いざ釣りをはじめると、狙う魚や釣り方によって道具が多岐にわかれているという点に気づきます。
それぞれ、道具の差によってメリット・デメリットがあるわけですが、実釣へどのような影響があるのでしょうか。
釣り竿・リール・仕掛け類について、一般的な知識を解説します。
釣竿の素材
かつては竹製が主流でハンドメイドされてきた釣り竿。
現代はすっかり工業製品として大量生産されるようになりました。
釣り竿の素材は大きくわければ、グラス(ガラス繊維)・カーボン・チタン合金に分けられます。
<グラス>
安価。カーボンと比較すると粘り強く、折れにくいのですが、重くなりがちです。
マグロなど超大物の引きをいなすため、1ピースロッドの素材につかわれたり、アタリをはじかないという狙いで「ソリッド穂先」として用いられています。
<カーボン>
グラスよりは高価。グラスと比較すると高感度で軽量ですが、折れやすい特徴があります。
そのため強度を出すために、各社さまざまな工夫を施しています。
<チタン合金>
チタン合金は形状記憶合金とも呼ばれますが、金属独特の丈夫さや感度の良さから穂先の素材として用いられます。
アタリを増幅させる効果が高く、感度が高いのですが、水中のノイズも拾いやすくなります。
また、コストが高くなりがち。金属疲労によって変形したり、結果破断してしまうことも。
釣竿の長さ
長竿は「てこの原理」がききやすく、長い仕掛けも扱える
長い釣り竿は持ち重りしやすいものの、から以下のメリットがあります。
- 飛距離を伸ばしやすい
- わずかな動きでシャクリやタナとりを行うことができる
- 長い仕掛けを扱いやすい
- 手前に根、ブレイク、テトラがある場所で釣りやすくなる
- 揺れる船上で海中の仕掛けを安定させやすい(コマセマダイ用の胴調子など)
- 魚の引きをいなしやすい
一方、より短い竿と比較してのデメリットは以下の通りです。
- アタリ(手感度)の伝達速度が遅くなる
- 持ち運びでかさばる
- 重くなりやすい
- 操作しづらい
- 素材量が増えるため価格が高くなりやすい
釣竿の重さ
素材差をのぞけば、基本的にブランク素材や塗料・コーティングをふんだんに使っているものほど、釣り竿は重くなっていきます。
釣り竿の重量は以下の通り、実釣へ影響します。
- 重い竿ほど疲労しやすい
- 重い竿ほど扱いづらい
※実際はリールとのバランスによってタックル全体の持ち重り感は変ります。
釣竿の調子(曲がり具合)
釣竿の調子は大きく分ければ「極先調子」「先調子」「胴調子」があります。
それぞれ9:1(キューイチ)、8:2(ハチニー)、7:3(ナナサン)、6:4(ロクヨン)、5:5(ゴーゴー)など、全体のどの部分から曲がっていくかが表現されます。
調子ごとのメリット・デメリットは以下の通りです。
<極先調子>
- かすかなアタリも感じやすい
- 仕掛けを操作しやすい
- 瞬発的にアワセやすい
- アタリを弾きやすい
- 穂先部分に負荷がかかり破損しやすい
<胴調子>
- 海上の揺れを吸収し、仕掛けを安定させやすい
- 大物の引きを吸収しやすい
- アタリを弾じきづらく、オートメーションなフッキングをしやすい
- 仕掛けを操作しづらい
- 瞬発的にアワセられない
<先調子>
※極先調子と同調子の中間。細かく言えば、8:2と7:3でも差がある
リールのサイズ
大型のリールほど、以下のメリット・デメリットがあります。
<メリット>
- 糸巻き量が増える
- 巻き上げ力が強くなる
- 最大ドラグ力が高くなる
※理論上
<デメリット>
- 重くなる
- 持ち運びでかさばる
- パーミング(手で包み込むように)しづらくなる
リールの素材(筐体・ギア)
リールの筐体やギアの素材には、主に樹脂・カーボン複合系素材とアルミ・マグネシウム等合金・ブラス(真鍮)などがあります。
メリット・デメリットは以下の通り。
<樹脂・カーボン複合系素材>
- 軽くて丈夫
- 安価
<アルミ・マグネシウム等合金>
- 重いがさらに丈夫(巻き上げ時にゆがみが少ないのでスムーズ)
- 感度が高まる
- 高価
※ブラスは主にメインギア部分で使用されます
※実際はタックル全体のバランスによって持ち重り感は変動します
リールの形状
小型両軸リールはロープロ型が主流
リールの形状には、丸型リール(太鼓型)とロープロ型リール(小型化)があります。
それぞれのメリット・デメリットは以下の通り。
<丸型リール(太鼓型)>
- 巻き上げ力が高い
- 糸巻き量が多い
- パーミングしづらい
- 素材量が増え、重くなりやすい
※人気の小型丸型リールは、パーミングしやすいサイズ感で設計されています。
<ロープロ型リール(小型化)>
- 持ちやすい
- パーミングしやすい
- より軽い
リールの重さ
オプション・ブレーキやICカウンターユニットがないシンプルな樹脂素材のリールは軽量
リールの重量差によるメリット・デメリットは以下の通り。
<重いリール>
- 持ち重りし疲労しやすい
- 操作性が下がりキャストしづらい
- リール保持のため、筋力の緊張が必要で手感度が低下しやすい(手持ち)
<軽いリール>
- 疲労しづらい
- 操作性が上がりキャストしやすい
- リールを簡単に保持できるため手感度があがりやすい(手持ち)
※実際はリール単体の重量ではなく、釣竿とのバランスによって操作性や疲労度が変動します。
リールのギア比(ハイギア・パワーギア・ノーマルギア)
リールのギア比(ハイギア・パワーギア・ノーマルギア)による差は以下の通りです。
<ハイギア>
- 巻き上げが速く、手返し向上につながるが筋力が必要
- 比較的筋肉量が多くない女性や子供の場合、疲労度が高い
- ルアー等に素早いアクションをつけるときにリズムを保ちやすい
<パワーギア>
- 重く潮受けする仕掛けやルアーの操作をしやすくなる
- より大型の魚を、より弱い力で釣りあげられる
- より低速でルアーを動かすことができる
- 深場の場合、巻き上げに時間がかかる
※ノーマルギアは両者の中間です。当たり前ですが、特色はありません。
リールのハンドル形状や長さ
リールのハンドル形状による特徴の差は以下の通りです。
<ダブルハンドル>
- バランスがよく、テクニカルな釣りでハンドルの微妙な操作をしやすい
- キャストしやすい
<パワーハンドル>
- 巻き上げ力が必要な釣りで効果を発揮する
- 比較的キャストしづらい
※パワーハンドルはハンドル軸が長く、ハンドルノブが大きめに設計されたものを差します
リールのハンドル向き(右巻き・左巻き)
リールのハンドル向き(右巻き・左巻き)によるメリット・デメリットは以下の通り。(※右利きの場合)
<右巻きのリール>
- 巻き上げる時に力をいれやすい
- ロッドを利き腕でつかめないため細かい操作をしづらい
※アワセやシャクリの負荷が強い場合は右手をバットに添えることでサポートできます。またしっかりパーミングをすることも必要です。
<左巻きのリール>
- 巻き上げる時に力をいれづらい(右利きの女性や子供は注意)
- ロッドを利き腕でつかめるため細かい操作をしやすい
※スピニングリールは構造上、ハンドル交換が簡単に行えます。通常右巻きハンドルで販売されていますが、好みにあわせて変更しましょう。操作性が求められる釣りでは左巻きに変更する人がほとんどです。
ライン(釣り糸)の素材
ラインには多くの素材がありますが、よくつかわれているのが、ナイロン・フロロカーボン・PEラインの3つです。
それぞれの特徴は以下の通り。
<ナイロン>
- 安価
- 結節力が高い
- 擦れに弱い
- 吸水しやすい
- 沈下速度が遅い
- やわらかい
- よく伸びる
→ナイロンラインは主に道糸で用いられるが、大物狙いのショックリーダーやハリスに使用されることもあります。
<フロロカーボン>
- 高価(ナイロンより)
- 結節力が高い(ナイロンに次ぐ)
- 吸水しない
- 沈下速度が速い
- 擦れに強い
- 比較的ハリがあり、スプールになじまないので、道糸にするとライントラブルが増えることも
- 伸びが少ない(ナイロンより)
- 屈折率が水に近いので目立ちづらい(ナイロンに比べて)
→主にハリスやショックリーダーとして使用されますが、細い号数は道糸につかわれることも。
<PEライン>
- 高価
- 結節力が低い(結び目から抜けたり、切れやすい)
- 吸水しない
- 浮く
- 擦れに弱い
- 着色により、水深や飛距離を認識しやすい
- 伸びがほぼないので高感度
→PEラインは船釣りや飛距離を求める投げ釣りやルアー釣りで使用されています。結節力が低いので直結ではなく、リーダーを介すことがほとんど。
※耐摩耗性や直線強度については、ラインの素材・コーティング・構造によって変動します
ライン(釣り糸)の号数(太さ)
ライン(釣り糸)は号数やlb.表記で表現されます。太さによるメリット・デメリットは以下の通りです。
<太いライン>
- 切れづらい
- 潮受けしやすい
- 飛距離がでない(空気抵抗を受けやすい)
- 絡みづらく、絡んだ際にほどきやすい
- より長期間使用できる
<細いライン>
- 切れやすい
- 潮受けしづらい
- 飛距離を出しやすい(空気抵抗を受けにくい)
- 絡みやすく、絡んだ際にほどきにくい
- スプールとリール筐体の隙間に巻き込みやすい
- より短期間で消費期限をむかえる
PEラインの編み数(4本・8本)
PEラインはポリエチレン製の撚糸で、複数の繊維原糸をより合わせるように製造されています。
編み数(例:4本編、8本編)の差によるメリット・デメリットは以下の通り。
<4本編>
- 耐摩耗性が高い
- 表面積が大きくなるため潮受けし、飛距離がでにくい
- 結節力がより高い
- 安価
<8本編>
- 耐摩耗性が低い
- 表面がなめらかになるため潮受けしづらく、飛距離がでやすい
- 結節力がより低い
- 高価
天秤の素材
主に餌釣りで仕掛けと道糸を離すために使用される天秤ですが、素材はステンレス製かチタン系形状記憶合金がほとんどです。
それぞれのメリット・デメリットは以下の通り。
<ステンレス製天秤>
- 安価
- 天秤部分の一体成型が多く、本体は丈夫
<形状記憶合金製天秤>
- 高価
- ステンレス部分との接合部が生まれ、同部分の剛性がさがりやすく、破断リスクが増える
- 仕掛けをより自然に動かし、アタリを弾かず食い込みがよい
※両者とも、細いもの、折り曲げ頻度が高い釣り、オモリ負荷をかける釣りは金属疲労による破断リスクが高まります。
天秤の長さ
仕掛け長により天秤の長さも決まる
天秤の長さによるメリット・デメリットは以下の通り。
<長い天秤>
- 手前マツリしにくい
- 感度が下がる
<短い天秤>
- 手前マツリしやすい
- 感度が上がる
天秤の太さ
天秤の太さによって生まれるメリット・デメリットは以下の通り。
<太い天秤>
- 大型魚の引きや重い仕掛けや強いシャクリに耐えうる
- 金属疲労による破断リスクが低い
- 潮受けしやすい
<細い天秤>
- 大型魚の引きや重い仕掛けに耐えられない場合がある(付属スナップ類の剛性も線材の太さに比例しがち)
- 金属疲労による破断リスクが高い
- 潮受けしづらい
サルカン・スナップの形状
サルカンの形状によって生まれるメリット・デメリットは以下の通り。
「インタースナップ」は出っ張りにPEラインが絡み開きがち。仕掛けロストが多いがよく使われている
<インタースナップ>
- スナップ部に出っ張りがあり道糸やハリスが絡みやすい
- スナップ部の出っ張りに道糸が引っ掛かってオマツリすると知らない間に開き、仕掛けをロストしやすい
セーフティスナップは出っ張りがないため開きづらい
<セーフティスナップ>
- スナップ部に出っ張りがないため道糸やハリスが絡みづらい
- スナップ部の出っ張りがないためオマツリで開きづらい
比較的開きづらい新タイプのスナップサルカン(ハヤテスナップクレン)
<ハヤテスナップクレン>
- やや高価
- インタースナップやセーフティスナップより破断強度が高い
- スナップ部に出っ張りがないため道糸やハリスが絡みづらい
- スナップ部の出っ張りがないためオマツリで開きづらい
ハリス(リーダー)の長さ
ハリス(リーダー)の長さがもたらすメリットとデメリットは、以下の通りです。
<長いハリス(リーダー)>
- 根ずれや魚との擦れで切れづらい
- よりショックを吸収する
- 魚に違和感をもたれづらい
- アタリがわかりづらい
<短いハリス(リーダー)>
- 根ずれや魚との擦れで切れやすくなる
- ショックを吸収しづらい
- 魚に違和感をもたれやすい
- アタリがわかりやすい
ハリス(リーダー)の太さ
ハリス(リーダー)の太さ(号数・lb.クラス)がもたらすメリットとデメリットは以下の通りです。
<太いハリス(リーダー)>
- 切れづらい
- 潮受けしやすい
- 魚に見切られやすい
<細いハリス(リーダー)>
- 切れやすい
- 潮受けしづらい
- 魚に見切られにくい
集寄のサイズや数
集寄のサイズが大きくなり、数が増えるほど潮受けしやすいため以下の影響があります。
- オマツリが増えやすい
- 底取りしづらい
- 魚のアタリをとらえづらくなる
- 魚に違和感を持たれる
→カワハギ釣りをはじめる場合は、最初はオモリとハリのみでチャレンジしてみましょう。カワハギ釣りではオモリ自体が集寄となりますし、餌自体も最大の集寄です。
オモリの形状
オモリの形状によるメリット・デメリットは以下の通りです。
<小田原オモリ(六角オモリ)>
- 安価
- 海底で倒すことで仕掛けを安定させやすい
<丸型オモリ>
- 海底で転がるため広い範囲を探ることができる
- 船べりで転がりやすく、ハリなどで怪我しやすい
<釣鐘オモリ>
- 海底を小突く際に水流を立ててアピールしやすい
<棒オモリ(ホゴオモリ)>
- 荒い根でも根がかりしづらい
<スパイクオモリ・亀型オモリ>
亀型オモリは河川のぶっこみ釣りで有効
- 流れが速い場所でも仕掛けを固定させやすい
オモリの号数
オモリの号数によるメリット・デメリットは以下の通り。
<重いオモリ>
- 道糸が立ちやすく、底取りしやすい
- 魚に違和感を持たれやすい(遊動など仕掛けにもよる)
<軽いオモリ>
- 仕掛けが流されやすく、底取りしづらい
- 魚に違和感を持たれづらい(遊動など仕掛けにもよる)
→釣り船では、潮受けを統一するためPEラインやオモリ号数が指定されていることがほとんどです。実釣前に対応した道具を選んでおきましょう。ラインやオモリの号数以外に、極端に潮受けする仕掛けは使用できないことがあります。
オモリの素材
鉛素材が主要ですが、比重の高いタングステンも特定の釣りでは人気です。
<鉛のオモリ>
- 安価
- タングステンに比べかさ張り、潮受けしやすい
- 種類が多い
<タングステンのオモリ>
- 高価(鉛オモリの数倍)
- より小型で号数を実現できるため潮受けしづらい
- 種類が少ない
→タイラバ、一つテンヤ、マルイカ、アマダイなど、ライトな釣りで潮受けを軽減したい釣り物でタングステンのオモリが選ばれます。
釣り針の太さ
細いハリは刺さりやすいが、折れたり曲がりやすい
釣り針につかわれる線材の太さによるメリット・デメリットは以下の通りです。
<太い釣り針>
- 強度が高い
- 貫通させるために力が必要
- 活餌が弱りやすい
- 自重があるため仕掛けにより違和感が出やすい
<細い釣り針>
- 強度が低い
- 貫通させるやすい
- 活餌が弱りづらい
- より自然に仕掛けが漂う
針り針の形状
軸が長く餌の姿勢が安定する丸海津タイプ、強度はチヌ針に劣る
釣り針の形状によるメリット・デメリットは以下の通り。
<軸が長い釣り針>
- 餌の姿勢が安定しやすい
- 魚に飲まれづらくハリスが傷みづらい(例:タチウオのワームフック、アマダイの丸海津)
- 短いチヌ針系と比べて強度が劣る
<ひねりがある釣り針>
- オキアミなどの餌をつけづらい
- 魚に飲み込まれた後にフッキングしやすい
- ひねりがないものより強度が劣る
<軸にケンがある釣り針>
- オキアミやイソメなどの餌を保持しやすい
- 軸がないものより強度が劣る
まとめ
ターゲット・釣り方・場所によって最適な道具を学んでいきましょう
あらゆる趣味の内、道具が細分化されている釣り。
はじめたころは、道具の差にどういったメリット・デメリットがあって、実釣へどのような影響があるのかわかりません。
今回は、釣り竿・リール・仕掛け類について、一般的な知識を解説しました。
実際は、さらに細い違いがあるのですが、一つ一つ自分の頭で学んでいきましょう。
よい釣りを!