今回はアジを釣ったら一度は挑戦したい「干物」の作り方について紹介します。
アジは塩焼きでも十分旨いものの、開いて干物にすると旨みが凝縮してさらに美味しくなる魚です。さらに乾燥させることにより日持ちもするようになるので、たくさん釣ったときの保存食にすることもできます。
釣り物の「黄アジ」が最高
黄アジは全体的に薄いグレーから緑がかった色をしていて尾が黄色
まず材料から。スーパーで販売されているマアジ(黒アジ)でもよいですが、最上の素材は20cm程度の「黄アジ」です。黄アジはマアジのなかでも沿岸の浅場に居ついている個体で「瀬付きアジ」「金アジ」「黄金アジ」などとも呼ばれるもの。
黄アジは全体的に脂のりがよく旨みが強いのが特徴です。サイズは大きすぎるよりは20cm前後がもっとも干物に適しています。
釣り上げた黄アジは、状況によって「氷締め(氷海水で締める)」か「血抜き処理と保冷」を済ませておきましょう。釣りたては新鮮でも、保冷などの処理が不十分なものはすぐに鮮度が悪化してしまいます。
こちらは釣ってから氷海水で締めたアジ。酸欠やショックであがったもの(死んだもの)とは異なり、まだ身がやわらかいのが特徴。
持ち帰ったアジは全体を軽くあらったあとに、内臓とエラと血合いを落とします。血合いはとくにしっかり落とすのが臭みを少なくし保存性を高めるコツです。
たくさんのアジを開く場合は「腹開き」がオススメ
今回は連続処理にむいている腹開きでの干物の作り方を紹介します。
アジの腹を開いて内臓を指でかきだします。エラもそれほど固くないので指でちぎってしまいましょう。
その後、水を流しながら中骨部分の血合いを歯ブラシもしくは軍手をした親指で除去します。この作業をひたすら繰り返しましょう。
こちらが下処理を完了したもの。側線部分のぜいごは落とさなくても大丈夫です。
腹開きの場合、このように一工程ごとにまとめて作業できるので全体的な作業速度があがります。また背開きと違って、内臓の臭みが身につきにくいといえます。
次にアジを開いていきましょう。
中骨と腹骨をつなぐ部分に刃をいれて少しずつ開いていきましょう。
慣れてくれば、おおざっぱに2,3回の刃をいれるだけで開けますが、最初は少しずつ開いていけばよいと思います。
尾のほうまで刃を入れる。背びれ側の皮まで切らないようにしましょう。
その後、頭部の付け根のやや骨が固いところに刃を入れ、頭部を開いていきます。
アジの場合、頭部に身があるわけではないので、下処理のタイミングで頭を全部切り落としてもよいと思います。頭がないほうが干場の面積も少なくてすみます。
一方、頭があると見栄えはするので、写真に撮りたいときや、誰かにあげるときは頭つきで仕上げたほうがよいでしょう。
頭部の付け根の骨を切ったら・・・
あとは包丁の側面か手の平で頭を押さえれば完成です。
この通り。あとは、開くのを繰り返すだけです。
血合いはできるだけきれいに取り除きたい
プチノウハウですが、アジを開いたあと、全体的に体重をかけて手で押えることによって、筋肉繊維をつぶし塩の浸透を早める方法もあります。これはお好みで。時間があれば、そのまま塩漬け工程に進んだほうがしっかりした身が楽しめます。
漬け込み汁(塩水)には日本酒をいれる。漬け時間は40分を目安に
日本酒をいれると、アジの干物はくさみなく、よりおいしくなる
干物の数が少ない場合は身にふり塩をして、40分ほどして塩をふきとって干せばよいです。一方、まとまった量の場合は、塩水につけこむのが一般的。
塩水の濃度はそれほど細かく管理しなくてもよいと思います。マニアになりたい場合はしっかりやればよいのです。最初は、海水程度の濃さだなと自分で思う程度で大丈夫です。塩の種類も昨今はあーだこーだ言いがちな世の中ですが、500gなり1キロなりで売られているもので十分です。旨みなどは、日本酒やみりんなどで補いましょう。
余裕があれば、水の三分の一程度を日本酒にすると臭みが軽減され旨みも増します。みりんをいれてもよいですが、入れすぎると甘みが立ちすぎるので注意。
このあたりは自分の好みの配合を知りましょう。
漬け込み時間は20cm前後のサイズであれば40分が基本と覚えておきましょう。塩分濃度をあげれば、より短くもできます。
こちらは塩水(日本酒多め)につけこみ40分経過したもの。
その後、塩水は捨て、全体を流水で洗い流し、清潔な布巾やキッチンペーパーで水分をぬぐいます。
※記事末にアジの干物をアレンジする味付けについて紹介しています。
アジの開きの干し方について。季節、天候によって異なる
省スペース化で頭部を落としたアジとイシモチの干物。サイズが大きいので重なっているが重ねず干す
開いて塩分もしみこませたアジの開きは干物専用の干物網にいれて干すだけです。
干物網は100均の野菜網を使用してもよいですが、開閉部分が小さいので最適ではありません。
さほど高くないので専用の干物網を2つほど用意しておくと便利です。写真のように3段あるものは、だいたい1列で20cmサイズのアジを4尾程度干すとぎゅうぎゅうになります。つまり釣ったアジが20尾以上いる場合は干物網が2つあったほうがよいのです。
干すのに適した日は、風が適度にふいていて、湿度がそれほど高くないからっとした秋晴れの日がベストです。雨がふっている日はカビや腐敗の原因になるので控えておきましょう。
もし、干した後に雨がふってきた場合は、以下の方法があります。
- 室内で換気扇をつけ扇風機の風をあてる
- 換気扇をつけた風呂場に突っ張り棒をして干物網ごと干す
- バットの上に重ならないように配置し、ラップをせず冷蔵庫にいれる
室内と風呂場の場合はS字フックがあると便利です。
干物臭くなりますが、雨にぬらして悪くしてしまうよりはましですね。
干す時間は、一夜干し(夜干して、翌朝回収する)~日中半日、1日など、湿度や気温、風の有無によって変わってきます。はじめてつくる場合は、よく晴れた日(秋冬がベスト)に経過をみながら干していくとよいでしょう。
保存性を気にしない場合は、身の表面をさわって指紋のあとが着く程度がベストです。ある程度保存性を高めたい場合は、さらに干しあげ、表面を乾燥させるとよいでしょう。
このあたりは塩分濃度と同じで好みです。自分にあった時間や状況に応じて変えていくとよいでしょう。
アジの干物の美味しい焼き方
干物の美味しい焼き方は、魚の塩焼きと一緒ですが強火の遠火がベストです。
一方、一般家庭では難しいので、両面焼きができるグリルかオーブントースターを利用しましょう。これらは片面焼きの器具より、効率よく熱を通すことができます。
我が家では小型のトースターをつかっているのですが、網目にアルミホイルを敷いて加熱しています。この対策をしないと、アジから染み出た脂が焦げつくことにあり、かなり臭気が残ってしまいます。
銀色の反射板が熱を効率よく伝えるすぐれもの。ただし脂がたれると煙はでる
イワタニがほこる兵器「炙りや」をつかって卓上で炙りながら熱燗をやるのも冬場の楽しみですが、そこそこ煙がでます。換気扇をつけてもニオイはでるので注意。
ちなみに、炙ると、どうしても尾が焦げます。
見栄えを気にする場合はアルミホイルで尾を覆うと焦げにくくなるので覚えておきましょう。
秋はレモンの代わりに酢橘をそえるのも乙。食味は最高。
ちょうどよく、こんがりと炙った黄アジの干物は最高の味。
アジの干物の裏技
基本をマスターしたあとにアレンジする技を共有します。どれも漬け汁に調味料をブレンドするだけです。
- ハナマルキの液体塩麹をまぜる
- ナンプラーをまぜる
- 燻味塩をまぜる
- クレイジーガーリック(orクレイジーソルトとニンニクペースト)をまぜる
▼液体塩麹をブレンドすることで旨味がUPし臭みもアップします。
▼ナンプラーを混ぜることにより、スーパーで購入したアジなど多少状態の悪い素材でも臭みを低減し、おいしい干物にできます。
▼燻味塩をまぜることにより、多少燻製の香りがする干物に仕上がります。クレイジーガーリックをまぜることによりペペロンチーノ風の干物になります。
アジの干物はアレンジしやすく「自分流」を語りやすい
いろんな干物を食べてきましたが、やっぱり食味の点では黄アジの干物が一番だなーと思います。安定してとれますし、当たり外れが少ない点も魅力です。
アジを開いて、塩分であじつけをして干すというシンプルなものですが、人によって千差万別です。
今回は、効率的で内臓の臭みがつきにくい腹開きで紹介しましたが、背開き派の人もいますし、つけこみに塩水をつかわないで吟味した塩だけを使う人もいます。漬け汁に日本酒やみりんをつかうか、つかわないか。またはつかる量はどれぐらいかも差が出るところです。
また干す時間帯も夜に干す人、日中にしか干さない人など変わってきます。干し時間も厳密に管理している人もいれば、ざっくり半日としているような人も。
つまり、人の数ほどアジの干物の可能性は広がるわけです。
ありきたりのレシピに惑わされず、自分でつくって、「俺の干物が一番うまい」と思い込むのも釣りや料理の面白さです。ぜひ自分のベストを探してみてください。
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