。獰猛で、かみついてくる(歯はない)
ホタテウミヘビとマアナゴの違いは以下の通り。
- ホタテウミヘビは全体的に細く長い
- 頭部が尖っている
- 目と目の間にシワがある
- 釣りあげると口を大きく開けて威嚇してくる
釣りあげたホタテウミヘビはアナゴ類より狂暴
ダイナンウミヘビ
砂泥地、砂底にはダイナンウミヘビもしばしば生息しています。
ホタテウミヘビ同様、漁港内の水揚げ場など、やや潮の滞ったところに多い魚です。
澄んだ海では砂泥底・砂底から頭部だけを出すダイナンウミヘビを見かける
ダイナンウミヘビとマアナゴの違いは以下の通り。
- ダイナンアナゴは頭部がするどく尖っている
- ダイナンアナゴには鋭い歯がある
- ダイナンアナゴは全長1m50㎝ほどになるが、ゴムホースのように細い
- 釣りあげると口を大きく開けて威嚇してくる
まとめ
マアナゴ
今回は岸から釣れるアナゴ(マアナゴ・クロアナゴ・ダイナンアナゴ)の違いを解説しました。
アナゴの仲間以外にもウミヘビの仲間など、マアナゴは様々な魚と混同されがちです。
特徴を覚えて、ぶっこみ釣りを楽しみましょう。