メゴチは独特の見た目やヌメリから釣りあげても持ち帰るのをためらう人も多い魚です。
実は適切な処理をすれば、かなり美味しい魚。
近年釣れにくくなっているメゴチの釣り方と料理法を紹介します。
メゴチの生態と特徴
釣り人が口にする「メゴチ」は、主にスズキ目ネズッポ科のネズミゴチを中心とした種類を指します。標準和名でいうカサゴ目コチ科の「メゴチ」とは異なる魚と覚えておきましょう。
以下、この記事では「ネズミゴチ」のことを「メゴチ」と表記して解説していきます。
メゴチは、ほぼ日本全国の内湾に生息していて、全長は20cmほどに成長します。関西では「がっちょ」と呼ばれることもあるのですが、あだ名の由来は、ガツガツ餌を食べる様子からついたとされています。
砂底、砂泥底にはりつくように生息していて、主な餌はゴカイ類や小型の甲殻類。
岸からの釣期は、シロギス同様、水温が高い5月~10月がメインです。
メゴチの釣り方
近年、メゴチ自体が少なくなってきた
メゴチを専門に釣る人は見られず、シロギス釣りに混じって釣れて来るのが一番多いパターンです。
仕掛けは、片手天秤に一般的な袖針の二本針の投げ仕掛けでOK。
ハリがあまり大きいと吸い込まれにくいため、小型の軸が長いを選びましょう。
流線針やキス用競技針など軸が長い針を使えば、針先が吸い込まれにくくなり、手返しがよくなります。
水槽内のメゴチ。そこにべったり、ジッとしている
エサはアオイソメもしくはジャリメが一般的。
キャストして、仕掛けが着底したら、30cm~1mずつ海底を引いてきます。仕掛けを移動させたら、必ず5~10秒程度待ち時間を入れましょう。メゴチは俊敏な魚ではないので、この待ち時間にヒットします。
ちょい投げでは、仕掛けを早めにさびくとシロギスが釣れ、比較的放置気味にするとメゴチが釣れます。
これは同じ底上に生息する魚でも微妙にタナが異なるからです。メゴチは底にべったりぎみ、シロギスは、底上30cm以内あたりを群れで回遊しています。
メゴチ釣りの場合、アタリがあったら巻けば釣れるため、特別なテクニックは必要ありません。
ヌメリと棘があるのでグリップをつかうとよい
釣りあげたメゴチは大量の粘液を体表から出すため、「メゴチバサミ」と呼ばれるようなフィッシュグリップで体を押さえ、釣り鈎を外しましょう。
ハリを外す際は、エラ蓋部分に鈎状の棘あるので触れないようにします。
▼フィッシュグリップは常備!
メゴチの持ち帰り方
保冷をしっかり。ヌメリ対策で袋にいれて持ち帰る
メゴチは鮮度落ちが速い魚。氷をしっかりきかせて持ち帰りたい。
メゴチは、鮮度落ちが速い魚です。
高水温期の夏から秋にかけて多く釣れる魚でもあるのですが、釣りあげたらバケツに放置せず、氷海水で氷締めしたあとにジップロックなどで他の魚とわけて保冷して持ち帰りましょう。
ジップロックに入れる際は、エラぶたにある棘をハサミでカットしてからしまうと袋が破けません。
▼持ち帰りはクーラーバッグやクーラーボックスでよく冷やして
悪臭を放つ「ヤリヌメリ」に注意
ヤリヌメリ。エラ蓋の棘が槍のようにとがっている。激臭。
実は「メゴチ」とほぼ同じ姿形の魚に「ヤリヌメリ」という魚がいます。
この魚は、釣りあげると「玉ねぎが腐ったような強烈な臭い」を放つ魚です。間違ってクーラーボックス等にいれると中にいる魚がすべて臭くなってしまいます。
メゴチを釣る際は、一尾ずつ臭くないか、エラ蓋の棘がまっすぐに尖っていないか確認しましょう。メゴチの棘は鈎状に曲がっています。
▼ヤリヌメリについての詳しい解説はこちら
メゴチはマゴチ狙いの「特餌」
メゴチは、底物と呼ばれるフィッシュイーターを狙うときに有効な餌の一つです。
とくにマゴチ釣りでは、シロギスをしのぐ釣果をあげるので、持ち帰らないのであれば餌にしてみるのも一つです。
シロギスと比べてマゴチのうごきが緩慢で、タナも底上からズレにくいため、運動能力があまり高くないマゴチにとっては食べやすい餌なわけです。
マゴチ以外では、1キロ未満の小型のヒラメもよく釣れます。
メゴチ餌で釣れたマゴチ
メゴチ餌で釣れたヒラメ
食べ方の注意点
メゴチは身が少ない。天ぷらにする場合、10尾ぐらいは釣りたいところ
基本的に釣ったその日に食べる
メゴチは身に水分が多く、未消化の胃内容物が常に入ってることから腐敗しやすい魚です。
保冷をしっかりして持ち帰った後は、すぐにハラワタを出し、できれば当日、遅くても翌日には調理して食べるようにしましょう。
内臓が臭いので身にできるだけつかないように注意
メゴチやシロギスのように、ゴカイなどのエサを常に食べている魚は、胃内容物が特に臭いのが特徴です。
さばいた後は、まな板や包丁を変えたり、都度洗ってから他の調理に進めるとよいでしょう。
メゴチのさばき方
メゴチはヌルヌルして調理がしにくい魚ですが、コツを覚えれば簡単に素早く下処理を終えることできます。ぜひ覚えておきましょう。
ヌメリは落とさず、背びれ部分に浅く包丁をいれていきます。
指が滑る際は魚を持つ手に軍手をはめるか、布巾でおさえましょう。
そのまま頭部まで包丁を進め、胸鰭のつけねの手前で切り込みをいれます。
腹側の皮が着いた状態で、ひっくり返し、包丁の刃先でメゴチの中骨を固定し、頭部を腹側にひっぱります。
すると皮が、ずるりとむけます。
この際、内臓や血合いが残ります。流水で手早く流し、水気をキッチンペーパーでとっておきましょう。内臓が身につくと独特の臭みがつくので注意です。
以降の作業は、まな板を洗剤で洗うか、別のまな板で行いましょう。
漁師や船宿の女将さんもこのように簡単に処理しています。
天ぷら用には松葉おろしにし中骨を落とします。
煮つけにする場合は、写真のように棒身のままで大丈夫です。尾は切り落としていますが、ついていても問題ありません。
メゴチのオススメ料理レシピ
メゴチ料理でオススメは以下の通り。
- 天ぷら
- 煮つけ
- 刺身
メゴチ天
メゴチは、江戸前天ぷらの高級食材
なにはともあれ、メゴチをもっとも美味しく食べる方法は、天ぷらです。
シロギスと似ている味わいで、ほくほくしてとても美味。「シロギスをしのぐ」と評価する人もいます。
天つゆでも塩でも上品な味。
メゴチの煮つけ
写真左がメゴチの煮付け。右はベラ
メゴチの皮をひいた棒身を、やや濃い目に甘辛くにつける煮つけは、素朴な味わいでゴハンによく合う味です。
家庭で揚げ物が大変なときは、ベラなどの魚と一緒にまるっと炊いてしまうと、楽におかずにできます。
メゴチの刺身
実は、あまり知られていませんが、メゴチは刺身にしても美味しい魚です。
釣ったその日に食べる場合、ためしてみましょう。
メゴチの刺身は、わさび醤油で食べるほかに、ポン酢と生姜で食べるのもオススメです。スダチと塩で食べるのも乙です。
メゴチの卵の塩辛
夏場に釣りあげたメゴチやシロギスは、抱卵していることもしばしば。
たくさん釣った場合ですが、内臓を処理する際に卵をとりだし塩辛にしてみると珍味です。
メゴチの卵を日本酒に一晩漬け、その後、日本酒を捨てたあとに大量の塩で密封します。
1週間から1か月程度で塩をすて、食べることができます。
これは裏技ですが、お茶漬けの具としてもオススメです。
メゴチは意外な高級魚?
メゴチは、それほど多く水揚げされるものではなく、鮮度劣化も早いため、スーパー等にはほとんど流通しません。
一方、江戸前天ぷらでは高級食材とされているため、天ぷらにできるような20cm程度のサイズはよい値段で取引されています。
また海沿いの町では、天ぷら用に皮と内臓を処理したものが10尾/数百円程度で販売されていることもあります。
まとめ
メゴチは、見た目に反して、とても美味しい魚です。
ヌメリや調理の手間をおそれてリリースしがちですが、今回紹介したとおりに下処理すれば簡単に調理できます。
シロギス釣りであれば、メゴチも一緒に持ち帰って、食味の差を楽しんでみるのも一つの楽しみかもしれません。
小型のメゴチは食べるところがほとんどないのでリリース
料理には、15㎝~20cmのメゴチが適しています。あまり小さいものはほとんど身がないので、リリースするとよいでしょう。