Books&Appsの安達裕哉さんの記事を読んだ。
30代後半からは、意図的に「教えてもらう側」に回り続けないと、学びがどんどん下手になる。
正確にいうと、2年半前に何度か読んで、思うところを書いていたのだが、下書きに寝かしていて今になってまとめている。
安達さんとはこの記事を読んだあとに一緒に釣りにいったことがある。
冒頭の記事は、安達さんが船釣りをはじめて釣りの「つらい」を味わっているという話からはじまり、「年齢が進むほど人は他人から学ぶことが難しくなる」という主旨で書かれている。
失敗から学べない人は、失敗を受け止めず、失敗の理由を知性や自分の能力にする。
ところが、学習能力の高い人は、失敗を自分の力を伸ばす上で欠かせないものとして自然に受け止める。
ところが、「できること」「うまくやれること」だけをやっていると、この勘が鈍ってくる。
「失敗しないが普通」ではダメなのだ。
だから私は「Twitter」や「釣り」、「筋トレ」など、新しいことを定期的に始めるようにしている。
とても腹落ちする文章なので、特に管理職になった人、30代後半の方はぜひ読んでみてほしい。
30代後半は「ぬるま湯」につかりがち
大雨注意報の時に嬉々として外で遊ぶ趣味もあまりない
サラリーマンであれば、30後半ともなると管理職の人も多くなってくる。
課長、次長、部長、マネージャー、ゼネラルマネージャー、執行役員などなど。呼称はいろいろだ。
あなたは部下や年下から仕事や諸々の相談をうけて、こんなことをやってないだろうか。
- 知らないことでも知っているフリをしてしまう
- よくわからない話題やロジックで負けそうなとき、自分の土俵に引きずり込んでコミュニケーションする
部下:「○○部長、△の件についてですが、私はこうだと思うんです」
上司:「ま、そうだな。でもな、俺が昔やった案件ではな(以降、エンドレス武勇伝ループ)」
「いや、そんなことはない。自分は上司として部下の話をよーく聞いて柔軟に動いているよ」
そう、思っている人も多いと思う。
が、それは自分の思い込みであり、部下からは「あの人はなんだかなー」と思われているのではないだろうか。
あなたも若いころは同じことを上司や先輩に感じてきたことがあるはずだ。
組織において、上司と部下は単なる役割。
こういったことが優れた企業ではよく言われるが、大多数の企業ではそんなことはない。
程度の低い企業ほど、上司は本来の役割を超えて部下に力を発揮し、部下は表向きは良い顔をして上司の言行をワッショイする。
仕事をまわすのが楽になる。
「コンフォートゾーン」などともいわれるが、会社組織は気がつくと上司や先輩世代にとって居心地がよくストレスも少なくなってくる。
同じ業界や会社などの狭い世界。日々全力に取り組まなくても物事が進んだりする温さ。
このコンフォートゾーンは「ぬるま湯」であるともいえる。
そしてこの「ぬるま湯」には大体の場合、追い炊き機能がない。人は「ぬるま湯」につかり続けるとやがてぬるま湯がさらに冷えて風邪をひく。
これはサラリーマンでなくても、経営者でもフリーランスでも言えることだ。
たしかに「釣り」はつらい
当然パンツまでびしょ濡れである
冒頭で紹介した記事にあるとおり、釣りは基本的につらいものだ。
この話をすると、「釣りって、楽しいですか?」と聞かれることがある。
回答は無論、「楽しい」なのだが、実はそれと同じくらいの割合で「つらい」も配合されている。
例えば今の時期、洋上はめちゃくちゃ寒い。
撒き餌を仕掛けに詰めるのも、手がかじかんで、めっぽう辛い。
日陰で何時間もじっとしていると、寒くて頭がおかしくなりそうになる。
揺れる船も問題だ。手元で紐を結ぶなどの、慣れない細かい作業をしていると、船酔いしそうになる。
休もうにも、逃げ場がない。目をつぶると、余計ひどくなるし。地獄。
長く釣りを続けていると麻痺してくる。
だが、釣りをしない一般的な感覚に立ち返ってみると、やっぱり釣りはつらい。
いろいろ異常と思われる行動もしがちだ。
- 朝3時に起きて出かける。しかも眠れず徹夜もしばしば
- 雨の中でも竿をだしてびちょぬれ
- 真夜中でも竿をだしたり。しかも何も釣れないこともしばしば
- 夜を徹して、気づいたら朝だったり
- 手が動かないほど寒い真冬の海上で、震えながら竿をだし続けたり
- 身体がじりじり焦げるような真夏の炎天下で竿をだし続けたり
- 蚊やヌカカ、マダニや蛭の襲撃をうけたり
- 船ならば船酔いになったり
- 釣り船ならば船長や中乗りスタッフ、そして残念な性格の常連にどやされたり
などなど。
30歳後半のビジネスマンがネットワーク構築のために好んでやる趣味にゴルフがある。
ゴルフも、よく釣りと似ているとされる。
が、ゴルフは紳士がポロシャツの襟をたてて、整えられた環境で行うもの。
釣りのような滅茶苦茶さはないはずだ。
だが、改めて考えると、実はこの「つらい」が、めちゃくちゃ重要なのだ。
実際、「楽しい」だけであれば、貴重な時間を使う意味はあまりないと思っている。
このつらさを経験するのが、30代後半に陥りがちなコンフォートゾーンを突破するのに効果的というわけだ。
30代後半からの釣りは「船釣り」が選ばれやすい
船釣りなら子供でも大物や高級魚を釣るチャンスが高い
特に中年以上になって釣りをはじめる余裕がある人の多くは一定の財力がある。
一方、家族がいる人も多い世代なので、必然的に限られた時間で実績を求めるようになりがちでもある。
週休2日制のサラリーマンであれば、土日。
家族がいる人は、土日の一方が釣行日にあてがわれる。
はたまた、平日に有給をとって人が少ないときを狙うというスマートな方法もよくある。
- 短時間で釣りたい
- 釣りにいくのなら、できればボウズ(なにも釣れないこと)は免れたい
- どうせ釣るなら食べる魚を釣りたい(家庭がある人は特に)
こうした理由から、30代後半から釣りをする人は船釣りをはじめることが多くなる。
筆者は30年以上、色んな釣りをやってきたが、船釣りは陸釣りより簡単に魚を釣ることができるのは事実だと思う。
船釣りだって奥が深く、やり込む要素は大きい。
だが、それでも岸から魚を釣るよりは、船で釣るほうがイージーだ。
釣り船であれば、自分で魚が釣れる場所(ポイント)を見つけなくても、狙う魚がきちんと釣れる実績のある場所へいける。
ビジネスの移動手段には以下のようなものがある。
- 電車やバスなどの公共交通機関
- タクシー
- 運転手付きの車
順に見かけのコストは高くなるが、費用対効果は高くなる。
これを釣りにあてはめると、だいたい以下の通りだ。
- 岸釣り
- 遊漁船の釣り(手漕ぎボート釣りは岸釣りと釣り船の中間)
- マイボート
このうちマイボートを購入して釣りをするとなると経営者以上の経済力が必要になってくる。
だから、自然と30代以降の人が選ぶのは、コスパが高い釣り船になってくるはずだ。
船釣りの世界は、ときに修羅
まさに、修羅。もういかないと思うのもよくわかる
釣り船こと遊漁船の釣りは、費用対効果が高く、実際魚を釣りやすい。
一方、そこには一般ビジネス社会でそれなりに尊重されてきたビジネスマンのプライドを打ち砕く存在がある。
船宿にもよるが、一定数以下のような存在がいる。
- 横柄な船宿スタッフ
- 高飛車で丁寧語を使えない船長(いい人も多い)
- タバコをぽんぽん海に捨てる中乗りスタッフ
- 我が物顔にふるまう常連釣り師(いい人も多い)
釣り船の業界はサービス業だが、そうは思えない船宿もしばしば見受けられる。
あなたに同行して釣りを丁寧に教えてくれる友人・知人がいればいい。
が、そうでない場合、独学で釣りを予習して船釣り当日に臨むはずだ。
これがだいたいの場合、本番は予習通りにはならない。
ビジネスの場でのプレゼンや商談は、あらかじめ想定した落としどころになったとしても、釣りは自然を相手だ。
それなりに素養がなければ、だれしも小学生のような存在になってしまう。
- 釣り道具はうまく扱えない
- 釣り糸は周りの釣り客とオマツリになりトラブルが頻発する
- 船長や船宿スタッフがイラ立ち、時に発せられる怒号
もしあなたが会社などで「しかるべき立場」な場合は、自分の思い通りにできない状況に動揺するはずだ。
当然、船宿スタッフや他のベテラン釣り客の態度にも怒りを覚えることもあるだろう。
「なんでコイツは丁寧語を使えないのか」
「なんでお金を払っているのに怒られるのか」
が、だいたいの人はその場で他者にクレームをつけることはしない。
それがスマートなビジネスマンだからだ。
でも、厭な目にあったからという理由で、もう二度と釣りをしなくなる人も多いと思う。
実際に魚が釣れたり、「アタリ」の快感を感じることができれば、あなたは継続するかもしれない。
プライドがリベンジに機能することもある。「悔しいから次は釣りたい」と思う人も多い。
が、そうでない場合、「なんだ、釣りとはこんなにつまらないものだったのか」と思ってもう釣りをしなくなる。
1日の船釣りで交通費や食事代をいれて13,000円から15,000円程度投資して、酷い目にあえばそう思うのも当たり前だ。
「初心者です。1から教えていただけますか」を言えるか
教えてもらう力が低いと上達速度が著しく下がる
船宿やベテランの釣り客についてネガティブな表現をした。
もちろん素晴らしい船宿もあるし、やさしい上級者もたくさんいる。
船釣りでは、物理的に船長が一人で教える時間があまりとれないという場合もあるから仕方ない場面も多い。
そうした状況で、重要なのは自分からよりベテランの釣り人に明るく挨拶をし、「初心者です。1から教えていただけますか」をいえるかだと思う。
中には露骨に意地悪な人もいる。
が、あなたも緊張やビジネスで培われたプライドから「ムスッ」として、行動していないかを確認したほうがいい。
人間は、だれしも目前の相手の態度によって行動を変える生き物だ。
「至誠にして動かざる者は未だこれ有らざるなり」
という言葉がある。
これは高杉晋作をはじめ、幕末の志士を生んだ吉田松陰の言葉だ。
誠の心をもって、人に臨めば必ず人の心は動かすことができる。といった意味合いだと思う。
初対面で「俺には害意はないよ」と伝える点では、やっぱり笑顔も大事だと思う。
釣りでベテランになって胡坐をかかないために
「やったことがない釣り」はRPGのクエストそのもの
さて首尾よく釣りをはじめて、時間と道具に投資さえすれば、だれでもそこそこ釣りが上手くなると思っていい。
特に今の時代はスマフォを開けば、ブログや動画で「釣り方の勘所」がすぐに探せるから上達は早い。
昔は名人やベテランの技を盗み見たり、聞いたりし、長期間かけてなんとか身に着けたものが、簡単にネットで手に入る便利な時代でもある。
すると、どうだろう。
いつの間にか、あんなにつらかった釣りがコンフォートゾーンになってしまうのだ。
ライフハックというテーマでいえば、職場や家庭以外に「釣り場という居場所」ができたのはよいことだと思う。
でも、釣りをはじめたころは緊張感をもって、いろいろ学んでいたものが、やがて惰性になるのも事実だ。
努力しないでも、毎回そこそこ釣れるし、まわりにも迷惑をかけなくなる。
そう、釣りはあなたの成長の場でなくなるのだ。
実はわたしも、釣りをやるなかで同じようなことを感じてきた。
特に最近では船釣りが多くなっているのだが、この成長鈍化についての答えが2つある。
- 違うジャンルの釣りをする
- はじめての船宿に挑戦する
「違うジャンル」というのは、船釣りであれば、違う釣り物に挑戦していくということだ。
餌釣りしかやったことがなければ、ルアー釣りをやってみるのも一つ。
また、船釣りだけではなく、岸釣りに挑戦するのも一つだと思う。
ほかに、はじめての船宿に挑戦するのも、適度に緊張感を高めることができる。
特定の船宿の常連になると、ルールもシステムもわかりきっているので心地よい。
船長や中乗りスタッフから厳しい言葉が降ってくることもなくなるはずだ。
常連同士のつながりも心地よくなる。
「○○さん、次いつ来るんすか?」
「あー、次は来週の土日!」
「お、私もなんです!次回もよろしくお願いしますね!」
みたいなこともよくある。
だが、新しい船宿にいくと、当然ご新規様になるので、いろいろと情報を把握するために低姿勢にならざるを得ない。
船釣りは同じ釣りものでも船宿が変わればルールも変わるので、船長に質問することも増えてくる。
「すみません、オモリって40号でよいですか?」
「うちは今60号だから。PE何号?その竿じゃ無理だよ。ふつーに折れるよ」
みたいなやりとりが行われる。
そして、その船宿にもなれて、新しい釣り物にも慣れる。
そこで、また新しい船宿にいって、新しい釣り物をやるという具合にクエストが永遠に続いていくのだ。
ということで、みなさんも「最近成長してないなー。緊張感ないなー」と思ったら釣りをはじめてみてはどうだろうか?
30代以降で、ある程度財布に余裕がある人は間違いなく船釣りがおすすめだ。
情報はググればどこにでもあるが、ググった情報をもとに釣行しても失敗がたくさんあって楽しいですよ。
見えない海中を想像して前夜に準備するのも心躍るひととき。
たくさん失敗してたくさん学ぶ。
それがエンドレスに続く。
最高の成長装置が釣りなのです。
ではでは。
平田(@tsuyoshi_hirata)