みなさんは、小田原在住、大の釣り好きで知られる夢枕獏氏の著作『大江戸釣客伝』を読んだことがあるでしょうか。
徳川綱吉による天下の悪法『生類憐みの令』が次第に病的に細分化していくなかで、主人公である津軽采女(つがるうねめ)や同時代に躍動した江戸っ子たちの釣り道楽と狂気を史実に基づき描いた快作です。
津軽采女については、Wikipediaから少し引用しておきます。
享保8年(1723年)、日本最古の釣り指南書とされる『何羨録』を執筆した[3]。この当時、武士の間では釣りが愛好されており、政兕も嗜んでいた。徳川綱吉により生類憐れみの令が施行されると、「釣魚は武士の修練のうち」とされ黙認されていたが、その後の数度の法改正により釣りは規制対象となり、違反者の処罰や釣り道具の販売も禁止された。このような釣りを取り巻く環境は、綱吉が死去し、宝永6年(1709年)に新井白石によって生類憐れみの令が廃止により解禁されるまで続いた。 本書の冒頭には「釣りは江戸の娯楽」「釣り船に乗れば社会的名誉は重要ではない」との趣旨の一文が添えられている。
作中、登場人物たちはすこしでも釣果を上げよう、釣りを楽しもうと和竿やら釣り鈎の形状やらにこだわるシーンがなんどか登場します。
朝湖は、あらためて竿を握り、軽く振ってみせた。
「野布袋と言やあ、昔っから重いもんと相場が決まっているが、こいつあみごとに軽い。うまく枯らしてある。しばらく、水ん中にあったってえのに、水をいくらも吸ってねえってことだ」
「誰が一番釣るか、その勝負をしているということか —」
「左様でござりますが、少し違うところもござります」
「というと?」
「釣技もさることながら、今度、くらべているのは、鉤でござります」
出典:大江戸釣客伝
万国共通に趣味としての釣りが存在しているなかで、日本人の独創性というのを感じることがあります。
ターゲットごとの竿や釣り鉤の種類など、日本より発展している国はないでしょう。
現代の釣りがもっとも発展したのは江戸時代という太平の世が続き、役目もなく暇な武士がたくさんいたからかもしれません。
時代は経て現代の釣り師にも狂気は引き継がれ
先日カワハギ釣りに惨敗した話をしました。
これが、もう悔しくて悔しくてですね。竿頭の方が30数枚で、スソの自分は2枚(2バラシ)。下手かよと。
敗因は何も考えずに思い立って次の日に釣りにいったことで、まー完全に準備不足でした。
<敗軍の将が語る、船カワハギ釣りのノウハウまとめ>
LT五目竿などの転用は不可。9:1等の先調子のカワハギ専用竿を用意しよう。ない場合はレンタルロッドを借りたほうがよい。カワハギ初心者の場合、釣り針はハゲ針より吸い込み系の針がよい。
記事内で解説した通りに、いろいろ敗因がありながらもまずは竿の時点で負けていたかなと。
ということで、連日、カワハギ竿についてネットサーフィンをしたり釣具店で手に取って研究しておりました。
初心者にオススメのカワハギ竿は?
※選択肢以外はリプライやRTで教えてちょんまげです。— 平田 剛士 (@tsuyoshi_hirata) 2017年11月29日
こんな風にTwitterで聞いてみたり。Twitter民のみなさんはこういうアンケートもすぐに答えてくれてやさしい。ありがとう。
カワハギ釣り戦争。カワハギ釣りマーケットにおけるダイワとシマノ
そうこうしてカワハギ釣りというジャンルについて調べていくと、必然的にいきあたるのが、ダイワとシマノの戦争です。
日本に釣り具メーカーはいくつかあるものの、だいたい釣り道具はシマノとダイワに集約されているかと思います。
カワハギ釣りについても同様ですね。
<カワハギ釣りマーケットにおけるマーケティング手法>
ダイワ:
『極鋭』シリーズというチタン合金素材のメタルトップをつかったアイテムを最高峰に掲げている。アイテムの価格帯は上位・中高位・中位と多彩。上位機種以外は、シマノより割安。ダイワ関係者がFacebookグループを運営し、船最前線ブログを更新しながら大会ともども盛り上げていくスタイルが異様な熱気をはらんでいる。勢いとしてはダイワがシマノに優っているイメージ。
シマノ:
『ステファーノ』というカーボンソリッド+αの素材をつかったシリーズを最上位機種に掲げている。アイテムの価格帯は上位・中高位・中位と多彩。上位機種以外は、ダイワより割高。ステファーノの大会を開催しながらも女性タレントを起用し初心者や中級者がわかりやすいコンテンツを展開。特にYouTubeでの動画コンテンツは定評がある。マーケティング上のポリシーなのか、シマノのスタッフによるSNS発信力と仕組みが少ないため、ウェブ上で感じられる勢いとしてはダイワがかなり優っているように見られる。
<釣り具店の店員の話>
釣具店の店員さんに、「カワハギ竿ってどれがいいですか?」と聞いてみると各人に好みがあって面白いです。
量販店Aのスタッフさん:
「やっぱりダイワですねー!僕は、極鋭でいろんな釣りに対応できるように3セット用意しているんですが、初心者の方はカワハギXでもアナリスターカワハギでも使いやすいと思いますよー。あーでも僕だったらアナリスターかなー」
量販店Bのスタッフさん:
「自分は、シマノ派っすねー。うーん、初心者目線でいったときに、カワハギXよりカワハギBBのほうがやや値段が割高ですが、デザイン性はいいと思うんですよねー。極鋭のメタルトップとステファーノのティップの感度だと、正直シマノが勝ってると思いますよ。手感度と目感度の違いがあるのですが〇△×※〇△×※〇△×※。でもまー好みですね!」
などなど。まーほんと人によりますね。
ということでカワハギ釣りをやってみようかなと思ったり、船宿の貸し竿からレベルアップしてみようかなとおもったときに、様々な選択肢があって、いろいろ釣り具点で考えていると陸上にいるのに船酔いになったりします。
無理矢理言葉をつくると、道具選び酔いとでもいうのかもしれません。
「ダイワの極鋭」と「シマノのステファーノ」について
いやはや、これらの上機種は高くて1本6万とかするのです。
これをM・MH・Hなどの固さや調子ごとに3本装備するとなんと18万円ぐらいになっていたり。
釣りのなかにはいろいろな釣りものがありますが、カワハギというターゲットにおいては、ダイワとシマノの両社が総力を結集して勝負している気配がします。
両社は日本企業らしく、お互いを名指しで批判してはいませんが、お互いの技術系ロジックを読んでいるとそこかしこに静かな炎を感じます。
では、ここで両社の最高峰機種に搭載された技術に関してのそれぞれの言説を見てみましょう。
<ダイワ>
技術:スーパーメタルトップ
カーボンの先にあるもの<中略>そこでDAIWAの技術陣は、超弾性チタン合金に目を付ける。弾性の高い金属素材なので強度があり、外傷にも強い。わずかな動きにもしなやかに曲がるので、魚のアタリが目に見える感度に優れ、金属ならではの振動の増幅力もあるので、魚からのシグナルを手元までしっかりと届けてくれる。実はこの“振動の増幅力”がとても大事で、例えば手元から穂先まで5メートルあるとして、穂先で感じた振動がそのまま5メートル先の手元に伝わるとは限らないのだ。振動は減衰していくもの。ゆえに減衰しながらであってもできるだけ長く伝わる必要がある。そうでなければ手元まで振動は伝わらないのだ。ゆえに“振動の増幅力”が大事になってくる。また、カワハギ釣りを考えて欲しい。餌取り名人といわれるカワハギは、アタリがとても分かりにくい。グラスやカーボンの穂先ではとりきれていなかったアタリが、SMT搭載のロッドなら目感度・手感度が格段にあがり、カワハギのアタリがわかるようになった。現在、「カワハギを釣るならSMTの竿」「穂先を活かしたロッドならSMTの右に出るものはない」という評価に繋がっているのも、SMTの技術を活かした賜物なのだ。
出典:ダイワ
要は、(シマノの)カーボンソリッドもいいけど、スーパーメタルトップのほうがいいよ。というご意見ですね。
対して、シマノはどうでしょう?
<シマノ>
技術:タフテックソリッド&HI-POWER X TIP
↓なぜか該当ページの一部がGiF画像だったので、画像を貼っておきます。
出典:シマノ
ふむふむ。
(ダイワの)チタン合金製のティップの特性をみとめつつも、人間が捕捉できる振動種別という論点で、自社技術が優っていると唱えています。
じ、実に熱い。
まさに狂っていますね(いい意味で)
ここでどちらが優れているなど、カワハギ釣り初心者のわたしがいう立場ではありませんが、こうして2大メーカーが釣りという趣味へのあくなき執念を燃やし続けるかぎり、日本の釣りはどんどん進化していくのでしょう。
むかし『ほこ×たて』というTV番組がありましたが、釣り人的にはこのカワハギ釣りにおけるダイワとシマノのプロによる真剣勝負を見てみたい気がします。
基本的に両社のプロはそれぞれのメーカーが主催する大会に登場し、参加者もだいたいどちらかのメーカーの道具に寄せるという流れになっていく仕組なので、わたしのような下世話な素人釣り師からすると冒頭の大江戸釣客伝で繰り広げられた、ハゼ釣りの釣り鈎勝負のような勝負をみたいなと思ってしまいます
それにしても素人は、道具縛りなどなく両社やその他のタックルや仕掛けを自由に選べて楽しいですね。自分がこれはいいと思ったものを買って使って、違うなと思ったらまたタックルベリーさんあたりに売って、買いなおせばいいと思います。
初心者向けカワハギタックルを買うときに調べたこと
最後に、カワハギ釣り初心者のわたしがカワハギ専用竿を買ったときにしらべたこと感じたことを共有します。
道具酔いをしているみなさんも、参考にしてもらえればと思います。
<ダイワ>
中高位:
入門用:
<シマノ>
中高位:
入門用:
※それぞれ、Amazonで販売されている金額を概算として記載しています。
<主観として、感じたこと>
入門用:
シマノのカワハギBB VS ダイワ カワハギX
=価格面・性能面からカワハギXのほうがお得な気がします。
デザインはグリップ周りなどをみると、カワハギBBのほうがデザイン性は優れている気がします(好み)
軽量な船両軸リールをもっている人はそのメーカーに合わせて買うとしっくりくるかなとは思います。わたしの場合はライトゲーム用にバルケッタ300HGを持っていたのでこのクラスで買うならカワハギBBかなと。
中高位:
どこまでが中高位で、どこからが上位機種だかあいまいなものの、価格と性能面を兼ね備えたバリューという観点を考えるとわたしは以下のようなイメージを持ちました。
- シマノ ステファーノCI4+
- ダイワ メタリア カワハギ
- ダイワ アナリスターカワハギ
- シマノ リアランサーカワハギ
- シマノ ベイゲームXカワハギ
メタリアは、極鋭にも搭載されているメタルティップを装備しているらしいですが、メタルティップ自体は癖があるようで、利用方法についての注意事項がいろいろとあります。
そのあたりに詳しくない方でダイワ派の方は、アナリスターカワハギがよいと、ダイワ派の諸氏からお聞きしました。
アナリスターカワハギはシャア専用系のカラーなので中二ごころを微妙にくすぐるんですよね。
重量200gとカワハギ専用リールと比較するとやや重めですが、ダイワの入門リールであるプリードあたりと組み合わせるとシャア専用感満載です。
プリードは実勢価格5600円程度と安くて、しっかりしたリールなので浅場の釣りでベテランの方が使っているのも拝見します。
底を攻めながら、全身シャアになったつもりで脳内でニュータイプのひらめき音でも鳴らしながら、「見えるぞ!私にもカワハギが見える!」とか、いっておけば、周りのカワハギ釣り師諸氏からも一目おかれるか、ドン引きされるかもしれません。
というようなランキングをつけておいて、わたしが何を買ったかという話なのですが、
シマノのステファーノ CI4+ MH175-2 を買いました。
<選んだポイント>
- 穂先とバットとグリップ素材が最上位機種と同じ
- 軽さ(69g)
- 2ピースなので、他の持ち竿同様持ち運びやすい
- 35000円也とカワハギBB約3本分と高価だが、通常の3杯の釣果を出して劣勢を挽回したい
- すでに持っているバルケッタ300HGと色味的に合いそう
- ダイワのメタルトップはまだ素人は手を出してはいけない領域の気がした
- リアランサーカワハギを買おうと思ったが竿素材の感度とカラーリングなどが落ち着いてるように感じた。
- 調子はシマノであればM・MH・Hとあるが、複数の竿の所持は考えおらずオールラウンダーが好きなのでMHを選んだ
まだ届いていないので、届いたら実釣でレビューしたいと思います。
カワハギ初心者のみなさん、レンタルタックルで勝負をしている方、もし釣果がふるわない場合はこの冬マイロッドを装備して戦場に登場してみてはいかがでしょうか。
<追記>
カワハギ竿の上位機種の技術はシマノ(ステファーノ)とダイワ(極鋭)どちらが上だと思いますか?
というアンケートをTwitterでやっているのでもしご興味があればチェックしてみてください。
カワハギ竿の上位機種の技術はシマノ(ステファーノ)とダイワ(極鋭)どちらが上だと思いますか?
— 平田 剛士 (@tsuyoshi_hirata) 2017年12月1日