今回はマゴチのアラを蕪と味噌汁にしてみた。
味噌というと日本人にとっては当たり前すぎて、あなどる人がいる。だが、味噌をなめたらあかん。
ひと口に味噌といっても、日本列島には様々な種類がある。米・大豆・麦を原料としてはいるものの、麹や塩の配合、土地それぞれの気候や水によって二つと同じものはない。
手前味噌という言葉もあるように、むかしは家庭でも味噌をつくっていて、家独自の味があった。
「手前味噌ですが、おほほほ」
「こちらこそ手前味噌ですが、あはははん」
みたいな。
完全な無菌状態でつくっていたはずもないので、味噌をつくる人の手からうつる微生物などもその発酵に左右していたのだろう。俺の味噌を食えってことは、俺の常在菌を食えってことで、手料理ってのはそういうものなのだ。しらんけど。
また、味噌樽には様々な酵母がすみついて、その樽でないとできない芳醇な味わいなどがあるのかもしれない。
ということで、味噌は奥深い。
「さーせん、牛丼並盛で」という具合に、味気ない松屋や吉牛の味噌汁になれている現代人でも、手仕事でつくられた味噌汁をすするとなんだかホッとする。
ああいいな。おほほほん。
みたいな。
ミソスープ。それは日本人の心のふるさとなのだ。わはははは。
って、お前はなにを高説して笑っているのかってことなのだけども、最近白味噌にハマっている。
白味噌は京・関西を中心に使用されていて短期熟成で塩分量がすくなく甘みが強くまろやか。これにマゴチのアラを合わせると、物足りない部分もでてくるので、仙台の赤味噌を混ぜ合わせる。なぜ仙台の赤味噌か。それは、OKストアで目の前の主婦がほかの味噌には目もくれず、この味噌を手に取ったからだ。
だれかが選んで愛するものにはその秘密がある。
ということで、いきますぞ。
マゴチのアラの下処理
こちら冷蔵庫で熟成させたマゴチ。
今回アラ汁に利用する部分は頭部と中骨。
カマとハラスは、タンドリーマゴチキンにつかったからね。
マゴチの頭部と中骨はこのように刃をいれておく。
どのように?
頭部は中骨部分の中心線は堅いのでさけて、調理バサミで割り切る。中骨も調理バサミで切れ込みをいれ、短時間で旨みが流れ出やすくしておく。
アラに熱湯をかけて血合いやヌメリ、鱗あたりをとっておこう。マゴチの頭部の脳みそや血糊部分も爪楊枝などできれいにしておく。
汚れをおとしたら水で洗い流しておく。
マゴチを炊いてアラ汁にする
水からアラを昆布と一緒に炊きだす。
このとき、みりんと日本酒をいれる。生姜はいれなくても臭みはさほどないので大丈夫。
あとは中火でアクをとりながらマゴチエキスが、じんわりと染み出るのを待つ。
つづいて、マゴチにあわせるのは蕪。
なぜ蕪か。
いいでしょう。教えて差し上げましょう。
それは、冷蔵庫にあったからです。
駅前の農家による直売店にて売れ残りの蕪が100円で、明らかに葉はよわっていたものの、残り物には福ということで自分を納得させて買ったもの。
蕪はそれ自体主張しないものの、ほかの食材とあわせることで豊かな風味がでるのだ。とか、美味しんぼで海原雄山が言ってたな。
好みの切り方で。ざっくり大き目が好み。
蕪は意外と火の通りが速いのと、生でも食べられるので、さっとゆでればOK。
味噌汁づくりはこのように濾し器があるとすこぶる便利
具材が煮えたら火を止める。味噌汁の所作では、このコンロの火をとめてから味噌をいれるというのがスタンダード。理由としては味噌のもつ芳醇な香気が沸騰によって飛ばないようにしている。味噌をガンガン炊き込むのは味噌煮込みうどんぐらいなのだよな。
そこに、満を持して、関西白味噌と仙台赤味噌を投入。
白味噌7に対して赤味噌3という黄金比。平田総研による長年の研究結果ということにしておくが、実際のところわからない。
白味噌自体に期待するのは甘味と旨みとまろやかさ。対して赤味噌に期待するのは力強さ。
白味噌が女性であれば、赤味噌は男性。
もう、なにをいってるのかわからなくなってきたぞ。おい。早く先に進めたまえ。
蕪の葉は食感をいかすためにここで投入。
ここでちょっと味見をしてみよう。
塩辛さと旨み。
これがみそ汁の構成要素。
塩辛さよし。
旨味。
ふむ。うまいんだけど、パンチが足りない気も。
というときは、
四の五の言わずに、ほんだしである。
ただし、ほんのちょっとぱらっと入れるだけで、味の隙間が補完されてなお一層奥深い味わいになる。
ということで、マゴチのアラ汁、白味噌仕立てのできあがり。
万能ねぎに柚子皮をちらしておく。
柚子皮は季節を外すと手に入らないものの、盛期に皮だけ剥いて冷凍しておくといい。それとフリーズドライの市販品も香りがよい。
味は、
味噌のふくよかな香り。芳醇な旨みと甘味。
これが白味噌だけだと甘さが強くなり、なんともかんともだけども、力強い赤味噌と合わせるこでしっくりくる。
そしてこの部位はマゴチのほほ肉。1尾から2枚しかとれない部位ながらも、しこしことした食感がありうまい。
残ったマゴチのアラ汁を冷蔵庫にいれておいたところこのとおり煮凝りになっていた。コラーゲンも豊富。
ではでは。
平田(@tsuyoshi_hirata)