「サバ」は、大衆魚として日本人の食生活に欠かせない魚の一つ。
小型から大型まで群れで釣れるため、釣りの対象としても人気です。国内の沿岸で漁獲されているのは「マサバ」と「ゴマサバ」の2種類。
今回は、サバの種類を見分ける方法と食味などの特徴について解説します。
サバの基本情報
マサバ。大型のサバは魚食性が高くメタルジグなどルアーへの反応がいい
- 生息地:日本全国。漁港のような浅場から、水深200m以上まで生息
- 名前の由来:歯が細かいから「小歯」「狭歯」という説がある
- 愛称:大型を「大サバ」。脂ノリがよいものを「トロサバ」。細くて小さいものを「ロウソクサバ」と呼ぶことがある
- 食性:動物性プランクトン類、小魚
- 釣り方:餌釣り=サビキ、吹き流し。ルアー:大型は特にメタルジグ類への反応がよい
日本国内に生息するサバには、主に南方に分布する「ゴマサバ」と、北方にかけて分布する「マサバ」がいます。姿形はよく似ていますが、別の種類です。
サバは、沖合を回遊するだけでなく、餌が豊富な沿岸部の根(瀬・漁礁回り)に周年居つくことがあります。これらは脂ノリがよく、「瀬(根)付きサバ」「黄金サバ」というように呼ばれることも。漫画「美味しんぼ」の第六話にも葉山沖の根付きサバが幻の魚であるというストーリーがありますね。
特に太平洋沿岸で漁獲されたサバには、内臓から筋肉に移行しやすい「アニサキス・シンプレックス・センス・ストリクト」が多く寄生していて生食は危険。
一般的に消費者は魚の筋肉を食べるため、太平洋沿岸のサバ類はアニサキス症の原因になりやすいと言えます。
◆アニサキス シンプレックス センス ストリクト の特徴
東京都健康安全研究センターの調査結果では、
アニサキス シンプレックス センス ストリクトは、内臓から筋肉内へ移行する率が高いことがわかっています。
海域としては、日本海側よりも太平洋側で採取された魚に多く見つかっています。
出典:東京都福祉保健局
マサバの特徴
鮮度の良い釣り物のマサバ。腹部にゴマ状の模様がない
<マサバの特徴>
ゴマサバと比較して以下の通り。
- 側線から腹部にかけて、ゴマ状の模様がない
- 体高があるものが多い
- 通称:ヒラサバ(断面が比較的平ら)
- 味覚の旬は秋・冬。産卵期は春から夏。
- 秋から冬場の脂ノリがよい個体は光の加減で金色に見える個体もいる。黄金鯖とも呼ばれる
- 身に脂質が多い
- 大型の脂ノリがよいものは値段が2倍強
- ブランド:松輪サバ(神奈川)、関サバ(大分)、金華サバ(宮城)、八戸前沖さば(青森)、お嬢サバ(鳥取・養殖)
マサバは食味もよく、脂ノリがよいものは「トロサバ」ともよばれ珍重されます。
各地でブランド化が進んでいて、状態のよい大型のマサバは高級魚の一つ。
ゴマサバと同じ海域でも釣れますが、側線から胴にかけて点状の模様がないものがマサバです。
マサバはこのように強くつかむと身割れしやすい
ゴマサバの特徴
比較的脂がのっているゴマサバ。腹部に点状の模様がある
<ゴマサバの特徴>
マサバと比較して以下の通り。
- 側線から腹部にかけて、ゴマ状の模様目立つ(個体差が大きい)
- 比較的棒状の個体が多い
- 通称:マルサバ(断面が比較的丸い)
- 味覚の旬は夏。一年を通して味の劣化が少ない
- 身に脂質が少ない
- ブランド:清水サバ(高知)、首折れサバ(鹿児島・屋久島)
ゴマサバは、比較的南方に分布しているサバの種類です。
マサバと比較すると、断面が丸に近いのが特徴。側線から胴にかけて小さい斑点が点在していて、それが「胡麻」にたとえられています。
基本的に脂ノリがよくないため、市場価値はマサバに比較して半分程度。一方、マサバの味が落ちるとされる夏に味がよくなり、さっぱりした食味を好む人には喜ばれます。
近年の食生活の欧米化により、魚に脂ノリが求められる傾向が強く、釣り人からの評価はあまり高くありません。
ゴマサバを食べる場合、フライにして油を補って食べる調理法のほか、あえてゴマダレや柑橘をしぼった醤油でさっぱりと食べる方法がオススメといえます。
高知県土佐清水市の「清水サバ」。黒潮の影響でゴマサバがよく漁獲される
「清水サバ」の刺身。同地や愛媛県西部・北九州ではサバの生食文化がある
大型のマサバは高級魚
トロサバ(マサバ)。提供:原田慎也 さん
マサバのなかでも35cm~45㎝程度の個体は大サバともよばれ、脂ノリがよいため、珍重されます。
釣りの対象としても、小型のマサバは「ロウソクさば」と呼ばれるように重要されないのですが、大型のサバは希少価値が高く、サバ嫌いの釣り人も喜ぶ傾向にあります。
1キロ前後の個体は、状態がよければ3000円~5000円程度で販売されることも。立派な高級魚です。
小型のサバ(小鯖)はファミリーフィッシングの人気対象魚
マサバとゴマサバのうち、20㎝前後の個体は「小鯖」と呼ばれることがあります。
小鯖は、身も少なく脂ノリが全くないため、船釣りでは相手にされませんが、岸釣りでは立派なターゲットの一つ。
毎年、5月~7月に各地の岸壁に接岸し、ファミリーフィッシングの対象として釣り場がにぎわいます。
コマセを撒いて、サビキで狙えば、だれでも数十匹~百匹釣れるため、人気のターゲットです。
小鯖の群れは、稚鮎やシラス(イワシの稚魚)を追って接岸するといわれます。
小さいといってもサバなので、アニサキスやヒスタミン中毒に気を付け、加熱して食べるのが基本。から揚げや南蛮漬けといった食べ方が人気です。
マサバとゴマサバのハイブリッド個体の存在
釣りをすると、稀にマサバかゴマサバか判断がつきづらい個体に遭遇することがあります。
実際に、マサバとゴマサバは生息地も重なるため交雑もされています。
ゴマサバなのにやけに脂ノリがよすぎる個体などは、ハイブリッド個体なのかもしれません。
その他のサバ(大西洋サバ)
太平洋サバは、冷凍フィレでよく出回っている。塩焼きにすると脂質が多く美味。(写真はマサバ)
サバの塩焼きの原料として、冷凍フィレにされているサバは脂ノリがかなりよいのですが、これは大西洋の東西沿岸で漁獲されているもの。
「大西洋サバ(Atlantic mackerel)」と呼ばれます。ノルウェーからの輸入が特に有名。
日本国内と比較して、資源保護が徹底しているため、脂ノリがよい個体が多いのが特徴です。
冷凍フィレは1枚、100~200円程度が目安。
サバを調理するときの注意点
大衆魚として重宝するサバですが、調理をする際には注意が必要です。
市場流通する場合は一定の、ハドルをくぐって販売提供されますが、特に釣りをして自分で処理して食べる場合は特に注意しましょう。
夏季は特にヒスタミン中毒に注意
岸釣りやボート釣りは下処理や保冷が杜撰になりがち
サバは、マグロ・ブリ・カツオとならんでヒスタミン中毒の原因となりがちです。
釣魚にはヒスチジンというアミノ酸の一種が含まれているのですが、ヒスタミン産生菌が出す酵素によりヒスチジンがヒスタミンに生成されます。
このヒスタミン濃度が高まり、人体に入るとヒスタミン中毒になります。
ヒスタミンは熱でも分解されにくいため、加熱調理信仰は危険です。
<ヒスタミン中毒の症状>
- 顔などの皮膚が赤くなる
- 蕁麻疹
- 頭痛
- 嘔吐
- 下痢
- 呼吸困難や意識障害
持ち帰る際は、適切に下処理し、しっかり保冷をする必要があります。
アニサキス対策
マサバやゴマサバを釣りあげて腹を開くと、かなりの確率でアニサキスを目撃します。
アニサキスは肝臓など内臓周りに寄生していますが、内臓を抜かないままにしておくと筋肉に移動し、刺身やしめさばにした際にアニサキス症を引き起こします。
また、アニサキスの死体に強いアレルギー反応を示す人もいるので、加熱をしても食べられない人がいます。
<アニサキス症>
- 嘔吐
- 腹部の激痛
- 発熱
まとめ
今回は、マサバとゴマサバの違いについて解説しました。
小型のサバから大型のサバまで、比較的簡単に釣れることもあり、サバは釣り人にとっても親しみ深い魚です。
近年大型のマサバはあまり釣れず、漁業面でも有識者から資源保護が叫ばれています。
小鯖や、脂ノリがあまりよくない個体などを釣って持ち帰るのは、ほどほどにし、積極的にリリースするのも、イチ釣り人が貢献できる活動であるはずです。