「スミイカ」は東京湾界隈での「コウイカ」の呼び名。
基本的に、小型の寿司や刺身が最上とされて、天ぷらも絶品。
年によって釣れる量が異なるというのはあるようで、一説によるとタコが増えるとスミイカは少なくなるという話もある。
これは、底近くで生きるもの同士として、餌が競合するということかもしれないし、幼生がお互いを食い合うのかもしれない。
実際のところはわからないけども、去年から今年のシーズンはスミイカはあまりよくないらしく、四隅をとった常連衆でよくて10杯。だいたい5、7杯。釣り座に恵まれなかったもののしっかりしゃくった人で2、3杯釣れたら満足という状況だと思う。
そんな状況だったものの、年末のこと、たまたま釣り客が少なかったこともあり、7杯(モンゴウイカ1杯含む)釣ることができた。
今回はこのスミイカをつくって生干しスルメをつくってみた様子を紹介する。
スミイカの下処理
7杯のうち2杯をおすそ分けして5杯という布陣
そもそもスミイカはスルメとして食べられることがほとんどないので、下処理方法が確立されているわけではない。
今回は以下のようにおこなった。
- 甲をはずす
- 内臓と目玉を抜く
- 塩水につけこむ(30分)
- 干し上げる(約3日)
まずスミイカの甲を外して、内臓と目玉を抜く。皮部分はそのままでよいと思うが、好みでむいておくのもよいと思う。
つけこみ用の塩水を用意する。
濃度は海水程度にして、安日本酒をドバドバっといれればさらにいい。みりんを入れると甘みが出るので、好みで。
漬け込む。
冬場のアジの干物などでは40分ほど漬け込むが、なんとなく、塩分の浸透が良さそうなイメージがあったので、30分程度にしておいた。が、あとあと食べたときにやや塩辛かったので、塩分控え目にしたい人は20分以内がいいと思う。保存性を高めるなら30分やれば十分。
30分漬け込んだあとは、スミイカの身を流水であらって、水分をぬぐっておく。
あとは干す。
このとき気になる人は竹ひごなどで整形しながらホストさらに仕上がりがきれいになると思う。
そうこうして干しあがってくる。
今回は生干し気味に仕上げたかったので、3日。途中、湿気が強い日があったので3日だったけども、乾燥している日であれば2日でよいと思う。完全なするめにしたい人は、さらに干し続ければよし。
いずれにせよ。〇日干すとかいっても、日照量とか湿度も風量もことなるわけで、常に状態をみながら、「助さん格さんもういいでしょう」という、そろそろこの程度にしておきなさいというタイミングを探るのがいいと思う。
何事も鵜呑みにしていると消化不良になるかもしれないのでね。
干しあがったスミイカの生干しを炙ろう
触腕がうまそう
こちらが干しあがったスミイカ。実はモンゴウイカの工作員が1杯まぎれているが素人にそんなことがわかるまいて。わたしもわからんし。
ニオイはよく言われる「イカ臭」である。
このスミイカの生干しを実家にもってかえり母親にもったいぶってわたしたところ「バター(飼い犬)の肛門腺のニオイがする」といわれたのだが、まーそういうニオイでたんぱく質が微生物によって分解されてアミノ酸になってその過程でニオイの成分もやたらに生産されたということが想像される。
ニオイは旨さの証なのだ。
臭いものはだいたい旨い。じゃあ、バターの肛門腺はうまいのかというと、それはちょっとわかりません。
このオイニーは加熱すると消えるので安心してほしい。
こちらゲソ部分。スルメイカなどと比べて太目でいかにも食いごたえがありうまそう。
胴体が矢鱈に分厚い。
今回あえて、水分を残したのはこの厚みを味わいたかったためで、保存性なら完全にからからにしてしまったほうがいいと思う
あとは天地両面から炙れるトースターで炙る。アルミホイルをひいておけば呪い汁が底面にたれて焦げ付きエンドレスにイカ臭となることもないと思う。アルミホイルを発明した人は本当に素晴らしい。
焦げないように火をみながら炙る。ゲソあたりは、次第に立ち上がり、切株のようにみえる。
完全に火を通すというよりも内側はレア目でよいと思う。炙ると胴などは丸くなるので、これも竹串などで整えるとさらによい。
これを細かく切り分ける。ある程度塩辛めなので、細かくきったほうが、ちびちび食べたほうが腎臓にいい。
青地の角皿に盛りつける。
七味マヨネーズに柚子胡椒をそえる。お兄さんわかってるね。
UPで見せたろか?
・・・
まーこのとおりですよ。
パーフェクトイカ。
イカ業界の風雲児あらわる。
スーパーに焼きイカとか売ってるけど、あれと一緒にしてはいけない。もう部屋が香ばしく、全力でイカ臭い。といっても焼く前に母和子が容赦なく口にした「犬の肛門腺臭」というよりも、炙った香ばしいイカの香りと呼んだほうがいい。
正月なので、熱燗をかまして食べてみた。
・・・
ややしょっぱい。だが、それがいい。
辛目の酒に塩分がよく似合う。かみしめるほどに口の中で広がるアミノ酸軍の一斉攻撃。旨味の波状攻撃。そして、さらに追い打ちで、七味マヨネーズをつけてほうばる。
するとどうだろう、塩っ辛いものにマヨネーズをつけるのはどうなのかというと、意外とマヨネーズが防壁をつくり、スミイカの身をかみ砕くと旨みと融合してえらいことになる。
最初にスルメに七味マヨをつけたやつ、お前はすごいよ。
食べる前は「肛門腺云々」といっていた母和子も絶賛の味でした。スミイカがたくさん釣れたらぜひ作ってみてください。
ではでは。
平田(@tsuyoshi_hirata)