春から秋にかけて堤防からたくさん釣れるサバ類の幼魚「小鯖(こさば)」を無駄にせず、美味しく食べる方法を解説します。
サビキ釣りでは100匹単位で釣れることも珍しくはないのが、この小鯖。
せっかく釣ったものの、食べ方がわからない、美味しくないからと無駄にしていませんか?
小さくてもサバはサバ。釣ったあとの処理が今一つだと食中毒の原因にもなりやすいんです。
では、どうやったら小鯖をもっと安全に美味しく食べられるのでしょうか?
今回は釣った小鯖の下処理ノウハウや料理レシピを詳しく解説します!
小鯖ってなに?
釣り人に「小鯖(コサバ)」と呼ばれるものは、主に「マサバ」や「ゴマサバ」の幼魚です。
サバの仲間全般がそうですが、体表の「ぬめり」が強く、釣り上げたそばから鮮度落ちしやすい魚です。
小鯖は本当に「まずい」のか?
初夏から秋の堤防では小鯖が多い
堤防でファミリーフィッシングをしている人がよくサビキでアジ・イワシを狙っていて、小鯖を釣っては、「あーまたサバだー」というようなリアクションをしているのを見かけます。
大きなサバは味が良い魚として多く消費されていますが、成長過程の小鯖はまだまだ身が少なく脂も乗っていないという特徴があります。
関東地方では5月のゴールデンウイーク頃から小鯖が多く接岸する
豆アジやイワシであれば丸ごと唐揚げにできますが、小鯖の場合、比較的骨が硬いため、丸ごと唐揚げにしづらいため敬遠されがちなのです。
一方、この小鯖も適切な持ち帰り方・下処理・料理法をきちんとすれば、かなり美味しい料理に生まれ変わります。
ここからは、小鯖を美味しく食べるための持ち帰り方や下処理、おすすめの料理法を解説していきます。
小鯖の持ち帰り方法
小鯖を持ち帰ったときに強いニオイが発生している場合は持ち帰り失敗です。廃棄しましょう
サビキ等で小鯖を釣る際は、クーラーボックスと多くの氷(クラッシュアイス)を必ず持参しましょう。
釣りあげた小鯖は絶対に水汲みバケツのなかにいれたままにしてはいけません。
釣れたそばから海水と氷を混合した潮氷(海水氷)に入れていきましょう。
こうすることで氷水のなかですぐに「氷締め」が完了し、鮮度落ちのスピードが遅くなります。
ある程度大き目の中鯖以降はハラワタとエラをとって保冷するのもよいでしょう。
一番やってはいけないのが、夏場の高水温時にめんどくさがり足元のバケツに小鯖を入れっぱなしにすることです。
サバは動きの速い回遊魚のため、バケツのような狭い場所ではすぐにぶつかり傷んで死んでしまいます。
また、堤防で小鯖が釣れる時期は海水温が温んできているため、釣れたそばから腐敗が進んでしまいます。
ヒスタミン生成菌により、小鯖の筋肉中にヒスタミンが増えると、食中毒の原因にもなります。
真夏であれば30分から1時間で食用に適さなくなってしまうので注意したいところです。
小鯖の下処理は塩や酢で手早くできる!
小鯖も状態が良いものであれば美味しく食べることができます
小鯖をたくさん釣った場合、大変なのは下処理ですね。
一番簡単な方法を教えます。
まず、持ち帰った小鯖は必ずその日のうちに処理しましょう。できれば持ちかえってすぐがベストです。
次に、大きめのボウルに小鯖をいれます。
その後、多めの塩をまぶしてかき混ぜ、流水で洗い流すと体表のぬめりがとれます。
小鯖の肛門部には棘があるので軍手をつかうとより安全です。
塩の他に酢をいれてかきまぜてもヌメリと臭みがよく落ちます。
流水で洗い流したあとは、キッチンペーパーなどで一尾ずつ水気を拭っておきましょう。
▼小鯖のヌル落としを一気にやる際、このグローブがあると無敵です。
小鯖は揚げるのが一番簡単でおいしい!
ざっくり、大名おろしにして衣をつけて揚げるのが一番簡単
小鯖を一番簡単においしく、かつ大量に食べることができる調理法は油で揚げる方法です。
揚げ物は、下味やソースなどの味付けによっていろいろなアレンジが効きます。
小鯖を揚げるときは、頭部と内蔵をとり揚げるのですが、身を三枚にするかしないかで料理の工数が変わります。
小骨の存在を考えると、ざっくり大名おろしにして、三枚にしてあげるのがオススメです。
三枚におろすのが手間に感じる場合は、頭部と内臓をとりのぞいたあとに二度揚げするとよいでしょう。
(低温で骨まで揚げて、高温でカリッと仕上げる。
唐揚げ
市販の鶏肉用唐揚げ粉をまぶして揚げるだけです。
ニンニク風味が強いものだと、味が薄い小鯖にインパクトを付け加えることができます。フライドチキンパウダーもオススメです!
竜田揚げ
片栗粉をまぶして揚げ、レモンなどの柑橘類を絞って食べるとさっぱり多くの量を消費できます。
翌日人に会うなどニオイを残したくない場合は唐揚げより竜田揚げのほうがよいでしょう。
ちなみに片栗粉をまぶす前に、すりおろした生姜汁・日本酒・レモン汁に小鯖を漬け込むと臭みが軽減できます。
カレー揚げ
揚げ物の味に飽きたときは、揚げたあとの唐揚げにカレーパウダーをまぶして食べると風味が変わって食が進みます。
子供にも人気の味です。
唐揚げのつけこみ時にカレー粉をいれてまぶしてもよいです。
<揚げ油のポイント>
単にサラダ油100%で仕上げてもよいですが、かどやの銀印ごま油のように香りが強いごま油を2、3割混ぜることにより、さらに香ばしい小鯖の揚げ物ができあがります。
一味違うので試してみてください。
<小鯖料理の注意点>
小鯖の頭部や食道からハラワタは切れたサビキなどがついていることもあります。
必ず取り除いてから調理しましょう。
過去にはトリックサビキのハリスがついたままのサバを釣り上げたこともあるので要注意です。
▼小鯖や小鯵・豆アジの唐揚げをもっと美味しく作るレシピはこちら!
「小鯖の南蛮漬け」は揚げ物の残りで簡単にできる料理
小鯖の南蛮漬けやマリネは揚げたてを調味液につけて仕上げるのが格別です。
一旦揚げ物をつくって食べきれず余ってしまったものを保存するために、調味液につけて仕上げるという方法もよいでしょう。
つけこんですぐに食べてもよいですし、1昼夜寝かせれば小鯖を丸揚げした場合でも、小骨柔らかくなり気にならなくなります。
<小鯖の南蛮漬けの調味液の作り方>
- みりん(好みで。白ワインでも可。加熱して冷ましアルコールを抜く)
- 昆布だし(好みで)
- 砂糖
- 酢
- レモン(果汁をしぼって、皮をむいて輪切りを入れる)
- オリーブオイル(マリネの場合)
- 水(酸味をおさえたい場合。保存性は落ちます)
- 唐辛子(種をとる。保存性が高まる)
- ニンニクスライス
- 玉ねぎ(千切り)
- ピーマンやパプリカ(千切り)
- 人参(千切り)
- スパイス、ハーブ類(好みで、コショウ、ローリエなどなど)
※調味料は1:1で、好みによって変えていけばよいと思います。
酢を多くすると保存性が高まります。
酸っぱすぎるのが苦手な人は水で薄めるとよいでしょう。
▼小鯖や小鯵・豆アジの南蛮漬けをもっと美味しく作るレシピはこちら!
「小鯖のつみれ」は色んな料理に使えて冷凍保存可能!
釣った後に大量の小鯖を一気に処理したい。
そんなあなたにオススメの料理が「つみれ」です。
つみれにした後は片栗粉を表面にまぶしてジップロックにいれて冷凍保存も可能という優れた料理法。
まず、小鯖の内蔵と頭部をとって、叩くかミキサーでミンチにしましょう。
ミンチには以下の材料を加えて作ります。
- 塩
- 昆布だし(好みで旨味をつける)
- 卵白(つなぎ)
- 片栗粉(つなぎ)
- ゆずの皮(香りづけ)
- 長ネギ(香りづけ)
- 生姜(香りづけ)
- 味噌(少々)
- 日本酒or本みりん少々
ミキサーで細かい処理ができる場合、骨ごとでもよいですが、包丁で叩く場合は3枚におろしてからが処理しやすいためオススメです。
皮ごと処理をしてもよいですが、生臭さが気になる場合は皮をすくか、身だけこきだして、ミンチにしましょう。
つみれは、日本酒をいれた熱湯で湯がいたあと、味噌汁やすまし汁にいれて食べます。
中華スープにいれてもおいしいです。
水炊きなど、鍋の具材にも最適。もちろん湯がいて、シンプルにポン酢で食べるのもオススメ。
片栗粉を多めにいれ、ごま油で揚げたあとに、黒酢あんかけにして食べるのも抜群に美味しい食べ方です。
「小鯖のアラ汁」なら大量のアラを処理できる
唐揚げをつくるときに小鯖を三枚におろした場合、中骨や頭部をアラ汁にしてもよいでしょう。
量がおおければ、実によい出汁がでます。
頭部と内臓をとったものをぶつ切りにして、霜降り処理(熱湯をかけて水で洗い流す)をしたあとに炊くだけです。
味付けは味噌・塩・しょうゆをお好みで。
ウェイパーや創味シャンタンなどの動物系スープと昆布だしとあわせるとラーメンのスープにも使えます。便利。
<ワンポイント>
小鯖のアラ汁には新潟の調味料「かんずり」や「柚子胡椒」がよく合います。
小鯖出汁のトムヤムクン
小鯖のアラを炊き出し、出汁をこしとったあとに、市販のトムヤムペーストと安価に売られている有頭アルゼンチン赤海老をいれて炊いてみましょう。
味わい深いトムヤムクンになります。
エビは頭があるものを選ぶのがポイント。お好みでパクチーを飾りましょう。
<ワンポイント>
市販のトムヤムペーストは規定量よりすこし多めにしたほうが美味しくなります。
またナンプラーとココナッツミルクをいれることでさらにコクが増すので試してみましょう。ココナッツミルクはココナッツパウダーをお湯で溶かすと便利です。
その他の小鯖料理レシピ
小鯖とドライトマトのアヒージョ
脂肪分の少ない小鯖。
思い切って、たっぷりのオリーブオイルでアヒージョにしてしまうのもオススメです。
<小鯖のアヒージョに必要な調味料と野菜>
- 白ワイン
- ニンニク
- 赤トウガラシ
- クレイジーソルト
- ナンプラー
- オリーブオイル
- 玉ねぎ(みじんぎり)
- パプリカ(みじんぎり)
- ディル(好みで)
これらを鍋にいれて、下処理した小鯖をいれて加熱するだけです。
オリーブオイルは多めに。塩分はクレイジーソルトで調整しましょう。レモンを絞っても美味。
嫌いでなければ生のディルを入れると風味が増し、臭み消しにもなります。
小鯖の味噌煮・揚げ味噌煮
大型のサバは味噌煮が有名ですが、小鯖も味噌煮にすると臭みが軽減します。
一方、脂肪分が少ないので仕上がりはパサパサ。煮る前に、一度素揚げにするのも一つです。
作り方は以下の通り。
<小鯖の味噌煮>
- 下処理した小鯖をフライパンに並べる
- 熱湯をかけて湯をすてる(臭み消し)
- 砂糖、味噌、水あめ、みりん、日本酒を混合した汁を入れる
- キッチンペーパー等で落し蓋をしながら10分中火で加熱
※圧力鍋を使用することで短時間で骨を柔らかくすることができます。
<小鯖の揚げ味噌煮>
- 下処理した小鯖の水気をしっかりとり、片栗粉をまぶす
- 小鯖を低温の油で揚げる(骨まで柔らかくする)
- 砂糖、味噌、水あめ、みりん、日本酒を混合した汁に揚げた小鯖をいれる
- キッチンペーパー等で落し蓋をしながら5分程度加熱し味をなじませる
小鯖の酢締め(しめ鯖)
小鯖を3枚におろしたあと、塩を強めにふり、冷蔵庫で5~10分ほど水分をぬきます。
水抜き工程で、生臭さもぬけます。
その後、塩を酢で洗い流し、砂糖+米酢を混合したものに漬けるだけで出来上がり。
スダチなど、季節の柑橘をつけ汁に加えるのも乙です。
小鯖をしめ鯖にすると、脂が少ないので、寿司ネタの「コハダ」のような味わい。
<作り方>
- 下処理した小鯖を三枚におろす(大名おろしでOK)
- 塩をふって、冷蔵庫で10分ほど水分を抜く
- 酢もしくは水道水で塩を洗い流して、水気を拭う
- 砂糖、米酢などを混合したものに、好みの時間漬け込む。10~1時間程度
- 薄皮を頭部背側から剥いで食べる。はがなくてもOK
小鯖のみりん干し
シロギスと小鯵のみりん干し
小鯖は「みりん干し」にするのもおすすめです。
軽く炙るとおやつになり、甘みと旨味で子供も好きな味わいにしあがります。
<作り方>
- 下処理をした小鯖を開く
- 調味液(醤油と本みりんを1:1、酒少々、きび砂糖に30分ほど浸す
- 天日干しにする(夏場は冷蔵庫でピチットシート利用)
小鯖を干して調味料にすればさらに多くの料理に使える
みりん干しにした小鯖
鮮度が高い状態で開いたサバを干し、完全に乾燥した時点で細切れにして、調味料として使うのもオススメです。
様々な料理に魚介系の旨みを足すことができます。一か月程度の冷凍保存も可能。
以前、冷や汁づくりにすりつぶして利用してみましたが、なかなかいい味でした。
みりん干しにして炙ってたべてもおいしいですよ。
ペペロンチーノにつかっても美味しくいただけます。
※太陽光線下で干すと後述のヒスタミン中毒につながるヒスタミン量が増える可能性があります。ご注意を。夏場は冷蔵庫内でピチットシートで干しましょう。
身を塩漬けにして保存性を高める
こちらはアジの塩漬け
小鯖を調味料にする方法として、アンチョビのように塩漬けをする方法があります。
ナイフなどで身を三枚におろし、バットにならべて大量の塩で水分を抜きます。
その後、染み出た水分を捨て、さらに大量の塩で全体を覆い冷蔵庫で1週間以上寝かせます。
煮沸消毒した瓶に塩漬け小鯖を詰め、上からオリーブオイルで蓋をします。
小鯖の塩漬けは冷蔵庫内で長期保存が可能で、パスタなどのソースに使うとコクがでるのでおすすめです。
小鯖の料理以外の活用法。釣りエサに使う
小鯖は釣り場で活餌やブッコミ釣りのエサにすることもできます。
ヒラメやウツボなどが釣れます。ウツボを釣りたい場合は、小鯖をぶつ切りにして撒き餌にすると効果的です。
離島ではカンパチやヒラマサなども小鯖を泳がせると狙うことができます。
小さくてもサバはサバ。ヒスタミン・アニサキスによる食中毒に注意
小さくてもサバはサバ。アニサキスもいるので生食は控えましょう
小鯖は小さくてもサバなので、「ヒスタミン」や「アニサキス」による食中毒の原因になりやすいものと覚えておきましょう。
ヒスタミン食中毒について
堤防釣りをしている人をみると、死んだ小鯖を水汲みバケツにずっと入れている光景をみます。あれは自殺行為です。
持ち帰るのであれば釣れたらすぐに氷をしっかり入れたクーラーボックスやクーラーバッグで保管し、帰宅後日をまたがず調理しましょう。
アニサキスについて
今回紹介した調理法は加熱してあるので問題ないですが、生食の場合、大型のサバ同様アニサキスが寄生している可能性が高いと言えます。
おいしく食べられる量を持ち帰ろう
小鯖は条件があえば、だれでも食べきれないほど釣れるものです。
釣っていると興奮してどんどん釣りたくなるものですが、限られた資源なので、どのように消費するか?消費しきれる量か?を考えながら釣りをするとよいでしょう。
あらかじめ小鯖がたくさん釣れることが分かっている場合は、はじめにサビキ釣りをして確保し、あとは小鯖の泳がせ釣りやぶっこみ釣りをして楽しむのもオススメです。
身近な堤防でももしかして、高級魚ヒラメが釣れるかもしれません。
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小鯖はぬめりがあるので、釣れたあとにフィッシュグリップを使うと手返しがよくなります。
また肛門付近にある棘が刺さるのを防ぐことができます。クーラーボックスは安価なタイプで問題ないのでたっぷりの氷や保冷剤でしっかり冷やしながら持ち帰りましょう。