9月といえば、梅雨あたりに続いて蟹がよく獲れる時期です。
蟹といっても、イシガニ、ワタリガニ(タイワンガザミ・ガザミ)あたりがよく獲れます。
今回は、ワタリガニ獲りの話です。
9月はワタリガニ捕獲シーズンなの??
タイワンガザミメス(ノーマルガザミと間違いやすい)
イシガニは冬場も含めて年中磯場やテトラ帯にいるイメージです。
ワタリガニと称されるガザミ類(尻側の脚がオール状で泳げる)は、冬になると深場に落ちて砂の中に潜ってしまうわけなのですが、比較的水温が高い時期(5月~9月中)には水深10mより浅い堤防際に接岸していてよくとれます。
夏に堤防でメバリングやアジングをしていて、釣れないなー群れが回遊してないなーなどと、飽きて海面をライトで照らしていると、なぞのパタパタした魚が海面を泳いでいやがるな、おい、と思ったら、あ、ワタリガニやんけ!みたいなこともしばしばです。
このときタモ網があれば、めでたくリアルポケモンゲットだぜってな感じで、おいしいお土産を持ち帰ることができます。ほんとタモ網は必携です。繰り返しますよ、ほんとタモ網は必携なんです。どれだけ必携かというと大学入試で赤本ってあると思うんですが、あれぐらい必携です。
▼メジャークラフトのファーストキャストランディングセットが安いです。わたしも4mを2年ぐらい使ってます。6mはちょっと重いんだけど、ロングレンジで蟹をすくえて強い印象。現場の足場の高さを考えて購入しましょう。
9月にワタリガニ類がとれますよ。といいながらも、8月でもとれるんですが、やっぱり数では9月中旬以降がよくとれる印象です。
食欲の秋とも言いますし、水温がだんだん下がり、ワタリガニ類が深場に落ちる手前で荒食いするのでカニ網などにヒットしやすいのかもしれません。
8月は海水浴シーズンでもあるわけですが、9月に入って、夜のさびれた海岸にいって(干潮時水深1m未満ぐらいがベスト)潮が澄んでいれば、徘徊をしている蟹をちらほら目視できます。このとき必要なのは強力なヘッドライトです。
ワタリガニ獲りは大きくわけて2種類
こちらもタイワンガザミメス。これぐらいのサイズは良型とよんでもよいかも。
ここで、これから魅惑の蟹獲りワールドにチャレンジする方に改めて説明しておくと、蟹とりは大きくわけて2種類のやり方があるんですね。
- エサで寄せて網でひっかけとる
- 目視してとる(手づかみorトングでつかむ、網ですくう)
どうでしょう。わかりやすく強引に2つにしてみました。
※やり方は以下の記事を確認ください。
- 全体説明→【徹底解説】イシガニをとって食べてみたので獲り方・料理法などを教える!
- カニ網について説明→ちょい投げついでの蟹獲り(カニ網)のやり方を徹底解説!
死んだワタリガニ類を買わないように
このワタリガニ類はもう何をしても旨いんですよね。
腐っていなければ・・・
たまに、スーパーで売れ残った大型の国産ワタリガニがその値段の高さからまったく売れずに死亡して半額になっているやつがありますよね。
パッキングされている場合は持っただけで染み出ている体液が手につくわけですが、心底臭い。呪いレベルに臭いです。
あれ、ゾンビの臭いがするんですよね。
ちょw、おまえゾンビの臭いって嗅いだことあるんかよ、という話なんですが、まーそんなにいきりたたないでください。落ち着いて、もうすこし話を聞いてもらえればと思います。
蟹って、自己消化能力が高いので、死んだあとすぐに腐敗するんですよね。
これが少年時代、ザリガニをとってひなたのバケツに放置して腐ったときのアノ臭いを発するわけです。
ひなたじゃなくても、スーパーで売られていて、ワタリガニ類が生きていない場合はもうだいたい臭いです。
上野のアメ横とかの一見生きてるっぽい蟹、「お兄さん、ワタリガニが安いよ、新鮮だよ」っていう、あれ、本当に注意です。口車に乗せられるまえに、ちゃんといきているか見ましょう。
毛蟹やらワタリガニやらは流通する際に、オガクズに紛れて販売されるわけですが、生きてるかどうかは脚が弛緩してぐったりしているかと、顔を正面からみたときに死んでます感があるかどうかで判断しましょう。
え、死んでます感ってなんだよ。おい、というのが聞こえてきたので、説明しますと、蟹って生きていると泡ぶくであったり呼吸している様子がわかるんです。
ここで蟹が死んでいると口部分が一切動かないんですよ。
販売されているワタリガニは大体ゴムで結わえてあるわけですが、その脚がうごかなくなったあとも、この口部分は生きていれば動いています。
いろいろ言いましたが、死んでいる蟹は買ってはいけません。
一応湯通しして霜降り処理して、濃い目の味噌と酒でカモフラージュすればなんとかなるはなるんですが、身をすすったその奥地からドブの臭いが漂ってきて鼻に抜けるんです。そこはかとなく。
死んでいる蟹は、
いうなれば、
タタリガニです。
もののけ姫には、タタリガミの蟹バージョンだと思ってください。
ほんと食中毒にもつながるので注意です。
むかしの平田家と毛蟹の話をする
早くワタリガニ獲りの話しろよというわけなんですが、そのあたりをスルーしまして、ひとつ昔話をすると、祖父の平田正臣が、正月にそなえて年末に築地あたりでバカ高い毛蟹を仕入れてくるんです。
年末は蟹がバカ高くなるので、1杯1万近くするようなサイズだったことを記憶しています。
祖父正臣はこれをゆであげて、出身地にちなんで佐賀の有田焼にどんと並べるわけです。庭にはえていた南天の葉あたりをかざりながら。
通常の家では、ここで元旦に、じゃあ毛蟹食べましょう!わーい。うまいなー。ことしもよろしく。ってなるとは思うのですが、祖父正臣は、この毛蟹を正月の数日間有田焼の上に並べておくんですね。
というのも、当時親戚筋がだいたい東京野方の平田家に集まってくる仕組みだったんです。平田家界隈、爺さん側の神代(くましろ)家、などなど。いろんな人が正月に挨拶で平田家に来る。
で、
お屠蘇なんぞかましたあとに、今年も、しくよろみたいな話をしてお節料理を食べるわけです。かまぼこ、栗金きんとん、その他諸々を食べる。
さて、毛蟹のお時間かな・・・
ところがどっこい、
肝心の毛蟹はいつまでも、GOサインが出ず、ずっと座敷の長机の中央に鎮座したままなんです。
元旦、1月2日、3日、4日・・・
毎日朝になってラップをとられて飾られては、夜になるとラップをされて、冷蔵庫ではなく机の上で放置される。
いつだか、子供心に早く食べたいといったところ、祖父正臣は、「これは見るもんだから、食べるのは後だ」みたいなことをいうんです。
正月で室温も低いとはいえ、火鉢なども焚いている家だったもんで、真っ赤でおいしそうだった毛蟹は、やがて黒ずんでいき、あの染み出ているカニ味噌みたいなやつが緑青がグレーがかったような色になって、明らかにドブのニオイっぽくなってくるんです。
それを、最後に食べるんですが、まーまずいんですよね。
レモン汁で臭みはやや消えるけれども、ドブ臭い。しかもお腹をこわしたり。
月日がたち、社会人になって、営業を学んだときにその技として『見せ営業』という手法を学んだんですが、この蟹もそれこそ『見せ営業』で、その実態というか、本当の目的は食べることには置かれていなかったんだな、いわば、親戚筋に平田家の威光を見せつけるためだったんじゃなかろうかと思ったりします。
・・・
おい、なんの話だこれ。
まーいいです。
蟹は生きているものを料理しろっていうことと、茹でたあとは、すぐに食べろ。
ORETSURI読者のみなさんは以後これだけ理解しておけばよいと思います。
ということで、ワタリガニ獲りにいってきた
ようやく、蟹とりの話です。
ほっとしますね。本題に入ると。書いてるほうも早く本題にはいって終了したいですが、そうはいかないんですよね。
よし、まずイシガニから。
イシガニは、河川の淡水がやや絡んだ漁港あたりのテトラ帯があればほぼ間違いなく生息しています。東京湾の湾奥にも意外とたくさん生息しているもっともポピューラーな食用蟹。
流通してないで産地で消費されている印象ですが、知る人ぞ知るうまい蟹です。身は少ないけれども、汁ものにすると最高です。
「イシガニの味噌汁を食わずして、蟹汁を語るな」
とは、今、わたしがつくった言葉ですが、ほんとそれぐらいの実力を持っています。
イシガニの味噌汁は至高。これは覚えておいてください。
こういうテトラのすきまとか。
このイシガニ(上図含む)は個人的にはリリースサイズです。
こんなすきまにいます。
個体差はありますが、ライトを数秒照らすと、テトラの奥地に消えていくので、光量が弱ったり、赤い光をはなつライトも持参しておくとよいです。
ちなみに、奥地にもぐってもスルメをしばったタコ紐があればおびき出せますが、足腰が強いのでザリガニ釣りのように釣りあげるのはほぼ不可能です。
あくまでも引き寄せて網ですくったりトングや軍手をした手でつかむ必要があります。
軍手をした手は効率的ではあるんですが、大型のイシガニの場合、挟まれると泣くほど痛いので気をつけましょう。ほんと叫ぶぐらいに痛いです。
テトラや岸壁の側面に張り付いているイシガニは網ですくうとよいです。岸壁には牡蠣殻やフジツボがついているので網がひっかからないように注意しましょう。
スベスベマンジュウガニ系の個体は食べると死ぬので注意
イシガニがいる場所によくみると重装歩兵っぽいのに小型の蟹がいるときは注意しましょう。
こういう蟹。小兵。
がっりしりしているんだけど豆っぽいサイズ。
こういった小型ですべすべしていて丸っこい蟹の中にはスベスベマンジュウガニという、痺性貝毒成分のゴニオトキシン、サキシトキシン、ネオサキシトキシン、テトロドトキシン(フグ毒TTX)などを保有していたりします。
加熱の有無を関係なく、食べたらあの世ゆきです。こわい。
種類の判別もしにくいので、小さい蟹は基本的に全部リリースするとよいです。そうするとまた来年蟹とりが楽しめますしね。
あと、ガザミ・イシガニ問わず、卵(外子)を抱いている個体も味が落ちるので、リリース推奨です。持ち帰って食べるのは個々人の自由なので他者がネットでアレコレ批判すべきではないと思いますが、あんまりおいしくはないです。
鹵獲モビルアーマー(ガザミ・イシガニ・ショウジンガニ)について解説
この夜の鹵獲漁獲はこちら。
イシガニ、タイワンガザミ、オス・メス、ノーマルガザミ(よく国産ワタリガニとして売られているあれです)、ショウジンガニ(マガニ)などがとれました。
タイワンガザミやガザミはテトラや岸壁というよりも、砂地を徘徊、もしくは潜っているので、蟹網で寄せてとったほうが効率的です。
ショウジンガニは、イシガニと大体おなじポイントなんですが、しばしば海面付近や潮がかぶっているテトラの上でただずんでいることが多いです。脚をみると、泳ぐ用にオール状ではなく、とがっていて、陸上における機動力はイシガニの比ではないです。
これがすんごい早いです。そのため、ショウジンガニを専門に狙う場合は、ひっこくりやたも網で、ジオングみたいにロングレンジ攻撃を仕掛けたほうがよいかもしれません。
とれたワタリガニなどの蟹類は帰宅時間が真夜中であることがしばしばですぐに調理できないことも。
そのため鮮度落ちをさけるために一旦冷凍することが多いんですが、シャワーで洗い流して、爪の付け根を歯ブラシでこすると水垢がとれます。
そうこうしていると褐色の糞尿みたいなのを垂れ流すのでこれも洗い流しておきましょう。
こちらイシガニ六連星。
ジェットストリームアタックだ!
つかまえてから、蟹ポイントからの移動が1時間ちょっとかかるのですが、水がなくても元気です。移動時間が長い場合は温度に気をつけながら海水に入れないほうがよいです。それとショウジンガニは一番弱りやすい印象。一番動きが速いので、勝手にバケツ内などで釈迦力でジタバタして弱るのかもしれません。
タイワンガザミ。一番上がオス。下二杯がメス。
むかしはこのタイワンガザミのメスを、ガザミ(ワタリガニ)だと思っていました。
これはガザミ(ワタリガニ)。だと思う。
ショウジンガニ。
両爪が小さく、みていると、磯の表面の海藻あたりをはぎ取って食べているように見えますが、動物性の切り身などにも器用に飛びついてくる様は、蜘蛛のようです。
イシガニ同様、基本的に身がほとんどないので出汁要員とされがちな蟹です。
たまに、海辺の民宿の味噌汁の具になっているんですが、イセエビ汁の味がするといって人気です。
ワタリガニの爪をゴムでしばると手がとれないのと冷凍庫でかさばらない
つづいて別日。
蟹を夜とるときは潮どまりの時間帯でもよいのですが、潮が動いているほうが、徘徊している個体が増えてきます。潮どまりは岩場の隙間などに隠れていたりすることが多いです。
潮が動いてくると、わさわさ出てくるんですよね。タイワンガザミなども、砂の中にいたり砂地と磯の間に隠れているのが表面にでてくるような気がします。
タイワンガザミオス2杯。
奥のサイズは一応つかまえたものの、リリースしました。
自分の中で、リリースサイズを設けておくとよいですね。
とる楽しみもあるとは思うので、とったあとに模様などを愛でて撮影して逃がすのも個人の自由ではあります。
この日は、タイワンガザミの徘徊がめだっていたなと。
タイワンガザミは、鮮やかな青と白い胴が特徴なのですが、ライトで照らすと、潮が澄んでいれば青白く光るのでよくわかります。
みつけるとだいたい両爪を広げて威嚇してくるので、かなりサイズが大きく見えます。
落ち着いてすくいましょう。
タモ網をつかうときは二天一流がオススメです。武蔵おそるべし。
あと、ガザミ類は砂地にいる場合、あ、っという間に潜ってしまうので注意です。
忍びなみにすごいスピードで隠れます。
馬路ですか、というぐらいきれいに潜るんです。ライトを照らしつづけないで、見つけたら、光軸をずらしてとるのがタモ網術の基本です。
ふはははは。
勝利の栄光を君に!
根がかっていたミニ・ジェット天秤8号とハリスも回収しました。なんとなくいいことをした気分にひたって凱旋です。
100均で輪ゴムを買っておいて、2重にしてしばってあげるとよいです。
奥さん、幅をとるガザミ類も、こんな風にコンパクトになりますよ!
奥さん、この通り。これで、冷凍庫にガザミ類をたくさんいれても平気です!
・・・
我が家ではワタリガニ冷凍事業本部が立ち上がりまして、リストランテORETSURIなどのイベントなどでみなさんにふるまうのを心待ちにしています。
ノコギリガザミとモクズガニについて
そういえば、二日目にテトラの穴で1キロ級(嘘つきました。700gぐらいかな)のノコギリガザミとこぶし大のモクズガニを目撃したんですね。
ノコギリガザミはドウマンガニとも呼ばれますが、南からの海流にのって、駿河湾・相模湾・東京湾にも幼生がたどりついて成長するようですね。
食味もめちゃくちゃよいのですが、かなりレアキャラです。
これはむかしボルネオ島のコタキナバルで食べたマッドクラブ(ノコギリガザミ)のブラックペッパー炒め。
モクズガニは、9月中旬ぐらいから走りの産卵個体が河口に現れるんですが、相模湾・東京湾の河口域だと10月中旬ぐらいから個体が増えてくるはずです。
相模川とか多摩川とかまーそのあたりで夜に蟹網をしかければたくさん獲れます。東京湾の運河系でもたくさんとれるので、蟹網を投げて、ちょい投げで落ちハゼでも釣りながら夜を明かすのもよいですよ。
ではでは。
タイワンガザミ&イシガニ獲り動画
関連アイテム
ワタリガニやイシガニを目視で捕獲するならライトとタモ網orトングor軍手(磯場でこけても手が平気)。あとは蟹網が主流です。
カニ籠や類するアイテムは、漁業権自体の前に都道府県単位の漁業調整ルールに違反する可能性があるので注意です。
足場や水深によっては、ライフジャケット推奨です。