大量の雨が河川を通じて海に流れむと、塩分濃度が下がり、魚の食いが落ちることがあります。
これを「水潮(みずしお)」と呼び、「魚が釣れなくなる」とされます。
水潮によって「釣れなくなる魚」と「釣れやすくなる魚」がいるというのは本当なのでしょうか?
魚の活性以外に水潮がもたらす影響はあるのでしょうか?
水潮の影響はいつまで続くのでしょうか?
今回は、釣り人にとっても気になる「水潮(みずしお)」についてより広い観点から解説します。
水潮(みずしお)について
雨によって魚が受ける影響はそれぞれ異なる
日本列島は以下の条件で大量の降雨に見舞われます。
- 梅雨(毎年6~7月頃に雨や曇りが続く)
- 夏場を中心としたゲリラ豪雨(突如として積乱雲が出来上がり降雨につながる状態)
- 線状降水帯(積乱雲が大量に集まり数時間大量降雨が続く)
- 台風(南洋上で生まれた熱帯低気圧のかたまりが移動して降雨や強風をもたらす)
- 秋の長雨(秋雨前線の停滞により長期間雨が続く)
長時間大量の雨が降り注ぐと、河川を通じて湾内には大量の真水(淡水)が流れ込みます。
こうした状態を「水潮」と呼びます。
塩分濃度低下の影響
大量の真水が湾内に流れ込むと、河口に近い浅場ほど影響を受けやすくなります。
塩分濃度の変化に敏感な魚は活性が著しく下がり、餌をとらなくなったり、より深場に移動してしまいます。
つまり、ターゲットの魚がいても釣れなかったり、そもそも居なくなってしまう状態になるわけです。
2枚潮の影響
真水と海水の比重の差から、真水で海水が薄まった上潮(うわじお)と塩分濃度が濃い底潮とわかれてきます。
仕掛けやルアーを投下すると、2枚潮により、底取りが今一つになり、アタリがとりづらくなります。
上潮が速く流れることにより、オマツリの原因になることもしばしば。
濁りが増す
水潮が起こっているときは、同時に河川から山野由来の濁りも流入します。
厳密にいえば「濁潮」という呼び名もあるのですが、水潮時の浅場は高確率で濁っていると言えます。
そんなときに、嗅覚より視覚を重視して餌を捕食している魚は、餌を発見しづらくなるため、釣果に影響が出ます。
魚によっては濁り自体を嫌って、湾内から沖へ向かってしまう種類もいます。
ゴミが増える
河川からは都市部由来の大量のごみが流下してきます。
そのため、釣りをしていても、ゴミがひっかかってしまうこともしばしば。
水潮の影響をうけるタイミング
よく大雨が降っているなか釣りにいくと、真水の影響が気になるかもしれません。
一方、水潮の影響を受けるピークは、降雨の最中というよりも、大量の降雨が続いた後や降雨後です。
これは、雨が平地や山地に降ってから、河川を通じて海に流れ込むまでのタイムラグがあるからと言えます。
そのため、大雨が降っているなか釣りをしていても、真水を嫌う魚がよく釣れるということはしばしばあります。
水潮の影響がなくなるタイミング
降雨量や雨天の日数にもよりますが、湾内の浅場では雨がやんでから数日間は水潮の影響があります。
厳密に「何日間影響をうけるのか?」については、降った雨の量や水深や沖からの潮の入り具合によって異なります。
水潮が気になる場合は、雨が上がってから1週間たてば、ほぼほぼ影響がないはずです。
水潮で釣果が伸びない魚
タコ
タコは水潮の影響をきわめて受けやすいターゲットです。
雨天の際に釣行してもアタリの出方は変りませんが、大量の降雨が続いているときは、極端にノリが悪くなります。
水潮時のタコは、隠れ処でじっとしているようで、広く探る釣り人より、一点を集中して狙ったほうが釣果につながります。
水潮時に釣ったタコを活かしておく場合に注意したいこともあります。
海面近くの海水とバケツに入れておくと、タコはすぐに弱って白くなってしまったり死んでしまいます。
これは酸素の有無にかかわらずなので、タコは相当真水が嫌いなのでしょう。
シロギス
シロギスはもともと澄潮のほうが釣果が上がる魚です。
これは餌を嗅覚で探すというよりも、視覚でとらえる要素が高いからとされます。
水潮時は濁りやゴミが大量に流入するため、キスのアタリは出しづらくなります。
雨の降りはじめでは、河口内で流下してくる有機物を食べているような個体を釣ることはあります。
一方、本格的な雨が降り続くと極端にシロギスは釣果が下がる魚なのです。
マハゼ
マハゼは汽水域に生息していることもあり、真水に強い印象がありますが、水潮には弱い印象です。
特に、より閉鎖的な環境で潮の出入りが少ない釣り場では、大量の降雨後に極端に釣れなくなります。
青潮の場合も一緒です。
降り始めの場合はシロギス同様、流下してくる有機物を食べるため、一時的に活性が上がる印象です。
水潮で釣果が変わらない・上向く魚
シーバス(スズキ)
シーバスことスズキは真水に強く、汽水域をさらに遡上して、完全な淡水に生息していることもあります。
そういった体質からか、水潮には強く、濁流の河口域でも積極的にルアーにアタックしてくることも。
強い流れが起きると、流されてくる小さな魚が増えるため、待ちかませているのでしょう。
また、強い流れのなかに、地形的に淀みがあるところにも潜んでいることがあります。
小魚は、少しでも流れが弱いところに退避するわけですが、やはりそこを待ち伏せしているようです。
黒鯛
チヌこと、クロダイも水潮には強い魚です。
シーバス同様、淡水に近いエリアまで遡上することもあるのと、濁りを好む魚であるからです。
クロダイは雑食のため、流下してくる有機物目当てに、河口域や湾内では比較的活性が上がる印象です。
イサキ
イサキの旬は、産卵シーズンと重なる梅雨時です。
この頃は、しばしば大量の真水が流れ込み、濁りも強くなるのですが、イサキの釣果は落ちません。
筆者は豪雨が続く、伊豆大島の護岸エリアでイサキの夜釣りをやったことがあります。
この時は、かなり入れ食いで、最終的にはジグヘッドにオキアミを付けたものを投下するだけでヒットしていました。
イサキ自体は目がよく、晴天澄潮のときは釣果が下がります。
反対に光量が少なくなり、濁りが入る雨天や水潮時でも積極的に餌を食べる魚と言ってよいでしょう。
アジ
マアジも水潮に強い魚です。
比較的イサキと傾向が近く、雨天や曇天に加えて濁りが強い潮のほうが餌を積極的に食べる印象です。
個人的にライトアジで年間何十回も釣りをしますが、梅雨の水潮時でも、入れ食いなことが多いと言えます。
ただし極端に水温が下がるときは、口を使わなくなることもあるので、釣況は注目しておきましょう。
カサゴ
カサゴも水潮のネガティブな影響を受けにくい魚です。
むしろ、雨天時の光量の低さや濁りがプラスに働くことが多く、大雨の続いたあとで湾内の根周りで釣りをすると入れ食いになることもしばしば。
梅雨時は特にその傾向が強いと言えます。
活性が上がっているときのカサゴは、仕掛けを落として放っておくだけでどんどん釣れてしまう魚なのです。
まとめ
水潮時のタコ釣りはアタリがほぼでない・・・
大量の降雨が続くことにより、海水の塩分濃度低下が起こる「水潮(みずしお)」。
魚の種類によっては釣果に著しく影響を受けるほか、ゴミが増えて湾内は釣りにならないこともしばしば。
狙うターゲットによっては、降雨後からしばらく時間をあけてから釣行するほうがよいかもしません。
まとまった雨が降った後でも1週間もすればすっかり海はもとに戻っているはずです。