子供がうまれると、やがて離乳食という壁がやってくる。
アレルギーの有無、そもそも食べてくれるのか、などなど。
便利な時代で離乳食も調理済みのレトルトタイプがある。とはいえ、親としても自分の手料理を食べさせてやりたいと思うのも人の心である。
今回の食材はヒラメ。泣く子も黙る高級魚。これはボート釣りで釣ったもの。
カレイ同様、ヒラメは白身の魚で、たんぱく質も豊富。
なにより大人が食べてもおいしい。ということは赤ちゃんが食べても旨いはずだし、小さい頃からほんまもんを食べさせたい。
ヒラメを泡盛で炊く
うろこは包丁ですき引きせず、はがす。
なぜか、すき引きがあまり得意ではないからだ。
熱湯をかけて、鱗とヌメリ、血合いの残りを取り除こう。
最後に流水でざっと洗う。
おなじみの久米仙の紙パック一升。
料理に使う場合は、紙が便利で経済的。
ヒラメの身がひたるぐらいまで、久米仙をどばどば入れる。
あとは、弱火で炊く。
と見せかけて、ここは強火で一気にいきたい。温度を高くすることで魚のにおいが出やすくなるが、これを泡盛のアルコールで飛ばしつつという手法。むしろそうなってほしいという願い。
育児をしていると、なにかと自分の時間も無くなる。
なので、こういったのはだらだらせず一気呵成に攻め込んでいきたい。夏侯惇の強行軍。
攻めの強火とでもいおうか。世の中のものはだいたい「攻め」をつけておけばしっくりくるのでお勧めしたい。攻めの転職。攻めの育児。攻めの釣りメディア。
料理界隈でいうと、強火つかいは料理下手な人の代名詞ともいわれる。
が、自分のなかで理由づけがされていれば強火もいいと思う。ストⅡでもそうだが、強ボタンのコマンドは隙ができやすい。それだけわかっていればいいんだと思う。
丁寧につくりたい人は弱火で長時間かけて調理すればいい。
ということで強火。
強火。
さらに強火。
もう一つおまけに強火。
するとこうなる。
所謂、白湯現象だ。
なぜこうなるのか。いいだろう、説明しよう。
蓋をして、強火により一気に過熱されたフライパン内部にプラズマが発生し、ヒラメの肉と骨などに浸透。そこから惜しげもなく出たエキスが白濁するのだ。
おい、嘘だよ。そんなに怒るなよ。
蒸しあがったヒラメの身をつまんで、碗にとっておく。
このとき骨をしっかり取り除こう。古今東西、赤ん坊の食の安全をだれが守るのか。そう、親である。親こそ最後の砦。そこを落とされたらもはや終わりなのだ。
ヒラメは細かい骨がすくないものの、縁側部分の骨は細かく注意していても入ってしまう。
とはいえ、この工程で骨が多少入っても、後述する練りあげ作業と実際に赤ちゃんにあげるタイミングで気づくので安心してほしい。
この通り身がとれた。皮もまぜておく。ワタリガニの身をほぐしたものにやや似ている。
ここから離乳食用のすりつぶしスプーンをつかい身を押しつぶす。
そんでもって、まぜていく。
このときも骨が目立つので取り除こう。
残った骨と頭がこちら。
曹操の「鶏肋」の話じゃないけど、これも捨てるに惜しい。
中骨はもろくなっていて、指で簡単にほぐれるはず。
なのでほぐしておき、少量の水か筑後盛パイセンあたりでのばしつつ、真昆布をいれて強火で炊く。
家系ラーメンのスープ
するとさらにヒラメ白湯エキスが抽出できる。
そんでもって、先ほどのすりつぶしたヒラメの身に追い白湯。
なんだか甘酒みたいだな。
これをさらに撹拌。ミキサーは不要で先ほどの押しつぶし系スプーン一本槍でおけまる君だ。
この通り、マックフルーリーじみたペーストができる。
クッキーのようにみえるのはヒラメの皮。
魚は皮に栄養があるから捨ててはいけない。
これを一晩冷蔵庫にいれておく・・・
・・・
・・・
・・・
翌日。
ご覧あれ。ほら、固まっているだろ。
所謂、煮凝り現象である。
ヒラメ白湯にふくまれる圧倒的なゼラチン軍の活躍によって全体がレバーペーストのように固まるのだ。
釣魚離乳食「ヒラメ白湯粥」の威力
さて、できあがったヒラメ白湯。
もう、できあがりからして勝利の栄光はみえているんだけど、これだけだとたんぱく質を中心に栄養価がたりないため、その他の食材をブレンドしていく。
- 白米の粥
- 野菜スープ(じゃがいも・たまねぎ・にんじん・しいたけ・などなど)
- すりごま
※粥と野菜スープは小分けにして冷凍してある。豆乳や豆腐をいれてもいい。
この3種類にヒラメ白湯をいれる。冷蔵してあったものをスプーン大匙2杯程度。
40秒程度レンジで加熱。
するとヒラメ白湯がとける。
あとは、全体を撹拌するだけだ。旨みが足りない場合、ごく少量の昆布だしの素をいれると、子の活性というか、食いつきが変わるのを覚えておきたい。
なんだかリゾットぽくなってきた。
息子氏はヒラメ白湯粥をどう評価するのか
ここ1週間ほど保育園にいけなかった息子の凪。最近は赤ちゃん用せんべいにはまっているが、これも味によって食べる勢いが異なる。時折こちらを品定めするような眼でみてくるので、食に妥協はできない。
「はーい凪ちゃん、ごはんですよおー」
このように世の中の親ばかな父親は赤ちゃん言葉を使っている。
凪「ほう。この料理、まずは本質を知りたい。ゆえに手で失礼する」
にちゃにちゃ、にちゃにちゃ。にちゃ太郎。
・・・
凪「ふむ。これは白身の魚を泡盛で炊き出し、あらゆる栄養素を抽出したもの。それに野菜スープと粥とすりごまを混ぜ合わせたものだな。魚は…カレイ、いや、ヒラメだ!」
わたし「ぐぅ、よくわかりましたね」
凪「ふむ。貴殿がヒラメを釣り、唐揚げにして黒酢餡をかましてバリボリ鼻息荒く食べていたのをわたしは見ていたのだよ。天は見逃しても、わたしの眼はなんでも見通すのだ。ふはははは」
わたし「ははー。さ、どうぞどうぞ。大人になったら養ってください」
凪「ふむ」
凪「モグモグ、モグモグ、モグモグ君…こいつはうめーや。上等だなおい、旨馬。歯が二本しかねーワイでも懸念なく飲み込めるぜ」
9か月だとなんでも手でつかんで口にいれたくなる年頃。
気がつくと床に落ちていた米粒とかフォーの乾燥麺をかみかみしていたり。かといってゲージのなかにいれると泣くし、子育てはやってみるとわかることが多い。
小トトロを人質にしてモグモグ。
この後、あっという間に完食。
我が子が自分の手料理を美味しそうにモグモグしているのは本当にうれしい。自分の親もそうだったんだろうな。親って本当に有難い。
食後はこれだよ。
歯磨きだよ。
ふしぎなもので、下の前歯が2本生えただけで口臭がはじまっているという。
成長というのは、老いているということなんでしょうな。
おもえば、お食い初めの真鯛のときは、まだ薄ら禿太郎でミルクしか飲めなかったのに、すっかり大きくなって。ぐすん。
親は子供が成長する姿をみると、なんとも切なくなるものなのだな。
ではでは。
平田(@tsuyoshi_hirata)
※ごまは誰もが知る栄養価の高い食材。が、蕁麻疹等アレルギーの原因にもなるので、最初に食べるときは少量かつ病院に通院できる時間帯にあげましょう。また煎ったものでも殻は消化できないのですりおろしたものを。
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