海にいって磯場やそのへんの岩場のへっこんだ場所をみてみると、あれ、なんだか違和感があるなとおもったら貝だったということがある。
この貝にはいろいろな種類がいて同定も魚より難しい。微妙な違いがあったり。おそらく、「日本さかな検定」より「日本貝検定」の方が難しいんじゃないかと思う。
貝検一級持ってるんだ。っていうひとがいたらなんだよくわからない凄みを感じる。
この記事ではクボガイの仲間とスガイと謎貝をとって塩ゆでにしてみた様子をお送りする。
横浜でクボガイをとる
今回の採集場所は横浜界隈の某所。
この記事で採る魚介類はとくに共同漁業権の対象種ではないが、そもそもこのあたりは漁業権が放棄されている。
いわゆる船溜まりエリアで、あたりは泥底ながらもその下に岩盤があって、やや沖目に岩盤が露出しているかけあがりがある。
こんな地形。コーエー三国志で「落石」を繰り出すには好都合な気配もする。露出している岩盤は寄せては引く潮によって浸食されているが一定の堅さがある。この溝を注意深くみると複数の貝がいる。
ここで突然ですが「貝検一級」の画像問題です。
目をこらしてみてほしい。貝がみえるかな。この貝は殻に堆積物があるのであたりに地形と一体化している。
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かつてのベトコンも驚愕のカモフラージュ。最強の米軍も通常兵器ではゲリラ戦法には負ける
おい、ここにいるぞ。
人や神の眼が貴殿を見逃しても、我輩の眼は決して見逃さぬ。
ふはははは。我輩、視力はてんで悪いんだが、生き物判別視力は9.0である。まいったか。
動きが遅いのと潮通しと堆積物の存在で苔が生えているヘソアキクボガイ(たぶん)
ギィィ、まいりましたー。
ということで1ゲットである。
そんなこんなで、近隣のクロダイらも見逃しているだろう、このヘソアキクボガイ氏らをダイダラボッチのようにサクサク採取。
助さん格さん、もういいでしょう。
20分ほどで、1食分のヘソアキクボガイが手に入った。
持ち帰ったクボガイを塩ゆでにしよう
クボガイのような巻貝は岩やテトラに貼りついて藻類をタニシのように食べているので、砂噛みがない。
なので砂抜き工程は不要。
とはいっても、採取地がやや市街地近辺なので、殻あたりはホワイトニングというかクリーニングしたいところ。いろんなステインがついているだろうから。
とりたてなので、みんな生きておりますな。ほくほく。
なによりなにより。
これがヘソアキクボガイ(だと思う)。
殻のまんなかにへそのような穴があいている。
と、
なにやら違う種類がいるような。
誰だ貴殿!?
「あ、はい、おいどんはスガイ(たぶん)っちゅーもんですわ。あれですよ、見ての通り、クボガイ氏とにてますが、蓋が固くて防御力という点では上なんですよ。え?あーそうです。サザエの仲間っす」
とのこと。
ほーん。自分で(たぶん)とか言うなよとは思う。
ま、いずれにせよ、塩ゆでしますんで。そこに並んでおいてもらえますか。
殻を手でゴロゴロともんで水が澄むまで洗う。
そのあたり気になるシティボーイな方は、タワシでごしごしするとよいと思う。
にしても貴殿、なんとなく殻が奇形というか、アートですね。
「あ、はい。すんません。生まれてこのかた、あの岩場に貼りついて苔喰うてましたら、いつのまにか背中にようわからんやつがくっ付いて居候するようになったんです。え?顔はみたことないんですがね。それにしてもこやつ、一向にはなれないんですわ」
ほーん。
日本人に多いんですが、わるいことをしてないときは別に謝らなくてもいいですよ。むしろ謝るのはこちらですし。謝るっていっても、感謝ですけどね。
ま、いずれにせよ、塩ゆでしますんで。そこに並んでおいてもらえますか。
手鍋に、安日本酒筑後盛をドバっと、そんで水とメキシコ由来の安塩。これでおけまる君。
あとは炊く。
炊く炊く炊く炊く、宅麻伸。
む!?
アクに藻類の汚れがたまってやがるぜ。
ま、取り除けばセーフ。
はい、仕上がりましたよ。
にしても、なんだか増えてんな。おい。
一応、人数を数えていたんだけど、モグリの学生かね?
貴殿たち、なにものですか。
ヒザラガイじゃないし、なんだろう。
これを読んでわかった貝検一級ホルダーの方はSNSでコメントくださいね。
こちらがヘソアキクボガイとスガイの塩ゆで。
先日葉山で購入した皿にもりつけたら、なんとも野趣あふれる。
殻に黄色くついているプリンのカスみたいなのは前述の謎貝の卵。
左がスガイ。ほかはヘソアキクボガイ。
じゃ、まずヘソアキクボガイ氏から食べてみようか。
って、貴殿ちょっと砂利噛んでないですか。困るなー。そういうのは先に申告してもらわないと。税金は自己申告だからってなめていると追徴…
こういうときは碗に湯をはってそこで洗いながら食べるとよいです。
「ながらみ」の食べ方と一緒で、砂を洗いながらありがたくいただきましょう。
肝部分はちょっとくさみがあるように感じられたのでポアしておくことに。
うむ。うまい。
にしても、ゆで方の問題か、旨みはそれほどなく、歯ごたえはタニシのようで。
つづいてスガイ氏。
サザエのミニチュア版ですなこれは。なんとなく、ヘソアキクボガイ氏より身がしっかりしているような気も。
クボガイとは違うのだよクボガイとは!
ってことですかね。
内臓もしっかりつるりんと。
サザエの内臓もこのように緑。
葉緑素マシマシ。
さて、味は・・・
ふむ。確かにヘソアキクボガイよりは旨味があってこの内臓は独特の風味。
クボガイがザクなら、スガイはグフ。
といっても過言ではありますまい。
クボガイの殻についていた謎貝の味は
お前は、なにかを忘れていないか。
そうこちらの謎貝たちである。
こちらも、こじゃれ小鉢に盛り付ければこの通り。
なんとなく蘊蓄珍味っぽいではないですか。
「お前は本当の貝の味を知らない!」
みたいに、唐突に山岡士郎がいいそうな気配がプンプン漂っているわけです。
およよ、ヒザラガイっぽい気配もするが、まー、一枚貝はマツバガイやアワビなどだいたいうまいからな。
この通り、爪楊枝で、ちょこんとつまんで。
食べる。
・・・
・・・
・・・
わ。
甘旨。
なんじゃこりゃ。
馬路で旨い。
アワビを超えた。
クボガイとスガイと比べても各段に甘くて旨みがある。
なんとも、この身の小ささがおしい。
・・・
「軒先を貸して母屋を取られる」
という表現があるが、これとちょっと似ていて、殻に居候させておいたら、なんと本体よりもうまくなっているじゃんかという次第。
たとえば、そこそこの味を出す豚骨ラーメン屋があり、その店主がそろそろ後進を育てないとなってな具合に、店が休みの月曜日だけ弟子に貸してしなそば系ラーメン屋を開店させてみたら、「青は藍より出でて、藍より青し」ってな具合で、月曜日のラーメンが連日盛況、挙句の果てに月曜日以外は客が来なくなり、弟子は余裕綽々で独立して連日のマスコミ・芸能人取材もがっぽがっぽ。
って、こいつは何をいっているのか。
ま、それだけうまいってことですよ。
そんでもってこの謎貝の卵。
こういった卵類は毒素をもっていることもあるので、自己責任ながらも食べてみたら・・・
ウニ。
甘旨。
ほんのちょっぴりしか量がないものの、これはうまい。
これだけ旨かったら、誰しも乱獲しそうなものではあるなーと思ったけども、それほど目立たないし、誰も知らない味覚なのだろうな。
世の中、なんにも期待していないときのほうが驚きが大きく、フハっと、鼻息荒く床へ。
ではでは。
平田(@tsuyoshi_hirata)