日本各地で梅雨から夏場に簡単に釣れるテナガエビ。
独特の駆け引きがたまらない釣りで、初心者からマニアまで人気です。
今回は、これからテナガエビ釣りにチャレンジする方向けに、テナガエビの生態や釣り方などを詳しく解説します。
テナガエビとは?(釣れる場所・釣れるタイミング)
テナガエビは、テナガエビ科テナガエビ属に分類されるエビの総称です。
釣りで狙われているテナガエビは、淡水から汽水域までに分布する種類を指します。
テナガエビの種類と生息地域
テナガエビは河川の下流域で潮の干満の影響を受けるエリアに多い
テナガエビは厳密にいうと複数の種類にわかれます。
本州で主に釣れる種類は以下の3種です。
- テナガエビ(一番ポピュラーな種類)
- ミナミテナガエビ(テナガエビより大型になる)
- ヒラテナガエビ(爪が平ら。比較的上流域の流れがあるエリアに生息)
テナガエビには止水型の個体もいますが、降海型の個体のほうが大きくなりがちで個体数も多いといえます。
初めて狙う場合は、河川の汽水域から中流域までを中心に釣り歩くとよいでしょう。
5月後半~8月がシーズン。6月7月の梅雨時が最も釣れる
テナガエビは梅雨時に産卵をむかえ、浅場に多くの個体が接岸します。
この釣りは振り出し竿で繊細なアタリを楽しむのが面白く、岸際を狙って釣れる6月7月がもっともチャレンジしやすいといえます。
テナガエビは暗いところが好き(日陰と障害物を狙おう)
日中にテナガエビを狙う場合はテトラや石などの隙間を狙う
テナガエビは基本的に夜行性です。
夜になると護岸や石の隙間などの住処をはなれて活発に行動します。このため浅場の夜釣りではテナガエビの見釣りも可能です。
日中の場合、晴れた日より曇りのほうがよく釣れ、朝まずめ夕まずめに、活性が高くなります。
また、雨後の適度な濁りや潮が動いている状態で活性があがりやすいと覚えておきましょう。
これは餌が流れてきやすいためです。
テナガエビ釣りの道具や餌
振り出し竿に市販仕掛けでOK
テナガエビ専用竿以外では、ヘラ竿や渓流竿の穂先を1.5mほど抜いて使うのもオススメ
テナガエビ釣りは、リール竿よりのべ竿が適しています。
淡水の小物竿のなかでも、タナゴ竿は、テナガエビ釣りにも使いやすいのでオススメです。
初めての場合、仕掛けはテナガエビ釣り用の市販仕掛けが便利です。
どれも穂先に結ぶだけで簡単につかえます。
障害物際を狙うため、ハリやハリスの消耗も多いので、仕掛けは余分に用意しておくとよいでしょう。
<ピックアップアイテム>
餌はアカムシ・ミミズ・サシなどの活餌がベスト。冷蔵庫の余りものでもOK
テナガエビ釣りの特餌「アカムシ」。水道水につけておくと冷蔵庫の野菜室で1週間程度もつ
テナガエビが好むエサは動物性のものです。一般的に使われているエサは以下の通り。
- アカムシ
- キジ(ミミズ)
- サシ(ウジ)
- 魚肉ソーセージ、竹輪、カマボコ
- 豚バラ肉、豚レバー(米粒大にカットする)
基本的にどれも米粒程度つけて釣る釣りなので、それほど多くの量はいりません。
アカムシ、ミミズ、サシなどがもっとも釣れますが、ミミズはカットして使う必要があるので手返しはそのままチョンがけできるアカムシとサシがよいでしょう。
一方、雨後や濁りの強いところでは、臭いが強いミミズが有利です。
アカムシの頭部側(黒い)にチョンがけ
ドバミミズは米粒大にまとめカットしておくと便利。撒き餌にも使える
活餌は初心者のうちは装着がむずかしいので、針にチョンがけがおすすめです。
慣れてきたら通し刺しにすると針がかりの確率が高まります。
活餌はテナガエビにもっとも効果的ではあるのですが、釣具店で購入する必要があり保存がそれほど効かないというデメリットもあります。
そんなときに便利なのが、カマボコや豚バラ肉等です。これらは冷凍保存もできるので思い立った時に釣りにいけとても便利です。
豚バラ肉等は、脂肪分が多いため釣り場で加工すると手指が汚れて手返しが悪くなります。
あらかじめ自宅で必要な量をカッター等で米粒大に刻んで小型のプラ容器などにいれて持ち運ぶのがオススメです。
あると便利な道具
ハリ外し用のピンセットや小型のプライヤー
テナガエビは基本的に泥抜きをして食べます。針がかりしたものを指で強引にとると弱りやすく泥抜き前に死んでしまうため、針はピンセットや小型のプライヤーで抜くとよいでしょう。
ハリの返しをあらかじめつぶしておくとさらに手返しがよくなります。
密封できるエサ入れ
アカムシやミミズなどの生き餌や、豚バラなどの餌は汁も出ます。
持ち運びの際に密封できるエサ入れがあると便利です。
ジップロックスクリューロックは密封でき、中身も確認できて、洗えば何度でもつかえるのでオススメです。
プラ容器は風で飛ばされやすいため、石やオモリなどをいれ、蓋をしておくとよいでしょう。
網付きの水汲みバケツ
釣りあげたエビを生かしておくときは、折りたたみができる水汲みバケツや小型のクーラーボックスがあると便利です。
網付きのバケツは、エビをいれたまま水替えもできるので便利。
エアポンプと保冷剤
エビは数多く釣ってバケツにいれておくと、酸欠になってすぐに死んでしまいます。
また夏場は水温が高くなり死んでしまうこともしばしば。
エアポンプと小型の保冷剤があると便利です。
ダイワの友バッグが便利
ダイワから発売されているアユの友釣り用の「友バッグ」は、水につけておけるため水替えや酸素や温度変化の心配がありません。
エビの出し入れも簡単です。
長靴(ニーブーツ)
干潮時を中心に、長靴があるとテナガエビを狙えるポイントが広がります。
ニーブーツやウェーダーはいていくのもオススメです。
虫よけ
テナガエビ釣りのポイントは、藪も近く蚊が多く生息していることがしばしば。
蚊に囲まれると集中して釣りができません。
虫刺され対策はきちんとしておいた方がよいでしょう。
テナガエビ釣りの仕掛け
自作の場合はタナゴ用の極小ウキがおすすめ
はじめてテナガエビ釣りをする場合は、市販仕掛けを振り出し竿に装着すれば完了です。
基本的な構成は竿側から以下の通り
- 道糸(ナイロン1号程度)
- 小型の唐辛子ウキ(タナゴ用等)+ウキゴム
- サルカン
- ハリス+エビ針
※針の返しをあらかじめつぶしておくとエビが弱りにくく、小型の個体やメスをリリースするときにも安心。なれてきたら自作も楽しいのでやってみましょう。
ウキは玉ウキより細長いタイプの方が、アタリがわかりやすいです。
テナガエビの釣り方
ウキ下の調整
まず重要なのがウキ下の調整です。
オススメなのは、ウキが水面下1cm程度に沈むように調整するセッティングです。
ウキが完全に浮いていると底上のタナを取りにくいですし、エビが餌を引っ張ったときに抵抗感がでるため、ややしずめるように、ウキの位置やオモリの重さで調整しましょう。
オモリはかみつぶし錘ではなく、板オモリをつかうと微調整が簡単で、道糸自体も痛みずらいと言えます。
投入
テトラであれば外側でなく内側がベスト
どの釣りでもそうですが、仕掛けをなげたり遠くを釣りたくなるものです。
一方、テナガエビは岸際のエグレ、護岸の溝、杭周り、テトラの間などに生息しています。
仕掛けは足元に落とすものと考えましょう。
サイトフィッシングもたのしい!
干潮時などで水深が浅い場合は、テナガエビの生息有無が目でわかる場合もあります。
エビも産卵行動のために特定の場所に群れていることがほとんどです。
闇雲に釣るのではなく、エビを目視してから釣りをはじめるのも一つの手です。
アタリと合わせ
餌を底上に這わせ、水面(もしくは水面下)のウキをみていると、ぴょこぴょことアタリが出ます。
このときダボハゼ類(チチブ・ヌマチチブ)の場合は、ウキが一気に引き込まれます。
チチブ。揚げると美味しい魚
一方、本命テナガエビの場合は以下のようにアタリが出ます。
- ウキがぴょこぴょこ動く
- ウキが横に移動する
- ウキが止まって引き込まれ続ける
1のようにウキが最初に動くのは、テナガエビが餌や針をハサミでつかんで引き込んだ状態。
まだ針がかりしていないことがほとんどです。
その後、2の動作で、エサを食べながら隠れ処へ移動するのですが、このときウキが横に移動します。小型の個体は泳ぎながら移動するので横移動が比較的速いこともしばしば。
3の状態ではテナガエビは巣穴で安心して餌を食べています。
では、どのタイミングで合わせるか。
これは3のタイミングまでまって竿先で聞き上げるのがもっとも確実です。
一方、大型の個体がテトラの隙間に完全に入ってしまうとハリスが切れてしまうこともしばしば。
障害物の状況をみながら、2のタイミングでごくゆっくり竿先をあげると、テナガエビがかかっているようであれば、ビビビビというエビ独特の引きを感じられるでしょう。
どの場合でも素早く強く合わせることは不要なので、そーっと竿先をあげる程度にしておきましょう。
抜き上げ
針がかりしたテナガエビは、基本的に網をつかわず抜き上げます。
一方、針の返しをつぶしている場合や大型の個体がかかった場合は小型の網を使うと確実です。
ウロハゼ。マハゼとは異なり梅雨時で大型の個体が釣れる
河川の下流ではまれにウロハゼやカワアナゴ、ウナギの幼魚なども釣れるのですが、引きが強くハリスが切れることもあるので、小さいタモ網があると便利です。
釣ったあとの処理
釣りあげたテナガエビは、ピンセットなどをつかって丁寧にハリを外してバケツにいれて活かしておきましょう。
水温や酸素量などに注意するのは前述の通りです。
あらかじめ密閉容器にミネラルウォーターや、カルキ抜きをした水道水を持参すると、釣りあげた傍から泥抜きをはじめることができます。
もっとテナガエビを釣るためのコツ
テナガエビは子供でもチャレンジできる簡単な釣りですが、人によって釣果の差が出る釣りでもあります。
もっと釣りたい人向けにコツを紹介します。
よい条件のときに有名ポイントを狙おう
テナガエビといえども、活性が高いときと、そうでないときがあります。
まずは天気と時間帯について。
晴天よりは曇天・雨天のほうが釣れます。
日中よりは、朝まずめ夕まずめを狙うとよいでしょう。どうしても日中のカンカン照りに釣る場合は、テトラ帯や葦際のエグレなど日影が多くできるエリアを狙うのがよいです。
次に潮について。
下流域で、満潮・干潮時など、まったく潮が動いていない状態で釣りをしても、アタリがまったくでないこともしばしばです。釣行をする際は潮が適度に動いている時間帯を狙いましょう。
また、そもそもテナガエビがあまり生息していないところで釣りをしても数が伸びないので、最初は各河川の有名ポイントを狙うのも基本です。
▼多摩川で有名なテナガエビ釣りポイント。もっとも数が釣れるのは六郷橋上流付近です。
▼荒川で有名なテナガエビ釣りポイント。
釣れない場合は周辺に移動
シーズン中は多くの人がテナガエビ釣りをするため、人気ポイントの個体数が一時期的に少なくなることがあります。
また流れが滞っている場所から動くことも重要です。
アタリが出ない場合は、近隣のテトラ帯や岸壁際を釣り歩くと状況がよい場所が見つかります。
虫エサなどを少量撒き餌に使う
穴釣りをしている際など、足元にミミズを米粒大に切ったものを撒いてみると、どこにいたのかテトラをつたって多くのテナガエビが押し寄せてくることもあります。釣り歩く以外にコマセを撒いてみるのも一つの方法です。
水位が低いときや夜間は見釣りがオススメ
初夏の河川の下流部は透明度が高いとは言えないところがほとんどです。
そのため満潮時は底上を這うテナガエビを目撃することができないまま釣りをすることになります。
一方、干潮時等で水位が低い場合や夜間は、徘徊するテナガエビが目撃できます。
そんなときは、目の前に餌をおくだけで狙いうちすることができます。夜間の釣りはライトを当てすぎると逃げてしまうので、光量が低いものをつかって釣るとよいでしょう。
<テナガエビが見えている例>
▼以下の写真のなかにテナガエビがいるので探してみましょう。
基本的に見えているテナガエビは魚と違ってみんな釣ることが可能です。
おすすめのテナガエビ料理
素揚げ
テナガエビ料理で一番ポピュラーかつ美味しいのが素揚げ。
水気をしっかりきったテナガエビを揚げて塩を振るだけです。泥抜きもしくは胃袋をぬくことで雑味がない味が楽しめます。
片栗粉をまぶすのもよいでしょう。
鬼殻焼き
大型のテナガエビが釣れたら、鬼殻焼きにするとインパクト大です。
香ばしく素朴な味で、素揚げよりさっぱり食べられます。日本酒のおつまみにするとしみじみくる味。
トムヤムクン
テナガエビの頭部(エビ味噌)の出汁を生かしたトムヤムクンもオススメ。
市販のトムヤムペーストや中華出汁を使えば、だれでも最高のトムヤムクンができます。
好みでココナッツミルクをつかうことでコクをだすとよいでしょう。
夏場はやや濃い目のスープにして、うどんやラーメンを流水で冷やしてつけ麺にすると最高です!
エビチリ
大型のテナガエビは食べ応えがあるので、エビチリするのもオススメ。
素揚げにしたあと、市販のエビチリソースでかるく炒めるだけ。
テナガエビは水槽で飼ってもおもしろい
水槽のテナガエビは脱皮を繰り返すが、襲撃をうけて爪を欠損しやすい。
テナガエビを活かして持ち帰り、水槽で飼ってみるのもオススメです。
酸欠や水質悪化には弱いため、ポンプ付きの環境で育てましょう。夏場は高水温にも注意です。
一つの水槽にたくさんの個体を入れすぎると縄張り争いをしてどちらかが死んでしまいます。とくに脱皮を繰り返すときに、襲撃をうけてしまいます。
隠れ処になりそうな場所を複数用意して、少なめに育てるのが長く飼うコツです。60cm水槽であれば2,3尾にとどめておくとよいでしょう。
餌は市販の金魚や熱帯魚用のフレークタイプのもので問題ありません。上手に飼うことができれば数年生き、脱皮を繰り返し20cm以上のサイズに成長させることができます。
テナガエビを飼うことでわかるのは、夜になると活性があがるという点(夜行性)と、餌のニオイを触覚で嗅ぐと、興奮して動きが素早くなる点です。飼育することで釣りの参考にもなることでしょう。
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▼足場が高い場所、水深がある場所、子供と一緒の釣行などライフジャケットを着用すると安心です。
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