【猛毒魚】巨大オニダルマオコゼを釣って沖縄そばにして食べてみた

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オニダルマオコゼ
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ORETSURIをご覧のみなさん、ハイサイ!沖縄のニッシーです!

皆さんは、「沖縄の海」と聞いてどんなことをイメージしますか??

透き通った青い海、白いビーチに美しいサンゴ礁、極彩色の魚たち。

南国ならではの環境を求めて、釣りやシュノーケリングなどのマリンスポーツ目的に遊びに来られる方も多いです。そんな沖縄の海で遊ぶ気マンマンな皆さんを、恐怖に陥れるポスターがこちら!

出典:沖縄県

これはビーチや観光施設に掲示されている、「海の危険生物」の注意喚起ポスターです。

沖縄の海にはたくさんの生物が生息していますが、こうした「有毒生物」や「人間にとって脅威となる生物」も多くいます。一方、観光客のみなさんは「サメ」ばかり怖がっている方々が多い気がします。

サメも確かに恐ろしいですが、人間を襲う可能性のある種類は、ほんの僅か。観光客の皆さんの多くが遊ぶような場所には、滅多に出現しないといえます。

本当に恐ろしいのは、上のポスターに載っているような、海で遊んでいるすぐ身近に潜んでいる生き物。

今回は、そうした危険生物の中でも、僕が「最も恐れている魚」を釣ってしまったお話です。

目次

巨大オニダルマオコゼとの出会いは突然に...

この日は、イノーへ釣りに出かけました。

イノーはサンゴ礁内側の浅い海のことなのですが、干潮時には膝下ぐらいの水深になるため、立ち込みで釣りを楽しめるのです。

主なターゲットは、イシミーバイ(カンモンハタ)、タマン(ハマフエフキ)など。岩の窪みに残った潮溜まりにワームを落としたり、小型のルアーを投げると色々な魚が釣れます。

釣りをスタートしてすぐのこと。

良さそうなポイントを探して歩いていると、浅瀬にある岩に妙な違和感を感じました。

「?」

「⁇」

「!?」

「‼︎」

膝下ぐらいの水深だったので、カメラを沈めて撮影してみます。

プライヤーでツンツンしても全然動きませんが、これは「例の魚」に間違いありません。

ワームを目の前に落としてアクションさせると、大きな口がガブリと喰いついて来ました!

・・・ヒットした後は、無抵抗。

根掛かりした石を持ち上げるように、巨体をゆーっくりと水面に持ち上げることに成功。

釣り上げた魚の正体がこちら・・・。

オニダルマオコゼ

全長40センチ、重量2.3キロ!特大の「オニダルマオコゼ」です。

陸に上げても全く動く気配なし。本当に生きているのでしょうか??

フィッシュグリップで持ち上げると、ようやく背鰭と胸鰭を拡げて威嚇のポーズ。ちなみに、オニダルマオコゼを漢字で書くと「鬼達磨虎魚」。

岩っぽい顔つき

正面から見るとまさに「鬼」で、「達磨」で、「虎」のようなイカツイ顔ですね。

ほとんど動くことがない省エネ体質のため、陸上でも数時間は平気で生きているそうです。今回は観察で30分以上水から上げていましたが、弱る様子なくピンピンしていました。

信じられない生命力。

実はこいつこそが、「魚類で世界最強クラスの毒」を持ち、沖縄で恐れられている超危険生物なのです。

オニダルマオコゼとは

オニダルマオコゼは、全長40センチ程。小笠原諸島・奄美大島・沖縄県に生息する南方の魚です。

オニダルマオコゼは、海底で岩と同化している

こちらはダイビング中に海中で出会った個体。サンゴ礁や岩礁混じりの砂地の浅場を好みます。

本州に生息している「オニオコゼ」と混同されがちですが、別の種類です。オニダルマオコゼの方が大きく成長し、持っている毒が遥かに強力とのこと。

まるで岩礁帯と一体化している、オニダルマオコゼ

身体の表面がゴツゴツしていて、海底で岩に擬態することで外敵から身を守り、獲物を待ち伏せています。

英語名は、「ストーンフィッシュ(石の魚)」。沖縄の方言では、「イシアファー」と呼ばれます。方言は、「イシ(石)かと思ったら魚で、アファー(唖然とする)」という意味。

僕もダイビング中に初めて出会った時は、すぐ手の先にいるのに気付かなくて、肝を冷やした記憶があります。オニダルマオコゼ自身は石になりきっているつもりなので、人がかなり近づいても逃げることはありません。

あまりに動かなさ過ぎるためか、今回釣り上げた個体も身体中が苔むしていました。

時には岩に擬態するだけでなく、眼だけを出して砂に潜っている場合もあります。今回のケースでは比較的容易に発見できましたが、風波で水面が揺れていたりすると、まず発見は困難です。

この擬態の巧妙さが、オニダルマオコゼの怖さに直結しているのです。

全魚類最強クラスの「毒棘」と「擬態能力」の二刀流

オニダルマオコゼの武器は、背鰭に隠し持った毒棘です!普段はブヨブヨした背鰭の皮に収納されていて、目立ちません。

ところが、外部から刺激が加わると、長くて鋭い毒針が露出。上からの圧力に反応して、勢いよく毒液が発射されます。

この毒棘は、サンダルやマリンブーツを履いていても簡単に貫通する鋭さです。ちなみに、オニダルマオコゼの持つ神経毒は、全魚類の中で最強クラスとされています。

その強さは「猛毒ヘビであるハブの30倍」「オニダルマオコゼ1匹の毒で大人4人分の致死量」とも恐れられています。

オニダルマオコゼの毒棘

もし刺されてしまうと、患部が紫色に何倍にも腫れ上がります。あまりの激痛で意識障害や痙攣を起こし、重症になると呼吸困難や患部の壊死に繋がります。意識を失うことでの溺死、刺されたことによるショック死も報告されています。

擬態して海底にじっと潜み、気づかずに踏んだら攻撃されるのでまさに「海の地雷」。

膝下ぐらいの浅瀬にも隠れているので、イノーを歩く際は、足下に細心の注意を払うのが鉄則です。

実はオニダルマオコゼは超高級食材

いかにオニダルマオコゼが危険な魚か、皆さんにも伝わったと思います。しかし一方で、この魚は沖縄でトップクラスに美味しい魚でもあるのです。

漁獲量が少なく市場には余り出回らないですが、卸値はキロあたり3,000円〜5,000円の超高級食材なのです。特に採れたての刺身は絶品だとか。今回釣りあげたオニダルマオコゼのサイズだと、1万円以上の買値がつきます。

ニヤニヤしながらサプライズで釣友のお店「帆掛きそば」に持ち込み

せっかくの超高級食材。

僕は釣りたてのオニダルマオコゼを持って、魚料理のプロフェッショナルのお店に急ぎました!以前、GT出汁の沖縄そば作りの記事でお世話になった、釣り友達・まえとーさんのお店です。

GTの鱗を落とす

右で変顔しているのが、まえとーさん

帆掛きそば

まえとーさんのお店「帆掛きそば」は、日替わりで多様な鮮魚を出汁に使う沖縄そば屋さんです。まえとーさん自身もフカセ釣りの名手で、自身で釣った魚や釣り仲間が持ち込んだ魚を素材に使っています。

今回も何が釣れたのかは秘密にして、サプライズ。お昼のピークが過ぎて一段落したお店に、オニダルマオコゼを持ち込みました。

「まえとーさん、また面白いのを釣って来ましたよ!」

まえとーさんのリアクションを想像して、思わずニヤけてしまいながらクーラーボックスをご開帳です。

「あぎじゃびよー!(=マジかー!)」と、期待通りの嬉しいリアクションを頂きました。

まえとーさんが今まで見たなかで、最大サイズのオコゼだそうです。

オニダルマオコゼの最強毒液発射の瞬間を観察してみた

オニダルマオコゼを解体してしまう前に、毒液の発射を観察してみました。

普段毒棘はブヨブヨした袋状の皮に覆われています。上から圧力がかかって針が露出すると、毒液が勢いよく発射される仕組みです。

実際、どのぐらいの勢いで発射されるのか???

顔を保護するために、シュノーケリングマスクをつけて実験した動画がこちらです。

プライヤーで毒針を露出させ、上から力を入れると透明な毒液が噴出!これが「ハブの30倍」といわれる、全魚類中最強クラスの毒です!!勢いが想像以上に凄まじく、発射された毒液は厨房の天井まで届きました。

もしオニダルマオコゼを踏んづけてしまって、これだけの勢いで毒が体内に注入されたら・・・。想像を絶する恐ろしさです。

お腹はでっぷり

図鑑によると腹鰭や尾鰭にも毒棘があるらしいのですが、今回は見つけきれませんでした。

プロも初めて、オニダルマオコゼの解体

充分に観察を楽しめたので、いよいよオニダルマオコゼ解体をスタート!

こちらはトゲカジカ。オニダルマオコゼよりさらに大型になる

そういえば、この魚、僕が釣り目的で北海道に住んでいた頃に釣り上げた「トゲカジカ」に見た目が似ています。あまりの美味しさに、箸で鍋を突きすぎて壊してしまう例えで「鍋壊し」の異名を持つトゲカジカ。

北海道釣行1発目、堤防からルアーで上げた「60センチ、4キロ超え」のトゲカジカ!あの時食べた肝たっぷりのカジカ鍋、美味しかったな〜

さてオニダルマオコゼは、まえとーさんも初めて捌く魚だそうなので、手順を調べながら進めていきます。相変わらず動かないので生きているかの判断に迷いますが、口だけ変わらずパクパク動いています。

まずは脳天とエラに包丁を入れて締め、背中の毒棘をペンチで抜きました。

念のため、ガスバーナーで背鰭を焼きます。オコゼの毒素は熱に弱いため、針が残っていた場合でもこれで無毒化出来るそうです。

次に、エラから内臓を取り出します。

胃袋

肝臓

口の中は、そのまま巨大な胃袋に直結していました。胃袋は湯引きしておつまみに、肝は沖縄そばの出汁に使用します。

お腹は弾力性があり、柔らかいゴムボールのよう。エラから手を突っ込むと、伸縮性抜群です。

体表には藻類や汚れがついている

下処理の最後に、苦味や雑味の原因となるオコゼの体表に生えた苔や汚れを取り除きます。面倒ですが、これを怠ると身に苦味や臭さが残って味が大幅に落ちてしまいます。

まえとーさんのアイデアで、沸騰したお湯に魚体をサッと通し、氷水で冷やすことで汚れを浮かせました。タワシで擦ると、面白いくらい汚れが落ちていきます。ちなみにオコゼの魚体には、ウロコがありません。

オコゼの魚体についていた汚れ。まるで、お風呂上がりですね。

これでようやく下処理が完了。手間と時間がかかります。

ついに、三枚おろし→切り身に

いよいよゴールが近づいて来ました!

初めて捌く魚にも関わらず、まえとーさんは魚体の形から想像して解体を進めていきます。
腹を包丁で開き、皮を剥ぎます。

頭を落す時に、衝撃の事件が!

とっくに死んでいるはずのオニダルマオコゼが、大きく跳ねたのです!!恐らく筋肉の痙攣でしょうが、とてつもない生命力の強さを見せつけられました。

身は一見すると、フグのよう。「夏のオコゼに冬のフグ」という言葉があります。これはオニオコゼを指すようなのですが、フグと同等なぐらい、オコゼ類は味わい深い白身魚なのです。

刺身用に薄造りにしていくと、まえとーさんの悲鳴!なんと切り身になっても、身がピクピク動いて包丁に逆らっています!!ここまで来ると、もう地球外生命体ですね。

いよいよオニダルマオコゼ実食!

切り身を大皿に盛り付けて、完成!これだけの量を料理屋さんで食べると、2万円は軽く超えるはずです。

早速、頂きます。

「美味いっ!!」

硬すぎない絶妙な弾力の歯応えに淡白でクセのない白身。噛むほどに広がる味わい深さ。

ダントツで優勝!!これまで僕が沖縄で食べた刺身の中で、ブッチギリでナンバーワンの味です!例えるなら、「フグ」と「クエ」の良さをいいとこ取りしたような味でしょうか。

個人的には、沖縄三大高級魚(アカジン=スジアラ、アカマチ=ハマダイ、マクブ=シロクラベラ)よりも格上ですね。

おつまみ用の胃袋が、これまた絶品!

巨大な胃袋をさっと湯掻いて氷水で冷やし、まえとーさん特製の「ハチミツニンニク醤油」で漬けた一品です。

噛めば噛むほど味わい深い、コリコリとしたホルモンのような歯応え。

僕は魚の部位で、胃袋が1番好きです。

世界初!?オニダルマオコゼ出汁の沖縄そば

まえとーさんのお店といえば、やっぱり沖縄そば!オニダルマオコゼのアラとキモで出汁を取った、「特製沖縄そば」を作って頂きました。

鍋で煮込んで、旨味を抽出していく作業。普段使っている魚と比べて、出てくる油の量が遥かに少なかったそうです。身がとにかく淡白な証拠なんだとか。

おそらく、これは世界初の試み。今後もこんなに贅沢にオニダルマオコゼを使ったそばは、そうそう食べられないでしょう!

そして遂に、まえとーさん渾身の一杯が完成。

「これまた美味いっ!!」

スープの透明感具合がすごいです。クセや臭みが一切ない、上品かつ奥行きの深い味!

あっさりしていて、女性人気が高そうな味。あの独特な風貌のオニダルマオコゼオコゼから出る出汁と言っても絶対に信じてもらえないでしょう。

小鉢で出して頂いたキモも臭み一切なし。まさにアン肝と同じ味で絶品でしたよ!

この特別な「オニダルマオコゼ出汁の沖縄そば」は、1日限りの数量限定で「帆掛きそば」さんで提供されました。

事前に告知をしていたこともあって、「レアな出汁」を目的にオープンの時間から大盛況。スープが無くなって、完売になったそうです。

皆さんに喜んで頂けたようで、釣って来た当人としてもハッピーになれました!今回の主役は「オニダルマオコゼ」を捌いてくださった、まえとーさんでしたね。

それでは、またお会いしましょう!

寄稿者

ニッシー

ニッシー

▼まえとーさんのお店のFacebookページはこちら

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