冬の東京湾で、1月2月と水温が下がってくると水深30m前後あたりの砂泥エリアにイシモチ(シログチ)が群れを作ります。ときおり、50mぐらいを攻めたりもしますが、これが船だとイージーモードで釣れるわけです。コマセを使わないのに、数十尾釣れたり。
玄人衆が本気になると、束(100尾以上)釣れたりします。そんなに釣って貴公はどうするのか?
たしかにそれはわたしも思うところです。
多くの釣り人がきまって悩むのが「このイシモチ、どうやって食べきろうかしらん」問題です。そこまで釣らなきゃええやんけというかもしれない。たしかにそうだ。でも、乗合船で1時間で20尾釣れてあと2時間あるとしたら、いろいろと悩ましいわけです。
一計をうって、乗船中に友人などにメッセージを送り、下処理したものを人にわけるというのも一つの手段。10人日の作業でも、5人で取り組めば2日で仕事は終わるはず。理論上は。使い方があっているかわからんけど。
釣りたてイシモチといえば、黄アジを凌ぐ幻の味わい。他に塩焼きや、清蒸など血抜き処理したイシモチはクセもなく淡白でなんにでもあう味わい。みんながんばって10尾ぐらいはなんとかなる。そして、干物にして冷凍してあと5尾、10尾ぐらいもなんとかなる。
が、あと20尾どうしようかしらんみたいなことになる。
え?そんなことになったことがない?
そんなに強がんなよ。自然体で生きたほうが息苦しくないぞ。
ということで、イシモチ問題に直面しているあなた、どうぞご安心ください。
今回は、大量のイシモチを魔法のように美味しい料理に仕上げ、冷凍保存により中長期的に楽しめる技「トートマンプラー(タイ式さつま揚げ)」をお伝えします。
メモの用意はよろしいか?
イシモチの下処理
翌日だけど、このイシモチの鮮度や、よし!
こちら釣りあげた翌日のイシモチ。
釣ったそばから血抜きしていったものです。イシモチは水分が多く鮮度落ちしやすいので、できれば当日さばいたほうがよいです。じゃあなんでお前は翌日にやっているのか?
すこし落ちついてください。
なにごとも無理はいけません。
当日つかれていてちょっと料理という気分じゃないなと思ったら、そのまま冷蔵庫の設定を強にしてチルドルームにいれておけばよいと思います。
だって、無理して杜撰な下処理をしてしまったら本末転倒じゃないですか。うちの会社はいつもそういうことをしているから成長しないんすよ。明確な目標もないから社員がバタバタやめるんです。みたいなことを言って、言ったことに満足していませんか?
何事も組織の課題を経営陣に発言したら、自分がプロトタイプをつくって見せたるぐらいの気概で取り組むべきです。
あれ、なんの話だったっけか。
あ、イシモチ料理の話でしたね。
鱗を落として、頭部と血合いを取り去る。
頭部はアラ汁につかうので、下処理して別さらに取っておきます。これはまた別の記事で。
あとは三枚におろして、皮も引いておきましょう。
この皮も出汁がでるので、別皿に待機。
だいたいの魚が捨てるところなんてほとんどないんです。
イシモチをミンチにしよう
次にイシモチをミンチにします。
と、そのまえに。今回のイシモチは17尾いたんですが、やや型が小さいといこともあり、出来上がりのボリュームを考えると増量が必要かなと。
ここで、安ハンバーグ界隈やミートホープ事件のようにようわからん混ぜ物をしすぎるのも、どうかと思います。
さて、どうしようか。
あ、冷凍庫にスミイカ(コウイカ)あったな。
ということで、淡白なイシモチを殺さないとおもわれるコウイカを刻んで混ぜることに。全体にやや塩をまぶして、あとはフードプロセッサーでもなんでも混ぜましょう。
時間がある人は包丁で念入りに叩いてもよいと思います。
今回はブレンダーでサクッと仕上げることに。
と、おもったら、魚のように粘りが出るものはやや苦手の様子。ふつーのミキサーみたいなのがよいのかもですね。60秒以上連続稼働すると、モーターが焼けるようなニオイがしてくるので注意です。実際してきました。
途中からイカはぶつ切りのままいれたほうがよかろうとおもって、すりつぶしたミンチに残コウイカをイン。
黒コショウ+みりん少々+レッドカレーペースト+フライドエシャレット+ココナッツミルク+コリアンダーパウダー入れて、木べらで混ぜることに。このとき、ブレンダーはかなり稼働していたので、経営者としてのせめてもの思いやりです。
今回はつなぎに、卵白とか片栗粉を使わなかったのですが、そのあたりはよしなに。
ほんとはレッドカレーペーストのかわりにコブミカンの葉(バイマックルー=カフィアライム)を刻んでいれる予定だったんですが、家にあったのが古くなったので大掃除で捨てていたのを忘れていたわけです。
それで、近くの各国食材店にいってみたら、売ってなかったという。
これ佐藤秀峰さんがいったときは、あったようなんですね。もしかして、巷でコブミカンブームが来ているのかもしれません。トムヤムクンとかトムカーガイにいれると味が締まりますしね。
トムヤムペーストとかレッドカレーペーストにもコブミカンの葉が入ってはいるんですが、やっぱりそのものに勝るものではありません。
今度、アメ横センタービル地下にいったときに生の葉を仕入れておこうと心に誓いました。
そうこうして練り上げたのがこちら。
コウイカの切り身が、他にないこだわりを感じさせますな。流れで、たまたまこうなっただけなんだけどね。
寝かせたイシモチとコウイカのミンチを揚げて食う
じゃあ、そのまま出来上がったミンチを揚げたかというと、やめておきました。
時計の針が23時過ぎを指していたので、ここから揚げて食べたら0時過ぎるし、次の日の朝に胃もたれ太郎の当番が確定してしまうからです。さらば太郎。
と、いうことで、冷蔵庫で寝かせておいて、翌昼に調理。
餃子やシュウマイのタネもそうですが、調味料とまぜ合わせたあとに、冷蔵庫で寝かせると味がなじんだり、いい塩梅に発酵してよかったりします。
これをお玉ですくい、中温にした植物油で揚げる。
ココナッツオイルでやるとさらに本格的なのかもですが、ノーマルサラダオイルでよいと思います。ごま油をいれると中華っぽくなるので自粛。
お玉いっぱいもりもりにして揚げてみたんですが、自然と生焼けになりがちです。なのでお玉サイズで作る際は、お玉にすりきり一杯にし、フライパンにミンチを落としたあとに、お玉の裏側で押しつぶして平たく広げましょう。
これをすると、表面積がひろがり、厚みがなくなるためよく揚がります。
こちらが揚げたてのイシモチとコウイカのトートマンプラー。なんだか、同じ色ということもあり、全体がくっついて巨大かきあげみたいにも見えますね。
盛り付け。
揚げインゲンを添えましたが、オススメはコブミカンの葉を1枚1枚揚げたものを添える方法です。他に、さつま揚げの片側にコブミカンの葉を一枚そのまま貼り付けて揚げるのもよいです。香ばしいんだな。あれは。
柑橘類が油のしつこさを中和するんですが、レモン以外にライムもよく合います。
つけだれは、自家製チリソース。もう一つはタイの魚介料理用ソースです。名前は忘れました。
チリソースなのですが、配合は以下の通り。
- スイートチリソース
- ナンプラー(今回きれてたので、鮎魚醤をイン)
- コリアンダーパウダー
- 薄く刻んだきゅうり
- しぼったライム汁
ほかに、ピーナッツを砕いたものもよく合いますし、タイ料理屋でもよくみかけます。
こちら別カット。
さて、味は。
むちっとした触感。イシモチの上質な白身に、アクセントを添える刻みコウイカ。
かなり歯ごたえがあり、そのあたりのさつま揚げと比較するとさつま揚げ業界の風雲児を思わせる味わい。超新星。つなぎを入れていないというのもありながらも、たんぱく質がかなりの密度でくっついている気配。
実に美味。
白飯なしに、勢いで2枚食べたら満腹になりました。
そういえば、青森には「イカメンチ」という郷土料理があるんですが、この味わいはどっかの郷土料理にしてもおかしくないぐらいの品質。
今回たまたまコウイカを使用したわけですが、コウイカじゃなくてもよいとは思います。ヤリイカ、スルメ、ケンサキなどなどと白身魚をあわせてみんなつくってみましょう。
そうそう。
あまったさつま揚げは、辛くなかったので、刻んで1歳の息子の白飯に混ぜ込んだり、翌日温めなおして食べたり。あとはあまったら冷凍してもよいと思いますし、ここまで加工してあれば人にあげてもよいんじゃないでしょうか。超絶旨いし。きっと喜ばれるはず。
釣魚とトートマンプラーの可能性
トートマンプラーは、「魚を丸くして揚げたもの」というような意味合いで、エビを使うとトートマンクンになります。
タイでは、魚は海産のものをつかわず淡水のナマズ類をつかっているわけですが、これらは淡水魚独特の泥臭さがあるわけです。これを香辛料と一緒に練り合わせることで臭みを消し、加熱調理により食中毒を予防しつつ、すこしは保存も効くようになるという一石三鳥ぐらいの料理。
釣りをすると、ちょっと臭いなーというような魚がいるわけですが、極端なカビ臭、ケミカルヘドロ臭などでなければこのトートマンプラーにすることで臭みを軽減して美味しく食べられるはずです。
ちょっと臭みがきになる魚を釣って持ち帰ったあとに、持て余してしまったら、トートマンプラーにしてみるのも一つですね。
ではでは。
平田(@tsuyoshi_hirata)
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▼トートマンプラーの味を決めるといっても過言ではないコブミカンの葉ですが、生が最上です。でも手に入れにくいという人は、乾燥や冷凍タイプを用意しておきましょう。生で購入したのを乾燥させたり冷凍しておくのも便利。