どうも平田です。
湾内や河口付近の砂底・砂泥底でぶっこみ釣りをすると、ウナギやアナゴ類が釣れることがありますね。
ところが、釣れた魚をよく見てみると、「???お前はちょっと顔つきが違うよね」ということがあるわけです。
ユニークというか、凶悪っていうか、獰猛そうっていうか。
何となくウナギやアナゴは、ノボーンとしている表情なのに、目前の長い魚は「シャー!」ってな具合に威嚇してくるし。
はい、それはウミヘビの仲間です。
威嚇してくるホタテウミヘビ。かまれるとそこそこ痛い
ウミヘビには爬虫類と魚類がいるのですが、魚類のウミヘビ。
そんな魚であるウミヘビのなかで、日本列島でもっとも釣りやすいのがホタテウミヘビ類です。
ダイナンウミヘビの可能性も高いんですが、どちらかというとホタテウミヘビのほうが個体数が多い印象で、ぶっこみ釣りや泳がせ釣りでも一番遭遇しやすいと言えます。
今回は釣り人に忌み嫌われている「ホタテウミヘビ」について解説します。
ホタテウミヘビとは
小型のホタテウミヘビ。可愛い。
名前の由来
ホタテウミヘビは漢字で書くと帆立海蛇なんですが、名前の由来はよくわかっていません。
個人的な想像ですが、ホタテウミヘビの生態と海中で発見されるときの見た目からついていると考えています。
ホタテウミヘビは基本的に海底の砂や砂泥底に潜り、垂直に頭を「∆」のように出しています。
魚類のウミヘビは海底から垂直に頭を出して餌を待ち受けている。写真はダイナンウミヘビ
夜の浅い海の海底をヘッドライトで照らすと、そこかしこに「∆」のようにホタテウミヘビの頭があるんです。ダイナンウミヘビも混じっているんですが。
この見た目が、なんとなく「帆を立てている」「帆を掛ける」というように見えるからそうついているんじゃないかなと。
ホタテ貝の場合は、殻を帆のように立てて走ると考えられていたからついています。
なので、似たような由来かなと。
他には「背びれを立てて泳ぐ様が帆を立てて見えるから」という由来もあります。
生息地・生態・特徴
放置仕掛けは知恵の輪状になって仕掛けがダメになっていることがほとんど
体長は1m以上に成長。身体は細長く筋肉質。比較的温暖な海に分布し、ホタテウミヘビは鹿児島以北に生息しているとされます。
南西諸島の場合、トンガリホタテウミヘビといった近縁種の存在が知られていますが、一般にはあまり区別されていません。
基本的に夜行性で、日中は砂や砂泥底に潜り、頭だけ「∆」のように海底から出しています。
遊泳力が高くないため、日中は機敏に動く獲物を捕らえるのが難しいのでしょう。
夜になると、餌をもとめて活発に動くのは、ウナギやアナゴと共通する特徴です。
ホタテウミヘビがよく釣れるポイントや状況は以下の通りです。
- 大雨の後、潮の濁り、曇天等で光量が少ない日
- 夜間
- 港内、湾内、河口域の砂泥底
- 身餌でぶっこみ釣りをしている状況
- 泳がせ釣りをしているつもりで、餌が死んだり弱っている状況
- 仕掛け(餌)の位置が低い時
特に、潮通しがあまり良くない港内の場合。
いくら泳がせ釣りをやっても、ヒラメやマゴチなどはあまり期待できません。
そのうちに餌が弱り、やがて海底にタレがちに。
すると、弱ったり死んだ餌のニオイにひかれて、ホタテウミヘビ、ダイナンウミヘビ、クロアナゴ、マアナゴ、アカエイなどがやってくるのです。
なので、もしホタテウミヘビとかダイナンウミヘビをできるだけ釣りたくない場合は、以下の条件で釣りをしましょう。
- 潮通しがよいところで釣りをする
- 活餌なら元気な餌をつかい、しっかり点検する
- エサが遊泳するタナを高めに設定する
毒
ウミヘビという名称があるので毒があるイメージをもたれますが、ホタテウミヘビは無毒です。
食材としての価値
基本的に漁獲されるものはそのまま廃棄されている所謂「未利用魚」です。
釣り人に釣られたものはリリースされることがほとんど。
これは姿形や顔つきのユニークさと、尾の先まで硬い小骨が多いからと言えます。
ハモのように身肉の量は少なく、さらに骨が固くて強いというハードルがホタテウミヘビにはあります。
- 小骨から身肉をスプーンでそぎ落とす
- 圧力鍋で長時間煮込む
など、あえて工数をかけて食べるのであれば、他の魚を釣って食べたほうが合理的だよね、という点をみんな考えるわけです。
そのため、一般には流通せず、釣り人が気まぐれで食べる程度の存在です。
水揚げ後の魚市場の床をみると、ウミヘビ類は見向きもされず打ち捨てられている
「アナゴ」や「ウナギ」との違い
ホタテウミヘビは、釣り慣れていない人からすると、「アナゴ」や「ウナギ」と混同されがちです。
夜釣りメインということもあり、シルエットからみても間違いやすいわけです。
では、アナゴ類とウナギとホタテウミヘビはどのように見分けられるのでしょうか。
ホタテウミヘビ
ホタテウミヘビの特徴は以下の通り。
- 長さに対して身が細い(50㎝程度のマアナゴやウナギと1mのホタテウミヘビの直径は同じ程度)
- 釣りあげると威嚇してきたり噛みついてくる(ウナギは噛みついてくることはほぼないが、アナゴ類は噛んでくることも)
- 色は茶褐色で頭部や顎下にシワがある
- 頭部が尖っている
- 上あごの先端から下あご側にむけて鼻管がある
体長1m以上あったホタテウミヘビの頭。いかつい
体長1m以上あったホタテウミヘビの胴
体長50㎝ほどのホタテウミヘビ。よく暴れる
マアナゴ
マアナゴの特徴は以下の通り。アナゴのなかでも特に食味にすぐれるとされるのが本種です。
- 体色が茶色に近いが、黄金色の光沢がある
- 長さに対して身が太目(50㎝程度のマアナゴは1mのホタテウミヘビの直径は同じ程度)
- 比較的やさしげな顔つき
- 頭部や顎下にシワがない
- 頭部が尖っていない
- 側線と背びれの間に点状の模様列がある
50㎝ほどのマアナゴ
小型のマアナゴの顔つき。唇は白く、おっとり系
クロアナゴ
クロアナゴの特徴は以下の通り。食味はマアナゴに劣るとされ、骨がマアナゴより強め。
- 長さに対して身が太目(マアナゴより胴体が太い)
- 全体的に黒い
- 頭部や顎下にシワがない
- 頭部が尖っていない
- 側線と背びれの間に点状の模様列がない
- 1mほどに成長
クロアナゴはマアナゴよりやや太目。目がデカイ
釣りあげた状態では色が黒い
上からクロアナゴ、マアナゴ、アイナメ
ダイナンアナゴ
ダイナンアナゴの特徴は以下の通り。クロアナゴとも呼ばれるが厳密には別種。
- 長さに対して身が極めて太目(クロアナゴより胴体が太く。メータークラスは大人のふくらはぎ程度の太さ)
- 全体的に黒い
- 頭部や顎下にシワがない
- 頭部が尖っていない
- 側線と背びれの間に点状の模様列がない
- 1m以上に成長
ダイナンアナゴは根周り+砂泥地で釣れやすい
上から見るとダイナンアナゴは頭部から下が異様に太い
ウナギ
ウナギの特徴は以下の通り
- 長さに対して身が太目(ホタテウミヘビより)
- 全体的に茶褐色。海に近いところで釣れたものは青黒い
- 頭部や顎下にシワがない
- 頭部が尖っていない
- 下あごが上あごより長い受口
- 80㎝程度まで成長
ウナギは体がなめらか
ウナギは頭部が受口で穏やかな顔立ち
胸鰭が丸みをおびてキュート
河口域で釣れる小型のウナギは細いためホタテウミヘビと混同しやすい
ダイナンウミヘビとの違い
ダイナンウミヘビの特徴は以下の通り。
- ホタテウミヘビと同じぐらい細い体
- 全体的にグレー。滑らかな色つや
- 頭部や顎下にシワがない
- 頭部がホタテウミヘビよりさらに尖っている
- 鋭い歯がある
- 1m以上に成長
ダイナンウミヘビは砂泥地で身餌をつかうとよく釣れる
仕掛けに巻き付きつつ、ハリスをかむ
ダイナンウミヘビはとにかくひょろ長い
ホタテウミヘビとは顔つきがちがうので一目瞭然。なんとなくスネ夫っぽいイメージ
まとめ
湾内・港内・河口付近の砂底・砂泥底でぶっこみ釣りをするとよく釣れるホタテウミヘビ。
あれ、アナゴ(ウナギ)ってこんな顔だったかな?
と、思いながら、「アナゴ(ウナギ)釣れた!」とSNSにUPすると、「それウミヘビですよ」とよくコメントされる魚です。
よくキモイと呼ばれるわけですが、個人的には何となくユーモラスで可愛いなーと感じています。
実際に釣れると仕掛けがめちゃくちゃになっているので、めんどうなんですけどね。
夜の海を探索していると、海底から「∆」頭がそこかしこにあり、近くにいくと、すっと引っ込むのがまた愛らしくもあります。
よいダシが出て、身も旨味があるんですが、小骨が多く料理するのはなにかと手間。
工数の割には得られる益がすくない典型です。
もし釣れたら無理に持ちかえらず、リリースしてあげましょう。
ハリを飲み込んでいることも多いので、その場合は無理に外したり引っ張らず、ハリスを切って逃がしてあげるのも一つです。
ウナギがそうですが、長物は勝手にハリを吐き出して、サバイブすることも増えるはず。
平田(@tsuyoshi_hirata)