今回は、魚料理の基本食材として扱われるアジの目利きについてお話します。
そのあとは、大アジの炙りと中アジ・小アジの塩たたきをつくってみた話です。
アジの目利きはむずかしい
マアジは魚料理の基本のような存在とされていますね。
さばき方講座や本などでも、三枚おろしの素材は大体アジです。
比較的調達しやすく、味がいい。わかりやすい魚にみえます。
一方、個体差が大きく、さばいてみて「あれ!そうなってた?」ってな具合に、見立てと外れたりすることが多いなと思っています。
全体的に言えば、比較的初夏(梅雨前後)の産卵シーズンに脂ノリがよいイメージがあって、卵を持っていても、内臓脂肪がすごい個体もいます。
たとえばこちらは5月に釣ったアジ。
5尾いますが、一番下の個体なんて、明らかに顔が小さく体高があり脂ノリのよさがうかがえます。光の加減やうろこの取れ具合で色味が変わって見えています。
抱卵していても、この通り「ラード個体」。ラード鯵と呼んでも過言じゃないぐらいですね。
皮目の脂もこの通り。すんごい。
このぐらいの脂があると、さばいていると手指がぬらぬらしてきます。まさに、天然のハンドクリーム。
余談ですが、ラードみたいな内臓脂肪は捨てないで、卵や白子と煮つけると旨いです。これほんと。
ところで、アジも大型になると味が落ちる傾向にあると思います。
もちろん、黒アジ、黄アジで差はあります。黄アジだと大型になっても脂ノリが比較的あるので。
とはいえ、全体的な話でいうと、大型のいわゆる「大アジ」クラスになると、「小アジ」「中アジ」クラスといった25㎝ぐらいまでのサイズよりはうまみ成分が少なくなるような。でも、30㎝をこえる尺アジでも、よいものはよかったり。
むずかしい。
今回料理したのは、大津の手漕ぎボートで釣ってきた黄アジです。
7尾いるんですが、見た目でどれが美味しそうに見えますか?
後列の一番下の個体だけ、シリヤケイカかコウイカに延髄をかじられたので、やや崩れていますが、ぜんぶ身が張ってますし、体高もある。
・・・
結論を言っておくと、旨かった順は前列一番下に続いて、後列の3尾でした。
前列の上から3尾は35cm。すべて抱卵したメス。一番下は、性別不明で抱卵や白子の発達は見られかったもの。
後列は1尾だけ白子がありました。
こちら下処理をして冷蔵保存しておいたもの。
下側が一番おいしかったといったもの。
こちらは小型。
大アジ(黄アジ)の炙り
この大アジ、35㎝で抱卵していたものです。
抱卵によって身に体高があったのかというと、そうでもなくて、卵をぬいても、それなりに高さがあり、身にハリもあります。
ぜいごを取る。
腹骨をすく。
どうでしょう。見た感じで、身に脂は点在しているように思えます。
大アジサイズは、血合い骨を思い切ってすきとったほうがすっきり。歩留まりもよいんでね。
血合い骨と血合いは捨てないで、アラ炊きラーメンのスープにつかいました。
裏返すとこの通り。
皮目は残したままあぶります。
炙ればわかるさ。 pic.twitter.com/hvEVw7Qt48
— 平田 剛士|ORETSURI(俺釣) (@tsuyoshi_hirata) June 18, 2020
盛り付け。
ポン酢をかけて薬味と食べるスタイル。新玉ねぎなどもよくあいます。
ちなみに、アジの皮目ごと炙る際は、切らずにサクのままカツオのようにあぶり、氷水にさっとくぐらせると臭みが減ります。気になる人はやってみてください。
変な感想ですが、いうなれば、旨いは旨い。
要は感動する味ではないということです。
上中段の炙りをゴマ油+塩コショウで食べるように針ショウガ
別皿。
下段から、脂ノリが一番よかったアジの刺身。中段、大アジ炙り。上段、カサゴの炙り。
歯ごたえ、身の甘み、うまみ。パーフェクトでしたね。
口にいれるととろけちゃう。みたいなやつアジよりは、脂による甘みやうまみがありつつも身に適度な歯ごたえがあるほうが好みです。
脂ノリがよいアジは「塩たたき」もオススメ
中アジ(といっても、大アジっぽいが)と小アジ3尾はタタキにすることに。
それぞれ皮目に脂ノリが見えます。
血合い骨は、骨抜きプライヤーでさくっと処理。
サクを斜に7mmぐらいの感覚で切っていきます。
その後、塩と薬味を混ぜる。
- 長ネギ
- みょうが
- 大葉
- ヒマラヤピンクソルト
ここから塩ユッケをつくるときは、すりおろしにんにくとゴマ油を入れます。
今回は脂ノリもよいのでシンプルに。
包丁の側面で軽くたたくように薬味と混ぜ合わせていくと、室温もあって脂が溶けだし、ヒマラヤピンクソルトにより水分も出て全体的になじみます。適度なオイル感がよいですね。
盛り付け。
すりごまがよく合います。
全体が調和していてたまらない味わい。
レモンを絞ると脂の強さがやや緩和されるのと、魚独特の香りが和らぎます。
ごはんと食べるときはレモンがないほうがよいかもしれません。
まとめ
「引き味はよかったが味はそこそこだったな」とか思って、すまん
アジは見立てが難しいという話をしました。
釣った瞬間、これはいいアジだなと思っても、そこそこだったり。
だいたいまとめると、以下の通りではあるんです。
- 黒アジよりは黄アジが旨い
- 25cmぐらいまでの中アジが旨い
- 全体的に体高があり顔が小さく見えるものは旨い
- 初夏のアジは旨いことが多い
- 抱卵個体よりは抱卵してないほうが旨い。
ただ、抱卵個体や白子持ちでも脂ノリが抜群によいのがいたり。
尺アジでもめちゃくちゃ脂ノリ、身質がよくてうまかったり。
血抜きや処理方法以外にも、謎が深いなと。
マアジ、奥深いですね。
食べる人の年齢・体調・好みによっても異なりますしね。
ただ、さっぱりめなアジでも、身の旨さに差があったり。
むずかしい。
…探求のために、また釣りにいかなければ。
ではでは。
平田(@tsuyoshi_hirata)
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▼アジなど魚を炙るときに、カツオのように串を打ってサクごと炙り、ボールにためた氷水でさっと締める方法があります。藁がよいんですが、家だと火災警報器が鳴りますしね。なので、コンロやバーナーでもOK。余分な脂や臭みが落ちて旨いんです。
▼ヒマラヤピンクソルトはアジにもよくあうなと。塩焼きや、振り塩でつくる干物のときにベスト。業務スーパーで買うのが一番やすいです。