釣り物だけでなく、食材としても喜ばれるアマダイ。
本州では主に三種類のアマダイ(赤甘鯛・黄甘鯛・白甘鯛)がいます※。
また南方の奄美・沖縄周辺の海域では新種「華甘鯛(ハナアマダイ)」が生息しています。
それぞれ水深50~200m程度の砂泥底に穴を掘って隠れながら生活しているため、漁業でも大規模に漁獲できず、延縄で狙われています。
鮮度がよいアマダイはどれも高価で、スーパー等ではあまり見られません。
このアマダイですが、一見よく似ているので、判断に迷うことも。
今回は「アマダイ釣り」で釣れるアマダイの仲間(アマダイ・キアマダイ・シロアマダイ・ハナアマダイ)やよく似た魚の見分け方を紹介します。
※日本列島全体では墨付甘鯛を含めて5種類のアマダイ類が見られる
赤甘鯛(アカアマダイ)
アカアマダイ約40㎝
<赤甘鯛(アカアマダイ)>
- 生息域:ほぼ本州全域(中国地方・九州・秋田以南の日本海側での漁獲量が多い)
- 水深:30m~150m
- サイズ:最大60cmほど
- 食性:ゴカイ類、蟹・海老などの甲殻類を食べている
- 特徴:甘鯛3種のうち、色が一番赤い(薄ピンク色)
アマダイ釣りで最もよく狙われているのが赤甘鯛(アカアマダイ)。
漁獲量も最も多く、アマダイといえば、第一にアカアマダイを想起する人が多い魚です。
通称は「ぐじ」で、「若狭ぐじ」といえばこのアカアマダイを指します。
砂泥地で傾斜や隆起など地形変化がある場所に穴を掘って暮らしています。
甘鯛の穴は、餌の多い場所に固まってできるため、周りでアマダイが釣れた場所は、特に集中して狙うのがおすすめ。
大型ほど縄張りをもつといわれ、オモリで叩いて興味関心を促す釣り方も知られています。
基本的に遊泳力が高くないので、餌を早く動かすような誘いには反応しません。
黄甘鯛(キアマダイ)
黄アマダイはあまり大きくならない
<黄甘鯛(キアマダイ)>
- 生息域:本州中部から西南(比較的西南での漁獲量が多い)
- 水深:80m~300m
- サイズ:最大40cmほど(アカアマダイより大きくならない)
- 食性:ゴカイ類、蟹・海老などの甲殻類を食べている
- 特徴:甘鯛3種のうち、顔と背びれ・尾びれの黄が強い。目の下に涙のような白い筋がある
黄アマダイは、しばしばアカアマダイと混同され「アマダイ」と総称して流通している魚です。
アカアマダイより深場まで生息します。
アカアマダイ狙いのメイン水深である60~100mでも黄アマダイが混じりますが、120m、150mと水深が深くなると、黄アマダイの比率があがります。
漁獲量はそれほど多くないのですが、後者の白アマダイと比較すれば珍重はされず、アカアマダイより味が劣るとされます。(理由の考察は後述)
ところが実際食べ比べてみると、味はほぼ変わらないので、不当に低評価されている印象です。
生態などはアカアマダイとほぼ同じと思って問題ありません。
最大サイズはアカアマダイより小型で40㎝前後。
釣りあげた後は黄色が褪せていく
白甘鯛(シロアマダイ)
大型の白アマダイ
<白甘鯛(シロアマダイ)>
- 生息域:本州中部から西南(比較的西南での漁獲量が多く、エリアによっては白アマダイ主体の漁場もある)
- 水深:30m~80m
- サイズ:最大60cm以上(アカアマダイより大型もしばしば釣れている)
- 食性:ゴカイ類、蟹・海老などの甲殻類を食べている
- 特徴:甘鯛3種のうち、全体が白い。生きているうち、鮮度がよいときは薄ピンクで、死後白くなっていく
白アマダイはその色から「シラカワ(白皮)」と呼ばれ、食味は最高とされ、大型の個体は特に珍重されて料理店などに流れていきます。
状態が良いものは1kg10,000円以上で取引され、「幻の魚」とも呼ばれます。
アカアマダイと比較すると浅い場所を好み、水深30~60m程度をメインに生息しています。
西南地域に多いのか、メインで狙う水深からか、エリアによっては白アマダイがアカアマダイの釣果をこえる場所もあります。
近年、白アマダイが釣れなかった場所(例:相模湾)でも白アマダイがよく釣れています。
これは平均海水温の上昇以外に、「浅場を流すとシロアマダイが釣れる」というノウハウが遊漁船同士で広まっていることも原因と思われます。
白アマダイの釣果がよく出ている船宿では、朝イチでまず近くの浅場で白アマダイを狙ってから、沖の深場を攻めるというパターンもよく見ます。
華甘鯛
ハナアマダイは新しく認知された新種
<華甘鯛(ハナアマダイ)>
- 生息域:奄美大島、沖縄周辺
- 水深:100m~300m(さらに深い水深での採捕記録もある)
- サイズ:最大40cmほど
- 食性:ゴカイ類、蟹・海老などの甲殻類を食べている
- 特徴:甘鯛3種と比較すると、白アマダイと黄アマダイが混ざったの色合いに近いが新種とされ、南方に生息している
ハナアマダイは黄アマダイに近いのですが、さらに華やかな色彩を持っています。
沖縄周辺の深場に生息していますが、釣り物としての存在はまだマイナーでよく知られていません。
赤アマダイ・黄アマダイ・白アマダイの違い
見た目の違い
次に本州の沿岸部でよく釣れる3種の甘鯛(アカアマダイ・黄アマダイ・白アマダイ)の違いと見分け方を紹介します。
下からアカアマダイ・黄アマダイ・白アマダイです。
白アマダイは比較的浅場で釣れることと、グレーがかった白と薄ピンク色と黄色が少ない点から判断できます。
一方、アカアマダイと黄アマダイは交雑個体もいて、判断しづらいものもいます。
こちらは赤アマダイ。
こちらは黄アマダイ。
頭を比べてみましょう。
下の黄アマダイは、目から上唇にかけて白(銀色)のアーチ状の線があり、頭部の黄身が強いのが特徴です。
次に尾を見ていきます。
両者ともに黄色が混じっているのですが、下の黄アマダイは尾の上部まで黄色が差しています。
赤甘鯛(写真上)の尾上部は赤み(ピンク)が多くなっています。
次に背びれを比較してみましょう。
こちらは黄アマダイの背びれ。
こちらは赤マダイの背びれ。
光によってわかりづらいかもしれないのですが、黄アマダイは背びれの真ん中ぐらいまで黄色が差しています。
上:黄アマダイ 下:アカアマダイ
この写真でみると、よりわかりやすいですね。
アカアマダイと黄アマダイの味は違うの?
赤アマダイと黄アマダイは食味に大差がない
アカアマダイと黄アマダイについては、後者の方が味が落ちるとよく言われます。
では、実際どうなのでしょうか。
実際に同時にアカアマダイと黄アマダイの食べ比べを人も多くはないはずです。
個人的には、同時に同じサイズを刺身で食べ比べた結果、「ほぼ変わらない(違いを判断できない)」という印象です。
むしろ、季節、サイズ、釣ったあとの処理や保冷の仕方、調理の技巧による差が大きいのではないかと思います。
同じタイミングで釣った場合、黄アマダイのほうが平均サイズが下がるというのもポイントです。
甘鯛は大型のほうが脂ノリがよく、身もしっかりしているため、黄アマダイと比較するとアカアマダイが旨いと感じやすいのではないでしょうか。
番外編「イラ」
大型のイラ。実はうまい
ここまで、アマダイの比較をしてきましたが、釣り慣れていないとき、アマダイ類とよく間違いやすい魚がいます。
イラです。
イラはベラの仲間で最大45㎝ほどに成長します。
- 甘鯛に比べて鱗が大きい
- 鋭くとがった歯があり、噛みついてくる
- 頭部がせりだしている
以上の特徴でアマダイと見分けられます。
イラはその見た目や、釣りあげたあとに噛みつこうとしてくることから釣りでは嫌われがち。
一方、冬場の身質はよく、水分を抜いて料理すると大変美味です。
イラは、上質な白身が特徴。振り塩で水分を調整して調理したい
まとめ
今回は「アマダイ釣り」で釣れるアマダイの仲間やよく似た魚の見分け方を紹介しました。
釣り慣れてくるとすぐに見分けがつくのですが、最初はみんな同じアマダイに見えます。
本州では、よく釣れる赤アマダイ・黄アマダイ・白アマダイの違いをよく覚えておくとよいでしょう。