アマダイは関西では超高級魚として扱われている。
関東でも料亭やちょっとしたこだわり料理を出す店にいかないと、あまり遭遇しないのではないかと思う。
そんな高級魚を気軽に釣って料理できるという喜び。これこそ、まさに釣り人冥利につきるというやつだ。
いいんだ。この際釣り船や釣り道具の原価など忘れてしまおう。飲めや歌えや。おほほほほ。
これまで素人ながらいろいろとアマダイ料理を作ってきたが、まだ試したことがないものの、アマダイの代表的な料理に若狭焼きがある。
新鮮なアマダイをひらいて塩をふりして寝かせたもの(アマダイのひとしお)を酒・味醂・醤油のタレをぬりつつ炙りあげるという料理法。
今回は、そんなアマダイの若狭焼きに挑戦してみた。
いつもながら、だいたいの工程はざっくりググりつつ先日の知恵にまなび、あとはだいたいこんなもんだろうと作ってみる。
アマダイの若狭焼きをつくるぞ
まずアマダイの下ごしらえなのだが、若狭焼きにしあげるためには、背開きにする必要がある。
包丁一本で勝負できる人は頭も梨割にしてやればよいのだが、わたしは途中から調理ばさみをすすめる。刃が悪くなるからね。
包丁一本 さらしに巻いてー♪
男はつらいよで、寅次郎が機嫌がいいときに口ずさむ歌だが、包丁1本でなんでもやってしまうのが料理人ならば、一般家庭ではそれほどこだわらないで調理ばさみなどなど文明の利器をどんどんつかえばいいと思う。
今回は、最大36センチ。ガスコンロの魚焼きグリルに斜めにしてぎりぎりおさまるかどうかというサイズ。
アマダイはほんとかわいい顔しているなー。
ほっぺたがぷくぷくしていて、唇がちゃんとあり、眼がルンルンとしてる。
こちらは今にも、語りかけてきそうな表情をしている。
「ねぇあたし、すっかり釣り針飲み込んだでしょ。あれね、あなたが誘い下げしてるときのハリスがさ、たるんで落ちていくときにパクって食べたのね。だからあなたが釣り竿でアタリを感じて合わせるまでにオキアミを飲み込んじゃったってわけ。」
そんなことをおもってもいないだろうが、2尾とも誘い下げのときにあたっていたとみえてハリスが飲まれていた。
若狭焼きは鱗を食べる料理というわけで、粘膜のぬるぬる成分をとるために塩をふってすり落としておこう。
これ、素手でやると手が荒れているとしみるので、こういう鍋つかみがあると便利。
背開きの方法は、頭の骨格のうしろあたりの背中から骨にそって出刃をいれて尾部分まで入れ、その後内臓を傷つけないように腹膜を切る。
頭部は、アマダイを起こして出刃包丁の先をつかって刃先を入れて、そこからは調理ばさみでカットするとよいだろう。ケガもしないですむし、きれいに割ることができる。
内臓と血合いをできるだけきれいにとっておこう。
さばいているときに、アマダイの口からでてきたのは、エソの幼魚?、カニ、ゴカイ類。ふむふむ、君たちは普段こういったものを食べているのだな。
もとから情報として知っていても、このように実際胃袋からでてくるのを見ると、次の釣りに活かせる経験になる。
アマダイの釣りはオキアミ一本槍で釣るのが一般的だが、アオイソメ・イワイソメ・蟹類・エビ類・ホタルイカなどなど、もうすこしバリエーションがあったほうが面白いのかもしれない。
そのうち、もっとワーム釣りが普及するかもしれない。
オキアミよりワームのほうがしっかり針につけられるので、長時間安定して誘るはず。
開いたものの皮側はこんな形に。
まっぷたつになってもうた。
身側、皮側の両方にクッキングペーパーに湿らせた日本酒をぬってからヒマラヤピンク岩塩をふっておく。
ピンクだから相性がよいかもしれない。
包丁で割ったところを元に戻すと、この通り。
このまま冷蔵庫で一晩寝かせるのだが、リードクッキングペーパー+ラップで覆うのがベストだと思う。
・・・
翌日。
・・・
冷蔵庫から取り出したアマダイに再度、日本酒+みりん+ピンクソルトをふっておく。
今回は醤油は使わないでシンプルにいきたい。
料理なんて、自分がおもったようにアレンジでしていけばいいと思う。
予熱した、ガスレンジの魚グリルで強火で焼いてみる・・・
あー。
魚焼きグリルの距離感だと強火にすると焦げるのだな。
あとアマダイのサイズ的に頭部と尾の先の火のとおりがわるくなる。
ということで、扉をひらいて、頭部と胸部だけ焼いてみつつ、裏返しにして中火から強火へ。
こちらはいい塩梅に炙れたな。
ということで、アマダイの若狭焼きの完成。
鱗がやや焦げたが、実に美味。
鱗と皮に旨味がありつつ、身はしっとり甘い。とくに頭部あたりの皮やコラーゲン部分が絶品だ。
炙りアマダイの湯漬けは絶品
この、頭部や骨と皮は捨てるにおしいな。
よし、湯漬けにしよう。
白飯に、アマダイの頭と皮と骨をのせてダシを注ぐ・・・
その後、骨部分を丁寧に取り除く。
だんだんと身から出る成分なのか、白飯のでんぷん質なのかわからないがダシが白濁していく。
食べてみる・・・
う、んまい!
これはマイ湯漬け史上最上位クラスに位置するかもしれない。
酒をのんで酔っていないからこそわかるアマダイの甘みと旨味。
じ、滋味深い。
みなさんも、骨や皮や頭部を捨てるまえに、ぜひためしてほしい。きっとヒレ酒にしてもうまいはず。
アマダイの昆布締めを作る
まず、鱗を落とす。
アマダイの場合は、身や皮がやらかいので包丁ですき引きするという技法もあるが、丁寧に鱗おろしで落とすほうが簡単だと思う。
この通り、だいたい鱗はおとせた。
三枚におろしつつ、腹骨をすいておく。
その後、昆布の布団でアマダイをくるんでおこう。
昆布は、濡れたクッキングペーパーで表面を吹きつつ湿らせると割れないでのばすことができる。
以前、乾燥した昆布の縮んだ部分から小石がでてきたことがあるので、汚れなども一応チェックしておくと安心。
・・・
翌日。
・・・
昆布の布団をはがしつつ、試食をしてみる。
おお。甘い。昆布の旨みが加わって芳醇な味だ。
切り分ける。このまま食べてもいいし、しゃぶしゃぶにしても皮目が旨い。
今回はバーナーで炙ってみた。香ばしくてうまいが、個人的には昆布締めはしゃぶしゃぶが至高だと思っている。
アマダイの潮汁を作る
アマダイのアラからは繊細ないいダシが出る。
味噌仕立てにしてもいいが、今回は塩でシンプルに味付けることに。
アマダイ以外の魚のアラも使ってみる。アラはアラ。分け隔てなく接したい。
ここに熱湯をそそぎ、残った血合いやヌメリなどを洗い流す。
そこに水を注ぎ、昆布と生姜とみりんと酒をいれて、炊く。
沸騰したら昆布をとりつつ弱火で炊く。
具は、シンプルに大根だけをいれてみた。
仕上げにピンクソルトで味を調整。
この通り、いいダシがとれた。
盛り付けは、アマダイのお頭をつけると見栄えがする。
やさしい味だ。
とがりがない、ほっとしてすすれる味。
柚子の皮をうかべるとぐっと香気が高まるに違いない。
この汁に創味シャンタンをブレンドしラーメンをつくってもいいし、そのままうどんや雑炊にしてもいいだろう。
いやはや奥深い。
アマダイの中味の五香粉煮
アマダイの内臓にうち、胃袋、肝臓、卵巣(2匹ともメスだった)を選別し、血合いを流して酒につけておく。
その後、みりん、酒、しょうゆ、砂糖、五香粉(中華調味料)を入れて煮つける。
内臓の煮つけというと和食のイメージだが、この五香粉を一振りした瞬間に台湾あたりにワープするから不思議だ。
八角の香りはアジアの街角の香りでもある。
味は・・・
ああうまい。肝臓も胃袋も卵も味わい深い。
内臓も捨てないで料理していきたいものだ。
いつか、自分でとった松茸とアマダイで土瓶蒸しつくってを熱燗をかましてやりたいものだ。
追記:魚をうまく焼くために、イワタニ 炉ばた焼器 炙りやを手に入れる予定。