逗子と鎌倉の間に和賀江島という磯遊びにもってこいの場所があるのですが、よく釣れるギンポの釣り方のコツやその他の注意事項について実際の体験をもとに紹介していきます。
和賀江島をしっておるかえ?
ひぇひぇひぇひぇ。そこの旅のお方、都へいくのかね。まあせかさず、足をとめてこの婆の話を聞いていきなされやい。ささ、婆の入れる茶でも飲みなされい。
若い方の人生はまだまだ長い。すこしばかし足をとめてもバチがあたるわけではあるまいて。古来より、生き急ぐ人間には大した人物はおりませんぞ。『秒速で○○を稼ぐ』『脱社畜』『サラリーマンはオワコン』などは、みな大事を為せぬ代名詞じゃて。まあ、この婆につきやってくだされい。
ほら、そこのな、崖から材木座の海のほうをみてみい。ちょうどおなじぐらいに丸っこい石がたくさんあるじゃろ。
砂だらけの浅いこの海になんでこんなに丸っこい石があるのか。不思議に思わんかえ?
そうさな。不思議じゃろ。
実はあれはな、いにしえの港のあとなんじゃよ。今となっては、まぼろしの港といってもよかろうて。
この材木座の海はな、むかしから遠浅でな、和賀江津ちゅー風に呼ばれていたんじゃ。
そんでな、相模湾を行きかう交易船で賑わっていたんじゃよ。じゃがな、このとおり遠浅だったもんでうまいぐらいに船がつけられず難儀しておったそうじゃ。
そんなときに、或る坊さんがふらり通りかかってな、鎌倉幕府さんに提案したんじゃと。そうさな、まーあれじゃろうな、ニーズにあっていたんじゃろうな。提案資料には派羽歩とかはたぶんつかってないと思うが、口頭と手記素吐で提案したんじゃろうて。いつの時代も人の心を動かすのは派羽歩をこねくり回した無駄資料や絵苦施流の皮算用ではなく、人間の胆力じゃよ。にひゃひゃひゃ。
まーなんでもいいがのう、その提案が幕府さんに通ってな。今の世でもそうじゃが、公共事業というのは真久露な視点でみれば景気のためには必要じゃからな。
そんでもって、そのあたりに土台が固められてな。相模湾の西から船で丸石が運ばれ、人工の島が出来上がったんじゃよ。ひゃひゃひゃひゃ。
それを今は「和賀江島」と呼んでいるんじゃが、あれはもともと港でなー。土台にあたる大き目な石の上に、丸石を積み上げて作られたのじゃよ。それで、材料は相模湾の西から船で運ばれたのじゃ。
おぬしも義務教育をうけていればだいたいわかるとは思うが、月日はたって、室町・江戸の時代となり、鎌倉が重要な土地ではなくなってな。港は放置され、野風や満ちては引く潮で劣化していき、やがてはただのゴロタ場になったのじゃよ。
このあたりは、高度経済成長期に馬鹿の一つ覚えみたいに建てられて一切採算がとれなくなった箱ものと似ているものじゃな。にゃはははは。
それでな、あの和賀江島にはな、大潮の干潮前後には岸から歩いて渡れるのじゃよ。なーに、胴長などは不要じゃよ。
・・・
なに?
わざわざゴロタ場に渡って何をするかって?
そう生き急ぎなさるなて。ふむ。まあよい。
せっかくこの婆の話を聞いてくだったのも何かの縁。
いいじゃろう。教えて進ぜよう。
和賀江島では、ギンポが釣れるんじゃ。
和賀江島のギンポ釣りは装備が肝心
さて、謎婆による和賀江島の解説をきいて、すっかりやる気になったかと思います。
それでは、ギンポを釣りにいきましょう。
朝起きたら、気温が2℃。
春の陽気から一転して、かなりの寒暖差。
和賀江島へは、鎌倉か逗子からバスで行くことができます。逗子からの場合は、鎌倉行きのバスでリビエラ逗子マリーナ前で降りる。
小坪は逗子でもこじゃれエリアなのです
すると、このようなこじゃれストリートが登場。
あとは、鎌倉側に鼻歌まじりで歩いていけばすぐにつきます。
潮位は潮の状況によってことなるので大潮の1時間前に到着しましょう
これが和賀江島なんですが、まだ潮が引ききってないので、渡るのが難しい状態。
チェストハイウェーダーであればなんとかいけますが、転倒したらウェーダーのなかに海水がはいってあかんことになるので、今しばらく潮が引くまで待ちます。
今回の装備は、
フライ返し。
これは前回の和賀江島釣行でつかったものなのですが、たまたま眼に入ったのがフライ返しだったというだけで、ギンポやムラソイなどの穴釣りは割り箸などで問題ないです。
こちらは餌の「魔サバ」
鯖を仕込んで、冷凍しておいたものです。
ギンポは、アオイソメでもサバでもサンマでもなんでも釣れるので好きな餌を用意しましょう。どちらかというと視覚ではなく嗅覚で餌をさがしている魚のため、ニオイが強く拡散するものがオススメです。
ギンポは口が小さいため、大きな切り身の塊だと食い込みにくいという特徴があります。
ということでハサミで一口サイズにカットしておくことに。この和賀江島の釣りは大潮干潮前後2、3時間程度の釣りなので、道具は上陸前に準備しておくのが大切です。
潮が引くまでに手前のゴロタ場でテスト。
ふむふむ。
シマハゼやらドロメっぽい魚がいますな。
そうこうしているとだんだん潮が引いて、和賀江島との間に道ができはじます。
このあたりから、和賀江島常連兵の面々(地元の方々)は先駆けしていきます。先んずればすなわち人を制す、ということなんでしょう。
間違えて割りばし仕掛けを作り過ぎた
わたしはといえば、謎婆の言う通りに焦らずたゆまずということで、仕掛けの仕込みをします。
仕掛けは割りばしに、海平ナイロン5号を60cmほど結んでおいたもの。これはあとで気づいたんですが、ラインは30cmあれば十分です。
ラインの先にはメバリングのフロート仕掛け用のフックをつけ、2g程度のガン玉をつけるのですが、先につけてしまうと、あれがこれで、こんがらがって残念賞になりがちなので、島に渡ってから針を結ぶようにします。
メバリング用の管付きフックであれば、クリンチノットなどで高速で仕掛けを組めるので、時短にもつながります。この仕掛けを9本ほど作りました。(後でわかりますが、3本ぐらいがベストだと思います)
そうこうしていると・・・
む。
各歩兵のみなさんも、どんどんわたりはじめたぞ。
この日、さいたまのくまさんと一緒だったのですが、彼も「平田さん、じぶん先行っていいですか?」といってきたので、「おういいよ、いったれや。おれは後からいくわ」と、ちょっと先輩っぽくいってみました。
なんというか、俺は生き急がず余裕綽々であとから大勝利するから、みたいなスタンスを醸し出してみたんですよね。
が、
岸に我輩一人取り残され、みんながどんどん前線へ進んでいくというこの状況。
・・・
まったく、慌てる乞食は貰いが少ないってうちのじいさんがいっていたんだからね。と、頭のなかでは思いつつ。
ふと、この状況はクソ企業において、会社や自分の将来性という点で見切りをつけてどんどん辞めていく人が相次いでいる状況を思い浮かべるわけです。
最後まで現状と未来をしっかり見ることをさけて、惰性で残って会社と一緒に海に沈んでいくというような役割なのではなかろうかと。
お、俺だって。俺だって。
・・・
それにしても、今回寒さに日和って防寒長靴できちゃったんですよね。寒いかなーとおもいましてね。風邪ひきたくないしなーと。
これがミスでした。古今東西、こういった守りの姿勢が、敗北を生むわけです。攻めこそ最大の守りであるともいいますし。うーむ。ウォーターシューズかKEENのサンダルでくればよかったなー。
これは、完全に潮が引くまで待っていると、さすがに敗北必至だな。
島にいる時間が短くなって、ジ・エンド。そんでもって、みんながギンポなどの釣果にほくほくしているなかで、ボウズの冷や飯をくわされるという光景がやけに具体的に目に浮かびます。
あかんな。
いいだろう。ここは攻めるしかあるまいて。
わたしの本気をみせてやろう。
当たらなければどうということはない。
・・・
ということで、はだしです。
あとでわかりますが、和賀江島へ渡って釣りや磯遊びをするときは、絶対にはだしでいってはいけません。はだしていくと、とてもつらい思いをしますし、重大な怪我につながるので注意です。
どうせなら靴下のままいけばよかった(フラグ)
さて、いくか。
・・・
さぐりさぐり、丸石をあるいていく。
もうですね、どの石の上にもヤドカリが矢鱈にいて、拷問ツールみたいな感じなんですよね。ドラクエのバリア地帯といいますか。
これが足の裏に無慈悲に突き刺さる。
スーパーマリオのトゲゾーみたいなもんですよ。やどかりの殻は当然のごとく尖っているわけで、それが不摂生をしている足の裏のツボを刺激しつつ、皮膚を傷つける。
そのむかしキリストは、はだしで十字架をかつがされてゴルゴダの丘まで歩かされたといわれますが、その辛さもなんとなくわかるような気がします。周囲から石礫は飛んでこないけど。
じゃあ、ヤドカリがいない石を慎重に選んで足を進めればいいだろうと思うじゃないですか。ところがどっこい、その石が歯槽膿漏の歯茎でぐらつく歯みたいにぐらつくんですよ、そんでもってバランスを崩してこけるというやつですよ。
これは馬路で危ない。
この丸石はまったく安定していないので、ほぼすべてがぐらぐらしているんです。
・・・
ふつーはここであきらめるんだろうな。
常人はね。
だいたい諦めちゃう。
だけども、いつの時代も世には決してあきらめなかった人がいたのです。
このわたしです。
この時点で、士気が100から20ぐらいに低下していて、コーエー三国志であれば、だいたい兵が離脱するレベルです。配下の武将が呂布であれば速攻で寝返っている状態…
とにかく穴釣りを決行する
和賀江島のゴロタはこのような風景。
これまでの経験から大きな石と小さな石の間にムラソイが潜んでいることはわかっています。
上陸した人たちが、それぞれ膝をかがめたり、這うようにして穴釣りをしている光景。
この地形をはだしで攻めるなんて酷すぎる
わたしは奥をめざすことに。
なぜならばこの奥側の潮があたっているところに魚がもっとも潜んでいるからです。
とはいえ、上陸後も当然はだしなわけで、やどかりや石ごろごろの呪いが付きまとってくるわけです。
虎穴に入らずんば虎子を得ず
やるしかあるまいて。
世の中には2種類の人間がいる。
やる人間とやらない人間だ。
ここまできて、ボウズだったらすごい哀しいけど、結果を出せば、それが足と心の傷を癒すはず。
もはや勝利しかない。
高円寺のライブハウスあたりにいる鋲だらけの皮ジャンの若手を想い出す
こちらが呪いのヤドカリ陣。
穴釣り用の割りばし仕掛けにむらがり、サバ餌を岩場に引き込み根がかりさせるという質の悪い人たちです。
このような穴にギンポはいるよ
割りばし仕掛けを5か所ほど仕掛けて、5分後に引き揚げてみるとこの通り。
ヤドカリがすごい。
ヒトデ氏も和賀江島の防衛装置として大活躍しているようです。
このあたり怪しげだな。ムラソイの気配がする。
こういった地形では、波がぶつかっている外側付近の比較的大きな石の深めの穴にムラソイがいます。
見えるぞ。
わたしにも見える!
・・・
・・・
ということで、フライ返しの手竿?+虫ヘッド+魔サバにヒットしたのはムラソイです。
これは自主規制でリリース。
まだ1時間ほどあるし、大丈夫だろう。
そうこうして、再度仕掛けていた割りばしを引きあげていく。
1本目、やどかり。
2本目、やどかり。
3本目、やどかり。
4本目、ヒトデちゃん。
・・・
ふぅ。
む。
あの割りばし、さっきと位置が違う気がするぜ、なあおい、そう思わないか?
って、俺しかいないんだけど、まあ自分に語り掛けているわけですよ。
5本目、、、、
当たーりー!
念願のギンポ氏です。
うれしい。
置き竿ならぬ、置き割りばしなわけで、針は飲み込まれているのでハリスをきってキープ。
この時点で足は血だらけであります。
海水がよくしみるぜ。
ギンポラッシュ!!!!だが・・・
ふりかえれば、この風景。
ゆくゆくは戻らなければならないことなど考えたくもない。
と、トンビがだれかのビニール袋をかっさらって舞い上がった模様。
が、30mぐらい上からビニールは落下。
それはどうやらくまさんのやつだった模様。
そう、この和賀江島には空軍もいまして、カラスとトンビが上陸部隊の釣り餌や食料を狙っているのです。エサや食料が入ってなくても、ビニール袋には反応しやすいので、見えるとこにビニール袋をおいてはいけません。
くまさんは、落としたビニール袋を回収したのですが、中に入っていた仕掛けがどっかにいってしまったとのこと。和賀江島空軍強し。
そろそろ潮が動き出すまで40分程度。
ここで、穴釣りの構えを変更することに。それと割りばし仕掛けは手間取るので3つにして、基本的に手釣りで攻めていきます。
と、ゴロタ石の間で横に長くつながっているスペースを発見。
穴釣り経験が長くなると、だいたい魚がいる場所が勘でわかるのですが、そんな場所です。
ムラソイは、エサを落とした瞬間に食ってくるものの、ギンポは瞬発的な視覚によるバイトではなく、エサのニオイで横穴を移動して食ってきます。
・・・
穴に落としたサバが引き込まれ、一切まがらない割りばしのアタリがダイレクトに手元に伝ってくる。感度は最高。
む。これはデカイ。このギンポは太いな。
思わず、誰もいないのに、
よっしゃー!
とか口にしちゃったんですが、その瞬間、脱走するギンポ氏。
ううむ、食い込みが甘かったか。
その後も同じ横穴の延長線上でギンポがヒット。
これは10秒ほどまったものの、食いこみが浅かったのか針先が甘くなっていたのか、釣りあげて活かしバケツのところにいくまで歩こうとしたときに、脱走。南無。
そろそろ潮が満ちてくるな。
ここで、くまさんに声掛け。
仕掛けていた割りばしには、
カサゴ。
こちらは持ち帰ることに。
ドロメちゃん。
こちらは唐揚げにして食ったろうかしらと思いながらも、リリース。
ああ、帰り路がとてもつらい。
痛い。
痛。
痛。痛。痛。痛。
痛。痛。
痛。
痛ぁ。
痛。
痛。
痛。痛。痛。
痛。
痛。痛。
痛。
なんとか強行軍で帰還することができました。
さて、足はどうなったのか。
きたないもので恐縮なんですが、この通りですよ。
指がいたい。
足の裏も側面も大負傷。
繰り返しますが、指などはこけ方によっては骨折すると思うので、絶対にマネしちゃだめですよ。
持ち帰った釣果はこちら。
カサゴ2尾。ギンポ1尾。
一番上は、くまさんのカサゴ。材木座側のアカモクエリアで、メジナやカサゴをたくさん釣ったようですが、小さいのでリリースした模様。
カップルで和賀江島釣行をしていたベテランっぽい穴釣りの方々はギンポを5匹ぐらい釣ったそうです。うらやましい。
だんだんと潮が満ちていく。
このあとも、一人チェストハイウェーダーの方が戦場で穴釣りしていたんですが、次の干潮まで釣りをするのか、それとも、満ちた海を渡って帰るのかは謎。
「じぶん今月ちょっとお金がきつくて」と、くま氏がよくわからないPRを繰り広げていたので、小坪にあるゆうき食堂でランチを。
ここは週末は通しでやっていますが、昼はご飯がなくなるとオーダーストップです。
くじらの刺身定食。ご飯は大盛。
ここの大盛ごはんは異常なので、身体と気持ちのつりあいがとれてないおっさん諸氏は注意しましょう。
それにしても、このドカ盛をやめれば、もう少しお客さんを受け入れできそうな気もしないでもないなと。
余談ですが、穴釣りはこういったスナップorスナップサルカンに小型のナス型オモリ+マス針orメバリング用フックなども便利です。
穴の間で根がかっても、ナイロン5号程度のラインであれば、針を伸ばして回収できるので海に残すゴミも少なくなるはず。よかったら試してみてください。
ではでは。
平田(@tsuyoshi_hirata)
今回の和賀江島釣行での気づき
- 長靴よりはウェーダーかウォータシューズ
- 転んだときに手をつくと手の平がヤドカリにやられるので、軍手推奨
- 割りばし仕掛けなどはたくさん作りすぎると上陸後絡んで大変。3つぐらいまでがベスト
- ムラソイはリアクションバイトするが、ギンポは穴に餌を突っ込んでしばらく待つとあたりが出る
- ギンポは口が小さく針がかりが悪いため、①小型のエサや針を使う②待ち時間を長くする③釣りあげたらぶらぶらしないで手網などに入れる
- 荷物は最小限で
- ビニール袋や餌や食料を外に出しておくと和賀江島空軍の餌食(トンビ・カラス)
和賀江島でのタコ獲りについて
和賀江島には、タコも多く生息しています。
一方、周辺の海域は「共同漁業権 共第10号」に該当するエリアで、タコについても漁業者以外は手段によらず捕獲が禁止されています。
▼ギンポの穴釣り動画。
関連アイテム
▼チェストハイウェーダーがあればひざ上ぐらいの潮位であれば渡れるはず。あまり満ちているときは転倒するとウェーダーのなかに海水が入ってキケンです。
▼浅いので溺れようがないですが、子供は水深30cmでおぼれるのでライフジャケットなどがあるとさらに安全
▼KEENのクリアウォーターCNXはつま先がしっかりまもれるので安心。濡れてもよければ夏場はノーマルスニーカーで入ってしまうのも一つの手
▼釣り竿を用意する場合は1m程度のものが便利。足元だけを釣るのであれば割りばしでも大丈夫
▼クーラーボックスは5リットル程度の小型でOK。大物は一切釣れません
▼割りばし仕掛けは以下のセットがオススメ。ガン玉はウォーターグレムリンのものが柔らかめで固定しやすい