海釣りをはじめるとすぐに行き当たるのが、魚種ごとのリリースサイズ問題。
特にカサゴやメバルは比較的簡単に釣れるため、初心者でも出会いやすいはず。
経験値が少ないうちは、「持ち帰ってよいんだろうか」「このサイズをSNSにUPしたら叩かれないかな」と心配することもあるはず。
今回は「釣りあげたカサゴやメバルを持ち帰る基準とリリースサイズ」についての考察です。
基本的に釣り初心者の方の参考になればと思うのですが、最後に全釣り人へのメッセージをまとめてあります。
知っておきたいカサゴやメバルの生態
良型のカサゴ
まず、カサゴやメバルは「根魚(ロックフィッシュ)」といって、限られたエリアに定着化している魚です。
サバやアジなどの回遊魚とは異なり、一生を通して住み慣れたエリアから離れません。
そのため誰もが同じようなポイントを狙いがちな岸周りで、カサゴやメバルなどの成魚を釣りきってしまうと、やがて場荒れしてしまう傾向にあります。
こうした根魚特有の生態から、釣り人のなかで、カサゴやメバルの持ち帰りサイズや数については「自主的に規制していこう」という空気があります。
カサゴやメバルの「持ち帰りサイズ問題」は特に岸釣りシーンで叩かれがち
良型のシロメバル
船釣りでもカサゴやメバルは人気魚種です。
沖とはいえ、無限に釣り場があるわけではないので、岸と同じようなことが言えます。
一方、釣り船や漁業者が漁場の魚を根絶やしにしないように、遊漁組合同士の申し合わせで遊漁期間や時間帯について自主規制が行われています。
オニカサゴのように希少な種の場合は、釣り船ごとに持ち帰りサイズを自主規制している事例もあります。
また、稚魚放流も各種団体と遊漁船組合が積極的に行っています。
日々の営業でも、同じポイントを狙いすぎないで、複数のポイントを回りながら釣る傾向もあります。
こうした努力もあり、船釣りで釣るカサゴやメバルについては、岸釣りと比べてあまり問題になっていません。
※エリアによっては漁獲圧の影響によりカサゴ資源が激減して、施策の上回復したという事例もあります。
参考記事:東京湾にカサゴ3万尾、宮崎海域カサゴ資源回復計画
餌釣り師とルアーマンの意識差を理解しておく
ルアーフィッシングは食べるより釣る楽しみが優先される傾向
釣りをはじめたら、もう一つ知っておきたいのが餌釣りとルアーマンの意識差です。
人によって異なりますが、マクロでみると、エサ釣り師は「釣った魚を持ち帰る率が高い」と言えます。
ルアーマンはその反対に、魚を持ち帰って食べる部分にあまり重きを置かず、「釣る楽しみを優先する」人が多い印象です。
これらはどちらが良いという問題ではありません。
単に価値観の違いがあるというだけなのです。
この背景をしっていると、他人のスタイルについても一定の理解ができるはずです。
そもそもカサゴやメバルのリリースサイズって誰が決めたの?
【質問】
釣ったカサゴやメバルを持ち帰るときの
サイズ基準を教えてください— ひらっさん♨ (@tsuyoshi_hirata) February 11, 2022
さて、カサゴやメバルのリリースサイズについての話です。
ベテラン釣り師であれば、なんらかの自分基準があるはずです。
「だいたい手の平サイズぐらいかな」と、ざっくりしている人もいれば、厳密に「20㎝以内はリリース」としている人もいます。
では、カサゴやメバルのリリースサイズは法律等で明文化されたルールなのでしょうか。
答えはNOです。
基本的にそういったルールはありません(県によってはあるかもしれないのであれば教えてください)。
暗黙のルールとして、釣り人が自主規制しているものなのです。
ルールがないのが正しいわけではないと思うのですが、現状はルールがないので、各人に判断が任されています。
※ハタやブリ類のように商業価値が高い種類では持ち帰りサイズが自治体によって設けられていることがあります。
各民間の団体や釣りチームが定めている推奨があります。
出典:JGFA
バッグリミットを提唱するJGFAではカサゴやメバルの持ち帰りサイズを20㎝以上とし、それぞれ10尾をバッグリミットとしています。
もちろんJGFAが絶対正義というわけでは全くないのですが、その推奨をしらないまでも、「持ち帰りサイズを20㎝以上」としている人は、わたしのまわりにも多くいます。
だいたい大人男性の手のひらが20㎝前後なので、「手のひら以上を持ち帰る」というのも、わかりやすいかもしれません。
▼例:神奈川県ではカサゴやメバルの持ち帰りサイズは決められていない
出典:神奈川県
サイズ以外にある暗黙のルールは「持ち帰り数」と「抱卵個体」
カサゴの抱卵個体(11月末)
カサゴやメバルは持ち帰りサイズ以外にも、暗黙のルールがあります。
それは「持ち帰り数」と「メスの抱卵個体を持ち帰らない(できれば)」というものです。
持ち帰り数について、JGFAは前述のようにメバル・カサゴをそれぞれ10尾としていますが、これも人によって基準が異なります。
一番多いのが「食べきれる範囲内」という説です。
たとえば、1人暮らしで何十尾も持ち帰っても食べ切るのが難しいですし、大家族であれば、10尾であるとすぐに食べ切ってしまうかもしれません。
また釣魚料理を中心としたパーティを友人・知人と開くといったシチュエーションでは、さらにまとまった数が必要です。
このように魚の持ち帰り数については、ケースバイケースで個々人の事情があるので、一概には何が正しいとは言い切れません。
抱卵個体についてはどうでしょうか。
カサゴの産卵は冬季のため、そのころに釣りをすると、抱卵しているメスがしばしば釣れます。
こうした抱卵個体は逃がすことで種を増やすことにつながる可能性が高まるわけですが、抱卵個体を持ち帰ってはいけないというルールもありません。
あくまでも自主規制で、その人なりの理由があることも理解しておきたいところです。
さて、ここで筆者のスタンスを伝えておきたいと思います。
カサゴやメバルについては概ね手のひらサイズを持ち帰り基準にしていて、1週間以内に家族で食べられる量を持ち帰るようにしています。
一方、日によって釣果が少ない場合や、海域の状況などによって手のひらより小さいサイズを持ち帰ることもあります。
魚体の状態も考慮しています。
抱卵個体もメリットがないので釣って満足し十中八九逃がしますが、「絶対に逃がさなければならない」というポリシーではありません。
つまり誰かが抱卵個体を持ち帰るといっても、それはその人のポリシーだよねというスタンスでいます。
誰かに石を投げるとき、快感を覚えていないか
ここから、釣り初心者というよりも釣り人全般に伝えたい点をまとめていきます。
ブログにつづいてSNSが登場して以来、釣った魚をネットにUPする人は飛躍的に増えてきました。
以前はブログコメントや問い合わせフォームにコメントをしていた人も、SNSではさらに簡単に他人を指摘できるようになってきています。
時にその指摘は、意見ではなく、単なる反応です。
また、そうした指摘は謎の上から目線や中傷になりがちでもあります。
今回のような「メバルやカサゴの持ち帰りサイズ・数・抱卵個体の持ち帰り」といったテーマについても、目の敵のように噛みつく人がいます。
資源保護を最上段におく視点によっては、たしかに正義なのかもしれません。
一つ一つの叩きコメントによって、明文化されていないルールが各人をどんどん抑圧するようになればそうなるかもしれません。
一方、自分のポリシーが他人にフィットするとは限りません。
公開された場所での攻撃的なコメントや中傷が物事を劇的に変えるのでしょうか。
あなたの知らない誰かは行動を改めるのでしょうか。
他の釣り人にどう接していくのか。
自分が石を投げられたからといって、次に来る人に石を投げるのでしょうか。
そういった負のサイクルは誰かが止めなくてはいけません。
岸釣りと船釣り、エサ釣り師とルアーマン、一人暮らしと大家族、一尾を釣るまでのストーリーは人それぞれです。
もしあなたがネットで気になる投稿をみつけても、それはそれです。
いうまでもなく、資源保護はなにより自分の首を絞めないためにも、重要です。
ただ、一つ考えてほしいのです。
他人に石を投げようとするとき、「自分はどうなのか」と自省して、反対の手で石をもった手を押さえる。
あなたは他人に石を投げて何らかの快感を覚えていないか。
自分の鬱憤を晴らしたいから、相手に石を投げているだけなのではないか。
そのために反撃されづらい正義の立場を借りているだけではないのか。
そんなことを、今一度振り返ってはどうでしょうか。
ではでは。
平田(@tsuyoshi_hirata)
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