近年あらゆる船釣りが「ライトタックル化」してきています。
重めのオモリに太いPEラインをつかった旧来のタックルは「ノーマルタックル」と呼ばれるようになりました。
そんなノーマルタックルで長く楽しまれている釣り物が「ビシアジ」です。
比較的「深場」や」「潮流が速い場所」でアジを狙う際に選ばれているのですが、「ライトアジ」と比較して、やや敷居が高い釣り物。
今回は走水・観音崎・鴨居・猿島沖・相模湾の「ビシアジ」で釣果をあげる釣り方とコツを解説します。
ビシアジとは
ビシアジは言わば「ライトアジ」の源流にある釣りです。
「ビシ」と呼ばれるコマセカゴを天秤につけ、2本から3本針の吹き流し仕掛けでアジを狙います。
大まかな釣り方やタックルの構成はほぼ一緒と思っても過言ではありません。
ただ、ライトアジと比較して潮流が速い場所や深場のポイントが多いので、釣り方には工夫が必要です。
船によっては、釣り座(基本4隅)や空き具合により、釣れたアジを泳がせ青物やヒラメが狙えることもあり、根強い人気です。
東京湾では、走水・観音崎・鴨居・猿島沖が特にビシアジが楽しまれている釣り場です。
またお隣相模湾でも浅場から深場までビシアジが楽しまれています。
アジ自体は夏に食味が増しますが、周年狙える釣り物です。
ビシアジ竿の選び方
走水周辺海域の潮流はかなりのもの
ビシアジで使用する竿は第一に頑丈である必要があります。
手持ちでシャクリをいれる都合上、1.5m~1.9m程度が扱いやすく、ビシをしゃくっても破損しない丈夫なバットが必要です。
はじめて購入する場合、ビシのしゃくりやすさと食い込みのバランスがよい7:3調子のものを選びましょう。
他に8:2調子と6:4調子のビシ竿があります。
8:2調子はさらにしゃくりやすいものの、アタリを弾いたり、バラシが増えます。
6:4調子は食い込みがよいのですが、慣れないとビシを動かすのに苦労します。
最初はクセのない7:3調子を選び、食い込みはクッションゴムで調整するとよいでしょう。
ビシアジ専用竿で選ぶ場合
各メーカーからビシアジ専用竿が販売されているので、頻繁にビシアジ釣行をするのであれば専用竿を買うのも一つです。
ビシアジ竿の特徴は、150号程度のオモリまで対応していて、~1.9m程度の長さであることです。
バット部分が強く、近年は穂先が繊細な竿が増えてきました。
比較的年代がふるい竿や中深場竿は穂先が太目という特徴があります。
ビシアジ専用竿を別の釣り物に応用する場合、以下の活用法を覚えておきましょう。
ビシアジ竿は中深場釣りに活用可能
- 泳がせ釣り
- イカ類(深場)
- オニカサゴ
- 中深場五目
- タチウオ(深場)
<おすすめのビシアジ専用竿>
※基本的に繊細な釣り物ではないので、入門機種で必要十分です。
▼ビシアジ Xはダイワの入門竿です。MH-170 が一番汎用的なモデル。
▼アナリスタービシアジはステップアップしたい人におすすめのビシアジ竿。オールSiCガイド、糸絡みしにくい穂先のガイド形状、ねじれにつよいブランクスが特徴。
▼アジビシBBはシマノの入門竿。汎用性が高いのは180㎝。上位機種には、「ベイゲーム X アジビシ」と「リアランサーXアジビシ」がある。
代用竿で選ぶ場合
代用竿で選ぶ場合、オモリ負荷150号~200号程度の7:3調子の竿や、やわらかめのヤリイカ竿が適しています。
▼ダイワ・剣崎MT 120-170MT 。 アジ・イカ・オニカサゴ・アカムツ・ライトキンメ等に使えるメタルトップの汎用竿
▼ダイワ・ディープゾーンX120-180。中深場竿用ですが、ビシアジにもつかえます
▼シマノ・ディープゲームBB120-180。汎用中深場竿。ビシアジでもOK
※ほかに、シマノでは「ライトゲームBBモデラート73 H195」は軽量でビシアジにも使用できる丈夫な竿です。
リールの選び方
ノーマルタックルをつかったビシアジの釣りは、中型電動リールが主流です。
PEラインの太さとビシの大きさと重さから潮受けが強いので、手巻きリールの場合、剛性や巻き上げ力が高いものを選びましょう。
女性や子供の場合は基本的に手巻きでのビシアジは困難です。
電動リールで選ぶ場合
PE4号から5号程度が最低200m巻ける中型電動リールを選びましょう。
水深×2倍以上糸巻き量があると高切れした際も安心です。
手巻きリールで選ぶ場合
剛性が高く巻き上げ力が高い両軸リールを選びましょう。
手返しを考えるとハイギアで、パワーハンドルのモデルがキーパーに置いたままでも巻き上げやすいと言えます。
▼シマノの両軸リールでは、小船、バルケッタSCがおすすめです。
道糸
ビシアジでは、PE4号から5号程度を使います。
近年のPEラインは丈夫なので、潮受けを考えると4号を最低200m(水深×2倍目安)巻いておきましょう。
仕掛け
ビシアジの仕掛けはライトアジと同様で、道糸側から以下の構成です。
- 弓型天秤(コマセカゴの負荷が強いため線材が太いもの)
- コマセカゴ130号~150号
- クッションゴム(なくても釣れますが、バレにくくなります。中太輪ゴムでもOK)
- ビシアジ仕掛け(2本or3本針)
天秤とビシ(コマセカゴ)
天秤とビシについては、こだわりがなければ船宿からレンタルするのが一番です。
特にビシは他の釣りに応用できず、船宿によって目の細かさも違ったりします。
こだわる場合は天秤のみ持参して、ビシだけ船宿から借りるのも一つです。
※天秤を持参する場合、ビシ固定用のスナップが丈夫なものを選びましょう。ロストします。
▼弓型天秤がおすすめ。金属疲労で腕が折れやすいので線材は太目で
クッションゴム
ハリス2号or3号にあわせたクッションゴムを用意します。
大型のアジを深場で掛けた場合、口切れリスクが高まります。
天秤のハリス側にクッションゴムや輪ゴムをつけておくと、口切れを軽減できます。
複数尾かけて釣る場合、特に装着したほうがよいでしょう。
適度な腰から、ハリスやハリが天秤に絡みつくことも少なくなります。
仕掛け
仕掛けは市販のビシアジ仕掛け2本針もしくは3本針を選びます。
ハリスは2号が基本で、大アジやサバが多い場合、マダイが混ざる場合は3号を選びましょう。
ビシアジでは時折マダイがヒットしますが、ムツ針10号はすぐに曲げられてしまいます。
本格的に狙う場合は、ドラグ調整の上、ハリだけ真鯛針に変えておくのも一つです。
ロッドキーパーはビシアジには必須
ビシアジはタックルが重いため、手持ちでしゃくるとは言え、竿を置いて固定できるキーパーがないと極端に釣りづらくなります。
船宿でもレンタルできます。
ビシアジの釣り方
大物!と思いきやビシが重いだけ
ビシアジはライトアジとほぼ同じ釣り方です。
横浜より湾奥のライトアジでは基本的にタナ2mか3mまでコマセを数回しゃくって待つもの。
ビシアジが盛んな走水・観音崎・鴨居の海域では3m程度が指示ダナであることがほとんど。
船長のアナウンスをよく聞き、タナの位置を把握しましょう。
走水・観音崎・鴨居の海域では潮が速く、ビシが着底したつもりでも吹きあがったりします。
- はじめにハリスを潮下に流して、竿を手に持ちオモリを海面に置くようにおろす。手前マツリしていないことを確認してからゆっくり投入
- サミングをしながら落とし込む(フリー投入は潮受けしがち)
- 着底後すぐにラインを巻き取り、指示ダナまで数回コマセを撒いて、指示ダナでしっかり固定
- 道糸が斜めに流されている場合、5mほど海底から巻き上げて暫くとめて、なるべく道糸を立ててから再度着底させる
- 指示だなで待っている間にアタリが出たら、合わせず引き込みを感じてから等速巻をする。電動リールの場合、5m程度手で巻いてから、電動巻上げを開始
- 30㎝を超える良型はかかりどころに関わらずタモ入れする
<潮が速い場合の釣り方>
- 潮が極端に速い場合、コマセを撒かないで底上で放置→ビシが吹きあがり、自然とコマセとハリが同調する
- しゃくらず指示ダナまで巻き上げて放置
- 着底後、1mまで巻き上げてシャクリってから、放置
※潮が速いときにコマセをたくさん撒くと、潮にのったコマセを追ってアジが散ってしまうので注意
ビシアジのコツ
細いPEはシャクリ時に高切れするので注意
慣れないときは大潮・中潮を避ける
ビシアジがはじめての場合、なるべく小潮など潮の動きが少ない日に釣行すると釣りやすいと言えます。
不慣れな状態で大潮や中潮の日に釣行すると、底立ちが取れなくなり、オマツリも増えて、成功体験をつみづらくなります。
釣り座の整頓(ロッドキーパーとコマセ桶の位置)
風がある日ほど、釣り座の整頓が重要です。
特にロッドキーパーとコマセ桶の位置関係には注意しましょう。
スパンカー(帆)を広げたときにミヨシ側(船首)が風上になるので、キーパーはミヨシ側に、50~1m程度あけてコマセ桶を船尾側に設置します。
コマセの手返し
道糸がまっすぐに立つときは潮がゆるいときです。
潮がゆるめなときにはとにかくコマセの手返しをあげて、自分のビシのまわりにアジを固めましょう。
特にアジから離れがちな潮上に位置する釣り竿ほど、頻繁なコマセワークが必要です。
コマセを撒きすぎない
潮が速いときにはコマセを撒きすぎると魚が散ることもあります。
これは撒いたコマセを追ってアジが散ってしまうからです。
状況によってはシャクリを入れず、潮にビシを乗せてしまうほうがアタリにつながることがあります。
タナのアワセ
走水・観音崎・鴨居・猿島沖では、底上3m以内がタナの基本です。
一方、潮の速度によっては指示通りタナを合わせただけではアタリが出ないこともあります。
前述の通り、潮にあわせていくつかの誘いを試してみましょう。
再投入の手返し
数釣りの場合は、手返しが重要です。
釣り座の整理はもちろんのこと、アジを釣り上げてから再投入するまでの速度を向上しましょう。
ハリ外しはプライヤー系よりは、エリアトラウト等の針金を曲げたものが便利です。
連がけ狙い
走水・観音崎・鴨居・猿島海域では水深30~50m程度を狙います。
相模湾では70m以深でつることもしばしば。
数を狙う場合は、毎投連がけ狙いでやったほうが効果的です。
1尾あたりがあったら、竿のテンションを保ったままごくゆっくり1~2mほど仕掛けを巻き上げます。
追い食いした場合は、竿にかかる重さがわかるので、等速巻で巻き上げましょう。
ゆっくり巻きすぎてもハリが外れがちですのでほどほどに。
ビシアジの注意点
ビシアジの釣りでおきがちなトラブルと対策をあげておきます。
オマツリ
ビシアジが楽しまれている海域は、比較的潮が速いことがほとんど。
各船、トラブルが少ないようにPEラインやオモリの号数を統一してやっています。
- 細すぎるPEライン
- 軽すぎるビシ
- 状況にあっていない無理がある泳がせ釣り(釣り座間隔・ハリス長さ・オモリ号数)
- 底立ちがとれない
- サミングができない
以上はオマツリの原因になりがちです。
PEラインとオモリの号数はしっかりルールを守り、底立ちがとれない場合は船長に相談しましょう。
竿の破損(穂先折れ、バット折れ)
ビシアジで使用するビシは潮受けするとかなりの負荷になります。
シャクリをするときに、穂先にPEラインが絡んでいると、穂先折れになりがちです。
また、バットの剛性が弱い竿の場合、バットから破損することもあります。
しっかりした強度の竿を選び、毎投穂先がらみがないか確認してから釣りをしましょう。
まとめ
鴨居沖の大アジ(40㎝弱)
今回は走水・観音崎・鴨居・猿島沖・相模湾の「ビシアジ」で釣果をあげる釣り方とコツを解説しました。
電動リールを使うのが基本なので、やや敷居が高いかもしれません。
一方、電動タックルも操作を覚えてしまえばキーパーに固定したまま釣りが完了するのでお手軽です。
ビシアジで狙う海域のアジは大型が多く、最大で50㎝近い巨大なアジも釣れます。
食べるのであれば30㎝以内のものがよいですが、大きなアジは引き味も抜群。
ぜひチャレンジしてみてください。
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