三浦半島鴨居大室港の五郎丸から南西強風の日にカワハギ釣りにいってきたときの釣行記。釣況の変化に対して、仕掛けや釣り方などの打ち手を変えることで、とくに伸びるのがカワハギ釣りだなーと思った日。ご参考にどうぞ。
釣りは道連れ世は情け
カワハギ釣りといえば東京湾の釣り物でも大人気。
何を考えなくても釣れるというわけではなく、テクニカル要素が極めて強いので個人的にも好きな釣り物。秋口からシーズンがスタートしていたものの、いつの間にか時が過ぎて12月。
前回のカワハギ釣行は昨年のリストランテORETSURI(忘年カワハギ)だったので、約1年たったことになる。あの日は北風がビュービューふいて寒かったなー。釣果ですか?あーきかんでください。
そんでもってこの日。
もともと4名で小網代湾・油壷釣船組合からボート釣りに行く予定だったのだけども、昼前から南西強風という天気予報だったので見合わせに。
とはいえ、大学生大井くんがどうしてもカワハギ釣りにいきたいといっているので釣り船を検討。仕方ありませんね。若さゆえの士気の高さ。燃えろよ若さ。いこう、いこうよ。
それにしても船釣りは電車釣行派からすると、金沢八景からが楽。
すると、カワハギで出船している駅チカ船宿というと弁天屋か一之瀬丸かになる。釣果をみると連日弁天屋のほうがやや釣果が伸びているような気配が漂っているわけで。こりゃ上手い人がいるのかなー、弁天屋かと思っていたところ、前夜に釣友アサオ氏から連絡があり、急遽、鴨居大室港の五郎丸からカワハギ釣りにいくとのこと。
「旅は道連れ世は情け」
そういうことわざがあるけれど、「釣りは道連れ」ってのもそうだと思う。
ひとりの釣りには独特の魅力があるものの、一緒に釣りにいくのも捨てがたい。
ともに釣りにいけば、楽しいこともあるし、つらいこともある。
自分だけでは気づけない釣況の変化にも気づきやすい。そんで万が一金田一、釣れなかったら帰り路にラーメンでもかませばいいよ。麺大盛で。半ライスもどんとこい。ラーメンライス、それは紛いなきジャスティス。え?餃子?あーいてまえいてまえ。
そんで、腹が満たされるころには貧価の呪いなんて睡眠欲にすべてかき消されているはず。ラリホー。
ってことで、鴨居大室港の五郎丸に早朝到着。
はじめての港である。
知らない人向けに説明しておくと、東京側からみると、走水・観音崎のでっぱりの南側の奥まったとこにあると思ってもらえればそれでだいたいOK。
タチウオポイントも近いので、半日船で十分タチウオが楽しめるという港でもある。
五郎丸はアサオ氏曰く、「すげーいいところ」ということで興味はあったんです。なにしろスタッフの人の人柄が素晴らしいと。
しまった五郎丸ステッカーをもらいわすれた
で、こちらが受付。
お分かりいただけただろうか。
「あめ玉」
ってのがあるんだけど、これでわたしは察したね。
この船宿には愛があるなと。
そんでもってこれだ。
2.0、3.0、4.0。
古参兵向けの神器「老眼鏡」である。
愛だな。
間違いないよ。
実際んところ、船釣りには中高年、おじいちゃんが多いわけで、なかには老眼道を極めている人もいる。そうなると、遠くはやけに見えるんだけど、手元にピントがあわず見えないとなる。餌付けや仕掛けの準備などなど、老眼が釣りには大敵なのだ。ということで、古参兵各位むけの配慮もバッチリ。
船宿っていうのは、やっぱりハード面とか釣果をあげられる以前に、ソフト面が大切だと思う。
どんなに船がピカピカで、がんがん釣れても、船宿のスタッフがものすごくやらされ感で仕事をしていて、ことあるごとに釣り客に説教するようなスタンスだったらば、わざわざ休日の行き帰りあわせて10時間弱+1万円なんて投資したくない。
遊びにいったら、笑顔でむかえてくれて、釣れなくても楽しめる。という船宿がやはりいい。もちろん釣れればさらにいいけど。
ちょ。アサオ氏と大学生アングラー大井くんが道路わきで何かをやっていますね。
???
ご覧ください。
剥きアサリを道路にばらまいてしまったようですね。
一体こんな無様なことをやったのは誰なんだ。
はい、わたしです。
しかも、写真をとって二人にアサリを拾わせるという資本家ぶり。なんだこいつは。殴るぞ。大変申し訳ございません。
ご覧ください。砂利がまじってちょうど滑り止めになっていますね。おほほほほ。
駐車場からの移動中にアサリをアスファルトに落としたわけなのだけど、そこにいたおっつあんが、「兄ちゃん、ここじゃあカワハギは釣れねーよ(笑)」と。
フハッ。
咄嗟にそんな船宿ジョークをはけるなんて、なかなかよろしいおわす。
アサリは、マルキューが誇る「バクバクソルト」で締めて準備完了。
商品紹介の人。
楽しい人たち
準備がわるくアサオ氏から借りました。
いやはや、「釣りは道連れ世は情け」とはよくいったものです。有難や。
カワハギが狙える鴨居沖は港すぐ。ポイントが近いのはいい
顎をしゃくれさせて精神力を高めている釣り人
鴨居大室港は、東京方面からは電車アクセスがやや難しく、車釣行の方がメインになる場所。
だけども、メリットとしては、ポイントがめちゃ近いというのもあるわけです。
今回、港からゆっくり出船してから10分以内ぐらいでもう「準備が終わった人からどうぞー20mです」という具合。
東京方面の船宿の場合、例えば冬カワハギ釣りの主戦場「竹岡沖」あたりは全速力で1時間以上かかったりするんですが、鴨居沖の場合は10分以内。
これって、要は行き帰りの時間が少ないから実釣時間が長いわけです。
金沢八景の船宿の場合でも、竹岡沖まで45分程度かかるので往復で、1.5時間は移動。東京だったら2時間ぐらいは余裕でかかるはずです。
しかも、こういった港から近いポイントの場合は、ホームグラウンドみたいなもんで地元の釣り船のみが操船できるようなもんなわけです。詳しいところはわからんのですが、やはり外からきて、他人の土俵で戦うみたいなのがいろいろ難しいこともあるのでしょう。
バナナを食べると釣力が上がるとかいっている人
ということで鴨居沖。釣り座は右トモから3番目。左にアサオ氏、右に大井くんという布陣。
カワハギたちの活性はどうかな?
仕掛けは大型狙いに絞って、ヤマシタの聞き合わせ用リーダーに、シマノの吸わせ力7.5号(ハリス6cm2号)をセット。針折れだけは防ぎたい。集寄はだれでも5分で作れるメーカー泣かせの「寄せ寄せボウキ」。
それほど潮流れず周囲は沈黙といった状態。釣れるのはトラギス。
そこで、右舷ではわたしだけロングキャストを繰り返して手前に寄せてくるとガツガツっというアタリ。ああ、これはカワハギっぽいな。バタバタ泳いでいるし、でもまたトラギスだったらどうしよう。
・・・
・・・
・・・
カワハギでっす。
うれしさ。
おそらくこれが船中一枚目じゃないかなと。時刻は7:52。
船長はさらにいくつか流してみたものの、アタリが出ないので鴨居沖に見切りをつけて竹岡沖へ。
「はい。それでは、竹岡沖へ走りますので25分程度走ります」
というソフトなアナウンス。
文字に表せないソフトさ。たとえるなら、JR高速バス関東の運転手のアナウンスというか。わからないか。とにかく丁寧で好感触。
ちょうど、対岸が竹岡。
カワハギ釣りの主戦場が近いのもいいですね。鴨居。
竹岡沖。しばらくすると予報通りの南西強風
竹岡沖に到着。冬場のカワハギポイントとあって、東京湾中のカワハギ船が集まっている印象。ここもそれほど潮がながれず。
予報によると昼前から南西風が強まるので、早上がりの可能性も考えてこの時間に数を伸ばしていきたいところ。どうなのかなー?
10:18。ようやく一枚。
広くキャストするよりも足元にいるカワハギを丁寧に誘ってから聞き上げることちらほらアタリがでる印象。
- 左手にもったロッドの竿尻を右手ではたく
- 仕掛けを垂らす(中オモリ0.5号)
- アタリ
という流れ。
中オモリを2号にしていたところアタリがとれずアサリがとられ続けるので、0.5号に下げたところよい感触に。針も当初つかっていた吸わせ力7.5号から、がまかつのAT3号(セイゴ針系の吸わせ針)に変更したことで小型のあたりもとれるようになったなと。
10:25。サイズは大きくないけど、いいぞいいぞ。
よくみるとイカリムシがついているトラギス
トラギスはそれほど多くないけれど釣れる。
10:02。君は色が濃いね。もののけ姫のイノシシみたいな色ではある。
11:14。しばらく間があいて、流し変えのタイミングでヒット。美カワハギ。
11:37。このあたりで南西強風が強まり、釣りづらくなる。ここでさらに1枚。
あとでみたところ、12時前後で八景の船宿は早上がりしたとのこと。たしかにポイントが竹岡沖になってくると、風よけもないわけで波も高くかなりしんどいなと。
ということで、仮に八景の船宿で釣行していた場合、ここまでの釣果6枚ぐらいで終わっていたのかも。
このあたりで、釣り座にすわって寝ていた大井君がむくりと立ち上がり・・・。
リバース。
船酔いに弱いものは釣行前夜酒を飲んではいけない。守らぬものは胃の中のものをすべて荒れた海に吐き出すだろう。
出エジプトを遂げ、約束の地を目指したモーセの「釣戒」にかかれている基本ルールを守らなかったのだから仕方ない。
大井くん「朝から何も食ってないんで吐けないんです。オエッ」
ほーん。
古今東西、釣りに夢中の釣り人ほど船酔いしている人に冷たい生き物はいないと思う。因果応報である。やがて黄色い胆汁を吐く大井くん。しかたなし。
鴨居沖ふたたび。潮が速くながれると入れ食い状態に
竹岡沖がビュービュー状態なので、船長は鴨居沖に戻ることを選択。
ここで早上がりにならず、後半釣り続けることができるというのも風よけになる港近くの釣り場があるからこそだと思う。有難や。
三浦半島のおかげで、ブロックされる南西風。ふはははは。いいぞいいぞ。
が、この鴨居沖はトラギスなど「貴殿たち」の活性が異様に高く、入れ食い。カワハギはいるのか。いるんだろうな。きっといるんだけども、トラギスの圧倒的な機動力が勝っていて先にハリがかってしまうという状態。タナをあげるか、それともフックサイズを落とすか・・・。
ここで中オモリを外して、垂らして聞き上げる釣りから、たたいてゼロテンションで待つ釣りへ変更。
するとちょうど潮の流れもでてきて道糸が横に流れていくこともあってか、アタリが増えてくる。
13:22。ひさしぶりのヒット。
このあたりから、叩かず、底に落としたらゼロテンションをキープするサイレントな釣りに移行。すると叩くときよりカワハギのあたりが出やすくなるというプラス面が。いわゆる朗報というやつである。
終日ダイワのラトル入り金メッキオモリ
13:56。ドラグが鳴る強烈なヒットに、まさかの尺カワハギ!?とおもったら、ダブルヒット。
14:12。いいねいいね。もっと針をたべるといいよ。
ギロリ。一角獣があらわれた。
14:32。
沖上がり寸前、さらに速くなった潮によってラインがトモ側にながれ、回収しながらゼロテンションぎみに待つとヒット。
やまない風。
やまない吐き気。
大井くんは結局、12時前ぐらいでダウンということで自主規制午前船状態でフィニッシュ。これに懲りたら、モーセの釣戒をよくふまえて社会人になっていただきたいと思います。
沖上がりカワハギ談義
15時前に沖上がり。
気立てのいいおかみさんが大根のおでんをふるまっている。
沖上がり大根染みいる師走かな
これは松尾芭蕉37歳の句である。
実はカワハギ釣りが好きだった芭蕉が、あらかじめ天候が荒れるとしっていてもやむにやまれぬ大和魂で鴨居大室から出船。なんとか11枚のカワハギを釣り上げ、船宿についたときのもの。おそらくこの大根は三浦半島でとれた青首大根なのだろう。三浦大根と思いきや、三浦大根は今や生産者が少ない。それに高齢化する農家においては引っこ抜きやすい青首大根のほうが無理もすくない。三浦半島だからといって収穫している大根が三浦大根に違いないと思うのはいささか思い込みがすぎるのではなかろうか。芭蕉は1年ぶりのカワハギ釣りで11枚という船中2番手の釣果をたたき出し、ほくほくしながら船宿の大根のおでんを頬張り、師走の空に白い息をはいたに違いない。しみいる出汁。肝にしみいるカワハギの手ごたえ。
というような意味。
釣行のしめは3人で新大津のラーメン屋「つくし亭」へ。
いわゆる家系スープで臭みなくスッキリ味。家系独特の無味臭チャーというわけでもなくトータルで完成度が高い一品。半ライスと餃子4粒のセットで850円。沖上満腹先生とはこのことだと思います。
もちかえった釣果はカワハギ11尾とノーマルトラギス3尾。トラギスは小指級のものが多くすべてリリース。産めよ増やせよ。
今回のタックル
「今回のカワハギタックル」は、って、これしかないんだけど、以下の通り。
- ロッド:シマノ・ステファーノ CI4+ MH175-2
- リール:シマノ・バルケッタ300HG
- ライン:シマノ・タナトル4 1.5号200m(リーダーなし)
- オモリ:ダイワ・快適船シンカーS RV 25号(ケイムラ金)
- 仕掛け:幹糸=ヤマシタのカワハギリーダー(聞き上げ用)、針(前半:シマノ吸わせ力7.5号、後半:がまかつ競技カワハギAT3号)
シマノ・ステファーノ CI4+ MH175-2(解説記事)は、実勢33,000円。ハイエンド機種にしては珍しく2Pの竿なので電車釣行派にもピッタリ。あれこれ竿を買うのがいやなひとは、この1本で汎用的に、すべての釣りができるというもの。人にはこれをオススメしてます。さらにハイエンドは5万円台でそれぞれ尖っているので、よっぽどのカワハギキチガイにならない限りは不要だと思います。
リールは他のライトタックル釣りのものを流用。バルケッタ(解説)は190g。カワハギ専用リールのステファーノはさらに30グラム軽いというがありながらも、バルケッタの190gでも十分軽いです。この30gを気にしない人は専用竿だけかってリールは小型両軸リールを流用するので全く問題ないと思います。コスパを考えるとやや重めながらもレッドマックス船(解説)9にPE1号を200m巻くのがよいです。
ただし、PEラインを1号以下に落とすことでラインがより垂直になりアタリが取りやすくなるというメリットがあるとは覚えておきましょう。バルケッタには200モデルもあるのですが、糸巻き量の違いだけでグラム数は変わりません。ラインはタナトル4(解説)の1.5号以下がオススメ。
オモリはダイワのほうがバリエーションが多いです。機能的にも「センサーアイ」といってオモリ下に環があり、底質がわかりやすいのと、その部分にダブルスナップなどでバイブレーションやスプーンなどの集寄もつけやすいというメリットも。トータル的にダイワのほうがよいと思います。
快適船シンカーには、ラトルありと無があり、ラトルありの場合、集寄をつけなくてもカワハギの興味関心を引き続ける効果があるため、潮受けをさけたいので集寄をつけたくないという人にもオススメ。根がかりによる高切れや、スナップ外れによってロストがでてくるので必ず複数もっておくとよいでしょう。東京湾の場合だいたい25号で事足ります。
お世話になった船宿
ソフト面が充実したハートフルな船宿。みんな丁寧親切。