世の中にはよくわからない料理名がある。
アマトリチャーナ、ガスパッチョ、コンフィなどなど。カタカナにするとそれっぽくみえるのは、日本の欧米に対する鬱屈したコンプレックスだぞ。エレファントカシマシもいってた。
かつて、この国でアジガラスナットウオムレツという料理が一世を風靡したことがある。
なにしろテレビをつければ、芸能人は料理人がつくったアジガラスナットウオムレツをたべて、大袈裟に、
「うん!これはおいしい!」
「なにこれ、うますぎー」
みたいに騒いでいたのだ。あれは、ナタデココやティラミスブームみたいなものだろうか。
テレビをみていた一般市民も、矢鱈にアジガラスナットウオムレツをつくり、熊系タレントのマネをして「まいうー」とかやっていて、料理店でもシェフの気まぐれアジガラスナットウオムレツが剛力彩芽なみにごり押しされていて、気まぐれるなよとおもったり、検索にどうしてもヒットしていまうクックパッドをひらけば、25,000種類のアジガラスナットウオムレツのレシピがのっていた時代がある。
あの時代、あの時代をみなさんは覚えているだろうか。
覚えてないよね。
なぜならわたしが今作った話だからだ。
アジガラスと俺たちの5か月
アジガラスについては以前説明したことがある。
アイゴの幼魚を塩漬けにして発酵させた珍味スクガラスをもして、場当たり的に豆アジでつくった自家製発酵食品だ。ただの豆アジで強引に4記事をつくる人間がどこにいるだろうか。否、ここにいるぞ。
5月に漬け込んだアジガラスは、冷蔵庫の洞窟の奥地で5か月の月日を過ごしてきた。
いやはや5か月の間に、季節は梅雨、夏、秋と目まぐるしくすぎてきて、わたしも5か月ふけ、老獪になった。
ひるがえって、みなさんの5か月はどうだっただろうか。そうですかそうですかいろいろなことがありましたね。棒読みしてみる。
そんな我々の悲哀や浮き沈みとはまったく関与しないところで、俺たちのアジガラスはすこしずつ熟成を進めていたのである。
刮目せよ!
ドーン!
瓶からとりだしてみる。うむうむ。しっかり熟成しているね。
そのまま食べてみると塩辛さのあとに発酵によって生じた各種アミノ酸の旨みが広がっていく。
長谷川豊が落選したし、いいぞいいぞもっとやれ。
アジガラスナットウオムレツをつくる
まず、アジガラスを切り刻もう。かなり塩辛いので、量をかげんするとよいよ。
次に、隠し味的に塩漬け青じそも刻んでいれておこう。
隠し味って、いい言葉だよな。隠し味は○○っていうだけで、なんとなくスペシャル感がでるしな。
「これ、うまい!なにいれたの?」
「隠し味で『この世の悲しみ』を入れたの」
「…」
ほらね。
つぎに、ネギを刻んで入れて、マヨネーズを投入しよう。
ナットウオムレツをつくるときにマヨネーズをいれるとコクが出てオムレツがふわふわにできるんだぜ。
たまごは3個。あとは、フライドオニオンと黒コショウ。
これにダシと小麦粉と山芋を入れると納豆お好み焼きの素になる。
フライパンに植物油をはろう。ごま油をすこしいれてもいいよ。
卵料理をつくるときは、油を多めにしたほうが失敗がすくないし、卵にコクもでて旨い。
菜箸でかき混ぜ卵に火を通しつつ強めの火力で一気に加熱し、途中で中火に。
卵が焦げる手前で半分裏返そう。
中をふわっと。外はこんがり、と焼くとこのような仕上がりに。
ちょっとこがしてしまったよ。
アジガラスナットウオムレツを食べる
あー、またやっちゃったよ。これ、ゼッタイうまいやつやんけ。
ちょっくら断面をカットしてみると。
ほらね、これ、ゼッタイうまいぜ。
まずなにもつけないで食べてみると、卵のふわふわとコクにマヨネーズが加勢しつつ、海の同盟軍であるアジガラスの旨みがさらに援軍をだしたようで、そこに伏兵的に塩漬け青じそが弓矢をうってくるような塩梅。なんだそれ。キングダムかよ。
が、ちょっと薄味で作りすぎたようだ。
こういうときはこれだ。これ。
「オムレツにはこういったタレが合う」と以前諸葛亮がいっていたので紹介したいものがある。
タイのスイートチリソースにナンプラーとマヨネーズをいれてソースにする。
これは、野菜スティックをつけるディップソースにしてもいいし、鶏や魚の唐揚げにつけても優勝間違いなしである。
レモン汁をしぼって、コリアンダーパウダーを入れると殿堂入りになるので試してほしい。
ではでは。今日はこのあたりにしておく。
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