※本記事はテトラポッド(消波ブロック)上での釣りを推奨するものではありません。「楽しそうだから」と安易に釣りをするのではなく、自分の頭でよく考えてから行動しましょう。
テトラポッドなどの消波ブロック上で釣りをする人が増えてきています。
YouTubeやウェブサイトなどで気軽な釣りとして「穴釣り」が人気となり、その影響もあるのかもしれません。
実際にテトラポッドの「穴」にはカサゴ・メバル・ソイなどの根魚が生息しています。
一方、テトラポッド上の釣りは死や大怪我との隣り合わせ。
今回は消波ブロック上の釣りがはらむ危険な要素と対策を解説していきます。
テトラでの穴釣りは楽しいのですが、気軽にはじめる前に、一読してみてください。
テトラポッドとは
岸壁に積まれたテトラポッド
「テトラ」「テトラポット」と呼ばれますが、正しくは「テトラポッ(ド)」です
テトラポッドと言う名称は、株式会社不動テトラの消波ブロック製品名(登録商標)で、消波ブロック類の総称ではありません。
テトラポッドは特に多く設置されているため、釣り人にとっても、「消波ブロック=テトラポッド」のイメージがあるわけです。
テトラポッドなどの消波ブロックで釣りをする人が増えてきた
長く続くテトラポッド帯
コロナ禍において、三密を避けられるとブームが再燃した釣り。
特に人気の海釣りとなると、比較的足場が良い釣り公園や港湾施設がメイン。
一方、釣り場の混雑や釣り禁止場所の増加から、日に日に足場がよい場所で竿を出すのがむずかしくなってきました。
そうなると、締めだされた釣り人は釣りをやめるのでしょうか。
実際はそうならず、よりリスクが高い、消波ブロック帯や地磯に足を延ばす人も。
その中に装備が明らかに甘く、危険性を理解しないで釣りをしている初心者も多くみられるようになりました。
- ビーチサンダルにライフジャケット未着用
- ライフジャケット未着用の小学生未満の子供を複数名連れて、時分は釣りに熱中している親
これらは、筆者がテトラポッド帯で実際にみかけた釣り人です
傍目から見てもかなり危険な状態。
これらは、きっとテトラポッド(消波ブロック)上での釣りの危険性をあまり理解していないからなのでしょう。
足場がよい釣り場がなくなると、釣り人はリスクが高いテトラポッド帯や地磯にむかいがち
テトラポッド(消波ブロック)の釣りが危険な理由
さて、テトラポッドなどの消波ブロックの上で釣りをすることはよく危険と言われます。
なんとなくわかりますが、一体、どのあたりが危険なのでしょうか。
今一度チェックしていきましょう。
つまづいたり、すべりやすい
消波ブロック類には様々な形状があります。なかには、護岸目的のほかに、人が水辺で楽しめるように配慮された親水性の高いブロックもあります。
親水性の高いブロック例:クラブロック(法面被覆ブロック)
優れた親水性・利便性 ブロックの表面が平らなため、歩き易く親水性の護岸として機能し、また、船揚場・網干し場・コンブ等の干し場として利用できます。
出典:不動テトラ
天面が平面のブロックは歩きやすい
一方、テトラポッドのような凸型形状の消波ブロック類は表面が傾斜していて、上にのると滑りやすかったり、つまづきやすいわけです。
実際にはテトラポッドは単体ではなく、複数積み重ねて設置されることが多いもの。
さらに、波による摩耗により、新しいテトラポッドが積み重ねられるため、それぞれが複雑に傾斜していて角度も異なります。
また、波をかぶりやすい場所には藻類もつきやすく、より滑りやすく転倒リスクが高まります。
平らな面が多い消波ブロック類(河川)
落ちた時点で怪我をする・失神する可能性がある
外洋に面したテトラポッドはより大型
テトラポッドなどの消波ブロックは水深に応じて、重ねて設置されることがほとんどです。
そのため、テトラポッドの穴に落ちると、しばしば身体をコンクリートに何度か打ちつけてから落水することになります。
頭を打てば失神、打ちどころによっては即死リスクや骨折リスクも高いと言えます。
また、無事生還しても、脳や脊髄損傷による後遺障害に悩まされる可能性もあるわけです。
比較的軽度の打ち身で済んでも、テトラポッドに貼りついている貝類の殻によって皮膚を大きく損傷することもあります。
一度落ちると這い上がれない場所も
出典:不動テトラ(テトラポッド仕様)
消波ブロックの代表選手「テトラポッド」には様々なサイズがあるのですが、波が強く、水深が深い外洋側に設置されるものほど大型です。
テトラポッドは0.5tから80tまでの型があるのですが、最大の80tともなると、全長が大人の身長よりはるかに高く、一度落水すると自力で這い上がることができません。
結果長時間、海水にさらされ溺死する原因にもなります。
また海水温が低いシーズンには、低体温症による意識障害や心臓麻痺などのリスクも高まります。
波にさらわれる
落水後、運よくテトラポッドにつかまることができても、強い波や潮流によりテトラポッドのさらに奥に入って出られなくなってしまうリスクもあります。
また、テトラポッドや岸壁壁面に沿って離岸流が発生している場所もあり、潮流によっては沖に流されてしまうリスクもあります。
テトラポッド上の釣りは「死亡リスクが高いもの」と理解する
濡れたテトラはすべりやすい
これまで挙げてきたように、テトラポッドなど消波ブロック類の上での釣りは大きな危険がつきものです。
以下のような死亡パターンは誰でも容易に想像できるはずです。
- 落水して頭を打って失神し、海水を飲んで溺死
- 落水して骨折し、這い上がれず溺死
- 落水し、高低差で這い上がれず、やがて溺死
- 冬場落水して這い上がれず低体温症でショック症状になり死亡
- 落水し、潮流によってテトラの奥から出られなくなり溺死
- 落水し沖に流れされ溺死
- 子供が落水し、助けようとして自分も落水し、溺死
消波ブロックの上で釣りをしようと考えた際は、今一度これらのリスクを考えて行動しましょう。
テトラポッドの上で釣りをするときの注意点
比較的平面部分が多く歩きやすい消波ブロックも大型になると
では、テトラポッドのような消波ブロックエリアで釣りをするときにどんな注意をすればよいのでしょうか。
そもそも消波ブロック帯で釣りをしない
そもそも消波ブロック帯で釣りをしないという選択。
君子危うきに近寄らず。
間違いなく、これが一番リスクを減らす選択です。
岸釣りで釣り場が少ない場合、船釣りや手漕ぎボート釣りに移行するのも一つです。
釣り船やボートの釣りは一釣行で人数が限られているため、混雑しすぎて釣りにならないという状態はほとんどありません。
消波ブロックの種類や釣り場環境によって釣りをするか判断する
消波ブロック類の形状等、釣り場環境に応じて都度釣りをするか判断するのも一つです。
- 大きなテトラの上に乗らない
- 濡れたテトラの上に乗らない
- 凸状のテトラには乗らない
- 外洋側のテトラには乗らない
など。
雑誌や釣り場情報誌で釣りができると書いてあっても、それはあなたに当てはまるとは限りません。
自分の体力を過信しすぎず、引く勇気をもちましょう。
万が一落水した際に、「どうやって這い上がるのか」まで計算できてから釣りをするとよいでしょう。
立入禁止・釣り禁止場所に入らない
しばしば消波ブロック帯は立ち入り禁止や釣り禁止場所になっています。
たとえば離島の場合、頻繁に襲来する台風の高波に備えて、かなり大きな消波ブロックが設置されていることがあります。
こうした場所は過去にも死傷者が多く出ている等の理由で、立入禁止・釣り禁止場所となっていることがほとんどです。
立入禁止・釣り禁止場所となっている消波ブロックエリアで釣りをするのは控えましょう。
当該エリアだけでなく、港湾施設全体での釣り禁止などにつながります。
「地元の人が釣りをしているから大丈夫」というのも安易な判断です。
「地元の人が釣りをしてない場所」はもっと危険です。
単独釣行を避ける
もしもの時を考えて、単独で釣行することはできれば避けましょう。
他に釣り人や観光客がいるような場所であれば、万が一のリスクに気づいてもらえることも増えてくるかもしれません。
一方、誰もいないテトラ帯に単独釣行したときはどうでしょうか。
落水しても誰にも気づいてもらえず、自力で這い上がることができなければ、死に至る可能性が高まります。
夜間の釣りでは避ける
夜間の釣りで消波ブロックに乗るのはとても危険です。
- 夜間はテトラ間の距離を見誤りやすい(踏み外す、滑る、つまづく)
- 藻類などで濡れている場所が見えにくい
など。
特に深夜帯は人も少なくなるため、落水後の死亡リスクが高まります。
飲酒しての釣りは避ける
飲酒をしながら釣りをする人がいますが、大変危険です。
自分ではバランスが取れているつもりでも、足がふらつくなどで落水リスクが高まります。
子供連れでの釣りは避ける
子供連れで消波ブロックの上で釣りするのは避けたほうがよいでしょう。
遠浅の海で平面ブロックならばリスクは低いですが、外洋に面した大型テトラポッド帯での釣りなどは自殺行為です。
落水した子供はしばしば静かに溺死します。
親が釣りに熱中している間に、いつの間にか子供が落水して溺死しているという悲しい事故リスクも高まります。
取り返しがつかないことになる前にやめましょう。
テトラポッド(消波ブロック)での装備は特に注意が必要
つり公園近くのテトラ帯(釣り禁止)
釣りは厳しい自然にむかいあうという点で死に近い趣味です。
命を守りつつレジャーとして楽しむためには、リスクをできるかぎり低減するという考えが大切です。
テトラポッドのような消波ブロック帯で釣りをする場合は、適切な装備をした状態で行いましょう。
Tシャツ・短パンにビーチサンダル、ライフジャケット未着用というのは自殺行為です。
ライフジャケット・ゲームベスト
危険な場所で釣りをしているという自覚を持ち、ライフジャケットやゲームベスト(浮力体)を身に着けて釣りをしましょう。
牡蠣殻が多くはりついているテトラ帯や磯エリアが絡んでいる場合は、膨張式のライフジャケットは穴あきリスクも高まります。
釣り場環境に応じた装備に努めましょう。
フェルトソールの靴
岸壁でもテトラ帯でも、藻類や海水で濡れた場所を歩くのはできるだけ避けるべきです。
フェルトソールの靴を履いていると、藻類の上を歩いた場合でもスリップしづらくなくなるのでリスクを低減できます。
ヘルメットやひざ肘パッド類
高低差があるテトラポッド(消波ブロック)の場合、落水時に頭を打ち気絶したり、深刻な脳障害に陥る可能性があります。
気絶すると溺死リスクも高まるので、ヘルメットで頭部を守るのもリスクを減らすノウハウです。
グローブ
テトラポッド(消波ブロック)から落水し、這い上がるときに手を怪我していると思うように力が入らないかもしれません。
実際は怪我してすぐは興奮して痛みを感じづらいのですが、時間がたつほど擦り傷などは強い痛みを感じはじめます。
貝類などで覆われたテトラに掴まる際も、グローブをしていたほうが、強くつかめるはずです。
防水スマフォケース
万が一落水したときに、海の事故で緊急電話をかける番号は118(海上保安庁)です。
携帯電話を落としてしまったり、陸上のタックルバッグなどに置いておくと電話はかけられないのと、防水かつ携帯しておく必要があります。
まとめ
浅い海のテトラ帯であれば落水しても泳いで帰れそうだが、夜釣りではリスク大
テトラポッドなどの消波ブロック上で釣りをする前に一度立ち止まって考えてほしいことを解説してきました。
テトラでの穴釣りは楽しいのですが、気軽にはじめる前に、今一度命を失うリスクを考える必要があるのではないでしょうか。
ある程度釣り慣れた人であれば、常識のことをこれまで解説してきました。
一方、慣れは「自分は大丈夫」という正常性バイアスを生み出しやすいとも言えます。
事前の情報収集や装備をしっかりし、釣り場については状況判断で釣りをしないというのも賢い選択です。
命あっての釣り。
死んだらもう釣りができませんよ。
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