イカを釣るとなると、都心からかなり移動が必要なイメージがありますね。
一方、東京湾でも湾奥とよばれるエリアでも釣れるイカがいるのです。
それが「シリヤケイカ」。
市場価値や食味の点でコウイカより劣るとされ、船釣りでは不人気魚種ですが、岸釣りでは立派な釣り物で人気。
今回はシリヤケイカの生態や釣り方を解説します。
シリヤケイカの基本情報
- 生息地:関東以南の内湾(東京湾・大阪湾・瀬戸内海など)
- 名前の由来:外套膜の突端(尻とたとえられる)から褐色の分泌液を出し、焼けているように見えるから
- 愛称:シリヤケ。地域によってはシリクサリ。
- 食性:エビやボケジャコなどの甲殻類や、カタクチイワシ、ナミノハナなど小型の魚類
- 釣り方:エギやスッテなどのルアーが中心。餌巻きテーラーや泳がせ釣りなどの餌でも釣れる
シリヤケイカは、関東以南の内湾に多く生息するコウイカの仲間です。
平均水温の上昇により生息域が広がってきています。
東京湾の場合、コウイカが湾の外側(観音崎以南)にも多いのに対して、シリヤケイカは、さらに湾奥(川崎・羽田・浦安・船橋)あたりに分布するのが特徴です。
コウイカが東京湾側から三崎をこえ、相模湾・横須賀長井・葉山・逗子付近まで釣れるのに対して、シリヤケイカは東京湾内のポイントが中心。
これは塩分濃度がより低い場所に対応するからといわれています。
成体はコウイカ同様、浦賀水道の深場で越冬します。
水温が上がり始める3月ごろから東京湾を北上し、産卵行動の一環で、神奈川側は横浜・川崎、東京は羽田、千葉側は浦安近辺までの浅場へと展開。
盛期はゴールデンウイーク期間から5月中旬で、釣れるのは6月中旬ごろまで。
ポイントは10mより浅い場所で、多少根がまじった砂泥底に多く、アマモなどの海藻やロープに黒色の卵をうみつけ、産卵行動が終わったあとは一生を終えます。
シリヤケイカが「尻」から分泌液を出して網の色がそまっている様子
シリヤケイカは釣りあげると、外套膜の突端から褐色の分泌液を出します。
そのため、「尻が焼けている」にたとえられ、シリヤケイカという名前がつきました。
シリヤケイカの「尻」部分。コウイカと違って外套膜の突端部分に尖った部分がない
孵化したシリヤケイカは、夏から12月まで急速に成長して、その間に湾奥から湾中央(中ノ瀬など)に移動します。
その後、年明け以後はあまり成長せず、水温低下とともに浦賀航路の深場に落ちていきます。
シリヤケイカはエギングやスッテで釣るのが一般的
シリヤケイカはコウイカにそっくり
シリヤケイカは餌巻きテーラーや泳がせ釣りでも釣れますが、手軽さからエギや胴突き仕掛けのスッテで釣るのが一般的です。
竿
8号程度までのオモリがつかえる2~3m程度の竿が最適です。
エギングタックルやシーバスタックルでも対応可能。
タコエギロッドなど、先調子気味の竿がアタリがわかりやすいと言えます。
リール
2500番程度のリールが最適。
特段スペックは必要ないですが、広くさぐる場合はハイギアタイプが釣りやすいと言えます。
ライン・リーダー
PEライン0.6~1.5号が100m巻いてあれば十分。
エギはPEライン直結でも釣れますが、キャストミスや根がかり時に高切れしやすくなるのでフロロカーボン2~3号を1m程度つけるとよいでしょう。
アオリイカより繊細ではないので、3号をつけて回収の可能性を上げるのがオススメ。
エギ
ボトムを狙いやすいようにナス型やホゴオモリ5~8号をセットして使う人がほとんど。
潮がなければより軽いオモリを使い、潮で底が取りにくい場合や遠投が必要な場合は8号を使いましょう。
あまり重いオモリは根がかりの原因になります。
タコエギも人気。ブレード類はついていないほうが釣れます。
スッテ
胴突き仕掛けで捨て糸を30㎝程度。枝スを40~60㎝程度とります。
手前マツリをしやすいので、スナップ部分をハヤテスナップ クレンにしたり、ビニールパイプなどで補助するとよいでしょう。
オモリの色によっても反応が変わるので、夜光オモリなど目立ちやすいものをつかってみるのも一つ。
釣り方
岸から釣る場合、釣期は4月中旬から6月中旬までの2か月がベストです。
本記事末で紹介するシリヤケイカが釣れる釣り場に、ゴールデンウィークから6月中までに通えば、きっと釣れるはずです。
シリヤケイカが釣りやすい時間帯は、朝夕のまずめ時です。また潮が動いている時間帯が基本です。
日中は底上に張り付き動かないので、粘り強く誘いましょう。
基本的にはエギでもスッテでも、以下の通りの釣り方です。
- キャストして底をとって、ずる引き
- しゃくって底上でステイさせる
- ぼろ布やビニール袋のような重さを感じたら合わせる
- ポンピングをできるだけしないようにして巻き取る
- ばれやすいので基本的にタモかギャフで回収する
湾奥では、とくに根周りの砂泥底に多く生息しているのですが、根がかりが連発する釣りです。
以下の方法で対策しましょう。
- 胴突きの捨てオモリ仕掛けにする
- リーダーやPEラインを太くする
- 先調子竿を使い感度をあげて、根がかる前に回収する
シリヤケイカは「まずい」のか?
よく「シリヤケイカはまずい」とされるのですが、本当なのでしょうか?
これはコウイカと比較されがちであるからおきる評価です。
コウイカとシリヤケイカを比較すると「コウイカのほうが甘みがあり身が柔らかい」という特徴があります。
一方、シリヤケイカ単体を調理して食べれば、十分うまみもあります。
冷蔵庫で数日寝かせたり、加熱することでおいしく食べることができます。
臭みがあるとされますが、これは持ち帰り方法が不十分であったり、下処理が今一つであるからなのかもしれません。
<持ち帰りと下処理方法>
- ジップロックなどにいれて密封する
- 海水に氷をいれたもので全体をしっかり冷やす
- 持ち帰り後、墨を洗い流し皮をはぐ
- 内臓をとりわけて、胃袋以外の内臓を日本酒につける
- 身を生食する場合は1、2日寝かせる
下処理したシリヤケイカ
天ぷらはシリヤケイカを一番おいしく食べることができる料理
シリヤケイカの墨袋と肝臓などとバター炒めにするとコクがUP
シリヤケイカが狙える釣り場
- オリジナルメーカー海づり公園(千葉県市原市)
- 東扇島西公園(川崎)
- ふれーゆ裏(横浜)
- 大黒海づり公園(横浜)
- 本牧海づり公園(横浜)
- 磯子海づり公園(横浜)
- 福浦岸壁、八景島周辺
- うみかぜ公園(横須賀)
- 海辺つり公園(横須賀)
まとめ
今回は東京湾など、大都市近郊の湾奥で釣れる「シリヤケイカ」の生態や釣り方を解説しました。
食味で劣るとされるシリヤケイカですが、調理方法を工夫をすれば、おいしい釣り物です。
浅場では季節限定で比較的簡単に釣れるので、ぜひチャレンジしてみてください。