岸釣り船釣りを問わず、ブッコミ釣り、泳がせ釣りなどで釣れる魚としては、忌み嫌われてしまっているアカエイ。
潮干狩り場にも現れるためメディアでも注意喚起されている魚ではあります。エイ・サメといえばどんな種類でも何かと嫌われがちですが、専門に狙って釣ると、とても魅力的なターゲットです。
今回は身近な堤防で狙えるアカエイの習性や釣り方について解説します。
アカエイについて
アカエイは尾を含めて全長約2m、体重は数十kgまで成長します。背面は暗めの赤褐色。若い個体のほうが色が明るい傾向にあります。
腹側は白地にオレンジ色の縁取り。背面側の尾の付け根に毒棘があり、釣り上げた際に攻撃されると靴やウェーダーのゴム底などは貫通し鈍痛と腫れに襲われます。
アカエイの腹部。白い肌の外縁をオレンジ色が囲んでいる
アカエイは昼間でも活動するものの、夜間により積極的に食餌する夜行性の魚類です。
船宿周りにいるアカエイ。釣り客が捨てるアラなどのエサが豊富だからか昼間でも活動
海面付近を漂っていることもありますが、口が胴体下側についていることもあり、底にある餌を吸い込むようにして食べています。
こちらはアカエイの口。
歯はやすり状で、主にアサリなどの貝類を砕いて捕食するのに適しています。
アカエイ釣りのシーズンや時間帯について
湾内の浅場では頻繁にアカエイを確認できる
アカエイは1年中堤防から狙えますが、特に海水温があがる4月~11月ぐらいまでが高活性といえます。
厳冬期も東京湾の岸壁から釣ったことはあるので、いつでも釣れる魚といってよいですが、狙って釣るには海水温が高い季節に夕まずめ以降の夜間帯を狙うとよいでしょう。
河川のアカエイ釣りについて
このような都市河川でも海との障壁がなければアカエイは遡上する
アカエイは完全な海水でなくても生きることができます。
河川の汽水域までは上げ潮にのって遡上します。基本的に、河川でアカエイを釣る際は、上げ潮を中心に狙うと釣果につなげやすいといえます。これは、アカエイが餌をもとめて川を遡上するからです。
下げ潮で湾内にもどっていくアカエイ
アカエイ釣りは初心者でも簡単か
他の釣り物をやっていると、所謂「外道」(ORETSURI的にいうと「貴殿」)としてよく釣れるアカエイ。
一方、アカエイだけを狙って釣り、釣果やサイズを求めるにはいろいろと考える必要もあります。
アカエイは、
- 餌をつけて投げるだけの釣り
- 繊細な魚ではない
という考えは、決して間違えではないのですが、より釣果を上げるためにはスキルも必要です。
たとえば、アカエイが食餌のために回遊するルートや時間や漁港・堤防内で潮のながれによって餌がたまる部分などを見極めておくのもスキルです。
どんな釣りでも突き詰めようとすればおもしろさがあるのです。
アカエイがいるポイント
漁港はアカエイがとくに好む場所
釣りができる漁港内であれば、荷揚げ場や漁船があつまる船溜まりエリア、魚市場等からの排水がながれるエリアがアカエイを釣りやすいポイントです。
これは漁船にもよりますが、商品価値のない魚を海に捨てたり、出荷前の下処理などで排水溝から魚のアラが流れてくるのをアカエイが知っているためです。
荷揚げ場や船溜まり周辺はロープ類も多いので、釣り禁止の場所はさけ、漁業者の迷惑にならない時間帯に釣りをしましょう。タックルも強いものを使い、必要以上に暴れさせない配慮が必要です。
アカエイは大きいもので数十キロサイズになり、足場によってはタモ入れが困難ですが、針がかり後、スロープがあるところまで誘導できればずりあげることができ、比較的スムーズに釣り上げることができます。
堤防・岸壁
アカエイは基本的に砂泥底を好む魚です。
堤防や岸壁まわりにも生息していますが、底の地形が根がらみのところよりは、砂泥底を狙うとよいでしょう。
また、堤防の釣りはどのポイントも同じようにみえますが、潮によって釣り人の巻くコマセや弱った小魚(ベイト)類が集まるポイントがあります。
アカエイの場合は堤防突端の人気エリアでなくても問題なく釣れますが、どこに釣り人のエサが集まるかをチェックしてから釣るとよいでしょう。
相模湾の漁港で釣ったアカエイ
※堤防エリアはタモ網がないとアカエイをランディングするのが困難です。必ず用意しておきましょう。
河口域
アカエイはシーバスと同様、汽水域にも生息している魚です。
河口部は潮の干満により干潟となるところもありますが、満潮前後を狙うか、干満時に澪筋になるところに仕掛けを投げておくと、比較的に簡単に釣ることができます。
また、河川の合流部分などは、上流から流れてくる餌がたまりやすく絶好のアカエイポイントでもあります。
護岸等で高さがないところであればランディングは比較的簡単。網を使わず岸までずり上げて針を外しましょう。
湾内の砂地
手漕ぎボートで釣ったアカエイ@横浜・海の公園
ボート釣りなどで狙われる内湾で砂地のエリアもアカエイ釣りの好ポイントです。
変化のないようなエリアでも、駆け上がりや航路によるエグレなどが存在しています。変化を探して狙ってみるとよいでしょう。
ボート釣りで泳がせ釣りをする場合、アンカーを使用して仕掛けを動かさないと高確率でアカエイが釣れます。ノーアンカーで流し釣りをするとマゴチやヒラメが釣れる可能性が高くなります。
アカエイ釣りに適したタックル
釣り竿
昨今話題の怪魚系ロッドのように頑丈なものであればなんでもよいですが、磯竿5号や石鯛竿など丈夫なだけでなくしなやかなものをつかうとアカエイの強烈な引きをいなすことができるのでオススメです。
8フィート前後のロッドは柵がない釣り場であれば比較的問題ないですが、柵や手前に根などがあるエリアの場合、タモ入れシーンも考慮して長めの磯竿や投げ竿が適しています。
リール
スピニングリールでも問題ないですが、ベイトリールを利用すると巻き上げ力が強いため、比較的スムーズにアカエイを寄せることができます。
スピニングリールを利用する場合は、小型のものではドラグ力が低くアカエイがヒットしたときに巻き上げることができません。ドラグ力が強いモデルを用意しておきましょう。
ベイトリールを利用する場合、ラインアラーム(クリッカー)というアタリがあったときに音を立てる機構があるものを用意するとぶっこみ釣り等でアタリを待つのにも便利です。
道糸とハリス
道糸は飛距離を出す必要があるポイントの場合はPEラインがオススメです。4号以上を100メートル以上巻いておけばよいでしょう。
障害物がなく、スロープやボート等であればPE1.5号程度でも130cm・20キロ程度のサイズは釣りあげることができます。
一方、アカエイには引っ張られるときに尾で道糸部分をはたく性質があります。
細めのPEラインの場合はランディング時などに尾の棘にひっかかり切れてしまうこともあります。PEラインを道糸にする場合は、フロロカーボン15号以上を2~3m程リーダーとしてつけておくとさらに安心です。
竿の素材がグラスメインではなく、カーボンメインの場合は、ハリスをナイロン15号以上にし、PEラインと結節しておくと、より大きなアカエイの引きにも対応できます。ただし摩擦への強さはフロロカーボンが上です。
アカエイ釣りの仕掛け
アカエイ自体がターゲットとして確立されておらず、狙っている人口が少ないため、アカエイ釣り仕掛けというものは市販されていません。
以下のものを組み合わせて自作するとよいでしょう。
- 太軸のチヌ針、ムツ針、鯉針(管付きのものが結節しやすい)
- 天秤類(石鯛パイプ天秤などの強度が確かなもの)
- 船釣り用のオモリ20~30号程度(潮の早いポイント・河口部分は30号以上も)
アカエイ釣りのエサと取り扱いの注意点
身餌(アジ・イワシ・サバ・コノシロ・サンマなど)
アカエイを釣るには必ずしも生きている魚を用意する必要はありません。スーパーで廃棄寸前の値引き商品でも構いませんし、釣行時にあまった魚を切り身にして冷凍しておくということでも大丈夫です。
アカエイの場合、それほど口が大きくないため、大型のアジなどはフィレにするなど工夫したほうが、食い込みはよいでしょう。
夏以降は現地でマハゼを釣って、エサにするのもよいでしょう。夏から秋の河川内のアカエイでの特餌でもあります。丸のまま冷凍しておいたハゼでもよく釣れます。
アカエイの釣り方
前述の通り、ポイントを見極めてから仕掛けを投入したら仕掛けを底につけて鈴などをつけて待つだけです。特にアクションは必要ありません。
台風や大雨の後は、ゴミが仕掛けに絡むこともあるので、状況によって餌の点検をするのも効果的です。
▼アカエイの捕食動画。こちらの動画はダイビングスポットで餌付けされている固体群の模様。餌の死魚に対して覆いかぶさるようにして捕食し、しばらく咀嚼したあとに移動する姿が印象的。アカエイ釣りで大きなアタリがでるのはこの移動時。
釣り方の注意点
竿を放置する場合、ドラグをゆるめに調整をしておくか、尻手ロープや手すりなどに竿を固定しておきましょう。
アカエイが針がかりして沖に走ると、比較的大型のタックルでも、岸壁の柵をこえて海に落ちてしまいます。
アカエイの釣果を伸ばす方法!
ここまでの説明でポイントを見極めるという点をお話しましたが、さらにアカエイの釣果を上げるためにできることは、ずばり撒き餌です。
魚(内臓や骨など含む)を細切れにしたものをポイント周辺に撒くことによりアカエイを寄せることができます。撒き餌をする場合は、付近の投げ釣りの釣り人の迷惑になるかもしれないので、場や他者に配慮して行うとよいでしょう。
鯉の団子釣りの要領で魚のアラなどを土などで団子状にし、潮上に投げ込んでいく方法もよいです。
アカエイ釣りのゲスト
ここではアカエイ釣りでかかってくるゲストを紹介します。
ベイシャーク(ドチザメ・ホシザメなど)
食性や生息域が重なっているため、サメ類も釣れることがあります。
マアナゴ
根がらみの砂泥底にはアナゴ類も生息しています。アカエイ釣りのゲストで釣れるマアナゴは、エサや釣り針のサイズから必然的に巨大なものが多くなります。
大型の個体はやや筋張っていますが、天ぷらなどにすれば旨い魚です。
クロアナゴ
クロアナゴも混じって釣れてきます。
東京湾であれば横浜エリアの場合、1メートルサイズも岸から釣れているようです。小骨が多くやや大味ですが、フライなどにするとおいしい魚です。
アカエイの毒棘について
アカエイはダガーのような形状
よく知られているようにアカエイの尾のつけ根には毒棘があり、先端は尖っていて、刺さったら抜けないようにカエシもついています。
この毒棘にもし刺されてしまうと、患部を中心に猛烈な痛みに襲われます。患部を洗い、お湯を沸かして患部をつけるとたんぱく毒が不活性となり、痛みがやわらぎます。
程度にもよるかもしれませんが、応急手当後は病院に向かうとよいでしょう。傷の深さによって患部の壊死などもおきます。
アカエイの下処理
サメやアカエイは鮮度落ちしやすく、魚体にアンモニアが発生すると臭みがでるため食味が著しく落ちます。
釣れたあと食べるために持ち帰るためには釣り場で以下の処理をするとよいでしょう。
- 毒棘の除去
- 血抜きができる環境であれば行う(血のあとは洗い流す)
- 内臓をすべて除去(肝臓は美味なので必要に応じて持ち帰る)
毒棘の除去については人によって方法は変わりますが、ワニグリップやトングを持参しておき、尾の付け根を押さえて、棘自体をナイフか調理ばさみ(100均の剪定バサミもオススメ)で切りとります。
メゴチバサミのように剛性が低いものはアカエイの強力を動きをとめることができず、折れ曲がってしまうときもあるので注意です。
尾自体をナイフで切り取るという方法がありますが、リリースする場合は、棘を取り除く程度にとどめておくとよいでしょう。
アカエイ料理は煮付けとフライとレバ刺しが人気
アカエイは釣り物として嫌われているかもしれませんが、実は食味は優れています。
釣り場で下処理をして、冷やして持ち帰った個体の味は絶品です。
煮付け
アカエイを甘辛く煮つけるとごはんによく合う味です。軟骨部分を柔らかく炊くには長時間加熱しましょう。生姜と炊くのがオススメ。
フライ
身やヒレ部分を日本酒につけてから、フライにするのも美味しい食べ方です。
ムニエル
アカエイのムニエルも定番の料理です。
仕上げのソースにレモン汁をきかせるとさらに美味しく食べることができます。
刺身
ヒレ部分を日本酒で洗った後、刺身にしてみるのもおすすめです。
コチュジャン+ごま油+コショウ+ネギ類で韓国風に和えるのもよいでしょう。
レバー刺し
血抜きがしっかりできたアカエイの肝臓を、ごま油と塩で食べる方法も人気です。
一方、魚介類の肝臓は、どんな魚でも様々な毒の分解がされる部位でもあります。工業地帯や都市河川河口で釣った個体については寄生虫の課題も含めて食べるのは自己責任でどうぞ。
アカエイ釣りに必要なアイテム
アカエイはかなり引きが強い魚なので、大前提としてできるだけ足場がよいところで釣りをしましょう。
- 釣り公園
- 漁港
- 堤防
- 河口の岸壁
どんな釣りでもそうですが、夜間の釣りは特に危険を伴うものです。
ヘッドライトやライフジャケットの装備など、ご自身で状況を判断して安全に釣りを行いましょう。
ORETSURI読者のアカエイ釣果写真
ここではORETSURIが運営するFacebookグループ『釣りトーク by ORETSURI』に寄せられた写真を紹介します。