東京湾のマゴチ釣りは、三日月オモリや鋳込み天秤にハリス1.5m程度でサイマキ(クルマエビの幼体)やハゼを泳がせて釣る釣りです。
コマセなどの向こうアワセの釣りと違って、誘ってかける必要があるため、「攻めの釣り」ともいわれます。生餌を使いつつも、自分で誘わないとアタリが出にくく、かつ適切な送り込みと合わせのタイミングが重要なテクニカルな釣り。
はじめて挑戦する場合、釣り座や釣り方によってはボウズを経験する人もしばしば見られます。
今回は、東京湾のマゴチ釣りで釣果をもっと伸ばす方法を紹介します。
マゴチ釣りで釣果が伸びない理由
まずはマゴチ釣りでよくある釣れない人の傾向から紹介します。
- 釣り座が潮ケツである
- 竿が極端に短かったり、穂先が硬すぎる
- スピニングリールをつかっている
- PEラインやハリスが細すぎる
- ハリが餌や釣れるマゴチのサイズにあっていない
- 餌のつけ方が悪い
- 弱った餌を使い続けている
- 仕掛けにアカクラゲの触手がついている
- ハリスが手前マツリしたまま投入されている(よれたハリスを使い続けている)
- タナ(中オモリの位置と餌が泳ぐ場所)が違う
- タナの取り直し(誘い)をさぼっている
- 潮流の速度を考慮しないでいつも同じ釣り方をしている
- 早合わせをしてしまう
- アタリがあってから待ちすぎている
- アワセが中途半端(アタリがでてからバレる率が多い)
- 細かいアタリに気づけてない
マゴチ釣りで釣果を伸ばす秘訣
次に前述の16個の課題への対策を紹介します。
①釣り座が潮ケツである
マゴチは海底にある程度の距離感をもって群れている魚ですが、シロギスやアジなどと比べて個体数が多い魚ではありません。そのため、流れる潮先の釣り人が圧倒的に有利です。特にマゴチの餌釣りの場合、キャストをする釣りではないため、どうしても潮先の人が流したあとをエサが流れるということになりがちです。潮先側に名人級の釣り人が2本竿で座ると、かなりの確率でブロックされてしまいます。
<対策>
できるだけ潮先の釣り座を確保する。釣り人の数が少なくなる平日に釣行する。ルアーで挑戦できる船宿を探し、キャスト主体の釣りをする。釣り座に余裕があれば2本竿で確率をあげる。
②竿が極端に短かったり、穂先が硬すぎる。手持ち竿が胴調子でやらかすぎる
ダイワのマゴチX。低価格で手に入る専用竿。穂先が柔らかく、胴がしっかりしている
マゴチ釣りでは、硬すぎる竿、特に穂先が硬い竿では繊細な前アタリがわかりません。また、胴が柔らかすぎる竿の場合、せっかく合わせてもハリがかりさせられずということも頻発します。2mより短くなればなるほどマゴチのアタリを竿で吸収しづらくなり、アワセづらくもなります。
<対策>
マゴチ専用竿があれば越したことはありませんが、ライトゲームロッド(汎用竿)の場合15~20号のオモリに対応できる7:3調子の竿を選びましょう。20号~80号程度のオモリに対応したライトゲームロッド(MHクラス)であれば15号の三日月オモリも問題なく使えます。できれば15~60号程度のミディアムクラスがオススメです。
グラス主体の貸し竿でも釣れますが、前アタリなどは今一つわかりにくくなるので、狙って釣った感を得るのは難しいと言えます。マイロッドの持参がオススメです。
置き竿の場合2.3~3m程度の胴調子ぎみの竿であると、比較的食い込みが良くなり、船が移動していれば向こうアワセ気味に釣ることができます。
<低価格でオススメのマゴチ専用ロッド>
※実際はライトゲームロッドで十分ですが、さらにこだわりたい人向け。
<ライトゲームロッド>
繊細なアタリをとるには7:3のミディアムクラスがオススメ。アワセがきっちり決まりやすいのはよりバット(胴)が硬いMH~Hクラス。
③エサ釣りでスピニングリールをつかっている
船のマゴチ釣りは頻繁にタナを取り直すのが特徴です。スピニングリールの場合、両軸リールと比較してタナを取り直す工数が増えてしまいます。またマゴチの微妙なアタリはタナを取り直す瞬間に出ることもあり、スピニングタックルの場合このアタリに気づかないこともしばしばです。
<対策>
マゴチを餌で釣る場合は両軸リール(ベイトリール)を選びましょう。釣りやすさが各段に上がります。
④PEラインやハリスが細すぎる。傷が目立つ道糸をつかっている
マゴチの歯はやすり状。飲まれてしまうと高確率でハリスが白く傷つく
マゴチで釣れるのは1キロ前後のサイズがほとんどですが、硬い口に鈎をかけるために長く強くアワセをいれる必要があります。この際、1号以下のPEラインの場合、高切れすることもしばしばです。
いつ巻き替えたか忘れてしまったような古いPEラインも高切れする可能性があるので、釣行前に新しいラインに巻き替えておくか全体の傷をチェックしておくとよいでしょう。PEラインの号数は1.5号もしくは2号がオススメです。2号だとほぼほぼ切れませんが、弱った1.5号は瞬間的に切れることもあります
ハリスについては最低フロロカーボンの5号。大型がのぞめる状況では6号を使うとよいでしょう。4号の市販仕掛けも売っていますが、ハリス切れの可能性が高くなります。
<対策>
マゴチシーズン前にPEラインを巻き替える。ラインは1.5号もしくは2号を選ぶ。市販仕掛け、自作ともにフロロカーボン5号か6号を選ぶ。ハリスの太さによりアタリが減ることはあまりないが太すぎるハリスは餌が自然に泳がないので注意。
⑤ハリが餌や釣れるマゴチのサイズにあっていない
マゴチ釣りといっても餌によって適した鈎の種類が異なります。サイマキ(クルマエビ)に適した鈎、ハゼやメゴチに適した鈎をごっちゃにしてしまうと結果的にエサづけがうまくいかず釣果が伸びません。また、ハリのサイズが小さいものほど飲まれやすく伸びやすいという点があります。
<対策>
サイマキ(クルマエビ)は、ひねりのないマゴチ鈎を選び、ハゼやメゴチ餌にはチヌ針やセイゴ針がオススメです。後者はひねりがあっても大丈夫です。どちらもアシストフック(孫針は不要、かつ、ない方が釣趣が高い)
▼サイマキにオススメなのは「がまかつのマゴチ鈎の17号or18号」。小型の食い込みは悪くなりますが、大型狙いは18号がよいでしょう。好みでハリを油性の黒マジックで塗ると目立ちにくくなります。
▼ハゼやメゴチ餌にはチヌ針8号もしくはセイゴ針16号がオススメ
⑥餌のつけ方が悪い
サイマキ、ハゼ・メゴチともに餌のつけ方がよくないとすぐに弱ってしまいアタリの数が減ってしまいます。
<対策>
焦らず餌を慎重に鈎掛けする。特にサイマキの場合コツが必要なのでわからない人は船長に聞いておきましょう。
サイマキは口と呼ばれる部分の少し全部のくぼみから針先を差し入れ、針先は少しだけ出す
ハゼやメゴチ餌は上あごにチョンがけする
⑦弱った餌を使い続けている
サイマキは脚を動かしていても海底で傾き、跳ねず、アピールが弱くなってしまっていることも
乗合船でのサイマキやハゼ餌は追加すると有料のため、できるだけ同じ餌を使い続けたいという心理が働くのですが、弱った餌ではマゴチへのアピールが減ってしまい釣果が伸びません。サイマキの場合、一見泳いでいるようでも、底上で跳ねることをしなくなるとアピールが低下します。
<対策>
餌は丁寧に致命傷にならないように鈎掛けしましょう。また場所移動等でのピックアップ時は、ゆっくり巻いて餌をいたわるとよいです。長くアタリが出ない餌の場合、仮に生きていても底上での動きが今一つのこともしばしばです。アタリがでないときにはエサ代を惜しまず新しい餌に変えてしまうと次のアタリにつながることもしばしばです。
▼イカやフグのアタリに気づけないことも多く、投入しっぱなしは危険
イカの噛み跡。5月~6月はシリヤケイカが多い
フグの噛み跡。シロサバフグ・アカメフグ・ショウサイフグ・トラフグなどの仕業。アタリがほぼでない
⑧仕掛けにアカクラゲの触手がついている
マゴチの遊漁船が出船する時期は水温も上がり、アカクラゲが多く繁殖する時期です。餌や鈎にアカクラゲの触手がついているとアタリが出にくいので注意しましょう。
<対策>
仕掛けを入れっぱなしにしない。仕掛け回収の際は餌と鈎を確認してクラゲの触手がついていないか確認する。特にサイマキの場合頭部の角部分にアカクラゲの触手が引っ掛かりやすい。
⑨ハリスが手前マツリしたまま投入されている(よれたハリスを使い続けている)
どの釣りでもそうですが、ハリスが手前マツリしている状態ではアタリが極端に減ってしまいます。
<対策>
ハリスは比較的ハリがあるものを使う。投入前にハリス部分の結び目をもって引っ張ってヨレをとる。投入時はキャストせずオモリと餌部分が絡んでいないのを確認してから行う。仕掛けを入れっぱなしにしないで、一定タイミングで確認する。
⑩タナ(中オモリの位置と餌が泳ぐ場所)が違う
市販仕掛けのハリス全長は1.5mがほとんどだが2mもある。統一した方がタナを迷いにくい
マゴチの釣りではタナといえばオモリの位置を指します。マゴチが底に這うようにいるからといってオモリを着底させたままではアタリが少なくなってしまい、ハリスのたるみもできアタリがわかりにくくなります。変動要素としては潮流と水深の変化があり、これらに臨機応変に対応できないと釣果が伸びません。
<対策>
一般的なハリスの長さは1.5mです。2mの市販仕掛けもありますが、なれないうちは1.5mのハリスに統一して経験を積んだ方がよいでしょう。基本的に錘の位置は底から1mで待ちます。
潮が速いときはオモリの位置を底から50cm~80cmのところに調整していくとよいでしょう。この場合、どの位置でアタリが出始めるかを調べていき、以降のオモリ位置を最適化します。
また極端に潮が速いときは餌の浮き上がりをさらに抑えるために、鈎へ糸オモリを撒くだけでなく、小型のガン玉をチモトに打つのも効果的です。これは餌が浮き上がりすぎるよりは、底上に餌があったほうがアタリを出しやすいからです。
潮がほぼ動かないときは反対にハリスが垂直に垂れてしまい砂泥底で餌を引きずってしまうということも増えてきます。サイマキであれば餌を回収したときに、角部分に泥がついていた場合はタナが低い証拠です。こうした場合では、オモリの位置を底から120cm~150cmの間に調整していきます。
2本竿での置き竿の場合、頻繁にタナをとるのが難しくなるため、置き竿のオモリ位置を底上1mでなく、やや底目にするのがオススメです。
⑪タナの取り直し(誘い)をさぼっている
手持ち竿でも置き竿でも、仕掛けを投入しっぱなしにしている場合は釣果が伸びません。特に水深の変動に随時対応できないとまぐれの釣果しか出せないはずです。
<対策>
タナを取り直す意味は主に2つあります。
一つ目はオモリで海底を認識することで、海底からのオモリの位置、ハリスの先のエサ位置を最適化する意味があります。
二つ目はタナとりの動作によって餌が動くため、マゴチにアピールしてアタリを誘発する意味です。
漫然と釣っていてもまぐれで釣れるかもしれませんが、マゴチ釣りの場合、自分で攻めるようにしてアタリを出すところに面白さがあります。
活性が高いときはタナを5~10秒で取り直すことでアタリの総量を増やすことができます。一方、タナとり後に一定時間餌を底上に漂わせ続けることでアタリが出ることもあるので、待ち時間は一概に言えないと覚えておきましょう。
まわりでよく釣る人がいたら、タナとりのタイミングをチェックしておくことをオススメします。
⑫潮流の速度を考慮しないでいつも同じ釣り方をしている
日ごと、時間ごとに変わるのが潮流ですが、この速度を理解しないでいつも同じような釣り方をしている人はあまり釣果を伸ばすことができません。
<対策>
1.5mのハリスの場合、基本はオモリを底から1m上げて待つわけですが、刻一刻と変わる潮の速さを考えてタナの位置を変更していきます。マゴチ釣りの場合、浅場が多いですが、場所によっては潮流が早くなることもあります。この際は、道糸が立つようにオモリを20号にするなども有効です。
▼オモリの種類も統一したほうが無難。15号を基本として、潮流が速いときなどは20号を使うとよいことも。10号は浅場の手漕ぎボート釣りなどで便利。オモリの色は釣果にほぼ関係ないので好みで。オレンジでもシルバーでも黒でも、反射シールでもあまり変わりません。
⑬早合わせをしてしまう
マゴチ釣りでせっかくアタリがあったのに釣れないパターンがアワセが早すぎるという点です。経験が浅いことに加えて、竿を力んでもっていると、どうしても早合わせ気味になりがちです。
<対策>
マゴチのアタリは大きく分けて以下の通りです。
- マゴチの接近によって餌が暴れるアタリが穂先にでる
- マゴチが餌の頭部側をくわえて首をふることで反復的なアタリが穂先に出る(動かないでじっとしている個体もいます)
- マゴチが反転したり、潮や船の移動により、テンションが高まり強いアタリが出る
まず1のアタリではアワセません。2のアタリで合わせた場合、針がかりすることもありますが、8割方すっぽ抜けてしまいます。
2ではマゴチに違和感を持たれないように、竿先をゆっくり送り込みましょう。この際にややラインにテンションをかけておくことで「餌を逃がすまい」としたマゴチがさらに餌を食い込むようになります。そこから竿をゆっくり聞き上げると3のアタリに到達しやすいと言えます。
マゴチ20というように、アタリがあってから20秒待ちましょうという釣りですが、だいたい7、8秒で3のアタリまで持ち込めるためそこで合わせれば、獲れる数も増えてきます。
いずれにせよアタリがあったら深呼吸すると落ち着いて対処できるはずです。
⑭アタリがあってから待ちすぎている
アタリがあったのに釣れないパターンの一つとしてアワセが遅すぎるという点です。アタリがあってから1分、2分と待ってしまうとマゴチも鈎やオモリの違和感を感じてしまい餌を放してしまいます。
<対策>
小型の個体(ソゲクラスのヒラメを含む)や、やる気がない個体は30秒から1分待っても食い込まないことがしばしばです。この場合は早めに見切りをつけて竿先を聞き上げることで前述の3の本アタリに到達させるほうがよいと言えます。どうしても、すっぽ抜けることもありますが、それはそれで仕方ないと思っておくとよいでしょう。
⑮アワセが中途半端(アタリがでてからバレる率が多い)
マゴチの口蓋は極めて堅く、中途半端に合わせるとハリがかりせず、巻き上げ途中にバレてしまうこともしばしばです。
<対策>
まず、マゴチの口蓋を理解しましょう。
こちらがマゴチの頭部。
こちらは口の内側側面です。矢印は合わせたハリが口内で滑っていった様子です。
こちらは口蓋上部をハリが滑っていった様子。
マゴチの場合、この口蓋上部が硬く、マゴチ鈎とライトゲームロッドでは貫通させることは、ほぼ不可能です。
ではどうしたらよいかというと、マゴチが口の中に餌を飲み込んだタイミングでこの口蓋部分から針を引き出し、唇の上や側面にフッキングさせる必要があります。
上記の点を考えると、アワセ方は「速く短く鋭く(ゆるく)」ではなく「ゆっくり長く強く」を意識する必要があります。特にアタリが中途半端な状態では中途半端なアワセになりがちですが、「ゆっくり長く強く」アワセてみましょう。
ワームなどのルアー釣りの経験がある人にはお馴染みですが「巻き合わせ」も有効です。
⑯細かいアタリに気づけてない
フグやイカのアタリに気づけると死に餌をただ流すという時間が少なくなる
釣れるマゴチは500g~1キロ程度の個体がほとんどですが、アタリは意外と繊細です。細かいアタリに気づけない場合は本アタリに持ち込むのが難しくなってしまい、結果的に釣果が伸びません
<対策>
繊細な穂先をもつ竿をつかい、タナを的確にとりましょう。ハリスが伸びた状態であれば中オモリを経てもアタリに気づきやすくなります。
意外と重要なのが、タナとり時のアタリをとれるかとれないかです。水深が大きく変わるような地形でない場合、クラッチをきってオモリを着底させて再度タナをとるよりは、クラッチを切らず行った方がよいと言えます。
竿の上げ下げで底上から一定のタナをとり続けたほうが、タナとり時の細かい違和感は獲りやすくなります。潮の速度にもよりますが、海面付近まで竿先を下げた状態でオモリが着底していれば、そこから水平付近まで竿を起こせば、だいたい底上1mにオモリを置くことができます。
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